その愛嬌は天然か計算か VINO (SA10J~SA54J/AY02) -since 1997-

1997VINO

「うちから5kmの大冒険」

1997年にヤマハが出した60年代アンティーク風、ジャンル的に言うとレトロスクーターといえるビーノ。

宣伝でPUFFYが乗っていたのを覚えている人も多いのではないかと。

1997VINOカタログ写真

一見するとただオシャレなだけに見えますが、こう見えて20Lものトランク容量と6.3馬力を叩き出すJOG譲りの2stエンジンで実用性もかなり高いものを持っていました。

しかし爆発的な人気となった要因はやはりレトロなデザインで、これが多くの女性のハートを射止め大ヒット。ちなみにデザインはGKデザインではなく子会社のエルムデザイン。

ビーノマーシャルゴールド

ただし一応断っておくとビーノはレトロスクーター勢としては決して第一人者ではありません。同ジャンルで唯一のライバルともいえるホンダのジョルノの方が5年も前となる1992年に登場しているんです。

加えて言えるのがビーノが登場した1997年はヤマハの看板スクーターだったJOGがエンジンもろともフルモデルチェンジした年であるということ。

つまり言葉が悪いんですがビーノというモデルは乾坤一擲のモデルというよりは

『余ったプラットフォームを活用する形』

で造られた原付というのが実情・・・だったんですが、それを補って有り余るデザイン性の高さが潜在需要である女性から大いに評価されたわけですね。

宇多田ヒカルVINO

これはヤマハからすると油田を掘り当てた様なもので、この需要を逃すまいと
『宇多田ヒカル監修モデル(写真上)』
『コラボの鬼ことキティモデル(写真下)』
など女性向け限定カラーを相次いで販売しました。

宇多田ヒカルVINO

結果として2stや4stなどまだまだ色んなモデルがいた原付市場において5年間で約23万台、年間で均等に割ると

「10台に1台ビーノが売れる」

という異常事態ともいえる状況に。

一躍大ヒット原付となったもんだから排ガス規制により2stが難しくなった2004年になると、JOGのお下がり原付だったのが嘘のようにJOGを差し置いて真っ先に新型4stエンジンを積んで登場。

2004ビーノ

通称SA26J型と呼ばれるモデルで3バージョン展開。

【ビーノ】
通常のビーノ

【リモコンビーノ】
・アンサーバック機能
・キーシャッターとホイールロック解除
・シートオープン
が可能なリモコン付き

【ビーノデラックス】
・立体メッキエンブレム
・メッキボディ
・レッグシールドモール

リモコンビーノとデラックス

出世頭とは正にこの事かといえるVIP扱いに。

※ビーノは通称型式(メーカーコード)が多いので認定型式(国土交通省コード)で書いています

ただしここからがビーノの真骨頂。可愛いだけじゃないんですこの原付。

重ねて言いますが人気となった理由は女性にウケたからで、男女比7:3が基本の原付市場においてビーノはヤマハいわく男女比が4:6と女性からの支持が多かった。

ビーノの男女比

しかし逆に言うと4割も男性ユーザーがいることになる。

確かに男性が乗っていても変じゃないオシャレさがあるんですが、デザインとは別にもう一つビーノには隠された魅力があったんです・・・それは走行性能。

YAMAHA VINO

こんな可愛い見た目をしているにも関わらずビーノは眼を見張る性能を持っていた。だから原付スクーターマニア達の間では非常に人気が高く原付スクーターレースなどでも重宝されるほどでした。

具体的に説明すると最初に話した新世代4stエンジンが凄いことが一つ。

3バルブエンジン

ビーノが初めて積んだこのヤマハの新設計4stエンジンは

・吸気2バルブ&排気1バルブの3バルブ
・水冷式を採用
・メッキシリンダー

というジェネシス思想ともいえる豪華なもので馬力も5.2psとクラストップレベル。これは南プロジェクトリーダーいわく2stから4stへの転換において

「2st並の軽快感と機敏性を兼ね備えなければならない」

と考えて開発されたから。

だからこそこれほど贅沢なエンジンが出来たわけですが、合わせて重要なのが

「非常に軽い」

という事。

3バルブエンジン

ビーノは2st時代から装備重量で70kgと軽かったのですが、部品点数が増える事からどうしても重くなってしまう4stまして水冷化されたこのモデルでも78kgと非常に軽い。

どうしてこんなに軽いのかといえば女性をターゲットにしていた事から原付の中でも小ぶりだったから。

つまり見た目を抜きにした場合ビーノという原付スクーターは

『パワーウェイトレシオが優れた原付』

だったんです・・・が、それだけじゃない。

ビーノのフロント

よく見て欲しいんですがビーノはデザインの関係で灯火系がハンドルではなくボディにマウントされており、ハンドルはほぼ剥き出し状態でメーターとミラーが付いているだけ。

結果的にハンドルにかかる重量が減り

『操舵慣性モーメントの軽減』

という操舵の軽さに繋っているんです。

ビーノのハンドル

ビーノのハンドルレイアウトというのは極論するとストリートファイターと同じなんです。タコメーターすら無い分こっちの方が硬派と言えるほど。

そしてもう一つポイントとなるのがデザインを壊さないためにディスクブレーキではなくドラムブレーキを採用していること。

ビーノのブレーキ

ドラムブレーキはディスクブレーキに比べて放熱が苦手でフェード(ブレーキ力の低下)を起こしてしまう問題があります。

しかし原付一種では速度が知れており熱がそれほど問題にならない。そしてドラムブレーキというのは放熱が苦手な代わりにディスクブレーキと違いキャリパーもローターも要らないので軽いというメリットがある。

つまりドラムブレーキを採用したビーノは路面追従性に直結する

『バネ下重量の軽さ』

が非常に優秀という事。

車重も軽い、操舵も軽い、バネ下も軽い、更にはコンパクトでホイールベースも短くクイックで水冷エンジンなので熱ダレにも強い。

だから原付スクーターにうるさい人達はビーノを見て

ヤマハ・ビーノ

「なんて優秀なライトウェイトスポーツなんだ・・・」

と思うわけ。

しかも後にカスタム人気が高いJOGもこのエンジンを使うようになったのでチューニングパーツも豊富というオマケ付き。

これはFI化された2007年からのSA37J型やO2センサーが付いた2015年からのSA54J型以降も同じ。

2016VINO

排ガス規制の強化でただでさえパワー不足なのにさらなるパワーダウンと重量増を余儀なくなされるわけですが、それはビーノに限った話じゃない。

すると更に重要になってくるのが車重やウェイトバランス・・・結果ビーノの輝きが更に増すっていう。

つまり女性向け原付スクーターという立ち位置にも関わらず

2016VINO

「性能にうるさい男性すらも納得させる造りだった」

というのがビーノの隠された魅力だったんですね

しかし2018年になると原付一種市場の低迷で大量生産前提によるコスト削減が難しくなったため、ヤマハはホンダからのOEM供給という手段を取るようになりました。

2019VINO

AY02型と呼ばれるモデルで中身はライバルだったジョルノと同じで外装が違うだけ。

「これで遂にビーノ人気も年貢の納め時か・・・」

と思いきやそうならなかった。

ゆるキャンビーノ

ゆるキャンというアニメで起用されたことで

『ビーノでキャンプ』

というコンテンツがバイクに縁がなかった若者を中心としたアニメ層に流行したことで落ち目の原付市場で需要が急増し一人勝ち状態。

女性とはまた違う油田開発の成功による想定外の需要で生産も追いつかず一時は

「注文しても半年~1年待ち」

という悲鳴があちこちのバイク屋から聞かれ

2018ビーノ

「ホンダはもっとビーノを造れ」

とまで言われる事態に。

どんだけヒットすれば気が済むんだって話ですが、これ恐らく次もヒットする。

というのも原付一種は2025年から排ガス規制強化(一種だけ特例で他は2020年から)が決まっておりEVの流れになると思われるんですが、ビーノはEV版が既にテレビで大々的に宣伝されているから。

EVビーノ番組

出川さんがやっている『出川哲朗の充電させてもらえませんか』でEVビーノの認知度は既に物凄く高い。

まだ大々的に売っておらずEV需要があるわけでもない現段階でもう土台がどんどん出来ている。

デザイン性で女性を、デザイン性が生んだ性能で男性を、そしてデザイン性が生んだアニメ起用というコトで若者を虜にし、ついでにEVへの備えもバッチリ。

2019ビーノ壁紙

もはや敗北という文字を知らない常勝原付といえるビーノ。

果たして何処までが計算内で何処からが偶然なのか、愛嬌ある姿がそれを分からなくさせる・・・もしやそれすらも計算のうちなのか。

主要諸元
全長/幅/高 1620/630/1005mm
{1665/630/1005mm}
[1675/630/1005mm]
<1650/670/1015mm>
シート高 715mm
車軸距離 1150mm
{[1160mm]}
<1180mm>
車体重量 70kg(装)
{78kg(装)}
[84kg(装)]
《80kg(装)》
<81kg(装)>
燃料消費率 47.0km/L
{70.0km/L}
[66.0km/L]
《68.3km/L》
<80.0km/L>
※定地走行テスト値
燃料容量 6.0L
{4.5L}
[4.4L]
<《4.5L》>
エンジン 空冷2サイクル単気筒
[{《<水冷4サイクルSOHC単気筒>》}]
総排気量 49cc
最高出力 6.3ps/7000rpm
{5.2ps/8000rpm}
[4.2ps/6500rpm]
《4.5ps/8000rpm》
<4.5ps/8000rpm>
最高トルク 0.67kg-m/6500rpm
{0.47kg-m/6500rpm}
[0.40kg-m/6500rpm]
《0.43kg-m/6500rpm》
<0.42kg-m/6000rpm>
変速機 Vベルト無段階変速
タイヤサイズ 前後80/90-10(34J)
{前後90/90-10(50J)}
[《前後90/90-10(41J)》]
<前後80/100-10(46J)>
バッテリー GT4B-5
{[GTX5L-BS]}
《YTX5L》
<GTZ6V>
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BPR6HS
{[《CR7E》]}
<CPR8EA-9>
推奨オイル オートルーブ
{[《SAE 10W-40》]}
<SAE 10W-30>
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.3L
{[《全容量0.8L
交換時0.78L》]}
<全容量0.7L
交換時0.65L>
Vベルト 4JP-17641-00
{[《5ST-E7641-00》]}
<B3K-17641-00>
車体価格 169,000円(税別)
{159,000円(税別)}
[184,000円(税別)]
《189,000円(税別)》
<185,000円(税別)>
※スペックはSA10J(~2003)
※{}内はSA26J(2004~)
※[]内はSA37J(2007~)
※《》内はSA54J(2015~)
※<>内はAY02(2018~)
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

