VERSYS1000(LZ1000B) -since 2015-

2016ヴェルシス1000

「Riding Fun」

二代目VERSYS1000にあたるB型。

先代のマッスル感の強い顔が不評だったのか弟の650と一緒にNinja顔へと変更されました。でもやっぱりただでは起きないのかNinjaなんだけどちょっと異型。

2015ヴェルシス1000顔

暴走モードで口を開けたエヴァンゲリオンみたいですが、これ単なるデザインというわけではありません。正面の空気を左右に捌きつつラジエーターやエンジン周りといった熱源に積極的に風を当てる為の機能的デザインだったりします。

その他の変更点としては吸気の見直しによるレスポンス向上(2馬力UP)とアイドリング時のジェネレーター出力の増加(12.3A→15.3A)、そしてスリッパークラッチを採用によるバネレートを軽減(クラッチが軽くなる)、パニアケースのアタッチメント刷新とOPの更なる充実、燃費の向上などなど。

カワサキグリーンプロダクト2015

アドベンチャーとして更なる磨きをかけカワサキグリーンプロダクト2015に選ばれました・・・・・が、ここで少し耳の痛い話。

実はこのVERSYS1000は海外(特に欧州)では意見が真っ二つというか賛否両論あります。

その最大の理由が直列4気筒エンジン。アドベンチャーで直列4気筒というのは通常では有り得ない話なんです。

直列4気筒というのは非常に合理的なエンジンなんですが、それは馬力を求められるオンロードでの話であってオフロードではタブー。

その理由は横に4つ気筒を並べるわけなので車幅が増す事や、車重が増えてしまう事からバランスを取らないといけないオフロードでは扱い辛さ悪く走破性に難が出るから。他にも燃費が悪い、低速トルクがない等の問題も出てきます。

KLZ1000Bエンジン

ライバルであるAFRICA TWIN(HONDA)やSuper Ténéré(YAMAHA)が並列二気筒な事やV-STROM1000(SUZUKI)がVツインなのはそういう理由からなんですが、VERSYS1000の場合は更にホイールも前後17インチという完全にオンロードバイクな形。

その為アドベンチャー文化やダートが身近な欧州を中心とした国では

「何も分かってないビッグアドベンチャー」

と一部で言われていたりするわけです。これはNinja650やVersys650といった大好評&大成功を収めた並列二気筒のバイクがあったにも関わらずという背景も影響していると思います。

じゃあどうしてカワサキがこんなにズレたアドベンチャーを出したのかというと、恐らくアドベンチャーのイメージがカワサキには無いからかと。

アドベンチャーの最高峰といえば何と言ってもパリダカですが、砂漠の女王NXR(HONDA)、地球を制した記号 Ténéré(YAMAHA)、ファラオの怪鳥DRZ(SUZUKI)、といったワークスで挑んでいた歴史がカワサキには無い。

KLR750tengai

一応1987年にKLR650 tengaiというラリー(ベース)マシンも発売しましたが結局ワークス参戦はせず。つまりカワサキはアドベンチャーで必須とも言えるパリダカ要素を持っていないんです。

じゃあ今のカワサキが持っている最高のアピール要素は何だろうとなると・・・やっぱりSBK。

カワサキSBK

2013/15/16年そしてこのままいけば17年もワールドチャンピオンに輝きそうなほどの強さを誇っているスーパーバイク世界選手権。

VERSYS1000の公式ページでもカワサキはアドベンチャーとはほとんど言っておらず、”レース(パリダカではなくSBK)で培った技術”や”ZX-10Rと同様の技術”といったまるでスーパースポーツかのような謳い文句を並べています。

要するに”敢えて王道からハズした”わけですが、重要なのは何度も言っているけどオンとオフの性能や楽しさはどうやったって両立しない事。だからどちらに比重を置くかが要になってくるんだけど、VERSYS1000の場合はいま説明してきたようにほぼオンロード走行での性能とファンライドに振っている。比率で言えば9:1以上と言っていいくらいオン寄りでオフは本当にオマケ程度。

ヴェルシス1000usa

そのせいで一部から「分かってないアドベンチャー」とか言われたりもするんだけどそれはあくまでも海の向こうでの話。ここは道路舗装が隅々まで行き届いている日本です。

ツーリングに出て気持ちよく走れるワインディングロードと、未舗装路の割合ってどれくらいでしょう。

恐らく舗装路がほぼ大半で、未舗装路といってもせいぜいフラットダート(慣らされた未舗装路)くらいではないかと思います。単純な数値で言うと日本は簡易舗装を含めると約97%が舗装路です。

そう考えるとスーパースポーツ技術を注ぎ込む事でオフロードでの走破性よりもオンロードでの性能やファンライドを取ったVERSYS1000という”分かってないビッグアドベンチャー”は

2016ヴェルシス1000

「日本のことをよく分かっているビッグアドベンチャー」

とも言えるのかと・・・それを狙ったのかどうかは分からないけどね。

カワサキの事だし

「ビッグアドベンチャーでも最速」

という単純明快な理由かもしれない。

【関連車種】

Africa Twinの系譜SUPER TÉNÉRÉの系譜V-STROM1000の系譜R1200GSの系譜

主要諸元
全長/幅/高 2240/895/1400~1465mm
シート高 840mm
車軸距離 1520mm
車体重量 249kg(装)
燃料消費率
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1043cc
最高出力 120ps/9000rpm
最高トルク 10.4kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時3.2L
フィルター交換時3.8L
スプロケ 前15|後43
チェーン サイズ525|リンク116
車体価格 1,350,000円(税込)
系譜図
初代2010年
VERSYS1000
(KLZ1000A)
二代目2015年
VERSYS1000
(KLZ1000B)

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