
「ニューテイスト・オブ・ジェネシス」
サイドエアインテークの形からヤマハの名車Vmaxを彷彿とさせるものの、何かが違うネイキッドのようでクルーザーのようでもあるFZX750。
と言うのも似ているのは当たり前で、一年先に海外向けに作られ好評だったVmax(VMX12)の弟分、そして国内上限の750ccに合わせて作られたVmax750みたいなバイクだからです。ちゃんとUSヤマハの意見も取り入れて作られています。
ちなみにナナハンですが海外でも発売されていました。

海外モデルは国民性の違いか日本と違ってかなりハイカラ。上の写真は欧州仕様で、旅好き欧州人に欠かせないグラブバーを装備しています。
向こうの人って当たり前のように過積載をするからグラブバーは必須なうえにシートフレームのアルミ化に対しては結構否定的だったりします。それはアルミだとポキっと逝って修正できないから。日本では喜ばれるのにね。お国柄って面白い。
ちなみにFZX750はダブルクレードルのメインフレーム共々堅牢なスチール。専用設計でシート高も750mmと抑えられています。

そのフレームに搭載されているエンジンはFZ750で登場した大きく前傾しているのが特徴の初代ジェネシスエンジン。勿論そのままではなくカムを変更し中低速寄りにリセッティング。
・・・が、ご存知の通り非常に不人気でした。

「Vmaxに見えないから」
です。そもそもなんで直四でしかも低速よりに77馬力まで落とした物を載せたのかって話ですが、これヤマハの配慮なんですよ。
Vmaxは海外向けで逆輸入というまだメジャーではない方法でしか買うことができなかったので値段も100万円ほどでした。

それに対してFZX750はFZ750のエンジンを流用する事でコストを抑え75万円と当時の大型バイク(ナナハン)の平均的価格に抑えた。この頃のナナハンは80万円が一定のリミットライン。VmaxのV4はそのままにスケールダウンなんてしてたらそんな値段では無理な話。
そしてもう一つ、それは日本人の大型バイクの用途。

日本のライダーが大型バイクで何をしているのかメーカーは昔からちゃんとリサーチしています。そしてその統計を見ると今も昔も半数以上がツーリング。残りも軽いワインディングと街乗りが占める。
そうなった時にVmaxはタンク容量が15Lしかなく燃費も10km/Lちょっとで航続距離がかなり短い。しかも燃料油キャップはシートの下だから荷物も多く積めない。オマケに145馬力のモンスタードラッガーなのにフレーム剛性が弱くて安定性に難がある。
要するにVmaxというのはそれらが最も苦手な部類のバイクで日本の大型ユーザーには非常にアンマッチだった。そこで日本のライダーの用途にマッチする柔軟性を持たせたのがFZX750というわけ。

1990年にはミッションが五速にされた後期モデルの3XFにモデルチェンジし更に使い勝手が向上しています。
FZX750の人気が出なかったかといえば兄貴分であるVmaxがナナハン解禁前からバブルの波に乗って逆輸入され始めていた点から
「Vmaxの偽物or廉価版」
という捉えられ方をされてしまった事が大きいかと思います。
そう捉えられてしまったのは見た目が違った事もありますが、ユーザーへの配慮としてカタログスペックよりも使い勝手を取ったから。

結局そのまま鳴かず飛ばずで1993年に生産終了したわけですが、実はFZX750は1998年に再販を遂げています。
それは同じく再販を遂げた名立たる名車にありがちな”再販を望む声が多かったから”ではありません。再販される事となった最大の理由は教習車の存在。
一般ライダーには悪く捉えられてしまった柔軟性でしたが、一方で良く捉えられたのが教習所。
扱いやすさや癖の無さが高く評価され、教習車としてロングセラーを記録していたわけです。

これが大型の教習車だった人も多いのではないでしょうか。もしそうならこのバイクの懐の広さも実感されているはず。
ヤマハも大型バイクユーザーの為に作ったFZX750を受け入れて欲しくてもう一度賭けました・・・しかし残念ながら十年目の正直も実らず。
教習車としての評価が高かった一方、市場の評価が悪かったのは、ヤマハがツーリング用途がメインである大型バイクユーザーを理解しているようで理解していなかったからでしょう。