オシャレは我慢 SW-1 (NJ45A) -since 1992-

SW-1

「ヒューマンウェア」

スズキが1992年に発売した一風変わった見た目をしているSW-1/NJ45A型。

NJ45A

最初に名前の由来について話すと

『Water Design』

というデザイン会社(坂井直樹氏)とタッグを組んだことから

「”S”uzukiと”W”aterdesignの”1″号機」

という頭文字を取ってSW-1。

ちなみにWater Designは日産のクルマ(Be-1、PAO、Figaro、Rasheenなど)もデザインされた会社です。

ウォーターデザインのクルマ

言われてみれば通ずる所があるような・・・

そんなSW-1が始めて公の場に出たのは1989年の東京モーターショー。ここに出展されたのが始まりで反響が良かったことから市販化される事になりました。

SW-1コンセプト

ただ実際に市販化されたのは結構遅く、ショーから約3年後となる1992年の事。これはコンセプトモデルの時には本当に外見だけで市販化に向けた開発は一切していない状態だったから。

恐らくショー限定モデルとして用意したもののレトロブームも相まって反響があったから市販化にGOサインが出たというのが実情かと。

SW-1リア

つまりSW-1はマーケット需要から入る事が多いスズキとしては非常に珍しいデザイン先行モデルなんですね。

ではこのモデルに一体どのようなコンセプトや狙いが込められていたのかというと

『懐かしさと安らぎを感じるバイク』

・・・という見た目通りの話なんですが、それだけではアレなので具体的な話を少し。

SW-1は剥くと分かるように本来ならばベースにもなっているGN250やDR250などと同じシングルスポーツです。

SW-1ディメンション

しかし覆い隠すようなトランク付きカウルでそれを感じさせないようにしている。カウルを付けるために異様なほど伸ばしたシートフレームがデザイン最優先を物語っていますね。

走行性能に関する方も静音性に優れるベルトドライブや、靴を汚さないシーソー式(N-1-2-3-4-5-6)シフト。

SW-1のドライブユニット

エンジンもキャブレターを変更するなどしてかなり大人しめのセッティングにされている。

これはSW-1で大事にされたのがメカメカしさや走行性能といった非日常的な魅力ではなく、自分を高めてくれるファッションの一部として日常的に付き合ってもらえる様にと考えたから。

ヒューマンウェアというキャッチもここから来ており公式曰く

『ワードローブ(衣装ダンス)の一環』

という狙いがあったわけです。

これはコンセプトの段階からそうで、コンセプトモデルでは鏡面仕上げのKTC工具(ネプロスの前身だったミラーツール)を備え付けてアピールしていました。

SW-1の車載工具

実際に出たSW-1でもメッキ加工されたスパナやプライヤーや専用工具など、ここまで揃った車載工具は早々ないほど豪華なもの。

これも小物として日常での美を演出し守るため。

つまりSW-1はバイクが自分の中で一番にある人たちよりも、洋服やアクセサリーと同様に捉えるバイクの重要性が必ずしも高くない人に向けて造った潜在需要を掘り起こす為のモデルだったんです。

スズキSW-1

だから販売面でもバイク屋だけではなく西武百貨店などファッションに気を使ってる人たちが多い場所での販売もしていました。

簡単に言うと1980年前後にママチャリ奥様に向けてスーパーなどで売っていたファミバイ(原付)のリッチ版という話ですね。

ただし車載工具まで追求したのが祟ったのか688,000円とガンマよりも高い高額車となり、しかも普二輪が必要という敷居の高さから人気は出ず僅か2年ほどでカタログ落ちに・・・悲しいことですが。

出た時期がちょうどバブル崩壊という最悪のタイミングだった事もありました。何年も掛けて造ってやっと完成したと思ったらリーマンショックに直撃してしまったB-KINGに通ずる部分がありますね。

トランクボックス

これがSW-1の当時の経緯。

バイクというよりもファッションの一環として売り出したけど失敗したという話なんです・・・が、最近になってオシャレだと再評価の流れがありますね。

停まってる姿はもちろん走ってる人たちを見てもオシャレな人たちが多い。

スズキSW-1

じゃあどうしてSW-1がそんなオシャレに見えるのかという話ですが、これは形が特異だからという単純な理由では無い。

SW-1がオシャレに見えるのは

「色々と我慢しないといけないから」

です。

オーナーには大変失礼な話ですが、SW-1はデザイン最優先で造られているのでお世辞にも性能は良いとは言えません。

ポジション

リアヘビーなうえに小径ホイールを採用しているから間違ってもスポーツ走行なんて出来ないし、シフトチェンジもシーソー式でハンドルもアメリカンのようにワイドだから250なのに必然的にゆっくりした走りになるというかそう走らざる得ない面が強くある。

他の250では当たり前に出来ることがSW-1では出来なかったりする・・・でもだからこそオシャレに見える。

SW-1がオシャレに見えるのは単純にオシャレな形に造っているからじゃない。

オシャレのために色んなものを犠牲にし、またそれを痩せ我慢して乗るからこそオシャレに見えるんです。

NJ45A

「オシャレは我慢」

というファッションの常識を本当にそっくりそのまま反映してる。だからこそオシャレに見えるダンディズムとも呼べるものを宿したバイクでした。

主要諸元
全長/幅/高 2105/840/1095mm
シート高 770mm
車軸距離 1380mm
車体重量 168kg(乾)
燃料消費率 50.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 10.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 20ps/8000rpm
最高トルク 2.1kg-m/5500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前110/80-16(55S)
後140/70-15(64S)
バッテリー FTX9-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR8EA
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.2L
交換時1.5L
フィルター1.6L
ドライブベルト 27611-37D00-133
車体価格 688,000円(税別)
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

モトラリピート PS250 (MF09) -since 2004-

PS250

「PICKUP SCOOTER」

ブームというのものが訪れるとユーザーのみならずメーカーも躍起になり、結果として一風変わったモデルが誕生するのが世の常。それは2000年頃から訪れたビッグスクーターブームも例外ではありませんでした。

ビッグスクーターが利便性を備えつつ

「如何に街に溶け込むスタイリッシュなエアロフォルムを作れるか」

を競っていた2004年に突如として登場したPS250/MF09型。初代FORZAのパワーユニットから派生モデル。

MF09

「ラフ・タフ・ブコツ」

というブームに乗っているのか逆らっているのかよく分からないコンセプトのビッグスクーター。

剥き出しな黄色いフレームに21世紀にもなって角目。スタイリッシュのスの字も、エアロフォルムのエの字もなく街に全く溶け込まないデザイン。

CAT

重機メーカーCATのラインナップに並んでいても全く違和感がない無骨さでした。

もちろん何の脈絡も無くこんなCATみたいなバイクを出したわけではありません。これには元ネタがあります。

モトラ

ホンダが1982年に出したレジャーバイクの一つであるモトラ。これのリボーンなわけです。

モトコンポとは二卵性双生児の様な関係(デザイナーはどちらも小泉さん)で、何にでも積める原付というコンセプトだったモトコンポに対し、モトラは何でも積めるヘビーデューティ原付。

モトラカタログ写真

『モト+トラック』でモトラ。

モトコンポに負けず劣らず・・・とまではいきませんが、当時の不人気っぷりが嘘のように今では人気でプレミアが付いてるレジャーバイク。

ってモトラの紹介になってますね。

PS250前期カタログ写真

要するに250となって帰ってきたのがPS250というわけですが、これがまあビックリするほど不人気だった。

「さすがに21世紀にもなって角目はないだろ」

という意見が多かったのか、わずか一年半で丸目二眼へマイナーチェンジ。

PS250後期

スカチューン風で若者を中心に人気だったズーマーにあやかる形になり

「ズーマーの親玉」

とか言われるようになりました。

PS250アクセサリー

しかしそれでも持ち直す事は出来ず2007年をもって生産終了というブームカテゴリにあるまじき短命さに終わってしまった。

これは無理もない話で、そもそもビッグスクーターブームというのは

『バイク界のセダン』

という立ち位置がウケて人気になったわけです。

そんな中で、泥が似合いそうでメットインすら備えていないビッグスクーターが人気出るワケがない。

もちろんメットインを設けなかったのには理由があります。

PS250積載

PS250はとにかく積載にリソースを全部注いでいるんです。

だからすぐシートが閉まらなくなるメットインなんて軟派なものは設けず、本当に荷物を積むため低床にしてキャリアデッキを設けた。

PS250積載箇所

更にフロントにもキャリアスペースを設け、車体右側後部にはラゲッジスペースまである。

濡れたら困るというなら箱を、それも前後に付ける事も出来た。

PS250アクセサリー

「良いバイクじゃん、不人気だったなんて信じられない」

と思うでしょう・・・実はPS250は今では大人気なんです。

生産終了となった直後から

「こんなバイク他にない」

として人気が急上昇。

さらにここ最近のアウトドアブームで価格が青天井状態になっています。

あれだけ世間を賑わせた同世代のビッグスクーターが今では二束三文なのに対し、PS250だけは状態の良いものは80万円とプレミア価格になっている。

PS250後期カタログ写真

『ブームが終わってブームが来る』

というコンセプトだけでなく歴史までモトラを再現する事となってしまいました。

主要諸元
全長/幅/高 2085/795/1090mm
シート高 725mm
車軸距離 1455mm
車体重量 171kg(装)
燃料消費率 37.2km/L
※定置走行テスト値
燃料容量 12L
エンジン 水冷4サイクルOHC二気筒
総排気量 249cc
最高出力 19ps/7000rpm
最高トルク 2.1kg-m/5500rpm
変速機 Vマチック
タイヤサイズ 前110/90-12(64L)
後130/70-12(56L)
バッテリー FTZ12S
プラグ DPR6EA9/DPR7EA9(標準)/DPR9EA9
X20EPR-U9/X22EPR-U9(標準)/X24EPR-U9
推奨オイル ウルトラG1(10W-30)
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.3L
交換時1.1L
Vベルト 23100-KTB-003
車体価格 479,000円(税別)
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

