「進路は、自分で決める。」
スズキの4stオフ車の中でも有名な方というか人気があった1992年からのDJEBEL250/SJ44A型。
最初にDJEBELという名前の意味を説明すると、これはアラビア語で”山”を指す言葉。
一時期ネタで言われていましたがドジェベルではなく”ジェベル”です。
※ネイティブ的にはジャベル
そんなジェベルですが、こはDR250Sというモデルがベースにあります。
4st/250ccオフでスズキらしく一次バランサー付きの油冷OHC単気筒でメインフレームをオイルタンクにしたドライサンプもので、飛躍的な性能向上を果たしたモデル。
これはアル・ベイカーというMUGEN取扱&スーパークロスディレクターのアメリカ人(全米モトクロス界のレジェンド)とスタッフを引き抜いて開発に関わらせた事が要因だったりします。
ちなみにこのDR250Sはそんなアルベイカーさんの遺作でもあります。というのも残念な事にアルベイカーさんはDR250Sの発売前に飛行機事故に見舞われ亡くなられてしまったからです。
意外なバックボーンだと思うんですが、話を戻すとそんなDR250Sをベースに
・正立フロントフォーク
・ガード付き丸目ヘッドライト
・ハンドガード
・フラット形リアキャリア
・ギア比をロングに
・キャスター角を27°から28°に
などなど少し落ち着きを持たせる変更を加える事でツーリング等にも使えるようし、併売という形で登場させたのがDJEBEL250/SJ44A型というわけ。
このDR250S/DJEBEL250(SJ44A型)といえばチラチラ見えている変な形をしたスイングアームが特徴的なんですが、これはボルトと接着剤で2つのパーツを結合してるから。
強度と重量のバランスを考え鋳造のボディと鍛造のアームに分けて製造されているんです。決して飾りではありません。
しかし・・・恐らく多くの人はそれよりも
「DJEBEL250ってこんな形だったっけ」
と思われているんじゃないかと思います。
皆が思うDJEBEL250は4年後の1996年に登場した次のモデルからになります。
『DJEBEL250XC/SJ45A』
先に紹介したDJEBEL250の元となっているDR250Sがクラストップのスペックを誇るDR250Rへとモデルチェンジした事で、それに引っ張られる形で新しくなったジェベル。
だから同じDJEBEL250といえど実はかなり別バイクというか、変更点も相まって性格は大きく違います。
それを象徴するのが車名末尾に新たに付けられた
『XC(クロスカントリー)』
という記号で、これが非常に評価されたから根強い人気を獲得する事に成功。力を入れている割に今ひとつパッとしなかったスズキオフにおいて2008年まで発売され続けるというロングセラー車となりました。
じゃあ具体的にDJEBEL250XCの何が評価されたのかというのをザックリご紹介。
【1.驚異の17Lガソリンタンク】
そこら辺のオンロードモデルを鼻で笑える驚異的な大容量ガソリンタンクを装備。
航続距離はカタログ読みで驚異の799km。もちろんスムーズな体重移動とニーグリップも考慮し、シート側は大きく絞られた形。
そしてそのシートも三角木馬(写真左)で定評があるスズキとは思えぬ柔らかさとフラットさで乗り心地もクラスにしては上々なものだった。
【2.もはやオーパーツ多機能デジタルメーター】
一見するとただのデジタルメーターかと思いきや
・スピードメーター
・オドメーター
・時計
・トリップメーター
・ストップウォッチ
・減算タイマー機能
と、本来ならばこれはGSX-Rに付けるべきではないかと思うほど多機能なものを装備。
更にXCから2年後となる1998年には二輪史上初となるGPSを搭載したDJEBEL250GPSver.まで発売。
従来の多機能デジタルメーターの上に目的地までの方角(道順ではなく方角)とおおよその距離を示すGPSディスプレイを搭載。
「逆に迷う」
「山に入ると見失う」
などなど大きな反響をよびました。
【3.大きすぎて特注になった200mmヘッドライト】
丸目ヘッドライト好きすら閉口してしまうほどの大きさを持ったアルミガード付きヘッドライトを装備。
バッテリーを吸い尽くすほどの大発光面積&大光量により暗いのが当たり前というオフロードの常識を払拭。
「これだけ大きいとハンドリングに悪影響が・・・」
と思いきや大きすぎて特注になってしまった超薄型樹脂レンズによりギリギリまで軽量化、更にハンドルにベタ付けするほど近づける事で操舵慣性モーメント(ハンドリングが鈍くなる)問題も解消。
