今となっては原付ですらフューエルインジェクション(以下FI)が当たり前・・・以下略
皆さん自慢の愛車のバッテリーが上がってセルが回らなくなったらどうします?
おとなしく諦める人もいれば押し掛けを検討する人もいると思います。キャブ車だったら間違いなく押し掛けを試みるでしょう。
じゃあFI車だったらどうしますか?
まず押し掛けの仕組みからおさらいしましょう。
普通にバイクで走ろうと思った時は
【(セルで)エンジンを掛ける】→【クラッチを切ってギアを入れる】→【クラッチを繋いで発進】
ですよね。
押し掛けはこれの真逆
【発進(押す)】→【ギアを入れてクラッチを繋ぐ】→【エンジン掛かる】
です。
エンジンを掛けてタイヤを回すセルスタートに対しタイヤを回してエンジンを掛けるのが押し掛け。
で、
「FI車でも押し掛け出来る」とか「FI車は押し掛け出来ない」とか色んな声を聞きますよね。
結局どっちなんだよ・・・って話ですが、実はどっちも正解なんです。
フューエルインジェクションはアイドリングが苦手の記事を読んでくださった方はわかると思うんですが、FIはピストン運動の負圧で動くキャブレター車と違って自ら計算して動く加圧です。
だからキャブ車がガソリンの流れるホースを抜くとタンクからガソリンが漏れてくるのに対し、FI車はホースを抜いてもガソリンは漏れてきません。
それはFI車は燃料を送るポンプが付いているからなんです。つまりFI車はこのガソリンポンプが動かないとガソリンが出ない。(キャブ車でも付いてるモデルは有りますが今回は割愛)
当然このガソリンポンプも電気で動いています。
つまりFI車で押し掛けが可能となるのはセルを回すほどの電気は残ってないけど燃料ポンプを動かすだけの電力は残っている場合。
完全に上がりきってしまった場合は不可です。
・・・・と、ここまでは知ってる人も多いと思います。
でも実は今どきのバイクの押し掛け可能条件はそれだけじゃないんです。
燃料ポンプを動かす程度の電気が残っている事は最低条件で
それに加え
「(クラッチ繋いだ時に)クランクが規定回転数以上回ること」
や
「ECUが安定して稼働する電力が残ってる」
というのが条件です。
クランクについてですが、クランクの左端にはオルタネータが付いていてソコが回ることで発電をするんです。
広い意味でジェネレーター、発電する物をオルタネータ、そのコイルをステーターコイルと言います。
クランクが規定回転数以上回らないといけないのはちゃんと発電する必要があるからです。
これは当然ながらキャブ車にも付いています。
じゃあ何でFI車だけそんな条件が付けられているのかというと、FI化に伴い電脳化(電子化)された電装系、人間で言う脳や神経を守るためなんです。
例えるなら押し掛けというのは自転車発電の様なもの。
自転車発電でPCを起動して使おうなんて考える人はいませんよね。そんな事をしたら基板やHDDといった大事な部分が壊れてしまいます。
バイクもそれと同じなんです。
キャブレターの頃なら電気を使う箇所がそれこそプラグと灯火類くらいだったから良かったんですが、FI車になるとECUや燃料ポンプにFIに吸排気などのセンサー類等など書ききれない程いろんな部品に電気が必要になります。
こういった部品に電気を送ろうにも不安定だとショート等の故障の原因ですよね。それこそもし押し掛けして脳であるECUが壊れようもんなら10万円コースです。
だからバイクが自分でダメだと判断した場合は、幾ら発電しようにも電気を各所に送らない言わば自己防衛的な手段を取るんです。
メーカーや車種によっては最初から完全に押し掛けを拒絶するようプログラムされてたりもします。
それだけバイクにとって危ないことなんです。だから神経質になる必要はありませんが、安直な押し掛けはダメですよ。
ちなみにこれは車や他のバイクからのジャンピングも同様です。
不安定な電力で動かすことはヤメて大人しく再充電してから使うか、新しいバッテリーを買う事。
もちろん絶対に壊れるという事はなくそこまで神経質になる必要はありませんが、特にジャンピングは最後の手段と覚えておきましょう。
ちなみに
「急にエンジンが掛からなくなった」
といった場合はレギュレーターやジェネレーター等といった別の箇所の故障が原因でバイクが自分でエンジンが掛からないようにしている場合が基本ですので、なおさら無理に動かさない様にしましょう。>>バイク豆知識:バッテリー上がりは結果であり原因ではない
まあしかしよく見るとキルスイッチがOFFになってたってのもよくある話ですが。
この現象って何なんでしょうか。一瞬頭が真っ白になりますよね。
※追記
近年、当たり前のように付いているようになってきたバックトルクリミッター(スリッパークラッチ)。これが付いているバイクも押し掛けはほぼ無理です。
バックトルクリミッター・スリッパークラッチについては>>バイク豆知識:スリッパークラッチに対する誤解をどうぞ。
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