なぜなにカワサキ AV50 (AV050A) -since 1982-

AV50

「ジャストアメリカン」

カワサキ唯一となる4miniレジャーバイクで、何故かアメリカンスタイルなAV50。

立ち位置としては当時カワサキが力を入れていたクルーザーモデルZ-LTDの末っ子的な存在。

Z-LTDファミリー

デザインも兄に倣ってるわけですが小さい分カワイイですね。写真では伝わりにくいですがKSRと同じくらいでZ125より一回りほど小さいです。

でもそんな見た目に反し結構本格的な作りをしています。

AV050Aカタログ

4st50ccながら放熱に優れるアルミヘッドを採用し5馬力(後期4.3馬力)を発揮する上に、CDI点火のエンジンに四速ミッション。贅沢なチューブレスアルミキャストホイールに、メガホンマフラーとティアドロップタンクなど文句の付けどころか無い。

そんな中でも面白いのが前後40mm動く、三段階のスライド式シート。

AV50スライドシート

ちゃんとポジションもアメリカンに出来るようカワサキらしからぬ優しさ。

そんなAV50なんですが、本当に謎だらけ。

まず挙げられるのが横型4st50ccエンジン。一体なぜこのエンジンを使ったのかと言うこと。

AV50エンジン

このエンジンは恐らく本来ならタイを始めとしたアジア向け(MAX/Sunny/Joy等のカブ系)に用意された100cc前後のビジネスバイク用の物。

※追伸 AN80Aジョイがベース

AN80A

凄く広く捉えるとKSR110やZ125も親戚といえば親戚になりますが50cc版が積まれているのは後にも先にもAV50だけ。

謎に思えるのはこの時カワサキは原付エンジンを二つほど持っていたから。

Z-LTDファミリー

一つは原付にあるまじき速さを誇りヒットしたAR50/80の2stエンジン。しかもこれAV50が出た年にモデルチェンジまでされています。

「いやそれ縦型エンジンだし」

と思うかもしれませんが、横型エンジンも持っていたんです。もはや誰も覚えていない1977年登場のKV-75。

Z-LTDファミリー

知る人ぞ知るカワサキのモンキー。海外でも75MTという名で販売されていました。

これらのバイクやKSRの流れも見ると分かる通り、カワサキは小排気量は2stに拘っていました。昔あったカワサキのカブことM50もビジネスバイクなのに2stだったんですよ。

一体なぜこれらのエンジンを使わずタイ向けのエンジンをベースにわざわざ50ccにまで落とした物を使ったのか。

AV050A

憶測の域を出ませんが、残る理由は4stしかない事を考えても恐らく4stの武器である低速の粘りが欲しかったのかと。全くふざけていないレジャーバイクですね。

これはまだいいです。もう一つ浮かぶ謎。それは1982年という発売したタイミングです。

当時原付アメリカンは珍しい物ではありませんでした。原付アメリカンのパイオニアといえば1977年に出たスズキのマメタンことOR50でしょう。

マメタンとRX50

非常に人気を呼び、それを追いかけるようにヤマハからもRX50が出たんですが、マメタンは1980年、RX50は1982年を最後に生産終了となりました。

これはHY戦争があったからです。

ニューモデルラッシュと薄利多売によるシェア争いで原付市場が焦土化。勝ったホンダですら終戦するやいなや発売予定だったニューモデルを急遽取りやめる程の状態でした。

カワサキAV50

更にもう一つネガティブな要素として原付一種の最高速60km/h規制が設けられたことがあります。

上で紹介したAR50など加熱していた原付スポーツが当たり前の様に100km/h出ることによる事故増が原因で、AV50が出た年と同じ1983年から施行されました。

AV50カタログ裏面

つまりAV50は出る前から失敗が決まっていた状態で登場したわけです。これの発売に関してはユーザーよりライバルメーカーの方がビックリしたと思います。

比較的シェア争いに沈黙を守ってきたカワサキが最後の最後に出してきたレジャーバイク。もちろん売れなかったわけですが・・・謎はまだ続きます。

奇しくもAV50が出て暫くすると、当時の中型で起こっていたアメリカンブームの波及で原付アメリカンがライバルから登場し人気を呼びました。

原付市場の復調も相まって需要は高く、90年代半ばまで人気が続きました・・・が、カワサキはその需要に応えるような後継や派生を出すこともなく、AV50の一世一代でブームが来ると同事に終わらせ再び沈黙したんです。

カタログぎ表紙

いったい何故このタイミングで出したのか、いったい何故ブーム到来と同事に販売をやめたのか。

人気が出ることも、ピックアップされることも、後継が出ることも無かった以上、もう一生わからない謎だらけな原付なのがこのAV50なんです。

主要諸元
全長/幅/高 1665/695/1030mm
シート高 -mm
車軸距離 1100mm
車体重量 76kg(装)
燃料消費率 81.5km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 7.6L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 49cc
最高出力 5.0ps/9500rpm
[4.3ps/7000rpm]
最高トルク 0.4kg-m/7000rpm
[0.45kg-m/6500rpm]
変速機 常時噛合式4速リターン
タイヤサイズ 前2.75-14-4PR
後4.00-10-4PR
バッテリー 6N6-1D-2
プラグ D7EA
[C6HSA]
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40から20W-50
オイル容量 全容量0.7L
スプロケ 前14|後39
チェーン サイズ420|リンク92
車体価格 156,000円(税別)
※[]内は84年モデル以降
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

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