こう見えて宗一郎のお墨付き モトコンポ (AB12) -since 1981-

モトコンポ/AB12

「ライヴに遊べるトラバイ(Trunk Bike)」

モトコというアダ名で根強く親しまれ再び人気急上昇中のような気がする全長わずか1185mm、車重も装備重量で45kgしかない原付一種のモトコンポ/AB12型。

大きさ

こうやってカブやモンキー50と並べてみるとモトコンポが如何に小さく、また背が低いかが分かりますね。

何故これほど小さいのかというと

「シティ(車)に積めるバイク」

というのがコンセプトだった事にあります。

シティとモトコンポ

キッカケは後に『HY戦争』と呼ばれるようになった原付を中心に巻き起こっていたホンダとヤマハの常軌を逸したシェア争い。

そこで

「車を買う人に原付も買ってもらって台数を稼ごう」

という算段だったわけです。

補足:HY戦争の系譜

ただ少し驚きだったのはモトコンポの開発を要請したのがHY戦争の陣頭指揮を取っていた二代目ホンダ社長の河島さん、つまり社長勅命プロジェクトだったということ。

もしかしたら河島さんは70年代に行われていた『ホンダアイディアコンテスト』を覚えていたのかもしれないですね。

原付に乗る本田宗一郎

これはホンダの若手技術者が枠にとらわれず自分のアイディアを形にしてプレゼンする大会。

そしてそこで出された一つが『携帯用オートバイ』という作品。

モトコンポ原案

どう見てもモトコンポですね。

しかも実はこの『携帯用オートバイ』はその斬新さから社長賞つまり本田宗一郎賞を取っています。

モトコンポ積載

それから10年、まるで掘り起こされる様な形で市販化となったという話。モトコンポが宗一郎のお墨付きというのはこの事から。

ただしこれには少し問題がありました。

というのも社長の勅命が下った時、もう既にシティは完成しており約半年後に控えた発売日を待つ状態だった。そんな差し迫った状況からモトコンポの開発は始まったんです。

しかも開発メンバーは僅か4人で突貫工事のようなスケジュール。メンバーの一人だったデザイナーの小泉さんいわく

コンセプトスケッチ

『箱』

というデザインコンセプトのもとスケッチをサクッと終わらせ、クレイモデル(検討/修正するモデル)をすっ飛ばしていきなりモックアップモデル(見本的なモデル)を造って開発開始。

設計も実質2人だけだったにも関わらずモックを忠実に再現しつつガソリンが溢れないように完全密閉タンクや逆止弁、そして折り畳み格納ハンドルなどでシティに積めるよう随所に創意工夫。