「あなたに合わせたVmaxですよ」
この親切心が大型バイクユーザーにとって大きなお世話だったという事です。
主要諸元
全長/幅/高 | 2230/785/1110mm |
シート高 | 750mm |
車軸距離 | 1530mm |
車体重量 | 203kg(乾) [208kg(乾)] |
燃料消費率 | – |
燃料容量 | 13.0L |
エンジン | 水冷4サイクルDOHC四気筒 |
総排気量 | 749cc |
最高出力 | 77ps/8500rpm [74ps/9000rpm] |
最高トルク | 7.1kg-m/6000rpm [6.4kg-m/6000rpm] |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前110/90-16(59H) 後140/90-15(70H) |
バッテリー | YB14L |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
DPR8EA-9 |
推奨オイル | SAE 10W/30~20W/40 |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量3.5L 交換時2.7L フィルター交換時3.0L |
スプロケ | 前17|後39 [前17|後43] |
チェーン | サイズ530|リンク108 |
車体価格 | 745,000円(税別) ※[]内は90年以降モデル(3XF) |
FZXは限定解除の試験車として乗りましたが、1速のスロットル開け始めのスナッチが大きくピッチングがギクシャク。そして固くストロークの少ないリアサスは波状路で跳ねる。
他の試験車のGSX750E4(ギヤポジで何速か分かりやすくフルフローターのリアサスは波状路で跳ねにくい)やVFR750K{所謂24K}(新車だったのでクセもなくV4はデッドスローが効く)が人気で自分もVFR乗った途端7回目で合格。
FZXに当たったら「今日は落ちたな、ご愁傷様。」と言われる始末でした。
後に公道で乗る機会がありましたが、街乗り・ツーリング・ワインディングと中々の万能性でタンク容量がやや小さい以外は良いバイクでした。
結論 FZXは教習・試験でなく合格してから公道で乗ろう。
FZX750は中低速のトルクの出方が、他の750のスポーツバイクよりひょいと出ます。その特性が初心者では大変だったかもです。
スタートダッシュ上等!みたいな味付けにしているせいだと思います。実際、スタートは結構楽しめるマシンで、V-MAXのよれるフレームよりはこっちの方が楽でしたね。
エンジンは結構上も回りましたから、風圧以外は高速道路でも楽でした。5バルブは伊達ではないです。
シートも低く乗りやすい。マイナス点はタンクの容量が少なくて、ロングツーリングで気になりますね。
左ハンドルグリップ下に、電子式のタンク切り替えスイッチがあり、ガス欠気味になったら、走りながら切り替えられて、停止せずにできるから重宝してました。
初期モデルは海外仕様(94ps)しやすかったですよ。結構飛ばせることもできるし、らくちんで低い車格でいいモデルでした。
出来れば、欲しいバイクです。日本人の特有か飽きっぽいのか?生産を、辞めてしましたのは、ちょっと残念です。
オートバイ店に、聞くも、あんなバイクはもう有りませんよ。
不評ですね、 扱い安いのにね。予備のタンク3リッター缶持って行けばいいだけの事。
残念です。
昔のハンターカブの携帯缶を付けて、走ればいいと思います。
このバイク以外で教習試験を受ける予定が、当日に変更してこのバイクで、試験を受けた。1本橋で下が解り憎い。落車しずに渡って合格。
教習は、この車種が多かった事で、好印象。とにかく乗り安い。
大雨の府中自動車試験場。
限定解除試験で使われていたのがFZX750でした。
もちろん初回の試験で、FZXに乗るのも初めての
ことでしたが、思わぬ乗り易さに大雨のことも忘れて
スイスイとコースを完走。結果は一発合格でした。
あれ以来、FZXに乗る機会はありませんでしたが、
想い出に残る一台でした。
私も当時の府中試験場、確か年末の快晴の日に2回目のチャレンジで無事受かる事ができました。2週間位前の一発目はスタートから右折、その先すぐに左に回って一本橋の手前でエンスト転倒で終了です。受かってからGPZ750R(ニンジャのナナハン版)を購入して分かったのですが、FZXの低速のツキの良さと重心の低さはとても良く、友人のFZ750を乗せてもらいましたが同じジェネシスでもよりも低速よりの設定がされていて好感が持てました。不人気故に今でも低価格のものを見つけると欲しくなってきます。