「アーバンストリート」
スズキから発売されたGSX250R/DN11A型。
最初に見た時はGSR250にSSルックなカウルを被せただけかと思ったけど、結構色々と変更されたようで。
・有機的なカウル
・ヘッドライト(ポジションとテールはLED)
・セパレートハンドルとシート
などを見ても分かる通りGSXシリーズの流れを汲んでいて中々スポーティに仕上がっています。
ポジションもGSRに比べると結構前傾気味な。
まあこれはFがかなりアップライトなのもあるので程よい感じ。
メーターもかなり頑張っており
・ギアポジ
・シフトインジケーター
・オイルチェンジ
・燃費計
・時計
といったかなり多機能なフルデジタルメーター。
足回りも専用フロントフォークに7段階調整式リヤサスにペタルディスク。そして航続距離500kmを可能とした15Lのガソリンタンク。
更にマフラーを一本出し化してセンタースタンドも取っ払ったおかげでGSR250F比で-11kgという大減量。
それなのに車体価格はFに+1万円ちょっととかなり抑えてる。
正直GSR250F買った人が少し気の毒にもなる。まあ快適性や長距離などのツアラー性能はアッチのほうが上だけどね。
カタログ的な事はこれくらいでいいでしょうか・・・というのも個人的に掘り下げたい所があります。
それはエンジンというかエンジンスペック。
GSX250RはGSR250のエンジンベースとはいえ手が加えられています。
ローラーロッカーアームにシリンダーやピストンリングの見直しでGSR250が24馬力なのに対しGSX250Rは・・・なんと24馬力。
というのもこれらの変更はフリクションロス軽減による燃費改善が狙いの改良で馬力を上げるためじゃないから。
ただそのことから
「何も変わってないじゃん」
とか
「全然スポーツじゃなくてガッカリ」
という声が多く聞こえてきて、コレは書かねばと思ったわけです。
確かに自分の中で欲しいバイク像が定まっていてGSX250Rはストライクゾーンから外れているというのは分かります。
でもそうじゃない人、例えばこのGSX250Rのメインターゲットであるバイクデビューを考えてるエントリー層や、まだ右も左もよく分からないビギナー層ならこれを機に少しだけ学んで欲しいことがあります・・・それは
「必ずしも馬力が高い方が速いとは限らない」
ということです。
なるべく噛み砕いて説明したいと思います。
GSR250もそうですがGSX250Rはロングストロークエンジンで低速トルク、下を太らせたバイクです。
トルクって耳にした事くらいはあると思います。
「トルクがある」
とか
「下がスカスカ」
とかよく言われますよね。このサイトでも言ってます。
凄くザックリ言うと本領発揮する回転数を上に持っていけば持っていくほど馬力は上がり、逆に下に持っていくほど馬力が下がるのがエンジンの宿命です。
そして争点はここ。
「どうしてGSX250Rは上に持っていかなかったのか」
ということなんですが、上(高回転)にピークを持っていくと下(低回転)が犠牲になってしまうんです。もちろん反対に下にピークを持っていくと上が犠牲(回らない)になります。
これは(燃焼室の)ボアストローク比というものが大きく関係していて馬力は回転数で稼ぐのが基本だから。
詳しい事は『ロングストロークとショートストロークの違い|バイク豆知識』をどうぞ
つまりGSX250Rが24馬力しかないのは下を取ったから。
だからGSX250Rは8,000rpm(回転)という低い回転数でピークパワーを発生させます。
その結果どんなバイクになったのかというと8000rpmまではGSX250Rがライバル達よりも速いんです。
「スポーツバイクは馬力!低速トルクなんて要らない!」
という考えも痛いほど分かります・・・ですが少し待ってください。
GSXシリーズの長でありスズキのフラッグシップモデルでもあるGSX-R1000というバイクがあります。
レースを走る為に生まれたようなマシンで怪物的なスペックと速さを持っていますが、怖そうで難しそうな見た目に反して歴代すべて
「乗りやすいSS」
「初心者が一番速く走れるSS」
とか言われたりします。
そう言われる最大の理由は
「SSなのに低速トルクがあるから」
です。
下が全く無い高回転型エンジンというのはコーナーでも最適なギアチェンやブリッピングをして高い回転数をキープする事で初めて速く走れる。でも反対に言うとそれが出来ないというか出来なくて当たり前な普通の人が乗ると美味しい部分を維持出来ないから遅い。
だから回転数が落ちていようがトルクに物を言わせた力技でグイグイ失速することなく走れちゃうGSXが一番速く走れると言われているんです。
GSX250R開発者の福留さんがGSRという24馬力の低速トルク重視エンジンをチューニングする際に上へ押し上げるのではなく更に下を太らせたのもこのため。
スズキのスポーツブランドであるGSXにおける考えとして
「低速トルクこそが速さに繋がる」
という考えがあり、それは250でも変わらないという事を示したバイクでもあるんです。
これは本当に英断だと思います。営業からセールスポイントにならないから馬力を上げろと絶対に言われたハズ。
それでも上ではなく下を取ったのは間違いなく排気量が限られている250においてこれが速く、そして楽しく走れるとスズキは考えたから。
スペックは高く感じないけど250スポーツバイクとしての志は高く感じるのがGSX250Rというバイク。
主要諸元
全長/幅/高 | 2085/740/1110mm |
シート高 | 790mm |
車軸距離 | 1430mm |
車体重量 | 178kg(装) |
燃料消費率 | 32.5km/L ※WMTCモード値 |
燃料容量 | 15.0L |
エンジン | 水冷4サイクルSOHC2気筒 |
総排気量 | 248cc |
最高出力 | 24ps/8000rpm |
最高トルク | 2.2kg-m/6500rpm |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前110/80-17(57H) 後140/70-17(66H) |
バッテリー | YTX9-BS |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
CPR7EA-9 または U22EPR9 |
推奨オイル | スズキ純正 エクスター |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量2.4L 交換時2.2L フィルター交換時2.4L |
スプロケ | 前14|後46 |
チェーン | サイズ520|リンク116 |
車体価格 | 488,000円(税別) |
フロントタイヤが他メーカーよりワンサイズ大きくホイールベースも長いため、重さも手伝って高速道路の安定性は250クラスでは最も高く、400並に疲れないです。
大柄な分ポジションも前に長く、今時のフルカウルにありがちな近すぎ高すぎなハンドルポジションではなく自然で好印象でした。(マイナーチェンジで高くなったっぽい)
アッパーカウルの風切り具合が絶妙で、空力優先のR25とかだと中と外で激しい気流差があり、頭の置き所に悩みましたがこのバイクにはそれはありませんでした。
上りだけはどうしても125並の動力性能になってしまうのが最大の欠点ですが、女の子が乗ったら化けそうです。
トルクバンドは広く2000rpm以上なら平地で6速でも加速できます…が、重さがあるのでシングルのようなパンチはないです。
長距離ツーリングやバイク便目的なら間違いなく太鼓判を押せますね。アンダーパワーな400だと思ってもらえれば。
GSX250Rの「都市に身を潜めるアスリートを彷彿とさせる」という意味不明な謎キャッチコピーがいかにもスズキらしいですね…