モトコンポ横積

そのため意外と知られていないんですがモトコンポは横積みも出来るようになっています。

シティに積むことを考えただけあってスッポリ収まる絶妙な固定ですね。ちなみにシティの荷台の幅は1270mmです。

モトコンポ説明文

ではこの圧倒的なコンパクトさをどうやって実現させているのかというと中身はこうなっています。

モトコンポの中身

牛の部位紹介みたいになっていますが、中でも注目してほしいのはメインフレーム(黒い横線)の上と下の境目。

パワーユニットを全てメインフレームの水平ラインより下に配置しているのが分かると思います。これがモトコンポ一番の特徴。

モトコンポはシティに積める事が絶対条件だったんですが、加えて開発チームが絶対に実現させたかったのが

モトコンポカタログ写真

「上面を平らに出来るようにする事」

でした。

そのためにこうやって下に全て詰めてハンドルやシートを収納出来るスペースを確保したわけですが、何故そこにこだわったのかというともちろん

モトコンポ折りたたみ時

「箱感を出すため」

です。

これが可能だったのは河島社長から出された勅命が

「シティに積めるバイクを造れ」

という条件”だけ”でコストについての言及が無かったから。

だからパワーユニットこそ開発が間に合わない事からロードパルから流用したものの、そのぶん車体回りへのコストをあまり気にせず箱にする事だけを考えて造ることが出来た。

シティとモトコンポ

ベースであるロードパルより1万円以上高い8万円という車体価格になったのはこれが理由。

加えて生産が大変だった事もあります。モトコンポの生産が始まると生産工場から

「なんてものを造ってくれたんだ」

とクレームが入ってきたんだそう。

これは車体全体を箱にするためプラスチックでキッチリ覆ったことで気温の変化による歪みから組み付けが難しくなってしまったから。

モトコンポの価格

加えてシティに合わせて豊富なカラーリングも用意と、実は結構バブリーというか大変なモデル。

デザイナーだった小泉さんも

「本当はこれ8万円で売るようなバイクじゃないんですよ」

と仰っています。※Honda Designより

NCZ50カタログ

そんなモトコンポですが市場でどうだったのかというと81年から85年までに約5万台売れました。

5万台と聞くと凄い数字と感じるかも知れませんが当時としてはそうでもない数字。タクトなんかは単年で18万台でした。

そもそもモトコンポはシティのオマケ的な立ち位置で、バイク層からすると一部のマニア向けだったことを考えると大健闘とも言えますが。

逮捕しちゃうぞのモトコンポ

ちなみにバイクマニアとして有名な漫画家の藤島さんが『逮捕しちゃうぞ』に登場させた事で人気が出たのですが、これは86年の漫画でモトコンポは既に生産終了してたっていう・・・アニメに至ってはもっと後の事。

原付層(当時で言えばファミリーバイク層)にウケなかった理由としては

「ファミリーバイクとしては少し厳しかったから」

といえるかと思います。

HONDAモトコンポ

まず一つ目としてパワーユニットがせいぜい40km/hがやっとな変速機のない2.5馬力という既に旧世代エンジンだった事に加えガソリンタンクも2.2Lしか入らず航続距離は50km未満だった事。

そしてもう一つは車に積むというコンセプトに少し無理があった事です。

皆さんモトコンポを車に積んで走っている人を見たことがあるでしょうか・・・恐らく無い人が大半かと思います。これが何故かというと車内が臭くなるからです。

モトコンポカタログ写真

これは蒸発ガソリンの大気放出が禁止となった2018年以前のバイク全てに言えることでモトコンポに限った話ではないんですが、車に積むとガソリンを積んでいる以上どうしても蒸発するガソリンが漏れ出てしまう。

つまり手軽に積めて邪魔にもならないけど、そうするとずっと車内がガソリン臭くなってしまうんですね。買ったはいいものの車に積まず庭やガレージに置きっぱなしにする人が多かったのもこれが理由。

要するにモトコンポは毎日の下駄的な使い方も、そして車に積んで現地で乗るという用途も少し難しい面があったから広く受け入れられる事がなかった。

トランクバイク

でもこれはあくまでもモトコンポを当時の下駄車として見た場合。

大衆の下駄車が原付から軽自動車に変わったいま改めてモトコンポを見ると、平面主体のプラ外装だから思い思いにデコったり着せ替えたり出来るし、走りがダメだからこそチューニングやカスタムのやりがいもある。

『盆栽4mini』

として高いポテンシャルを持っている事に改めて気付き、また実際に行動に移す人が急増しているから人気が出ている。

まあただこれは4mini沼にハマったマニアにおける話。

モトコンポが他と違って広く愛される最大の魅力はもう本当に見たまんま。

モトコンポ黄色

「バイクっぽくない」

という事からでしょう。

だからこそバイクに詳しくない人でも乗ったり弄ったり、そして飾ったり眺めたりする事に抵抗が生まれない。それが幅広い人気に繋がっている。

AB12

「必死に箱に擬態してる小さいやつ」

そんな愛らしい佇まいが多くの人を惹き付けるモトコンポの魅力ではないかと。

主要諸元
全長/幅/高 1185/535/910mm
シート高
車軸距離 830mm
車体重量 45kg(装)
燃料消費率 70.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 2.2L
エンジン 空冷2サイクル単気筒
総排気量 49cc
最高出力 2.5ps/5000rpm
最高トルク 0.38kg-m/4500rpm
変速機 自動遠心クラッチ
タイヤサイズ 前後2.50-8-4PR
バッテリー 6V-4Ah
プラグ BP2HS/BP4HS(標準)/BP5HS
または
W9FP-L/W14FP-L(標準)/W16FP
推奨オイル ホンダウルトラ2スーパー
オイル容量 1.0L
スプロケ
チェーン
車体価格 80,000円(税別)
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

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