
「走れ、国産。¥59,800。」
2003年に発売されあまりの安さに大きな話題となったチョイノリ。
この値段で出すことが出来たのは徹底的に部品点数を減らしたからです。

サイドスタンドや左ミラー、そしてセルスターターもメットインも付いていない。
更に21世紀にもなってリアサスが無いリジッド仕様で分厚いシートがサス代わり。燃料計やタコメーターはもちろんオドメーターすら無し。
エンジンも耕運機などに使われる汎用OHVエンジンがベースのオイルポンプすら付いていない掻き揚げ式で、当然ながらキック始動のみ。

これらの徹底した削減によりレッツIIが469点の部品で造られていたのに対し、チョイノリは309点という少なさに。
どうして部品点数の削減が大事かというと、部品点数を減らすということは生産コストはもちろん工数も減らせるわけなので、組立に必要な人間や組立時間の削減にも繋がり労務コストもカット出来るからです。

だからチョイノリも部品点数の削減で従来の1/5程度、一台あたり11人×16分で組み上げていたそう。
※レッツIIは約50人体制
後にセルやオドメーターが欲しいという人のために+1万円のセル付きや、OPパーツで用意していた物を標準装備したモデルも販売されました。

これはスクリーンを装備した『チョイスク』さん。
こっちはカゴを装備した『チョイカゴ』さん。

チョイノリはあまりの安さからあっという間に5万台を出荷するほどの人気でした・・・が、好評だったかと言うと40km/hがやっとな非力さや耐久性の問題などで不評を買った面もありました。
特にエンジンの問題は顕著で、まず10000km持たなかった。

これはエンジンのバルブを動かすカムが主な原因。
コストカットの一環でプラスチック製だったため簡単に擦り減ってしまいバルブを開けられなくなってしまうんです。
ただ翌年の後期型(2004年K4以降)でプッシュロッドやロッカーアームと共に改良されています。

これはその後期から追加されたチョイノリSS。
下の写真はウィンカーをハンドル改めてバケット取り付けボスを取り付けたチョイノリIIです。

結局チョイノリは10万台を超える出荷となったのですが、排ガス規制に伴うコスト増の問題から2007年モデルをもって生産終了に。
多くの人の記憶に残り、また一部の人には今も愛されている原付でした。
ただ個人的には学生とかの若い人にもっとちょっと人気が出てほしかったなという思いもあります。

最初に言った通りチョイノリはコストカットの為に部品点数が少ない原付です。ボルト数はレッツの半分しかない。
でもそれは言い換えるなら分解するのも簡単。
つまり
「工賃もったいないしこれくらいなら自分で直せそう」
と、どんなバイクより思えるやつなんですよ。

そうやって自分で触るようになれば原付とはいえバイクが
・消耗品にはどういうのがあるのか
・どうやって走っているのか
・何処を弄れば変わるのか
を自然と学ぶ事が出来る。ゼロハンブームが巻き起こっていた70年代の若者と同じ様にです。

ゼロハン時代に比べたら結局どう弄ったって速くはならないんだから安全性もある。
車体価格が安いから当然ながら部品も安いから失敗しても痛くない。
要するにチョイノリはお金のない若者には打って付けの教材的原付だったなと・・・。
まあこれは個人的な意見で、スズキはこんな極端な原付を造った理由は別にあります。
実はチョイノリはスズキ取締役会長である鈴木修さんが発案者。

鈴木会長は
「二輪も四輪も1cc当たり販売は1000円が妥当」
という持論を持っていました。
しかしこれは技術者から言わせると非現実的な数値だったので守れなかった。
それに対し鈴木会長がついに業を煮やし
「一度でいいから俺の数字目標を満たした国産スクーターを作れないか挑戦してくれ」
と懇願したんです。

これがチョイノリが生まれる事となった理由。
ちなみに名付け親も鈴木会長で、由来はその名の通り”ちょっと乗るだけ用”だったから。
少し話がそれますが鈴木会長が名付け親であるモデルとして他にも軽自動車のワゴンRやアルトがあります。
ワゴンRは最初『ジップ』という名前で行く予定だったんですが、名前がダサいとして

「セダン(アルト)もあるし、ワゴンもあ~るで『ワゴンR』だ」
としてワゴンRに。
そしてアルトの方はというと

「あるときはレジャーに、あるときは買い物に。あると便利なクルマ。」
としてアルトに・・・鈴木会長は大のダジャレ好きなんです。
そしてこの1979年に出た初代アルトは47万円という安さで大ヒットしたんですが、実はこれも鈴木会長が
「1cc/1000円のクルマに挑戦してくれ」
と懇願することで生まれた会長のお気に入りのクルマ・・・そう、つまり鈴木会長は二輪版アルトを生み出そうとしたんです。

