
「等身大のオールラウンダー」
タンクにKAWASAKIと入っていなかったらホンダと見間違えてしまいそうなほど小綺麗に纏まっているZR-7。

でもエンジンを見てもらえると分かる通りZEPHYR750にも積まれている空冷DOHC直四エンジンなのでザッパーの系譜・・・って、Zならまだしもザッパーの系譜って言っても今の人は分からないでしょうから少し説明しましょう。
ザッパーというのは1976年に出たZ650フォアの事です。

これは誰もが知る750RS(Z2)の三年後に新しく作られたライトウェイトスポーツがコンセプトのZでZ2とは全く異なるバイク。スポーツ性の高さからZ2ほどではないにしろ人気が出ました。
そしてこのZ650で製作された新しいエンジンはその後スケールアップされZ750FX2に積まれ、その後もZ750系のエンジンとしてゼファー750まで続きます。

だからZ2マニアに言わせればZ2系は
750RS
↓
Z750FOUR
↓
Z750FX1
までっていう考えが多かったり・・・ってそんな話はどうでもいいですね。
要するに晩年のZ系を支えたのがこのザッパー系で、その最終型と言えるのがZR-7なんですが知名度の無さから言っても誰も覚えてませんし、誰もZだとは思わないでしょう。

その理由はエアロフォルムであることとモノサス(ユニトラックサス)だからかと。
ちなみにテールカウルはユメタマでお馴染みZX-9Rの物を流用してます。

ZとNINJAのコラボは水冷Zになる前の段階であったんですね。
他にもキャスター角を立ててハンドリングをクイックにし、マフラーも4-2-1から4-1に変更。

スロットルバルブもアクセルレスポンスをスムーズにさせるための遅角装置K-TRICを装備などなどの変更も加わっています。
つまりZR-7はザッパーエンジンの数を出すために
「何か新しいザッパー系を」
と考え、足回りを強化したスポーツ志向のゼファー750という立ち位置でZR-7を造った。
そして見事に失敗した・・・と、思うでしょう。でも実際は違います。

実はゼファーというのは日本国内では絶大な人気がある一方、海外ではZの神通力はそれほど通用しない。
そこで登場するのがZR-7というわけ。つまりZR-7は足回りを強化したゼファー750というよりも海外向けゼファー、言ってしまえばグローバル版ザッパーなんです。
日本ではゼファー750の影に隠れてしまったのでハーフカウルの付いたZR-7S(ZR750H)が出ようと誰も興味を持ちませんでしたよね。ココらへんに日欧のバイク文化の違いが面白いほど鮮明に出ています。

日本で人気が出なかった理由は上でも言ってますがザックリ纏めると
「所有欲が満たされないから」
でしょう。ブランドも性能も無いに等しい大型バイクですから。
ちなみにアメリカも似たようなもので某レビューサイトでも
「20年前のバイクかと思ったぜHAHAHA!」
とか酷い言われよう。
しかしコレが欧州だと評価が変わってくるわけです。

欧州ではこのミドルクラスが非常に人気があります。
これは保険料なども関係あるのですが、向こうの人達にとってバイクは日米と同じく嗜好品である以上に『生活の道具』でもあるからです。
向こうのバイク乗りというのは日本のようにレジャー一辺倒ではなく日常の足や休日のレジャーまで広く認知され広く使われる。
だからミドルクラスは何かと都合が良いベストマッチなクラスで非常に人気があるわけですが、それは同時に非常にシビアな目で見られる事でもある。
そういった文化圏の人間として、車と同じように日用品としてシビアな目でZR-7を見てみたらどうでしょうか。

・成熟どころか枯れきってる空冷エンジン
・22Lも入るガソリンタンク
・走りのユニトラックサス
・使い勝手を考えたオーガニックスタイルスイッチ
・タンデムや積載にありがたいグラブバー
・66.5万円というコスパにカワサキらしからぬ素行の良さ
見事なまでに日用品としての要点を抑えたオールマイティに使える等身大のオールラウンダーに見えるのではないでしょうか。

実際にコストパフォーマンスに優れるバイクとしてドイツだけでも約12000台と日本では考えられないほどの販売台数を記録しました。
全く同じバイクでも国によってここまで評価が別れるなんて面白いですよね。
日欧の違いはZR-7を
「日用品として見るか、嗜好品としてみるか」
の違いだけ。

でもよく考えてみてください。
そもそもザッパーというのは『大型バイクらしさ』ではなく『ZAP!ZAP!』と軽快に風を切って走るというのが元々のコンセプト。
そう考えるとこのZR-7というのはまさにザッパーらしさ溢れるバイクと言えますよね・・・もう今さら言っても後の祭りですが。
ただ悲しかなこのZR-7は国内でも別の形で今も重宝され人気です。
「いやいや人気なかったでしょ」
と思いますが大事なのは『別の形で』という事。
何度も言いますがZR-7はザッパー系の最後でヘッドやカムチェーンやクラッチやスターターなどZ特有の持病とも言うべき各部が見直されている・・・。

もうお分かりと思います。
別の形というのはこれまで発売されてきたザッパー系から『延命&対策部品』として非常に重宝され人気なんです。このモデルに救われたザッパー系は多いでしょう。
バイクとしての需要は無いけど部品としての需要はあるバイク・・・いくら何でも不憫過ぎる。
主要諸元
全長/幅/高 | 2105/780/1075mm [2105/785/1215mm] |
シート高 | 800mm |
車軸距離 | 1450mm |
車体重量 | 203kg(乾) [209kg(乾)] |
燃料消費率 | 35.0km/L ※定地走行テスト値 |
燃料容量 | 22.0L |
エンジン | 空冷4サイクルDOHC4気筒 |
総排気量 | 738cc |
最高出力 | 67ps/9000rpm |
最高トルク | 5.8kg-m/7500rpm |
変速機 | 常時噛合式5速リターン |
タイヤサイズ | 前120/70ZR17(58W) 後160/60ZR17(69W) |
バッテリー | YTX12-BS |
プラグ | DR9EA または X27ESR-U |
推奨オイル | カワサキ純正オイルR4/S4/T4 または MA適合品SAE10W-40 |
オイル容量 | 全容量3.6L 交換時3.0L フィルター交換時3.5L |
スプロケ | 前16|後36 |
チェーン | サイズ525|リンク106 |
車体価格 | 665,000円(税別) [675000円(税別)] ※[]内はZR-7S(ZR750H) |
ヒドい(笑)。
モデルそのものに魅力を感じるんじゃ無くドナー用とは。
でも、世代を超えて部品を使い回せる設計とはさすがカワサキ。これが本当の熟成なんでしょうか。
・・・開発者も「互換性があるようにすれば使えんじゃね?」って思って設計してたりして。