系譜の外側

DREAM50
(AC15)
-since 1997-

ドリーム50

「Dream of DREAM」

知らない人から見るとDOHCエンジンを積んだ頭のおかしい原付にしか見えないDream50。

まあその通りなんだけどホンダもこれを意味もなく出したわけではありません。ちゃんと背景があるわけです・・・が、それには歴史を説明しないといけません、というかそれがメインになると思います。

 

このバイクは1962年に出たCR110カブレーシングというバイクの復刻モデル。110と書かれていますが50ccです。なので"ヒャクジュウ"ではなく"ヒャクトー"と呼ばれていたりします。

CR110

ちなみにCR110の元となっているバイクは1960年のスポーツカブC110。

エルヴィス・プレスリー主演映画「ラスベガス万才」で登場し、広告塔にもなりました。

スポーツカブC110とエルヴィス

CR110がカブレーシングと付けられているのはこのため。更に辿るとC110の元はもちろん1958年に出た初代スーパーカブことC100。

 

じゃあDream50の元になっているCR110の元は何なのかというと、CR110が出る3年前の1959年に遡ります。

この年はホンダがマン島TTを始めとした世界グランプリレースに挑戦を始めた年です。何故マン島TTなのかというと最も過酷な国際レース場だったから。つまりここで勝てば技術力が優れていることを証明できるわけです。

マン島とニュルブルクリンク

車でいうニュルブルクリンク(北コース)みたいな存在というわけですが、全長・コーナー数・高低差全てマン島が上。まあマン島はサーキット場ではなく本来は公道なので比べるのも酷な話ですが。

 

そしてホンダは見事に参戦3年目にして250cc/125ccクラスのW優勝を成し遂げます。

2RC143とRC162

これがそのチャンピオンマシンの空冷並列4気筒40ps/13500rpmの2RC162(写真左)と、空冷並列2二気筒23ps/14000rpmの2RC143(写真右)です。

 

これにより欧州を中心にホンダの名が世界へ轟くことになったわけですが、当時欧州では日本でいうところの原付一種が生活の一部として根付いており非常に人気でした。

モペットに消極的だった本田宗一郎も、それを見てスーパーカブを作ったわけです。ちなみにそう仕向けたのは影の本田宗一郎こと副社長の藤沢武夫さんです。

 

そのことから欧州では50ccの草レースも盛んになり、世界選手権へ格上げされるのも時間の問題でした。

125/250を制覇しイケイケだったホンダとしては50ccも取りたいと考えるのは当然な話。世界レースが始まる前から上で言ったスポーツカブC110をベースに世界レース用のワークスマシンの製作に取り掛かっていた。

RC110

そして1962年の第一回50ccクラスに出てきたのが最小排気量のDOHCマシンRC110というわけです。紛らわしいですがカブレーシングのCR110ではありませんよRC110です。

DOHC化するために肥大になったヘッドを覆うミッキー○ウスのようなヘッドカバーが特徴的ですね。ホンダの十八番であるカムギアトレインですが、最初はベベルギアで進めていたそうです。

 

そんな世界レースの一方で国内では市販車レースが人気を呼び始めていました。

全日本クラブマンレース

市販車のレースというのはつまり公道を走れるように認可を取ったバイク。更に出場するには50台以上販売したものしか走れないという制約付き。

そこでホンダはマン島で勝つために作ったワークスマシンRC110に保安部品を付けただけのバイクを発売。それがCR110カブレーシングです。

CR110スクランブラー

スタイルも国内のクラブマンレースがフラットダートだった為かスクランブラースタイル。当時の値段で17万円は同クラスの3倍の値段(今で言うと80万円程)だったのですが、それよりも公道を走れるワークスマシンが買える事が衝撃でした。※フルパワーにするためのKITは別売。

ただホンダもあくまでも市販車と認可させるためであり、これで公道を走るのは如何なものかと考えたのか生産台数はキッチリ49台だけ。※1台はホンダ

 

一方で保安部品が付いていないレーサータイプも販売されました。公道モデルが希少すぎてCR110といえばコッチを思い浮かべる人が大半だと思います。

CR110カブレーシング

生産期間が短かったためこれも246台しか生産されていません。

 

ちなみに市販レーサーのCRではなくワークスマシンのRCの方は最終的にRC116(1966年)まで開発され

RC116

DOHC4バルブ|カムギアトレイン|並列二気筒|14馬力/21500rpm|9速ミッション|車重50kg

という、もうこれ以上ないスペックを誇りホンダの世界レース全制覇に貢献しました。

RC116エンジン

シリンダーより大きいエンジンヘッド・・・まるでVツインのように見えますね。

 

話が反れました。

CR110カブレーシングというのはホンダにとってレースに出るために市販化したバイク、RC30/45やVTR-SPといったホモロゲモデルの始まり、始祖という事です。

