馬鹿みたいなタイトルですが真面目な話。
圧倒的にチェーンドライブが多いバイクですが、チェーンドライブ車にとってチェーンというのは人間でいうアキレス腱とよく言われます。
しかし残念ながらドライブチェーンはシールチェーンが生まれ、さらに品質&耐久性が上がった事で切れて外れたりクランクを叩き割るような重大トラブルがほぼ無くなったこともあり、皮肉ながら軽視されがちなパーツ。
チェーンをメンテナンスする理由は汚れを落とし動きを良くする事で
・チェーンの寿命を延ばす
・フリクションロス(摩擦抵抗)を減らす事で燃費が良くなる
などといった理由が主ですね。一部ピカピカじゃないと落ち着かないという一風変わった人も居ますが。
フリクションロスと言うとエンジンの話によく出てくる言葉ですが、バイク場合はチェーンというエンジンを含むパワーユニットの中でも非常に高いフリクションロスが発生する構造を持ってるわけです。
メーカーのエンジニアはそんなフリクションロスを減らす努力を死に物狂いで行っています。何故ならフリクションロスを減らせば燃費も良くなるし、馬力も上がるから・・・そう馬力が上がるんです。
知ってますか、チェーンドライブ車というのはチェーンのコンディション次第で馬力(後軸出力)が最大で10%も変わります。マフラーやエアクリーナーを物色してパワーアップを図る暇があったらチェーン磨くほうが遥かに費用対効果があります。クリーナーとルブ合わせて3000円前後で後軸出力が10%もパワーアップなんてこれ以上のチューンはないですよ。
だからレースなどにおいてチェーンは本当に使い捨ての消耗品で、MotoGPなどのトップクラスのレースになると走行毎に新品が当たり前です。10%も性能差が出るんだから当然ですね。
つまりチェーンはメンテナンスというだけでなくチューニングでもあるわけで
「パワーや燃費が気になったらまずチェーンを磨け」
という事です。チェーンを始めとした駆動系の点検にもなって一石二鳥です。
以下ダラダラ余談。
チェーンメンテの方法はネットで検索すれば幾らでも出てくると思うので割愛させてもらいます。お約束ですが5-56やパーツクリーナーで洗浄しちゃ駄目ですよ。灯油は賛否両論あるので触れません。
もしチェーンメンテの為にメンテナンススタンドを買おうか考えてる人が居たらV字フックタイプにしましょう。
フック付けるボルトが無いタイプはレーシングフック(プレートタイプ)など。
スイングアームの下から支えるだけのスタンダードタイプや、L字で受けるタイプは難易度が高く不安定になるので初心者にはオススメしません。
こういう悲劇を招く可能性がVフックよりも高くなります。
というかスタンド買ったら誰もが一回はすると思います。
海外ではスタンドの種類も豊富なんですけどね。面白いのがバイクタワーっていうやつ。
ゲルマン魂が生み出した新世代のスタンドですが、結構お高いうえに失敗(傾く)ことがあるみたい。それに他の車種に使う場合は別途アタッチメントが必要でコストパフォーマンスはよろしくない。
他にもこういうセンタースタンドのようなメンテナンススタンドもあります。
安くてお手軽だけどこれもあんまり評判良くないみたい。
他にはSNAPJACKっていうお手軽な奴もある。
スイングアームの下に差し込んで蹴り起こす事でリアタイヤを浮かせる方法。わざわざこれだけの為に買うくらいなジャッキでいいですよね。
なんだかんだで普通のメンテナンススタンドが他の用途でも使えますし一番。ショートタイプは上げるのにかなり力がいるのでトランポで使うなどスペース的な問題が無いならロングタイプが無難かと。
サイドスタンドの下に木片がなんか置いて車体を可能な限り水平にすれば比較的安全に上げられます。一番確実なのはスタンドで上げずに手で少しずつ押す事ですが。
スタンドの話はこれくらいにしてメンテナンスについてもう一つ。
「俺はちゃんとチェーンメンテしてるぜフフン!」
って人にも
「面倒くさいから時々しかしない・・・」
って人にも共通するチェーンメンテの間違いがあります。それはチェーンメンテをするタイミング。
大多数の人がチェーンメンテをするタイミングは乗る前だったり乗る前日だったり。勿論それでも効果はあるんですが、もっと効果的なチェーンメンテタイミングがあります。
それは”乗り終わった直後”です。
チェーンはご存知の様に走行するためにグルグルシャラシャラ回っています。当然ながら摩擦(フリクション)があるので熱くなります。これがポイント。
その状態でチェーンクリーナーを掛けるとこびり付いている色んな物が混ざった汚れも温まってるので洗浄効果が増すわけです。それだけではありません。
走行後ならルブを挿した後は乗らないですよね?