59,800円に込められた思い choinori (CZ41A) -since 2003-

チョイノリ

「走れ、国産。¥59,800。」

2003年に発売されあまりの安さに大きな話題となったチョイノリ。

この値段で出すことが出来たのは徹底的に部品点数を減らしたからです。

チョイノリカタログ写真

サイドスタンドや左ミラー、そしてセルスターターもメットインも付いていない。

更に21世紀にもなってリアサスが無いリジッド仕様で分厚いシートがサス代わり。燃料計やタコメーターはもちろんオドメーターすら無し。

エンジンも耕運機などに使われる汎用OHVエンジンがベースのオイルポンプすら付いていない掻き揚げ式で、当然ながらキック始動のみ。

チョイノリ装備

これらの徹底した削減によりレッツIIが469点の部品で造られていたのに対し、チョイノリは309点という少なさに。

どうして部品点数の削減が大事かというと、部品点数を減らすということは生産コストはもちろん工数も減らせるわけなので、組立に必要な人間や組立時間の削減にも繋がり労務コストもカット出来るからです。

CZ41A

だからチョイノリも部品点数の削減で従来の1/5程度、一台あたり11人×16分で組み上げていたそう。

※レッツIIは約50人体制

後にセルやオドメーターが欲しいという人のために+1万円のセル付きや、OPパーツで用意していた物を標準装備したモデルも販売されました。

チョイノリスクリーン

これはスクリーンを装備した『チョイスク』さん。

こっちはカゴを装備した『チョイカゴ』さん。

チョイカゴ

チョイノリはあまりの安さからあっという間に5万台を出荷するほどの人気でした・・・が、好評だったかと言うと40km/hがやっとな非力さや耐久性の問題などで不評を買った面もありました。

特にエンジンの問題は顕著で、まず10000km持たなかった。

チョイノリのカムシャフト

これはエンジンのバルブを動かすカムが主な原因。

コストカットの一環でプラスチック製だったため簡単に擦り減ってしまいバルブを開けられなくなってしまうんです。

ただ翌年の後期型(2004年K4以降)でプッシュロッドやロッカーアームと共に改良されています。

チョイノリSS

これはその後期から追加されたチョイノリSS。

下の写真はウィンカーをハンドル改めてバケット取り付けボスを取り付けたチョイノリIIです。

チョイノリ後期カタログ

結局チョイノリは10万台を超える出荷となったのですが、排ガス規制に伴うコスト増の問題から2007年モデルをもって生産終了に。

多くの人の記憶に残り、また一部の人には今も愛されている原付でした。

ただ個人的には学生とかの若い人にもっとちょっと人気が出てほしかったなという思いもあります。

車体価格

最初に言った通りチョイノリはコストカットの為に部品点数が少ない原付です。ボルト数はレッツの半分しかない。

でもそれは言い換えるなら分解するのも簡単。

つまり

「工賃もったいないしこれくらいなら自分で直せそう」

と、どんなバイクより思えるやつなんですよ。

チョイノリ前期型

そうやって自分で触るようになれば原付とはいえバイクが

・消耗品にはどういうのがあるのか

・どうやって走っているのか

・何処を弄れば変わるのか

を自然と学ぶ事が出来る。ゼロハンブームが巻き起こっていた70年代の若者と同じ様にです。

チョイノリ後期カタログ

ゼロハン時代に比べたら結局どう弄ったって速くはならないんだから安全性もある。

車体価格が安いから当然ながら部品も安いから失敗しても痛くない。

要するにチョイノリはお金のない若者には打って付けの教材的原付だったなと・・・。

まあこれは個人的な意見で、スズキはこんな極端な原付を造った理由は別にあります。

実はチョイノリはスズキ取締役会長である鈴木修さんが発案者。

鈴木修

鈴木会長は

「二輪も四輪も1cc当たり販売は1000円が妥当」

という持論を持っていました。

しかしこれは技術者から言わせると非現実的な数値だったので守れなかった。

それに対し鈴木会長がついに業を煮やし

「一度でいいから俺の数字目標を満たした国産スクーターを作れないか挑戦してくれ」

と懇願したんです。

チョイノリカラーリング

これがチョイノリが生まれる事となった理由。

ちなみに名付け親も鈴木会長で、由来はその名の通り”ちょっと乗るだけ用”だったから。

少し話がそれますが鈴木会長が名付け親であるモデルとして他にも軽自動車のワゴンRやアルトがあります。

ワゴンRは最初『ジップ』という名前で行く予定だったんですが、名前がダサいとして

ワゴンR

「セダン(アルト)もあるし、ワゴンもあ~るで『ワゴンR』だ」

としてワゴンRに。

そしてアルトの方はというと

アルト

「あるときはレジャーに、あるときは買い物に。あると便利なクルマ。」

としてアルトに・・・鈴木会長は大のダジャレ好きなんです。

そしてこの1979年に出た初代アルトは47万円という安さで大ヒットしたんですが、実はこれも鈴木会長が

「1cc/1000円のクルマに挑戦してくれ」

と懇願することで生まれた会長のお気に入りのクルマ・・・そう、つまり鈴木会長は二輪版アルトを生み出そうとしたんです。

スズキチョイノリ

ただし、チョイノリにはアルトの時と違いもう一つ別の思いも込められています。

当時アジアの安い労働力(日本の1/30)を見込みコストカットの一環で海外への工場移転する流れが加速していました。

スズキ レッツ

この流れに対し鈴木会長は

「日本のものづくりを、そうやすやすと海外へ移していいのか。」

と危機感を抱いていた。

そして

「アジアの人件費が1/30というなら、アジア人の30倍頭を使えば対抗できる」

と檄を飛ばし、メイドインジャパンでもまだやれるという事を証明したかった。

そしてその思いにスズキのエンジニア達が30倍頭を使って応えた事で1cc/1000円に限りなく近い原付『チョイノリ』を造ることが出来た。

チョイノリ59800円

「走れ、国産。¥59,800。」

このキャッチコピーはそんな会長の思いとエンジニアの叡智が込められているんです。

文献:俺は、中小企業のおやじ

主要諸元
全長/幅/高 1500/620/975mm
シート高 680mm
車軸距離 1055mm
車体重量 39kg(乾)
[42kg(乾)]
燃料消費率 76.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 3.0L
エンジン 空冷4サイクルOHV単気筒
総排気量 49cc
最高出力 2ps/5500rpm
最高トルク 0.30kg-m/3500rpm
変速機 Vベルト
タイヤサイズ 前後80/90-10(34J)
バッテリー
[YT4L-BS]
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR6HSA
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量0.35L
交換時0.3L
Vベルト 27601-22G00
車体価格 59,800円(税別)
[69,800円(税別)]
※[]内はセル付き
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

こう見えて宗一郎のお墨付き モトコンポ (AB12) -since 1981-

モトコンポ/AB12

「ライヴに遊べるトラバイ(Trunk Bike)」

モトコというアダ名で根強く親しまれ再び人気急上昇中のような気がする全長わずか1185mm、車重も装備重量で45kgしかない原付一種のモトコンポ/AB12型。

大きさ

こうやってカブやモンキー50と並べてみるとモトコンポが如何に小さく、また背が低いかが分かりますね。

何故これほど小さいのかというと

「シティ(車)に積めるバイク」

というのがコンセプトだった事にあります。

シティとモトコンポ

キッカケは後に『HY戦争』と呼ばれるようになった原付を中心に巻き起こっていたホンダとヤマハの常軌を逸したシェア争い。

そこで

「車を買う人に原付も買ってもらって台数を稼ごう」

という算段だったわけです。

補足:HY戦争の系譜

ただ少し驚きだったのはモトコンポの開発を要請したのがHY戦争の陣頭指揮を取っていた二代目ホンダ社長の河島さん、つまり社長勅命プロジェクトだったということ。

もしかしたら河島さんは70年代に行われていた『ホンダアイディアコンテスト』を覚えていたのかもしれないですね。

原付に乗る本田宗一郎

これはホンダの若手技術者が枠にとらわれず自分のアイディアを形にしてプレゼンする大会。

そしてそこで出された一つが『携帯用オートバイ』という作品。

モトコンポ原案

どう見てもモトコンポですね。

しかも実はこの『携帯用オートバイ』はその斬新さから社長賞つまり本田宗一郎賞を取っています。

モトコンポ積載

それから10年、まるで掘り起こされる様な形で市販化となったという話。モトコンポが宗一郎のお墨付きというのはこの事から。

ただしこれには少し問題がありました。

というのも社長の勅命が下った時、もう既にシティは完成しており約半年後に控えた発売日を待つ状態だった。そんな差し迫った状況からモトコンポの開発は始まったんです。

しかも開発メンバーは僅か4人で突貫工事のようなスケジュール。メンバーの一人だったデザイナーの小泉さんいわく

コンセプトスケッチ

『箱』

というデザインコンセプトのもとスケッチをサクッと終わらせ、クレイモデル(検討/修正するモデル)をすっ飛ばしていきなりモックアップモデル(見本的なモデル)を造って開発開始。

設計も実質2人だけだったにも関わらずモックを忠実に再現しつつガソリンが溢れないように完全密閉タンクや逆止弁、そして折り畳み格納ハンドルなどでシティに積めるよう随所に創意工夫。