CR110カブレーシング

つまりDream50というのは始祖CR110をもう一度現代に蘇らせたバイクというわけ。確かにネオレトロなカフェレーサーでもあるんだけど、レーサーレプリカでもあるんです。

単にDOHC積んだ頭のおかしい原付ではない事が分かってもらえたでしょうか。

 

これが製作されるきっかけとなったのはホンダが創立50周年という節目を迎えた事。その50周年を飾るバイクとして作られたわけ。

ドリーム50とS800

ちなみに車の方ではS2000がその役目を担っていました。上のカタログにチラリと載っている車はその元となったS800。

 

「世界最少の4サイクル・DOHC・4バルブエンジンを再び」

を合言葉に、穴空きラバーベルトと長いフューエルタンク、お椀型のシートカウル、アルミのステップやトップブリッジ、樹脂でなくスチールなフェンダー、アルマイト加工ホイール、各部バフ仕上げ・・・などなど原付じゃない装備の数々。

AC15カタログ写真

ただし、単純に似せるというコンセプトではなくブレーキがドラムからディスクになっているのを見ると分かる通り"最新技術のCR110"というオマージュのようなコンセプト。

だからエンジンも同じDOHCだけど、Apeのご先祖様でもあるXR80Rの物をベースにオートテンショナー付きセミカムギアトレイン化しメンテナンスフリーにしたもの。

AC15E

それでも15000rpmまで刻まれているタコメーターと、驚異的な吹け上がりの軽さという単気筒50ccにあるまじき物を持っています。

 

 

で、これで32万9000円・・・まあそれくらいになりますよね。そして売れませんよね。今で言えば50万円する原付を買うかって話。

年間販売目標8000台なんて売れるわけもなく3年ほどでカタログ落ちになったのですが、その後も彼方此方で新車が残っていました。

赤銀

こちらは同年末に値段据え置きで登場したワークスマシンと同じ赤黒モデル。1000台限定だったようですが恐らく1000台も売れていない。

 

そんなお世辞にも褒められたセールスを残せていないDream50ですが、エンジニアは本当に楽しく作っただろうなと思います。

ドリーム50サイド

よくモンキーやエイプなどを原型を留めないほど弄ってる比較的年齢の高い人を見たことがあると思います。いわゆる4miniというジャンルで大人のミニ四駆みたいなジャンルですね。

わからない人には一生わからないジャンルですが、分かってしまうと一生ハマってしまう恐ろしいジャンル。ハマってる人は耳が痛いでしょう。

 

Dream50を見ると"そういう事が大好きな人"がホンダ50周年を祝うというよりそれを利用して好きに作ったんじゃないかという感じが凄くある。

ドリーム50にエンジン

というよりも、そうでなければ精密機械と呼ばれるセミカムギアトレインのDOHCの50ccエンジンだの、スチールフェンダーだの、オフセットタンクキャップだの、溶接痕を見せないフレームワークだのを採用する理由がない。

 

しかもこれで終わらないんです。現代のCR110を作るという悪ノリにも似た勢いはまだ続きます。

HRCドリーム50

ホンダの中でも先鋭集団であるHRCからKITパーツ及びKIT組み込み済マシンDream50R、フルキットのコンプリートマシンDream50TT(限定)が発売。

アルミ製のフェンダーやオイルキャッチタンクといった外装から、専用カムやら専用クランクやらビッグキャブやらで1.4馬力UPとレッド18000rpm化、そして6速クロスミッションという一切遊びのない構成。

AR02

そしてHRCが開発するということは・・・そう、Dream/レトロ50CUPが開催されました。これはDreamの開発が始まる前から決まっていた既定路線。

モノクロで見るとその光景は正に1960年代のレースそのもの。

ドリーム50レース

とても2000年代に行われたレースには見えませんね。オッサンによるオッサンのためのオッサンのレース。

 

・・・と長いこと説明したわけですが、だからといってDream50に惚れる若者が居るかといえば残念ながら余り居ないでしょう。

"最高のオッサンほいほいバイク"くらいの認識でもまあ構わないと思います、実際その通りなわけですから。

でももう少ししたらそんなオッサン達の気持ちがわかる日が必ず来ますよ。

ドリーム50カタログ写真

ホンダは2047年に創立100周年を迎えます。約30年後の話で気が早いですが必ず何かしら出してくるハズ。

そしてその頃はオッサンになってるでしょう。ということは今度はホイホイされる側になっているという事です。

エンジン:空冷4サイクルDOHC単気筒
排気量:49cc
最高出力:
5.6ps/10500rpm
最大トルク:
0.42kg-m/8500rpm
車両重量:88kg(装)

系譜の外側一覧

DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

対BMW秘密兵器 オメガモルフォ
GTS1000/S
(4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

バイクにとっての直列6気筒
Z1300
(KZ1300A/B)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

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楽し危なし
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(4U1/7)

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シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
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決して多くない人たちへ
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Z650
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X4
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(ZR750C/D)

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PS250
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冒険という感動創造
トレール250DT1
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二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

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