【4.トコトコ系と思いきやビュンビュン系】
ハード系であるDR250R譲りな事からも分かる通り、走行風に完全依存する空冷ほど熱にシビアではなく、水路と水が必要な水冷ほど重くならない油冷DOHCエンジンのおかげで31ps/8500rpmというパワフルさに加え、これだけのクロカン装備を兼ね備えて置きながら乾燥重量でわずか119kg。
足回りもカートリッジ式フロントフォークとリンク式リザーブタンク付きリアサスというオーバークオリティなものを備えていたので走りも良好。
などなど少しおふざけが入りましたが、要するにクロスカントリーらしく長距離走にも耐えられるようになっているのはもちろん、単純なポテンシャルも高かった事からストップアンドゴーの街乗りなどの短距離走もイケる性能も持っていたからDJEBEL250XCは人気になったという話。
DJEBEL250XCがこれほどまでの完成度を誇っていたのはDR250Rという優秀なベースがあった面も当然あるんですが、こういうタイプのモデルはDJEBEL250が最初じゃないからという面もあります。
ブームと言えるほどではないものの90年代に入ってオフロード人気が再燃し始めたんですが、
「走破性を上げてナンボ」
という80年代初期のオフロードブームとは傾向が違い
「マルチに便利な乗り物として」
という傾向が生まれ強くなっていた。
分かりやすいのがセルモーター付きが当たり前になった事なんですが、その延長線上で
「苦手な長距離や夜間も走れるオフロード車」
としてビッグタンクや強化ヘッドライトなどラリーレイド感を出した派生モデルみたいなものが各社から出ていた。
DJEBEL250XCはそんなジャンルに向けて出されたどちらかというと後追いに近いモデル。でもだからこそここまでのモデルが造れたんだろうなとも思うわけです。
タンク、ヘッドライト、メーター、スペック、いま紹介してきたように様々な要素でクラストップや最大という言葉が並ぶ事が何よりの証拠で
「これくらいでいいだろう」
という要素が見て取れないどころか、やり過ぎのようにも感じるクロカン要素の最大化がオフロードの懸念点を分かりやすく払拭する形となった。
DJEBEL250XCが多くの人に認められた魅力というのはそういう
『加減を知らない安心感』
だったんじゃないかと。
だからこそクラスとして2008年の最後まで唯一生き残ったモデルとなったし、復活を希望する声は今も聞こえてくる。
特に近年のキャンプブームを見るたびこのバイクを思い出す人は少なくないんじゃないかと思います。星空を探しに行くのに最高のバイクでしたからね。
主要諸元
全長/幅/高 | 2230/885/1250mm [2230/890/1220mm] (2205/890/1180mm) |
シート高 | 880mm <[885mm]> (845mm) |
車軸距離 | 1445mm [1450mm] (1435mm) |
車体重量 | 116kg(乾) [118kg(乾)] <119kg(乾)> |
燃料消費率 | 50.0km/L <[47.0km/L]> ※定地走行燃費 |
燃料容量 | 9.0L <[17.0L]> |
エンジン | 油冷4サイクルOHC単気筒 <[油冷4サイクルDOHC単気筒]> |
総排気量 | 249cc |
最高出力 | 29ps/8500rpm <[31ps/8500rpm]> |
最高トルク | 2.5kg-m/7000rpm <[2.8kg-m/7000rpm]> |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前80/10-21 後110/90-18 <[前3.00-21-51P 後4.60-18-63P]> |
バッテリー | YTX7L-BS <[YTX5L-BS]> |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
DPR9EA-9 <[CR9E]> |
推奨オイル | スズキ純正 エクスター |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量2.3L 交換時1.7L フィルター交換時1.9L <[全容量1.6L 交換時1.1L フィルター交換時1.3L]> |
スプロケ | 前14|後42 |
チェーン | サイズ520|リンク108 |
車体価格 | 439,000円(税別) [499,000円(税別)] <539,000円(税別)> ※[]内はXC ※()内は低車高仕様 ※<>内はGPS |