モトコンポ横積

そのため意外と知られていないんですがモトコンポは横積みも出来るようになっています。

シティに積むことを考えただけあってスッポリ収まる絶妙な固定ですね。ちなみにシティの荷台の幅は1270mmです。

モトコンポ説明文

ではこの圧倒的なコンパクトさをどうやって実現させているのかというと中身はこうなっています。

モトコンポの中身

牛の部位紹介みたいになっていますが、中でも注目してほしいのはメインフレーム(黒い横線)の上と下の境目。

パワーユニットを全てメインフレームの水平ラインより下に配置しているのが分かると思います。これがモトコンポ一番の特徴。

モトコンポはシティに積める事が絶対条件だったんですが、加えて開発チームが絶対に実現させたかったのが

モトコンポカタログ写真

「上面を平らに出来るようにする事」

でした。

そのためにこうやって下に全て詰めてハンドルやシートを収納出来るスペースを確保したわけですが、何故そこにこだわったのかというともちろん

モトコンポ折りたたみ時

「箱感を出すため」

です。

これが可能だったのは河島社長から出された勅命が

「シティに積めるバイクを造れ」

という条件”だけ”でコストについての言及が無かったから。

だからパワーユニットこそ開発が間に合わない事からロードパルから流用したものの、そのぶん車体回りへのコストをあまり気にせず箱にする事だけを考えて造ることが出来た。

シティとモトコンポ

ベースであるロードパルより1万円以上高い8万円という車体価格になったのはこれが理由。

加えて生産が大変だった事もあります。モトコンポの生産が始まると生産工場から

「なんてものを造ってくれたんだ」

とクレームが入ってきたんだそう。

これは車体全体を箱にするためプラスチックでキッチリ覆ったことで気温の変化による歪みから組み付けが難しくなってしまったから。

モトコンポの価格

加えてシティに合わせて豊富なカラーリングも用意と、実は結構バブリーというか大変なモデル。

デザイナーだった小泉さんも

「本当はこれ8万円で売るようなバイクじゃないんですよ」

と仰っています。※Honda Designより

NCZ50カタログ

そんなモトコンポですが市場でどうだったのかというと81年から85年までに約5万台売れました。

5万台と聞くと凄い数字と感じるかも知れませんが当時としてはそうでもない数字。タクトなんかは単年で18万台でした。

そもそもモトコンポはシティのオマケ的な立ち位置で、バイク層からすると一部のマニア向けだったことを考えると大健闘とも言えますが。

逮捕しちゃうぞのモトコンポ

ちなみにバイクマニアとして有名な漫画家の藤島さんが『逮捕しちゃうぞ』に登場させた事で人気が出たのですが、これは86年の漫画でモトコンポは既に生産終了してたっていう・・・アニメに至ってはもっと後の事。

原付層(当時で言えばファミリーバイク層)にウケなかった理由としては

「ファミリーバイクとしては少し厳しかったから」

といえるかと思います。

HONDAモトコンポ

まず一つ目としてパワーユニットがせいぜい40km/hがやっとな変速機のない2.5馬力という既に旧世代エンジンだった事に加えガソリンタンクも2.2Lしか入らず航続距離は50km未満だった事。

そしてもう一つは車に積むというコンセプトに少し無理があった事です。

皆さんモトコンポを車に積んで走っている人を見たことがあるでしょうか・・・恐らく無い人が大半かと思います。これが何故かというと車内が臭くなるからです。

モトコンポカタログ写真

これは蒸発ガソリンの大気放出が禁止となった2018年以前のバイク全てに言えることでモトコンポに限った話ではないんですが、車に積むとガソリンを積んでいる以上どうしても蒸発するガソリンが漏れ出てしまう。

つまり手軽に積めて邪魔にもならないけど、そうするとずっと車内がガソリン臭くなってしまうんですね。買ったはいいものの車に積まず庭やガレージに置きっぱなしにする人が多かったのもこれが理由。

要するにモトコンポは毎日の下駄的な使い方も、そして車に積んで現地で乗るという用途も少し難しい面があったから広く受け入れられる事がなかった。

トランクバイク

でもこれはあくまでもモトコンポを当時の下駄車として見た場合。

大衆の下駄車が原付から軽自動車に変わったいま改めてモトコンポを見ると、平面主体のプラ外装だから思い思いにデコったり着せ替えたり出来るし、走りがダメだからこそチューニングやカスタムのやりがいもある。

『盆栽4mini』

として高いポテンシャルを持っている事に改めて気付き、また実際に行動に移す人が急増しているから人気が出ている。

まあただこれは4mini沼にハマったマニアにおける話。

モトコンポが他と違って広く愛される最大の魅力はもう本当に見たまんま。

モトコンポ黄色

「バイクっぽくない」

という事からでしょう。

だからこそバイクに詳しくない人でも乗ったり弄ったり、そして飾ったり眺めたりする事に抵抗が生まれない。それが幅広い人気に繋がっている。

AB12

「必死に箱に擬態してる小さいやつ」

そんな愛らしい佇まいが多くの人を惹き付けるモトコンポの魅力ではないかと。

主要諸元
全長/幅/高 1185/535/910mm
シート高
車軸距離 830mm
車体重量 45kg(装)
燃料消費率 70.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 2.2L
エンジン 空冷2サイクル単気筒
総排気量 49cc
最高出力 2.5ps/5000rpm
最高トルク 0.38kg-m/4500rpm
変速機 自動遠心クラッチ
タイヤサイズ 前後2.50-8-4PR
バッテリー 6V-4Ah
プラグ BP2HS/BP4HS(標準)/BP5HS
または
W9FP-L/W14FP-L(標準)/W16FP
推奨オイル ホンダウルトラ2スーパー
オイル容量 1.0L
スプロケ
チェーン
車体価格 80,000円(税別)
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

エコの裏で蠢くエゴ BURGMAN FCS (DR11A) -since 2017-

バーグマン フューエルセルスクーター

「フューエルセルスクーター」

国内唯一の燃料電池二輪車として登場したバーグマンFCS。

既にナンバーを付けて公道での実験走行が始まっており、2020年頃の一般発売を目指しています。

白バイバーグマンFCS

イギリスでは既に白バイとしても試験的ながら活躍中。

一度の補給で120km走る事が可能で最高速度は75km/hとの事。

※今回はバイクの話というよりもEV&FCVや国や企業の話が中心です。

バイクではまだまだメジャーではないので、恐らく自分を含め多くの人がEV(電気自動車)とFCV(燃料電池車)の違いが今ひとつ理解出来ていないと思います。

と言うか興味ない人が大半か・・・モーターショーでこのバーグマンFCSも試乗できたんですが人気なかったようで。

構わずに話を進めますが、まずEVについてはヤマハが出したEVバイクEC-03を例に紹介。

EC-03

電動バイクはバッテリー(電池)に蓄えられている電気でモーターを回して走る・・・まあ普通ですよね。

ただし電気自動車がモーターからシャフトを通してタイヤを駆動させるのに対し、バイクの場合はインホイールモーターといって文字通りホイールの中に直接モーターを仕込む構造が一般的。

インホイールモーター

「EVはトランスミッションが不要」

と言われているのを聞いたことがあると思いますが、それはモーターの場合トルクカーブ(パワーバンド)が無いに等しく、また回転数の幅も広いことから変速が要らないから。上の写真にも載っている遊星減速機一つで事足りるわけです。

ただしこれは厳密にいうと

「トランスミッションは無くても大丈夫」

と言った方が正しいかもしれません。

NSKインホイールモーター

ベアリングでお馴染みNSKが変速機能(LOW/HIGH)付きを2017年に開発しました。

何故こんな物を作ったのかというと、ホイールに収まる小さいモーターでも動かせる様にするため。

クルマは大きなモーターで、バイクのはそこまでのトルクは要らないから今のところ不要ないのが現状。

クルマは重いからインホイールモーターになったら変速機が必要になるかもね。

もちろんインホイールモーターではないEVバイク、ガソリンエンジンのスペースがバッテリーと大きなモーターになっていてチェーン駆動するタイプも既にあります。

エネルジカ

これはイタリアメーカーENERGICA(エネルジカ)が作っているEVバイク。

145馬力/6000rpmで、上で言ったように開け始めから最大トルクが出るのでスタートダッシュは200馬力のリッターSSよりも速いです。

製造元のエネルジカは2019年から始まるMotoGPのEVクラスMoto-eにも車両(ワンメイク)を用意する予定。

そんなEV車にとって欠かせないメカニズムがあります。

「回生ブレーキ」

というやつです。

モーターでタイヤを回すのではなくタイヤ(駆動)でモーターを回す制御に切り替えて発電するシステム。

化学反応

そうする事でモーターが発電機となりバッテリー充電するというわけです。ガソリン車でいうエンジンブレーキと近いですね。

ではFCV(燃料電池車)は何なのかというと、水素を燃やして走る・・・と勘違いしている人が多いですね。それは燃料電池車ではなく水素燃料車です。

ハイドロジェンRE

マツダがやっている「ハイドロジェンRE」がそれです。

何故にマツダのしかもロータリーなのかというと、吸気・圧縮・燃焼・排気を全て同じ燃焼室でやるレシプロエンジンと違い、それぞれ別の部屋になるロータリーの方が自然発火(ノッキング)を起こしやすい水素と相性が良いから。

水素ロータリー

ただマツダの研究レポートを読むにパワーがガソリン車の半分ほどしか稼げず、光化学スモッグや酸性雨を引き起こす有害物質のNox(窒素酸化物)が出てしまう事に手を焼いているようです。

これが完成すればマツダが天下を取る日が来るかもしれませんが・・・そう簡単には行かないようですね。

いま話題になっているFCV(燃料電池車)というのは水素を燃やして走るのではなく、蓄えている水素と空気中の酸素で化学反応を起こし、生じた電力でモーターを回し走る車のこと。

化学反応

だからトヨタなんかがFCVと言っているけど、FCEV(フューエルセル エレクトリックビーグル)とも言われていて、大まかな括りで言うと電気自動車(EV:エレクトリックビーグル)と一緒。

バーグマンFCSの構造

そしてこれがこのページの主役である(ハズの)バーグマンFCSのチャート。燃料電池という所で水素と酸素の化学反応を起こし発電しています。

何故日本メーカーがこれほどまでにFCVに注力しているかというと、EVのデメリットを看過できないと判断したから。

「長い充電時間」

というデメリットです。

EV-NEO

スズキのEV原付であるe-Let’sは満充電に4時間かかります。

昨今の急速充電では30分前後で満充電に出来ますが、バッテリーに負担がかかるため寿命を縮めます。

しかも満充電で走れる距離はわずか30kmしかない。

水素充填

それが水素ならガソリンと変わらない充填速度。サッと入れてサッと出られる・・・と言うと

「バッテリーを交換式にすればいい」

と思う人も多いと思います。

e-Let'sのバッテリー

スズキもそう考えてe-Let’sは交換式バッテリーを採用しています・・・が、これはこれで問題がある。

脱着式にして手軽に交換可能にするには持てる重さにしないといけない。

電動アシスト自転車のバッテリー等を持ったことがある人なら分かると思いますが、リチウムイオン電池というのは意外と重い。

そして軽くするためには容量を減らすしか無い。でもそうすると今度は航続距離が伸びない。

リーフは400km

日産の電気自動車リーフは満充電でe-Let’sの約13倍となる400kmを走れます・・・が、これはe-Let’sの40倍近い約300kgものリチウムイオン電池を積んでいるから。