それもポイントで、シールに掛かったルブを放置する事になるので、ルブがシールに密着する時間を与える事にもなります。
これがもし走行前だったらせっかく付けたルブがグルグル回される事による遠心力でチェーンから引き剥がされてしまう。ルブ塗って走ってホイールやスイングアームがルブまみれって経験ある人は多いと思います。
だから拭くわけですが、クリーナーやルブというのは乾きが遅い物が多いです。だから拭きとったからといってすぐに走りだしたら意味が無いとは言いませんが、せっかくのメンテ効果が薄れてしまいます。
あと誤解している方も居ますが、チェーンルブというのはチェーンを守るためではなく、チェーンを保護しているグリスを密閉しているシールを守る為にあるものです。
チェーンがどうして伸びるのかと言うと3番『ピン』という青い部分に被さる様に入っている4番『ブシュ』という部分が回ることで互いが擦れて摩耗し痩せてしまうから。
それを少しでも防ぐためにこの3番と4番の間にはグリスが封入させておりシールで密閉しているというわけ。
だからよくチェーンは伸びると言われるけど、正確に言うと痩せるとか細るとかが正しい。
ピンが細く削れる事で遊びが生まれチェーンの全長が長くなる・・・どうでもいいか。
話を戻すと、つまりどれだけルブを大量に掛けてもシールの中(3番と4番の中)には入って行きません。入る様な隙間を開けていたら中のグリスが抜け出るから。
だからグリスというのはその密閉しているシールを守る為にかけるんです。だからシールの表面に定着させる時間が必要なわけですね。ただ錆止めとローラーの固着を抑える為にもローラーへの給油も忘れずに。
「チェーンメンテをするなら走行後」
です。ヘロヘロでチェーンメンテどころじゃないかもしれませんが、それが大事。
さらに余談
この記事書いた後にDIDさんが同じ内容を既に載せてる事に気づきました・・・何たるミス。ですがせっかく書いたので載せておきます。
ちなみにDIDさんによるとメンテは500km毎&雨天走行後が推奨だそうです。
そんな頻繁にしたくない、メンテ面倒くさいって人はヤマルーブとかから出てるドライタイプのルブがオススメです。掛けたことを後悔する程の強固な粘着性を持ってます。※オフ走行には適しません。
あと最後になりますがスタンドなどで上げてチェーンメンテをするときは
”絶対に進行方向とは反対に回すこと”
です。
これホント大事です。チェーンメンテって比較的容易に出来る反面、スプロケに指を挟んで大怪我をする恐れがあるメンテナンスの中でもかなり危険な方です。
手で回す程度の速さでも挟まれたら指を持って行かれますからコレだけは本当に注意してください。特にチェーンメンテに慣れてる人。慣れは天敵、手順はチャーンと守りましょう。
チェーンメンテはチューン、でもチャーンと手順通りにね・・・なんちゃって。はいスイマセン。
チェーンメンテ時(ルブ吹きかけ&拭き取り)では、進行方向とは反対側に回す…..ホントに重要です。
ツーリングから帰ってすぐにチェーンメンテするのですが、ある時少々ボーッとしながら拭き取りしていて、何を思っていたのか進行方向に後輪を回してウエスで拭き取りしたら、左手の小指の先の爪部分がチェーンとスプロケットに軽~く挟まって爪に穴が空きそうになりました。
軽~く挟まったので血マメ程度ですみましたが、下手をすると指先をブッチ切る惨事になっていた所でした。スゲー痛かったです。
良くエンジンをかけて1速に入れて回しながらメンテを…なんて事を聞きますが、とんでもない事だと思います。
エンジンの駆動力、ましてや1速のトルクは人力では止められません。最低でも指先を失う事になりますので絶っっっっっ対にやらないで下さい!!
チェーン側は大抵シフトペダルが付いているので(トライアンフ等は除く)、後輪ブレーキもかけられません。ただただ指がちぎれて行く様を激痛の中見届けるだけです。
指だけで済めばまだマシな方ですが、更に腕ごと持って行かれてバイクが転倒し下敷きになって頭部や上半身を火傷したり、大型バイクだと数百キロの車体に圧迫されて骨折、死亡…..なんて事も。
好きなバイクで怪我をするなんて馬鹿げています。
お互いにくれぐれも気を付けましょう。