ただし、チョイノリにはアルトの時と違いもう一つ別の思いも込められています。
当時アジアの安い労働力(日本の1/30)を見込みコストカットの一環で海外への工場移転する流れが加速していました。

この流れに対し鈴木会長は
「日本のものづくりを、そうやすやすと海外へ移していいのか。」
と危機感を抱いていた。
そして
「アジアの人件費が1/30というなら、アジア人の30倍頭を使えば対抗できる」
と檄を飛ばし、メイドインジャパンでもまだやれるという事を証明したかった。
そしてその思いにスズキのエンジニア達が30倍頭を使って応えた事で1cc/1000円に限りなく近い原付『チョイノリ』を造ることが出来た。

「走れ、国産。¥59,800。」
このキャッチコピーはそんな会長の思いとエンジニアの叡智が込められているんです。
文献:俺は、中小企業のおやじ
主要諸元
全長/幅/高 | 1500/620/975mm |
シート高 | 680mm |
車軸距離 | 1055mm |
車体重量 | 39kg(乾) [42kg(乾)] |
燃料消費率 | 76.0km/L ※定地走行テスト値 |
燃料容量 | 3.0L |
エンジン | 空冷4サイクルOHV単気筒 |
総排気量 | 49cc |
最高出力 | 2ps/5500rpm |
最高トルク | 0.30kg-m/3500rpm |
変速機 | Vベルト |
タイヤサイズ | 前後80/90-10(34J) |
バッテリー | – [YT4L-BS] |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
CR6HSA |
推奨オイル | スズキ純正 エクスター |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量0.35L 交換時0.3L |
Vベルト | 27601-22G00 |
車体価格 | 59,800円(税別) [69,800円(税別)] ※[]内はセル付き |
乗っていた車の駐車場が家から遠くきつい坂の果てにあり
それまでは歩いて我慢していましたが
事故で足をやってしまい、歩くのが辛く仕方ないから50の原付でも買うしか無い…となりまして
片足動かずともセンタースタンドを上げられて、多少の押し引きが出来て、
お手軽に買えて修理も楽で軽くて小さい
、なモノを探していましたが
片手片足もがれた人間とは実に無力で
おばちゃんがかるく乗るような廉価スクーターすら足が痛くて扱えず
いよいよこれは覚悟をするか、家と車の往復に片道30分かけるか と思いましたら
静かな岡の浜の松からコレが現れ。
20km/hで心配になり
30km/hで不安を感じ
40km/hで恐怖の唸り雄叫びを上げるエンヂン
メーカー指定3千キロどころか500km走行毎にオイルを換えるも指定量僅か300ccが減って出てくるエンヂン
オイル管理に気を遣っているのにじわり減りゆく樹脂のカム
勝手にネジが緩みガソリンを大地に還すキャブ
チョークを引いてもかかりません、スロットルにコツが要る始動性
万能な乗り物など無い、我慢しろ、
足が完治するまでの付き合いだ。
と思ったんですが不思議と愛着が湧き
それから8年も乗っておりました
これで日本一周もされた?方も居られるとか?一応自分も隣の県までは走らせましたので出来るとは思いますが、、
ハッキリ言って苦行ですよ。
ちょい乗り用途ならどんな方にも良いでしょう、本当にちょい乗りならば
一度思い立ちエンジンの腰下に至るまで分解し造りを観察しましたが
他の50ccと同じ使われ方をされたら
どう対策しても耐えれなかったと思いますね
1番厳しいのはオイル量でしょうか
300ccはちょっと…
色々、語りたい事がありすぎるバイクでして、これの話をし出したら一晩中はいけますがこの辺で
もしこれを手に入れこれから乗り出す方いらっしゃいましたら
35km/h以上を出さない事
樹脂カムはK4以降の対策品に交換、
チェーンにオイルを垂らし欠かさぬ事、
エンジンオイルは車用の安いもので良いので3ヶ月/500km走行以内に交換される事
以上をお勧め致します。
いずれもこのバイクの1番のネックである
エンジンを労わる為です。
こら本当にキツいバイクだらあ(三河弁)
ご観覧ありがとうございました。
手のかかる子ほど可愛い・・・と言いますが、まさにそんな感じでしょうか。
まるで生き物の様に、ズボラを許さず無理が効かないバイク。ホンダのスーパーカブとは正反対ですね。
チョイノリでツーリングは間違いなく大冒険です(笑)。
ヤフオクで2台購入。妻と宮島観光に使い、その後一台は田んぼと家とをつなぐ農耕馬として愛用されています。