リーフのバッテリー

話題のテスラなどは600kg前後と更に倍近い量を積んでいます。おいそれと交換できる重さと量ではない。

問題はまだあります。

スマホやノートPCなど日常生活に欠かせない物になっている事から軽く考えている人が多いのですが、リチウムイオン電池というのは危険物です。

EV-NEO

衝撃や水が加わると簡単に、一瞬にして発火・爆発する危険性がある。伊達に空路輸送が制限されているわけではないです。

モバイルバッテリーのバッテリー

関係ないですが安物のモバイルバッテリーとかも危険ですよ。

そんな危険物とは知らずにコンクリートの上に誤って落とすなどの乱雑な扱いをしたり、走行中のクルマに踏まれて発火なんて洒落にならない。

簡単にアクセス出来るようにすればするほど、今度はそういった危険性が増す。だから電気自動車は一番安全なクルマの中心の底面に置くのが一般的。

リーフのバッテリーの場所

爆発起こしてメーカーに過失があるなんて言われたら会社が傾きます。

しかしEVで一番問題となるのは資源。

EVというのは今説明したようにリチウムイオン電池が大量に必要なので、リチウムやコバルトといったレアメタルを大量に使う。

ドライブバッテリー

もしも現在のガソリン車が全てEVになると枯渇すると言われており、そのため既に争奪戦が勃発中で価格は毎年上昇。

このレアメタルの代用品となりうる物が出来ない限りEVの普及には壁があるわけです。劣化もしますからね。

コバルト

だから今どのメーカーもリチウムイオンに変わる全固体などの新電池の開発に血眼です。

スマホやPCにとっても大きな躍進となるので、開発できたメーカーは世界一に上り詰める可能性だってある。

ではもしリチウムイオンに変わるバッテリーが誕生しレアメタル問題が解決したら大丈夫なのかというと・・・今度は電力不足問題が出る。

発電施設

全部がEV車になったら電力が全く足りない。

トヨタの人いわく、現在の電力では約20%ほどしか補えないそうです。

だから電力にもレアメタルにも依存しないFCVこそ新のクリーン・・・というのが日本の見解なわけですが、FCVにも大問題があります。

「水素ステーションを作らないといけない」

という問題です。

水素ステーション

ガソリンやガスが何十年も掛けて築いてきたインフラと同等の物を、電線から拝借するだけでいい充電ステーションと違い、水素ラインとして0から作っていかないといけない。

経済産業省主導で2020年度までに160か所、2025年度までに320か所の水素ステーション整備を目指すそうですが、それでもガソリンスタンドの3,500ヵ所には程遠い数。

ちなみに充電スタンドは既に20,000箇所にまで増えています。

水素ステーション協業

さて・・・恐らく多くの人が

「なぜ国はこれほど水素を推すのか」

と疑問に思っているハズ。

まずこれは最近トランプさんが脱退して話題となったパリ協定

「第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)」

が根底にあります。

COP21

温室効果ガスを減らすための協定です。

最近になってEVやらFCVやらが話題になっているのは、ここでそういう取り決めが2015年に行われたから。

その中でのエネルギー政策の水素部門は・・・なんと日本が大幅リード。水素に賭けているんだから当たり前といえば当たり前ですが。

日本がなぜ水素に注力しているかというと

「化石エネルギーの依存度を下げたい」

と考えているから。

化石エネルギー依存度

日本が水素水素と言っている理由はこれ。

EVだと電力が必要になる。そして日本は発電にもガスや石油といった化石エネルギーを輸入してるのでEVでは依存度を下げられない。

かといって原発の増設は世論が許さない。

日本の企業もEVの充填時間に使用者が耐えられないと考えているので、水素推しに同調している。

せっかく手に入れた生活必需品という地位を利便性が下がる事で失いたくないですからね。

では他所の自動車先進国はどうかというと欧州はEVに全力です。

ヨーロッパ

これはEV先進国として主導権を取り、言葉が悪いですがEV利権を手に入れるため。

そのため2040年前後までにガソリン車の販売を禁止するという暴挙のような方針。あのドイツも最初は反対していたのに最後はEV派に・・・。

アメリカ

パリ協定脱退で揺れているアメリカはどっち付かず。

ただしアメリカの中でもカリフォルニア州はZEV規制というものを敷いています。

これは要するに

「EVやFCVを一定数売らないとガソリン車も一定数以上売っては駄目」

という厳しい規制。ただしこの規制にはもう一つ大事なルールがあります。

「ガソリン車枠は売買することが出来る」

というルール。これで利益を上げているメーカーがあります。

テスラモーターズ

いま話題のテスラモーターズです。

EVしか売っていないのでガソリン枠をすべてビッグ3やトヨタなどへ高値で売っている。

テスラモーターズはこの枠の売買で成り立っているとも言われています。

ちなみに意外に思うかもしれませんが、このCO2ゼロ車の急先鋒に居るのは自動車先進国の日欧米ではなく中国です。

中国

中国も2019年からNEV(ニューエナジービーグル)規制というカリフォルニア州と同じような規制を敷きます。

「なんで中国が」

と思うかもしれませんが、中国ももちろん日欧米と同じく環境保護だけが狙いでは無い。

中国には守るべき自国の自動車メーカーが居ない。だからEVという新たなスタートラインに強引にでもする事で自国の自動車産業を発展を促し、日欧米の自動車メーカーに対抗できうるメーカーを生み出すのが狙い。

ちなみに既に都市部ではガソリンバイクは走れません。インドも同じように考えこのNEV規制を導入する事が決まりました。

COP21

このようにエコについて手を携えている裏では、互いが互いを出し抜こうというエゴな思惑が蠢き合っているわけです。

人間という生き物はつくづくナントカカントカですね。

あんまり暗い話ばかりもアレなので、最後にスズキの話。

一体なぜホンダでもヤマハでもカワサキでもなくスズキが何処よりも早くFCVなんて次世代を担うかもしれないバイクを出したのかというと、スズキには苦い歴史があるから。

バーグマン125FCS

スズキは昔、車もバイクも2st一辺倒でした。

その為1980年頃に定められた排ガス規制のマスキー法をパスできるエンジンが無くなり、売れるものが無くなってしまった。

倒産の危機を迎えたスズキはトヨタに相談しダイハツからエンジンを供給してもらうことで一命を取り留めたという苦い過去があるんです。

詳しくは>>「トヨタも昔バイクを売っていた ~豊田家と鈴木家~」

この一件でスズキは開発体制を見直しました。

トヨタとスズキの技術提携

つまり最近スズキとトヨタが技術提供の道を進んでいる事、そしてこのバーグマンFCSが出てきた事は

「同じ過ちは二度としない」

というスズキの教訓が今もしっかり守られている事の現れというわけ。

HYDROGEN FUEL CELL BURGMAN

次世代の乗り物がどう進んでいくのかは誰も分からないのが現状。

でも一度失敗をして学んだスズキなら大丈夫でしょう。

それどころか、もしかしたら

クロスゲージ

「ワシらの頃はスズキと言ったら変なバイクばかりじゃった・・・」

なんて言っても信じてもらえないスズキの時代が来るかもしれない。

主要諸元
全長/幅/高 2055/725/1240mm
シート高
車軸距離
車体重量 約199kg(装)
燃料消費率
燃料容量
エンジン 強制空冷式交流同期電動機
総排気量
最高出力 6.1ps/7650rpm
最高トルク 2.3kg-m/1870rpm
変速機
タイヤサイズ
バッテリー
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
スプロケ
チェーン
車体価格
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

市民権の象徴 FORZA125 (JF60) -since 2015-

フォルツァ125

「More of everything」

フルスペック125スクーターとして登場したフォルツァシリーズの末っ子FORZA125。

FORZA125は開発設計は日本だけど製造はイタリア。だから日本では並列輸入のみで正規販売されていませんが、2015年の東京モーターショーでは出品されたので覚えている方も多いと思います。

キーレス

・前後ディスクブレーキABS
・6段階可変スクリーン
・フルLEDライト
・ヘルメットが二個入る48L大容量メットイン
・多機能LCD付きメーター
・120/70-15|140/70-14の太いタイヤ
・最高速度160km/h

もうこれ以上ないというほどの装備と性能。

フォルツァ125アクセサリー

プラスαで付けたいアクセサリーといえばグリップヒーターと防水スマホマウントケースくらい。

しかしそのゴージャス路線は留まる所を知らず、2017年モデル(JF69)からは各部の改良に加えキーレスまで装備。

キーレス

もはや125の装備じゃないを通り越してバイクの装備じゃないとも言えるような内容で、残っているのはSマチック(疑似MTモード)とトラコンくらいですね・・・要らない気もしますが。

見た目だけでなくエンジンも凄くて、PCXでも使われているeSPを4バルブ化した事によって、43.5km/L(WMTC値)という低燃費を誇りつつもクラス上限の15馬力を発揮します。

これだけのスペックと装備をしているだけあって車体価格も約5000ユーロ(日本円で65万円)とかなり高め。

フランス

65万もする125なので向こうでも

「高い」とか「これ買うなら300買う」

と言った声も結構ある。しかしそんな中で飛ぶように売れている国があります・・・それはメインターゲットであるフランスです。

FORZA125_fr

ホンダも大成功したと自信満々に言っていたので調べてみました。

バイク情報サイトscooter-station.comによると、フランスにおけるFORZA125(NSS125AD)の2015年度販売台数は9月(発売から5ヶ月)時点で4608台。PCXやX-MAXはもちろん王者TMAXをも抜き去る程のトップセールスで本当に大成功していた。

