系譜の外側|NSR400

NS400R
(NC19)
-since 1984-

NS400R

「The Concept from GP Technology」

WGP500でいきなり15年ぶりの勝利をもたらし、翌年の1983年には世界チャンピオンにまでなったNS500のレプリカモデルと登場したのがこのNS400R(NC19)です。

NS500

これがそのNS500。開発者は福井さんで後に六代目ホンダ社長に就任されました。

 

NS400RはそんなNS500のレプリカなわけですが、2st水冷V型90度バンク三気筒、三連フラットバルブ・スラントキャブ、アルミ一体成型のNSシリンダー、電子制御排気デバイス。

それを積む車体も専用設計の角型フレームを始めとしたアルミのてんこ盛りにリモートアジャスター付きプロリンクサスペンションなどなど・・・豪勢な作り。

NC19

馬力も59馬力(海外仕様は72馬力)と申し分ない・・・でも当時を知らない人でも

「NSR250は知ってるけどNS400R?NSR400?」

という人が多いと思います。そうなるのも無理もない話。このNS400は今ひとつ人気が出ませんでした。

 

理由は色々ありますが、まず先に出ていたMVX250Fの影響が大きいです。

NS400Rロスマンズカラー

MVX250FもNS400Rと同じV型2st三気筒を積んだスポーツバイクだったのですが、これが焼き付きやすく、また見た目もちょっとアレだという事でわずか数ヶ月で生産終了。

既に生産を開始し発売寸前だったMVX400Fも急遽お蔵入り。その為NS400Rは再設計されたものとはいえMVXのフルカウルバージョンという焼き直しなイメージがあった。

 

NS400RがMVX400の焼き直しというイメージを持たれた理由はもう一つあります。それはエンジン。

確かにNS500はV型三気筒で世界を制しました。そしてNS400Rも世界を制した同じV型三気筒・・・なんだけど形が全然違うんです。NS500はバンク角を稼ぐため前1/後2というV型三気筒でした。それに対してNS400Rは前2/後1という正反対の形をしている。これは保安部品の関係でそうなっています。

NS500-NS400Rエンジン

でね、このレイアウトMVX250Fと同じレイアウトなんです。

更にNS500は文字通り500ccなのにレプリカというわりには387ccと500ではないばかりか400というのもちょっと微妙な寸足らずな排気量。何処からどう見てもMVX系にしか見えなかったというわけ。

 

それに加え車体を見てもらうと分かりますが、アルミだらけという豪華さの中にもダブルシートやゴムラバー付きステップ、110という1クラス下の細いリアタイヤなどレプリカとしては疑問を抱く装備や配慮が随所にありました。

NS400Rロスマンズカラー

それなのにNS400RをNS500のレプリカだと強く推すから尚のこと疑問に思う人が多かった。

もちろん400というモンスターパワーに気が引ける人が多かった事や、まだこの頃はレーサーレプリカの黎明期だったから仕方のない面もあるんですけどね。

 

ただ(ここまで言っておいてアレですが)NS400Rで言いたいのは売れなかった事ではありません。なぜ売れなかったのかではなく、なぜここまでグダグダだったのかという事。

これは当時を振り返ったエンジニア達のインタビューを読むにホンダの足並みが揃っていなかった事が最大の理由かと。

VF400F

当時ホンダのエンジニア達は本田宗一郎の信念に従って未来ある技術4stで戦っていました。CB50、XL250、VT250F、そして400でもVF400Fなどライバルが2stだろうが真正面から4stをぶつけていた。

しかし2stスポーツの需要は伸びる一方。しかも人気車種は(HY戦争の)決着がついたとはいえ永遠のライバルであるヤマハのRZ。営業からの圧力は凄まじいものがあったわけです。

 

それはレースでも同じ。

NS400Rの元である2stレーサーNS500は、楕円ピストンでお馴染み4stレーサーNRがあまりにも不甲斐ない戦績だったから作られた経緯があります。※詳しくはNRの系譜を参照

歴代NR

「まず勝て、道楽なら金の無駄だから辞めろ」

という圧力があったから生まれたマシンです。

ただこれがまあ見事チャンピオンに輝いたわけですが、同時期に市販車のフルカウルも国土交通省から認可されるようになった・・・となると営業はNS500の公道モデルを出せとなりますよね。一台でも売れるバイクが欲しかった時代だったんですから。

今までは見ることしかできなかったチャンピオンマシンの公道モデルが売れないわけはない。

 

ただ事はそう簡単じゃなかった。

HRC

というのもNS500はワークスレーサー、作ったのはホンダの中でもHRC(Honda Racing Corporation)というレース部門。市販車部門とは全く別のところです。

「NS500の公道版作る」

と言ったところで触る事すら許されないほどHRCというのは門外不出の部門でした。

しかもNS500はまだチャンピオンを獲得して1年しか経っていない状況ですから。

 

つまりこういう状況になってしまったわけです。

【営業】NS500のレプリカが欲しい

【HRC】NS500技術は教えない

【市販】ホンダは4st屋だ

・・・見事に噛み合ってない。

「2stが人気だからNS500の市販車を作れ」

と市販車部門に言った所でNS500を作ったわけではないし、HRCは何も教えてくれないという八方塞がり状態。

それでも何とか必至の思いで完成させたら今度は市場から

「何故もっとNS500ライクにしなかった」

と国内外問わず責めたてられる。酷な話ですが部外者から見れば同じホンダが作ったバイクですからね。

 

噛み合っていない歯車が生んだNS400R。でもこの一件があったから後に登場するNSR250はHRCと市販という垣根を越えた試み(共同開発)がなされ大成功を収めた。

NC19表紙

NS400Rは人気もそれほどだし、お世辞にも褒められるバイクとは言い難いけど、同じホンダながら離れていく一方だった市販とHRCという関係を取り持つキッカケとなったバイク。

つまり決して名車では無いけど、決して無視は出来ないホンダのレプリカ。まあだからこうやって書いてるんですけどね。

 

エンジン:水冷2サイクルピストンリードバルブ三気筒
排気量:387cc
最高出力:
59[72]ps
8500[9500]rpm
最大トルク:
5.1[5.4]kg-m
8000[8500]rpm
車両重量:163kg(乾)
※[]内は輸出仕様

系譜の外側一覧

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拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
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GTS1000/S
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750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

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イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

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本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

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ZR-7/S
(ZR750F/H)

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大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

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ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

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Z1300
(KZ1300A/B)

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NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

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タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

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NR
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TRX850
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嘲笑される伝説
GS1200SS
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ZEPHYR1100/RS
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狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

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