「Tボーンステーキ作戦」
Z2の登場から3年後の1976年に登場したZ750TWIN。その名の通り並列二気筒エンジンを積んでいます。
直列4気筒のZ2が既にあり人気だったにも関わらず何故このバイクを出したのかというと、トライアンフを始めとした対ブリティッシュツインに対抗するため。
四気筒というのは確かに性能は良いけど、どうしても重いし幅もあるから取り回しに難がある。
そういった理由からZ1やZ650だけでは拾いきれない層をトライアンフやBSAに持って行かれていた。
既にWというZ750TWINに近いツインのスポーツバイクを出していましたが、いかんせん設計が古すぎる事もあり苦戦していた。
そこでカワサキはZ1のニューヨークステーキ作戦に次ぎ、ブリティッシュツインとは一線を画するツインを作る作戦
「Tボーンステーキ作戦」
を打ち立てたわけです。カワサキはステーキが好きですね。
だから360度クランク二気筒というWと同タイプのエンジンを積んでいるわけだけど、W系ではなくZ系の見た目になっている。クランクが分からない人は「二気筒エンジンが七変化した理由-クランク角について-」をどうぞ
もちろん見た目が違うだけではないです。当時としては中々ハイメカなエンジン。
というのもこのZ750TWINはエンジンのクランクが通常とは反対、つまり逆回転するようになっています。
なぜ逆回転クランクを採用したのかというと、振動を消すバランサーを二本も(二軸バランサー)を追加するため。
二軸バランサーというのは余計なシャフトを二本も追加するわけなので、当然ながらエンジンが大きくなってしまう。
通常のバイクはタイヤと同じ方向に回り、メインシャフトが逆回転、それをカウンターシャフトが戻してチェーンを介しタイヤを回す正→逆→正の三軸となっています。Z1やZ2もこれです。
しかしこれではギア同士を噛み合わせないといけないので、クランクを挟むように配置する必要がある二軸バランサーを入れるスペースが無い。
そのスペースを設けるにはクランクからメイン(一次伝達)までの距離を稼げるチェーン方式(プライマリーチェーン方式)を採用する必要があった・・・ただそうすると問題が生じます。
正→正→逆と回転方向が進行方向と反対になってしまうんです。
だからプライマリーチェーン方式の場合は基本的にこうなります。
正→正→逆→正と正回転に戻すためにもう一つシャフトを追加する四軸構造となるわけです。
しかしながらこれに更にバランサーシャフト二本を加えようとなるとこうなる。
これでは二気筒の武器であるコンパクトさが無くなってしまう。
そこでカワサキ閃きました。
「最初を逆回転させればいい」
逆→逆→正。こうすれば正転用のシャフトが要らずバランサーを追加しつつ三軸に収める事が出来る。
逆回転クランクにはこういった狙いがあった・・・・わけですが、これが仇になりました。
当時二軸バランサーというのはまだまだ珍しく、ノウハウが乏しかった事もありエンジンの回転数に対しバランサーやチェーンの耐久性が追いついていなかった。
ではどうするかといえばエンジンの回転数を落とすしかない。
Z750TはDOHCの大排気量にも関わらずエンジンのB/S比がスクエア(78mm×78mm)で、まるでハーレーかと思うほど圧倒的に下が太く、上が伸びないエンジンになった。
だからといって決して遅いわけでもない上に、もともと360度ツインで高回転なんて不合理な話。それに二軸バランサーを組み込んだおかげで他にないシルキーなツインエンジンにも出来た。
しかしツインスポーツとして人気を得ることは出来ませんでした・・・何故なら弾けるようなパンチが無かったから。
カワサキが振動と捉え消していたのは、振動ではなく鼓動だったという話。
主要諸元
全長/幅/高 | 2180/815/1150mm |
シート高 | -mm |
車軸距離 | 1450mm |
車体重量 | 218kg(乾) |
燃料消費率 | – |
燃料容量 | 14.5L |
エンジン | 空冷4サイクルDOHC二気筒 |
総排気量 | 745cc |
最高出力 | 55ps/7000rpm |
最高トルク | 6.0kg-m/3000rpm |
変速機 | 常時噛合式5速リターン |
タイヤサイズ | 前3.25H19-4PR 後4.00H18-4PR |
バッテリー | YB14L-A2 |
プラグ | B8ES [B6ES※78年以降モデル] |
推奨オイル | – |
オイル容量 | – |
スプロケ | – |
チェーン | – |
車体価格 | – |
マイナーモデル(失礼!)の詳説ありがとうございます。
チエインプライマリー墨守がすべての根源かと。
HさんのHAWKなんて、あれ程までにFunでしたから。