「何故65万円もする125ccスクーターをフランス人はそんなに買うのか」

という話ですが、一つは自動車の免許を取得し数年すると125cc/15馬力までのバイクに無条件(または簡単な実習)で乗れる容易さにあります。

フランス

日本で小型免許の取得簡略化の話が出てきているのは、排ガス規制や騒音規制と同じようにEU(国連)と足並みを揃えるためでもあるんですよ。

ちなみに緩和に対して”事故が増える”と否定的な意見を見たりしますが、90年中頃に緩和をしたドイツやフランスでも同じような意見がありました。

125cc緩和による事故率

しかしいざ実施してみると増えるどころか減っています。

この理由については後述するとして話を戻すと・・・フランス人がFORZA125を何に使っているかというと、日本と変わらず通勤など日常の足として。

ただ日本と大きく違う点として向こうはオートルート(フランス)やアウトバーン(ドイツ~スイス)等の日本でいうところの高速道路を125でも走ることが出来ます。

オートルートとアウトバーン

つまり向こうの人にとって125ccというのは維持費が安く、渋滞知らずで、高速も乗れるコストパフォーマンス抜群の乗り物というわけ。

でもこれはEEC(EUの道路交通法)に加盟しているEU全体で言えることで、フランスで人気がある事の答えになってませんよね。

フランス

フランスでFORZA125が人気な理由の一つはフランス人の生活、平均走行距離にあります。

ホンダはFORZA125の前にも日本でお馴染みPCXを出していました。日本と同じように欧州でもドッカンドッカン売れたんですが何故かフランスだけ今ひとつ人気が出ず。

何故なのかホンダが調査をしてみると

「長距離が辛そう」

という声が多かった。

更に調べてみるとフランス人は平均走行距離がEU諸国の中でも飛び抜けて高いことが分かった。

パリ

これはフランスが30年連続観光客第一位になるほどの観光大国なのが大きな理由です。

パリ、リヨン、マルセイユ、リール、主要都市が全て人気観光都市な国。そんな観光都市に住むのは大変です。賃貸で貸すよりも観光客に宿として貸した方が儲かるという理由から家賃が非常に高いからです。

パリで1DKを借りようと思ったら20万円/月はします。街外れに行くと安くなるけど、そうすると今度は治安がものすごく悪くなる。

その結果フランスは大きなドーナツ化現象を招いた。遠く離れた郊外から高速を乗って都市部へ長距離通勤する人ばかりになったというわけ。

そしてもう一つ。

観光都市という事で渋滞や歩行者の道路占領が本当に酷い。入るのも出るのも大変。車で移動していたら途方もない時間が掛かる。

シャンゼリゼ通り

だから通勤だけでなく街中の移動も125のスクーターという人が多い。

つまり郊外から都市部までの長距離と、都市部に入ってからの渋滞の両方を熟す必要があるフランス人にとってFORZA125のパワーとサイズはドンピシャというわけ。

でもこれ日本でも当てはまると思いませんか。ドーナツ化現象といい都市部の慢性的な渋滞といい。

しかし日本とフランスでは決定的に違う所があります。それは駐輪場です。

フランスの駐輪場

フランスは駐車場を追い出すほど駐輪場が充実しています。観光と取り合いになる駐車場より駐輪場を見つける方が簡単な程。だから皆125ccのスクーターで移動する。

これは国が渋滞緩和を目的として駐輪場を大量に設けた面もあります。バイク率が増えると一人あたりの道路占有面積が減るので。

駐輪場が無いにも関わらず駐禁取締でスクーター(コミューター)を死滅させてしまった日本とは大違いですね。

駐禁

話を戻すとコレはA2免許取得が必要な126cc~や、高速を走れない50でなく、自動車の付帯で乗れる125じゃないとダメなんです。

フランスの人にとって”125″というのはバイクではなく自動車乗りのツール。正にツール・ド・フラ….すいません。

だから65万円もしようと売れるわけ。

「65万出せるならもっと良いバイクがある」

という話ではないんです。そもそも層が違うから。

しかしこれが126cc以上のバイクに乗るライダーにとっても実に良い方向に働いています。

車乗りの多くが(簡単に乗れる事で)二輪を知るキッカケになったからです。

このおかげでフランスでは

「バイクは社会悪だ」

と目の敵にする人は少なく、その有用性や利便性を認めている”車乗り”が多い。

フランスの道路

日本のように

「バイクなんて禁止にしろ」

と知る機会が無いことから有用性を認めず目の敵にする人が少ない。本当にバイクを禁止にしたら必然的に車が増えるので渋滞がとんでもない事になるのに。

表参道

上で少し話した125cc免許の規制緩和をしたにも関わらず事故が減ったというのも

“車乗りのバイクに対する理解が広がった”

からです。

フォルツァ125リア

日本とフランスで大きく違うのは”車乗りのバイクに対する理解”が進んでいるか遅れているかという事。

でもまだ間に合う。

日本も駐輪場の充実と小型二輪免許の緩和によって、バイクに理解がある車乗りが増えれば、125で通勤する車乗りが増えれば事故も渋滞も減る。

フォルツァ125壁紙

そうやって125への理解が少しづつでも進み、市民権を得ることができれば、FORZA125が発売される日が必ず来る。

主要諸元
全長/幅/高 2140/755/1470mm
シート高 780mm
車軸距離 1470mm
車体重量 159kg(装)
燃料消費率
燃料容量 6.2L
エンジン 水冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 125cc
最高出力 15.0ps/8500rpm
最高トルク 1.28kg-m/8250rpm
変速機 Vマチック
タイヤサイズ 前120/70-15(56P)
後140/70-14(62P)
バッテリー YTZ8V
プラグ SILMAR8C9
推奨オイル ウルトラGP(10W-40)
オイル容量 全容量0.9L
交換時0.8L
フィルター交換時0.8L
スプロケ
チェーン
車体価格
※国内正規販売なしのため
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

シンデレラスクーター TR-50/110 (CA1LA~B/CF12A) -since 1997-

ストマジ50

「THE POWER SCOOTER」

スズキが若者向けに出したストリートマジック略してストマジことTR-50とTR-110。若者向けということでトキオの長瀬智也さんをドラマとカタログのタイアップで起用するという力の入れっぷり。

長瀬智也とストリートマジック

せっかく決まっているのにキャッチがダジャレなのがちょっとアレですね。

ストマジは1997年から2006年までとモデルライフは意外と長く、少しややこしい事にバリエーションが色々ありました。

ストマジ50/S

最初に出たのはノーマル(CA1LA)とS(CA1LB)の2モデル。Sの方はアルミキャストホイールやリザーブタンク付きサスペンションといった豪華装備モデル。

更に半年後にはストリートマジック2(型式はSと同じ)が追加。

ストリートマジック2

コチラはSをベースに丸目ヘッドライトやアップハンドルやディスクブレーキカバー等を装備したオフロード感を出したモデル。2000年からはこの丸目のストリートマジック2だけになりました。

兄貴分の110(CF12A)は50の一年遅れで登場。

ストマジ110

エンジンは50がアドレスやセピア等の2st原付にも使われているものがベースだったのに対し、110は同一ボディながらマウント変更でAddress110ベースの物・・・そう、ストリートマジックはスクーターのエンジンを積んでいる異端モデルです。ちなみに110も一人乗り専用。

スクーターのエンジンというのはユニットスイング懸架方式といって、簡単に言うとエンジンとスイングアームが一体になっている。

スイングユニット式

我ながら分かりにくい絵ですが、要するにエンジンもスイングアームも一体なので全部が動くわけです。マフラーも動きますしキャブなんかも一緒に動きます。

エンジンがスクーターなので当然ながら駆動はVベルトによる無段階つまりATというかCVT。Vベルト無段変速っていうのはプーリー・・・って口で説明するよりWikipediaのgifを見たほうが早いですね。

スイングユニット式

エンジン(クランク)シャフトの端に付いているコマみたいな物の中にウェイトローラーという重石が入っていて、エンジン回転数が上がるとその重石が外に押しやられ幅が狭まりベルトが押し上げられるというわけです。すごくザックリした説明ですが。

で、スクーターというかユニットスイング式というのはフレームへはリンクを介してラバーマウントするのが基本です。これは一体型ゆえにエンジンの振動はもちろん、駆動の振動や路面の振動といったありとあらゆる振動が起こるから。

そしてラバーマウントするということは、一切フレーム剛性に関与しないということ。そのため原付スクーターに乗ったことがある方なら分かると思いますが基本的にフレーム剛性はヘロヘロです。

原付のフレーム

これにはアンダーボーンといってスペースを稼ぐために採用されているフレーム(赤部分)も大きく関係しています。

ちなみに図を見て何となくでも分かって欲しいんですが、こういったアンダーボーンフレームは前後の力に凄く弱いです。だから過走行や手荒な運転、追突などがあると簡単に曲がります。

原付のフレーム

少し大げさですが、こんな感じに曲がったりします。フロントを浮かせてフォークを掴み左右に振ってみればガタが来ているか大体分かります・・・ってそんな話がしたいわけではない。

じゃあストリートマジックがどうなっているのかというとこうなっています。

ストマジのフレーム

これがどういう形かというと剛性を求められるスーパースポーツに広く採用されているツインチューブ(ツインスパー)というフレームの形。

つまりストリートマジックはかなりヤル気な形をしたフレームを積んでいるわけですが、もう一つ注目してほしいのがステム(フロントフォーク)周り。

原付のフレーム

トップブリッジ~ステムシャフト~アンダーブラケットというスポーツモデル同様の三叉構造になっています。

フロントフォークを三叉でいう下だけで留めているスクータータイプと違い、上中下で留めると剛性が増します。ステム剛性が上がるという事は簡単に言うとハンドリングがクイックになります。ロードスポーツは基本的にこれ。

三叉フォーク

辛い絵が続きますが、左のスクータータイプと右のスポーツタイプどっちがガッチリしているかは一目瞭然かと思います。しかもストマジは更に倒立サスなので尚のことステアリング周りの剛性がガッチリキッチリ。

スクーターのエンジンを積んだスポーツバイク・・・と簡単に片付けられがちなストリートマジックだけど、これだけフレームを作り上げて来ているんです。後期モデルでは更に補強が入りました。

TR-50/TR-50S

ただスズキとしてはストリートマジックはスポーツバイクではなくスクーター。謳い文句も「THE POWER SCOOTER」だし、ラインナップ位置もスクーターの所でした。

