
「More of everything」
フルスペック125スクーターとして登場したフォルツァシリーズの末っ子FORZA125。
FORZA125は開発設計は日本だけど製造はイタリア。だから日本では並列輸入のみで正規販売されていませんが、2015年の東京モーターショーでは出品されたので覚えている方も多いと思います。

・前後ディスクブレーキABS
・6段階可変スクリーン
・フルLEDライト
・ヘルメットが二個入る48L大容量メットイン
・多機能LCD付きメーター
・120/70-15|140/70-14の太いタイヤ
・最高速度160km/h
もうこれ以上ないというほどの装備と性能。

プラスαで付けたいアクセサリーといえばグリップヒーターと防水スマホマウントケースくらい。
しかしそのゴージャス路線は留まる所を知らず、2017年モデル(JF69)からは各部の改良に加えキーレスまで装備。

もはや125の装備じゃないを通り越してバイクの装備じゃないとも言えるような内容で、残っているのはSマチック(疑似MTモード)とトラコンくらいですね・・・要らない気もしますが。
見た目だけでなくエンジンも凄くて、PCXでも使われているeSPを4バルブ化した事によって、43.5km/L(WMTC値)という低燃費を誇りつつもクラス上限の15馬力を発揮します。
これだけのスペックと装備をしているだけあって車体価格も約5000ユーロ(日本円で65万円)とかなり高め。

65万もする125なので向こうでも
「高い」とか「これ買うなら300買う」
と言った声も結構ある。しかしそんな中で飛ぶように売れている国があります・・・それはメインターゲットであるフランスです。

ホンダも大成功したと自信満々に言っていたので調べてみました。
バイク情報サイトscooter-station.comによると、フランスにおけるFORZA125(NSS125AD)の2015年度販売台数は9月(発売から5ヶ月)時点で4608台。PCXやX-MAXはもちろん王者TMAXをも抜き去る程のトップセールスで本当に大成功していた。
「何故65万円もする125ccスクーターをフランス人はそんなに買うのか」
という話ですが、一つは自動車の免許を取得し数年すると125cc/15馬力までのバイクに無条件(または簡単な実習)で乗れる容易さにあります。

日本で小型免許の取得簡略化の話が出てきているのは、排ガス規制や騒音規制と同じようにEU(国連)と足並みを揃えるためでもあるんですよ。
ちなみに緩和に対して”事故が増える”と否定的な意見を見たりしますが、90年中頃に緩和をしたドイツやフランスでも同じような意見がありました。

しかしいざ実施してみると増えるどころか減っています。
この理由については後述するとして話を戻すと・・・フランス人がFORZA125を何に使っているかというと、日本と変わらず通勤など日常の足として。
ただ日本と大きく違う点として向こうはオートルート(フランス)やアウトバーン(ドイツ~スイス)等の日本でいうところの高速道路を125でも走ることが出来ます。

つまり向こうの人にとって125ccというのは維持費が安く、渋滞知らずで、高速も乗れるコストパフォーマンス抜群の乗り物というわけ。
でもこれはEEC(EUの道路交通法)に加盟しているEU全体で言えることで、フランスで人気がある事の答えになってませんよね。

フランスでFORZA125が人気な理由の一つはフランス人の生活、平均走行距離にあります。
ホンダはFORZA125の前にも日本でお馴染みPCXを出していました。日本と同じように欧州でもドッカンドッカン売れたんですが何故かフランスだけ今ひとつ人気が出ず。
何故なのかホンダが調査をしてみると
「長距離が辛そう」
という声が多かった。
更に調べてみるとフランス人は平均走行距離がEU諸国の中でも飛び抜けて高いことが分かった。

