「PICKUP SCOOTER」
ブームというのものが訪れるとユーザーのみならずメーカーも躍起になり、結果として一風変わったモデルが誕生するのが世の常。それは2000年頃から訪れたビッグスクーターブームも例外ではありませんでした。
ビッグスクーターが利便性を備えつつ
「如何に街に溶け込むスタイリッシュなエアロフォルムを作れるか」
を競っていた2004年に突如として登場したPS250/MF09型。初代FORZAのパワーユニットから派生モデル。
「ラフ・タフ・ブコツ」
というブームに乗っているのか逆らっているのかよく分からないコンセプトのビッグスクーター。
剥き出しな黄色いフレームに21世紀にもなって角目。スタイリッシュのスの字も、エアロフォルムのエの字もなく街に全く溶け込まないデザイン。
重機メーカーCATのラインナップに並んでいても全く違和感がない無骨さでした。
もちろん何の脈絡も無くこんなCATみたいなバイクを出したわけではありません。これには元ネタがあります。
ホンダが1982年に出したレジャーバイクの一つであるモトラ。これのリボーンなわけです。
モトコンポとは二卵性双生児の様な関係(デザイナーはどちらも小泉さん)で、何にでも積める原付というコンセプトだったモトコンポに対し、モトラは何でも積めるヘビーデューティ原付。
『モト+トラック』でモトラ。
モトコンポに負けず劣らず・・・とまではいきませんが、当時の不人気っぷりが嘘のように今では人気でプレミアが付いてるレジャーバイク。
ってモトラの紹介になってますね。
要するに250となって帰ってきたのがPS250というわけですが、これがまあビックリするほど不人気だった。
「さすがに21世紀にもなって角目はないだろ」
という意見が多かったのか、わずか一年半で丸目二眼へマイナーチェンジ。
スカチューン風で若者を中心に人気だったズーマーにあやかる形になり
「ズーマーの親玉」
とか言われるようになりました。
しかしそれでも持ち直す事は出来ず2007年をもって生産終了というブームカテゴリにあるまじき短命さに終わってしまった。
これは無理もない話で、そもそもビッグスクーターブームというのは
『バイク界のセダン』
という立ち位置がウケて人気になったわけです。
そんな中で、泥が似合いそうでメットインすら備えていないビッグスクーターが人気出るワケがない。
もちろんメットインを設けなかったのには理由があります。
PS250はとにかく積載にリソースを全部注いでいるんです。
だからすぐシートが閉まらなくなるメットインなんて軟派なものは設けず、本当に荷物を積むため低床にしてキャリアデッキを設けた。
更にフロントにもキャリアスペースを設け、車体右側後部にはラゲッジスペースまである。
濡れたら困るというなら箱を、それも前後に付ける事も出来た。
「良いバイクじゃん、不人気だったなんて信じられない」
と思うでしょう・・・実はPS250は今では大人気なんです。
生産終了となった直後から
「こんなバイク他にない」
として人気が急上昇。
さらにここ最近のアウトドアブームで価格が青天井状態になっています。
あれだけ世間を賑わせた同世代のビッグスクーターが今では二束三文なのに対し、PS250だけは状態の良いものは80万円とプレミア価格になっている。
『ブームが終わってブームが来る』
というコンセプトだけでなく歴史までモトラを再現する事となってしまいました。
主要諸元
全長/幅/高 | 2085/795/1090mm |
シート高 | 725mm |
車軸距離 | 1455mm |
車体重量 | 171kg(装) |
燃料消費率 | 37.2km/L ※定置走行テスト値 |
燃料容量 | 12L |
エンジン | 水冷4サイクルOHC二気筒 |
総排気量 | 249cc |
最高出力 | 19ps/7000rpm |
最高トルク | 2.1kg-m/5500rpm |
変速機 | Vマチック |
タイヤサイズ | 前110/90-12(64L) 後130/70-12(56L) |
バッテリー | FTZ12S |
プラグ | DPR6EA9/DPR7EA9(標準)/DPR9EA9 X20EPR-U9/X22EPR-U9(標準)/X24EPR-U9 |
推奨オイル | ウルトラG1(10W-30) |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量1.3L 交換時1.1L |
Vベルト | 23100-KTB-003 |
車体価格 | 479,000円(税別) |
音速の速さで時代を駆け抜けたバイクは、通り過ぎてから(ソニック)ブームが来る・・・。
なんつって。上手いなオレ。
おい山田くん座布団1枚。