これは移動手段としてバイクを見ている原付(特に一種)層に、一般的なロードスポーツと同じ骨格を持つストマジで楽だけでなく操る楽しさも知ってもらおうという意図があったのかなと。

既存バイク乗りの立場から見るとストリートマジックというのは本当に立派なフレームを持ったスクーター。スクーターのスポーツ性を突き詰めていくとストマジの形になると言っても過言ではないかと。

アドレス110

ところでベースとなっているスクーターの一つであるAddressの名前の由来は
「add(加える)+dress(ドレス ※メットインスペースの事)」
でアドレスなわけですが、どうもストリートマジックの方がアドレスという名前がピッタリな気がします。

ストリートマジック装備

アドレスは紛うことなきスズキの名スクーターですが、じゃあみんな可愛がっているかといえば暖気すらせず走り出す等の手荒な扱いをする人が大半かと思います。

ところがストマジとなると、アレやコレやと弄って可愛がるのはもちろん、終いにはストマジのワンメイクレースが開催されるまでに。

ストリートマジック50

なんでこんなにチヤホヤされたのかと言えば、いま説明してきたツインチューブフレームというドレスを着たからに他ならない。

ドレスを積むのではなく、ドレスを着ちゃったスクーターSTREET MAGIC。

主要諸元
全長/幅/高 1635/710/965mm
[1700/710/975mm]
シート高 710mm
車軸距離 1080mm
[1150mm]
車体重量 73kg(乾)
[85kg(乾)]
燃料消費率 47.0km/L
[40.1km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 6.4L
エンジン 空冷2サイクル単気筒
総排気量 49cc
最高出力 7.2ps/6750rpm
[10.0ps/6500rpm]
最高トルク 0.82kg-m/6000rpm
[1.2kg-m/6000rpm]
変速機 Vベルト
タイヤサイズ 前110/80-12(51J)
後120/80-12(54J)
[前120/70-12(44L)
後130/70-12(49L)]
バッテリー YT4B-BS
[YTX5L-BS]
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BPR6HS
推奨オイル スズキ純正CCISオイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.2L
Vベルト 27601-06F10
[27601-16F12]
車体価格 179,000円(税別)
[249,000円(税別)]
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

スクーター系

スクーターとは

町中を一番走っているバイクであろうスクーター。

端的に言うとシート下に収納スペースがあるオートマバイクという感じでしょうか。

【特徴】

・プーリーと呼ばれる円盤とベルトによるオートマチックが基本

・左右のレバーがそのままブレーキになってる自転車に近い形

・車体もホイールも小さく軽いので取り回しも楽ちんで125ccまでなら税金も安い

・反対に長距離は苦手な部類

・メットインと呼ばれる便利な荷物入れがある

という感じ。今さら細かい説明は要らないかと。

【歴史】

スクーターの歴史は非常に古くまた変化に富んでおり、全部書くと長くなるので割愛しつつ書いていきます。

スクーターの始まりは1902年にフランスで造られた『auto-Fauteuil(オトフォトイユ)』と言われています。

4stの433ccエンジンを搭載したモデルで名前の意味は

『走る椅子』

まさにそのままですね。ちなみに排気口を足元に持ってきてフットウォーマー代わりに使うアイディア付きでした。

その後、イギリスやドイツそしてアメリカなど欧米で走る椅子ことスクーターの開発競争が始まったんですが、その中でも現代スクーターの原型と言われているのが1920年にイギリスのユニバスというメーカーが作ったモデル。

ユニバスのスクーター

エンジンを椅子の下に収納し、小径ホイールを装着することで足付きの問題も改善した走る椅子。まさにスクーターですね。

こうしてスクーターの基本形が出来上がり、欧米のいろんな企業がOEMを含め造るようになり普及していきました。

日本のスクーター文化

「じゃあ日本はいつからなの」

っていう話をすると日本のスクーター文化は戦後の1946年からになります。

『隼』や『橘花』といった航空機を造っていた中島飛行機が敗戦によってGHQから平和産業への転身を迫られた事がキッカケ。

社名を富士産業(後にスバルとなる富士重工業の前身)に変え、会社を存続させるため農機具やトラック部品や食器など色々と手を出したうちの一つがスクーターだった。

何故スクーターだったのかというと

・進駐軍が使っていたこと

・儲け(単価)が大きい製品だったこと

などがあるんですが一番は内燃機で走るなど構造が

「航空機に通ずるものがあったから」

ですね。

そんな富士産業が幸運だったのは協力会社の野村工業に野村房男さんという御曹司が居たこと。彼は大のバイクマニアでありコレクターでもあったためアメリカのパウエルというメーカーが造ったスクーターを所有していた。

ストリームライナー

そこでそれを貸してもらい分解し、スクーターがどういう構造なのかを研究し1946年に完成したのが下のモデル。

ラビットS-1

『Rabbit S-1』

これが国産初のスクーターであり、日本のスクーター文化の始まりになります。

名前の由来はボディ後部の膨らみがうさぎの後ろ足に似ていたから。見た目もパウエルスクーターとソックリなんですが、決定的に違う所として荷台が付いている事にあります。

富士産業とパウエル

これはGHQから許可を貰うため。

というのも当時アメリカではスクーターは日常の足というよりも娯楽の乗り物という存在だったため、最初持っていった時は許可が下りなかったんですね。

そこで荷台を付けて

「これは娯楽の乗り物ではなく物資を運ぶための道具です」

と説得しなんとか許可を得ることに成功したという話。

ラビットの系譜

こうして始めたスクーター事業は順調にモデルも台数も右肩上がりで増えていきました・・・が、戦後のスクーターといえば有名な所がもう一社ありますよね。

そう、三菱重工業のシルバーピジョン。

シルバーピジョン

『零戦』を始め多くの軍事産業を担っていた三菱重工業も富士重工業(中島飛行機)と同じように平和産業への転換を迫られた事でスクーターを開発していました。

ただし三菱重工業が参考にしたのはパウエルではなくまた別の米メーカーのスクーター。

サルスベリーモーターグライド

サルスベリー社のモーターグライドを参考にした。そしてラビットから半年遅れで登場したのがこれ。

シルバーピジョンC-10

『Silver Pigeon C-10』

シルバーピジョンの最初のモデル。名前の由来は平和産業であることをアピールするためと言われています。

ただ当時のスクーターは今と違い、大卒の初任給が500円前後だった時代に

『ラビットスクーターS-1:12,000円』

『シルバーピジョンC-10:45,000円』

という価格設定で一般庶民はとてもじゃないけど買えない高級車だった。

しかしそれでも乗用車が禁止されていた事から富裕層や公用として人気というか需要がありました。この需要は乗用車が解禁された1950年代に入っても変わらず、乗用車がおいそれと買える乗り物ではなかったことから今度は所得が上がってきたサラリーマン等がこぞって買うように。

つまり最初期は富裕層に、そしてその後はサラリーマンなど労働者の足として年を追う毎に拡大していったのが日本のスクーター文化の始まり。

こうして改めて振り返ると

「日本のモータリゼーションはスクーターから始まった」

といっても過言ではなく、皆のよく知るホンダやカワサキやヤマハもそんな市場を狙ってスクーターを造り参入した歴史があります。

ホンダとカワサキとヤマハ

しかしものの見事に全部失敗に終わりました。

原因は単純に技術力不足で、商品として問題があり大不評だったためスクーター事業からすぐに撤退。どのメーカーも黒歴史と化しています。

今では信じられない話ですが、逆に言うとそれだけラビットとシルバーピジョンが優れていたという話。

ちなみに意外に思うかも知れませんがもう一つの日本を代表するバイクメーカーであるスズキはこの頃まだスクーター事業に参入していません。

そんなスクーターなんですが1960年代の末に終わりを迎えます。

三菱重工業は1964年のC-140とC240をもって生産終了。

シルバーピジョンC-140/C-240

最後まで残っていた富士重工業も1968年のS-301をもって生産終了。

S-211

スクーターを製造販売するメーカーが居なくなり、文化が完全に途切れる事となりました。

【総生産台数】

シルバーピジョン:約46万台

ラビットスクーター:約63万台

相次ぐスクーター事業からの撤退ですが、この理由は大きく分けて二つあります。

一つは三菱も富士もより規模(儲け)が大きい四輪事業に力を入れた事が一つ。そしてもう一つは1958年にあるモデルが登場したから。

C100

『SuperCub C100』

皆さんご存知スーパーカブです。

一番簡単な免許である原付一種(50cc)に該当しつつも、圧倒的な性能と革新的なデザインで多くの人がカブを買い求めるようになり、時代はスクーターからモペット(ステップペダル付き)が求めるように。つまりもうスクーターを造って売っても旨味がない市場になってしまった。

当時のポスター

余談ですがこのスクーターからモペットへの移行は1940年代の欧州で起こっていた事。それを本田宗一郎と藤沢武夫(副社長)が欧州視察の際に知り、そのトレンドを日本に持ってくる形で生まれたのがスーパーカブなんですね。

でも現代の日本ではどちらかというとスーパーカブよりスクーターの方が町中を走っていますよね。

そのキッカケはスーパーカブ誕生から約20年後となる1977年になります。

パッソル

「パッソルS50」

ヤマハがステップがあるモペットではなくステップスルーの原付、つまりスクーターを11年ぶりに復活させたんです。

何故ここに来てスクーターを出したのかというと、ホンダがこの一年前にあたる1976年に自転車の延長線上にあるようなキック要らずの原付を出してヒットしたから。

ロードパル

『ロードパル』

女性の社会進出が進んできた事をうけて造られたキック要らずの女性向けモペット。ラッタッタの愛称でもお馴染みですね。

これがヒットしたのを見てヤマハが

「女性はスカートを履くから跨るタイプよりステップスルーが良いだろう」

という事でスクーターを再び開発し販売したというわけ。

この狙いが見事に的中。

バイクとは無縁だった層を掘り起こす空前の大ヒットとなり販売台数が伸びた事でホンダを追い越せると更に攻勢に出た事で、1980年頃からヤマハとホンダで仁義なきシェア争いが勃発。

