「INTERSTATE ADVENTURE」
1986年から北米専用モデルとして登場したVOYAGER XII/ZG1200A~B型。
A型は初年度のみの素モデルで、2年目からはCB無線やカセットテープなどを付けたB型となっています。
Z1300の系譜でも紹介したのですが、そもそもボイジャーはZN1300VOYAGER/ZN1300Aというモデルが先にありました。
これは当時アメリカで定年退職した夫婦の趣味としてロングツーリングがFLT(ハーレーのツアラー)の登場も相まって流行ったのがキッカケ。
カワサキもこれ合わせて1979年に後付カウルを最初から装備したZ1300Turing/KZ1300B型を出し、それを更に独立させる形で1983年に誕生したのがボイジャーなんですね。
Z1300/KZ1300A
※6気筒Z
↓
Z1300Turing/KZ1300B
※6気筒Zのドレスカウル装着車
↓
ZN1300 VOYAGER/ZN1300A
※ドレスカウル前提の新設計グランドツアラー
という流れ。
ちなみにこのツアラーブームを日本にも持ち込もうとしたのが昭栄化工株式会社・・・そうヘルメットで有名なSHOEIだったりします。
こんな感じでCB750やZ750FXなどのネイキッドに装着できるドレスカウルを発売していました。流行らなかったのか、あっと言う間に止めましたが。
話を戻すとボイジャーはZ1300をベースとしたグランドツアラーだったので当然ながら並列6気筒。
そのうえ4フィート(1.2メートル)にもなるワイドな防風カウルやパニアはもちろん、羊皮シートやらラジオやらWエアホーンやら電子計やら何やら載せる贅沢三昧なうえにツインオルタネーター(発電機が二個)というおまけ付き。
そのためGL1100が乾燥重量310kg/4950ドルだったのに対し
「乾燥重量387kg/7299ドル」
というライバルも真っ青というか火付け役のFLTすら驚くまさに文字通り巡洋艦(クルーザー)と言ったほうがいい重さと値段を持っており、あのアメリカ人ですら躊躇するほどだった。
そこで後継としてオーバーラップする形で1986年に誕生したのがVOYAGER XII/ZG1200A-B。
後にZEPHYR1100へ積まれる事になる二軸バランサーを採用した無振動の新設計並列4気筒エンジンを搭載し乾燥重量317kgと70kgものダイエットに成功。
更にホイールベースも短くすることでクセを減らしコーナーなどの軽快感を上げ、生産もB型からアメリカのリンカーン工場でするようにした事で車体価格を抑えることにも成功。
犇めき合ったグランドツアラーという厳しいクラスで
「ストップ&ゴーも苦じゃない」
と評価も上々で1994年にポジションやクラッチスプリングなどの小変更のみながら2003年まで2000台/年ほど安定した人気でした。
そのため今でもアメリカボイジャー協会という日本でいうオーナーズクラブが今もあります。
そしてここによると2003年に排ガス規制に対応できず生産終了となった際にカワサキから次期型ボイジャーについてのアンケートを求められ、結果としてもう一つのツアラー
『CONCOURSE(1400GTRのご先祖)をベースとした新型』
という話にまとまったものの生産国の問題で頓挫。
そこで目をつけられたのがアメリカで生産されていたバルカン。これをベースとし2009年にVN1700VOYAGERとしてボイジャーは復活を果たしました。
6気筒から始まって4気筒になって今は2気筒という何とも面白い変化。だから向こうでは初代をボイジャー6、二代目をボイジャー4、三代目をボイジャー2と呼んでいたりします。
最後にもう一度VOYAGER XII/ZG1200A-B型に話を戻すと、このモデルだけローマ数字になってますよね。
先代はZN1300という名前だったのに急にXIIになった・・・実はこれVOYAGER XIIを最もよく表している言葉だったりします。
というのもこのVOYAGER XIIには軽量化だけではなく、もう一つ別の狙いがありました・・・それは
「女性にも乗ってもらえるグランドツアラー」
という狙い。※カワサキモーターサイクルヒストリーより
軽く乗りやすくすると同時に名前をXIIにした理由は1200になった事だけではなく、女性自身が運転して旅をする事も出来る
『クイーンのグランドツアラー』
という事を表すための言葉でもあった。もしかしたら夫婦二人がゆったり出来るクイーンサイズという意味も含んでるのかも知れないですね。
いずれにせよVOYAGER XIIはボイジャー1200とかボイジャートゥエルブと呼ぶより
「ボイジャークイーン」
って呼んであげるのが一番カッコイイし似合ってるんじゃないかと。
主要諸元
全長/幅/高 | 2815/965/1485mm [2595/960/1580mm] |
シート高 | 755mm [745mm] |
車軸距離 | 1620mm [1645mm] |
車体重量 | 317kg(乾) [387kg(乾)] |
燃料消費率 | – |
燃料容量 | 23.2L [27.0L] |
エンジン | 水冷4サイクルDOHC4気筒 [水冷4サイクルDOHC6気筒] |
総排気量 | 1196cc [1286cc] |
最高出力 | 97ps/7000rpm [130ps/8000rpm] |
最高トルク | 11.0kg-m/5000rpm [12.1kg-m/6000rpm] |
変速機 | 常時噛合式5速リターン |
タイヤサイズ | 前130/90-16(67H) 後150/90-15(74H) [前MR90-18 後MU90-16 前120/90-18 後140/90-18(87以降)] |
バッテリー | Y50-N18L-A |
プラグ | DPR8EA-9 または X24EPR-U9 [BPR6ES または W20EPR-U] |
推奨オイル | MA適合品SAE10W-40から20W-50 |
オイル容量 | 全容量4.0L 交換時3.2L フィルター交換時3.5L [全容量5.9L 交換時5.3L フィルター交換時5.9L] |
スプロケ | – |
チェーン | – |
車体価格 | ※国内未発売 ※[]内はZN1300A |