ロードパル

新型スクーターのぶつけ合いや被せ合い、それにダンピング合戦が行われました。

その結果スクーターが市場へ大量に出回る事となり、ちょっと前まで消えていたのが嘘のように当たり前な乗り物として多くの人に認知されるようになった。

こうしてスクーターが復権したんですが、あまりにも増えすぎた事で事故も急増。

この事態を重く見た国は1986年に

『原付(50cc)のヘルメット義務化』

を課すことにしました。※51cc以上は既に義務化

今でこそ当たり前なヘルメットですが当時は利便性が大きく損なわれたと販売台数も急落。しかし同時にこれがスクーターを原付を象徴する乗り物に押し上げるキッカケにもなった。

初めてのメットインスクーター

『メットインスクーター』

の誕生です。

上の写真はそれを一番最初に備えた1985年のヤマハ・ボクスンというモデル。

今でこそスクーターにとって当たり前な機能ですがこれはヘルメットという規制があったからこそ生まれた面があり、移動手段としてバイクを使っていた人達にとってこれほど便利な機能はない。

結果として下駄として使う原付ユーザーの多くがメットインスクーターを選ぶようになりそれが

「原付といえばメットインスクーター」

という常識を生み、現代も続いているという話。

本当にザックリですが、これが現代のスクーターの成り立ちみたいなものです・・・が、スクーター文化はこれだけじゃ終わらない。

1990年代になるとメットインスクーターがコミューターとして確固たる地位を築き上げ生活の一部として根付いたわけですが、同時に日本には世界的なバイクメーカーが多く存在していたため絶えず競争が行われていた。

そうした競争の末、日本で新たな形のスクーターが生まれました。

ビッグスクーター

『ビッグスクーター』

です。

乗り心地やタンデム性それに安定性や加速性など従来のスクーターの弱点を補うまさに大型バイク版スクーター。

最初にこの形を出したのはホンダで、国内最大排気量かつ大容量のメットインを備えた

『1984年:SPACY250FREEWAY』

またはクルーザー要素を取り入れることでスクーターが苦手としていた長距離走行とタンデム性を向上させた

『1986年:FUSION』

がその始まりと言われています。

スペイシーとフュージョン

しかし両者ともコンセプトは良かったものの80年代の250はレーサーレプリカ(スポーツ全盛)時代だったため注目されず。

ではこのビッグスクーターという新しいカタチを認めさせたのは何かといえば1995年にヤマハが出したモデル。

初代マジェスティ

『MAJESTY』

です。ここまで来ると知っている人も多いのではないかと。

大人のセダンバイクというコンセプトで造られたエアロボディのおしゃれなビッグスクーター。

これが人気を呼んだことでビッグスクーターが認知されるようになったんです・・・が、ここで終わらなかった。ビッグスクーターが確立して10年ほど経った2000年代半ばにブームが起きます。

元々ビッグスクーターというのはどちらかというとオジサマ向けの乗り物だったんですが、いわゆるVIP感がある事から若者のハートにささった。

加えて250なので負担も軽くオートマでメットインという便利な装備も付いている。つまり何故ビッグスクーターブームが起きたのかといえばカスタムが栄えた事から見ても

クルーザーブームからビッグスクーターブームへ

「使い勝手が良いアメリカンみたいなバイク」

という認知のされ方をしたから。ある意味ではクルーザーを食った形なんですね。2010年代に入るとそのブームも収まって大人のセダンバイクという本来の立ち位置に戻りましたが。

最後に少し余談をすると、実はこのビッグスクーター文化はスクーター発祥の地である欧州にも影響を与えているんです。

向こうでも排気量が大きいスクーターはあったものの大容量のメットインとエアロデザインのクルーザーチックなビッグスクーターは存在していなかったため意外とウケた。

イタリアでのビッグスクーター

今では欧州向けビッグスクーターなども出しているように

『Maxi Scooter』

として認知され欧州メーカーまでもが参入。しのぎを削るジャンルにまで成長という文化の逆輸入を起こすまでに至ったという話。

ちなみに一番最初にビッグスクーターを本場欧州に持ち込み、広く認知させるキッカケとなったモデルが何かというと1998年に出たこれ。

バーグマン400

『BURGMAN400(和名スカイウェイブ400)』

意外にもスズキなんですね。

参考文献
・日本のスクーター(小関和夫|三樹書房)
・二輪車1908-1960(小関和夫|三樹書房)

該当車種

FORZAPCXLEADの系譜

TMAXMAJESTYCYGNUS系譜

SKYWAVE250ADDRESSの系譜

などなど

種類一覧
ネイキッドネイキッド系
ストリートファイターストリートファイター系
オフロードオフロード系
モタードモタード系
マルチパーパスマルチパーパス系
ストリートストリート系
スーパースポーツスーパースポーツ系
フルカウルスポーツフルカウルスポーツ系
ツアラー系ツアラー系
メガスポーツメガスポーツ系
クルーザークルーザー系
スクータースクーター系
クラシッククラシック系

TMAX560/TECH MAX(B3T/B7M) -since 2020-

七代目TMAX

「贅を知る、大人に。」

2021年から始まる新排ガス規制のEURO5に合わせてモデルチェンジとなったTMAX560/B3T型とTECH MAX/B7M型。

最初に変更点を上げると

・ボアを拡大し排気量を561ccに
・吸排気見直しで中高速アップと振動ノイズの軽減
・フロントウィンカーもLEDに
・Tをイメージしたテールライト
・冷却性を上げたエアダクト
・足付きを考慮したサイドカバー
・タンデム性を上げるリアカウル
・クロームブラックマフラー
・新設計エキゾースト(触媒)

という感じで排ガス規制への対応と走行性能アップがメインな感じです。

新型エンジン

そして+13万円のテックマックスモデルは

・無段階135mm調整電動スクリーン(ノーマルは二段階55mm)
・グリップヒーター
・シートヒーター
・クルーズコントロール
・プリロードと伸側減衰力アジャスター付きリアサス

を標準装備した上位モデルというか先代で言うDXみたいな存在。

TMAX560とTMAX560TECHMAX

トラコンや出力モード切替はノーマルも装備しておりグリップヒーターも後付可能。簡単に言うと先代のSXにクルーズコントロールが標準されたのがノーマルモデルという感じですね。

ちなみに欧州ではテールライトが変わったことが一番騒がれているようです。

TMAX530とTAMX560

TMAXはキープコンセプトで面白構造についても話したのでこれ以上あんま書くことない・・・という事で

「なぜ欧州ではTMAXが人気なのか」

という小話を少し。

TMAXが向こうでキングオブスクーターの異名を持っているのは前にも書いたんですが、主にどの国が一番買っているかというイタリアとフランスの人達が一番買ってる。

A2免許(日本でいう普二みたいなクラス)なのも相まって年間平均8000台前後が売れてるんですがそのうち半分をイタリアが、そして次いでフランスが占める感じで、要するにスクーターが文化として根付いてる国で圧倒的な支持を得てる。

年間販売台数8000台ってサラッと言いましたけど日本の大型バイクは年間販売台数一位でも3000台前後ですからね。まして100万円のスクーター・・・どんだけ人気なのか分かるかと。

TMAX530とTAMX560

しかし一方で同じくスクーターが根付いている日本では

「なんでそんなに人気なのか分からない」

「スクーターに100万円も出せない」

という感じで欧州のようには売れてないというか理解できない人が多いのが正直な所かと。

この違いは何かって話ですが、向こうの人にとってTMAXというバイクはこれと同じような存在なんです。

VWゴルフ

皆さんご存知フォルクスワーゲンを代表する名車ゴルフ。

唐突にゴルフを紹介されても意味不明だと思いますが、SNSなどこういうつぶやきをする人がいっぱい居る。

「サンタさんGolfとTMAXをください」

これこそがTMAX人気の答え。

何故ゴルフが人気なのかといえば様々な意見があるでしょうが一番は

「ドライビングプレジャーを味わえるちょっと贅沢な実用車」

ということから。TMAXはこれのバイク版なんです。

TMAX560

TMAXはたしかにオートマチックで楽に乗れるし、メットインもあるから荷物も載せられる便利な実用バイク。

でも立派なエンジンと車体を備えているからスポーツバイクに負けないプレジャーを気軽に味わえる・・・それも日々の道路で。

ここがTMAXの評価を分ける部分。

これはクルマにも比較的言えるんですが電車通勤やバス通勤が当たり前な事もあって日本でバイクに乗ると行為は”非日常”という要素が強い。

しかしイタリアやフランスではバイクに乗るという行為は毎日の通勤で当たり前な”日常”という要素が強い。だからこそ確かな造りで利便性を備えつつ運転そのものを楽しむ事を決して疎かにしてないTMAXが

『非日常ではなく日常を豊かにしてくれる乗り物』

として絶大な支持を得てるという話。

向こうの人からすると

「毎日使うんだから良いもの買うのは当然でしょ」

と言うんでしょうね。文化の違いというか価値観の違いというか。

日本でキングオブスクーターのTMAXを下駄車として使うのは勿体ないって思うのが恐らく大多数だと思うんだけど、その”勿体ない”っていう事こそが贅沢の象徴なわけで、そんな贅沢を思う存分堪能出来るように造られているのがTMAXなんですよね。

TMAX560カタログ写真

公式のキャッチコピー

「贅を知る、大人に。」

という言葉は正にそれを現してるかと。

主要諸元
全長/幅/高 2200/765/1420mm
シート高 800mm
車軸距離 1575mm
車体重量 220g(装)
[218kg(装)]
燃料消費率 22.1km/L
※WMTCモード値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 561cc
最高出力 48ps/7500rpm
最高トルク 5.7kg-m/5250rpm
変速機 Vベルト
タイヤサイズ 前120/70-15(56H)
後160/60-15(67H)
バッテリー YTZ12S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR7G
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.5L
交換時2.6L
フィルター交換時2.9L
スプロケ
チェーン
車体価格 1,160,000円(税別)
[1,290,000円(税別)]
※[]内はTech MAX(B7M)
系譜図
SJ02J 2001年
TMAX
(5GJ)
SJ04J 2004年
TMAX
(5VU)
SJ08J 2008年
TMAX
(4B5)
SJ12J 2012年
TMAX530
(59C)
2015SJ12J 2015年
TMAX530
(2PW)
2017TMAX 2017年
TMAX530SX/DX
(BX3/BC3)
2020TMAX 2020年
TMAX560/TECH MAX
(B3T/B7M)
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