これはフランスが30年連続観光客第一位になるほどの観光大国なのが大きな理由です。
パリ、リヨン、マルセイユ、リール、主要都市が全て人気観光都市な国。そんな観光都市に住むのは大変です。賃貸で貸すよりも観光客に宿として貸した方が儲かるという理由から家賃が非常に高いからです。
パリで1DKを借りようと思ったら20万円/月はします。街外れに行くと安くなるけど、そうすると今度は治安がものすごく悪くなる。
その結果フランスは大きなドーナツ化現象を招いた。遠く離れた郊外から高速を乗って都市部へ長距離通勤する人ばかりになったというわけ。
そしてもう一つ。
観光都市という事で渋滞や歩行者の道路占領が本当に酷い。入るのも出るのも大変。車で移動していたら途方もない時間が掛かる。

だから通勤だけでなく街中の移動も125のスクーターという人が多い。
つまり郊外から都市部までの長距離と、都市部に入ってからの渋滞の両方を熟す必要があるフランス人にとってFORZA125のパワーとサイズはドンピシャというわけ。
でもこれ日本でも当てはまると思いませんか。ドーナツ化現象といい都市部の慢性的な渋滞といい。
しかし日本とフランスでは決定的に違う所があります。それは駐輪場です。

フランスは駐車場を追い出すほど駐輪場が充実しています。観光と取り合いになる駐車場より駐輪場を見つける方が簡単な程。だから皆125ccのスクーターで移動する。
これは国が渋滞緩和を目的として駐輪場を大量に設けた面もあります。バイク率が増えると一人あたりの道路占有面積が減るので。
駐輪場が無いにも関わらず駐禁取締でスクーター(コミューター)を死滅させてしまった日本とは大違いですね。

話を戻すとコレはA2免許取得が必要な126cc~や、高速を走れない50でなく、自動車の付帯で乗れる125じゃないとダメなんです。
フランスの人にとって”125″というのはバイクではなく自動車乗りのツール。正にツール・ド・フラ….すいません。
だから65万円もしようと売れるわけ。
「65万出せるならもっと良いバイクがある」
という話ではないんです。そもそも層が違うから。
しかしこれが126cc以上のバイクに乗るライダーにとっても実に良い方向に働いています。
車乗りの多くが(簡単に乗れる事で)二輪を知るキッカケになったからです。
このおかげでフランスでは
「バイクは社会悪だ」
と目の敵にする人は少なく、その有用性や利便性を認めている”車乗り”が多い。

日本のように
「バイクなんて禁止にしろ」
と知る機会が無いことから有用性を認めず目の敵にする人が少ない。本当にバイクを禁止にしたら必然的に車が増えるので渋滞がとんでもない事になるのに。

上で少し話した125cc免許の規制緩和をしたにも関わらず事故が減ったというのも
“車乗りのバイクに対する理解が広がった”
からです。

日本とフランスで大きく違うのは”車乗りのバイクに対する理解”が進んでいるか遅れているかという事。
でもまだ間に合う。
日本も駐輪場の充実と小型二輪免許の緩和によって、バイクに理解がある車乗りが増えれば、125で通勤する車乗りが増えれば事故も渋滞も減る。

そうやって125への理解が少しづつでも進み、市民権を得ることができれば、FORZA125が発売される日が必ず来る。
主要諸元
全長/幅/高 | 2140/755/1470mm |
シート高 | 780mm |
車軸距離 | 1470mm |
車体重量 | 159kg(装) |
燃料消費率 | – |
燃料容量 | 6.2L |
エンジン | 水冷4サイクルSOHC単気筒 |
総排気量 | 125cc |
最高出力 | 15.0ps/8500rpm |
最高トルク | 1.28kg-m/8250rpm |
変速機 | Vマチック |
タイヤサイズ | 前120/70-15(56P) 後140/70-14(62P) |
バッテリー | YTZ8V |
プラグ | SILMAR8C9 |
推奨オイル | ウルトラGP(10W-40) |
オイル容量 | 全容量0.9L 交換時0.8L フィルター交換時0.8L |
スプロケ | – |
チェーン | – |
車体価格 | – ※国内正規販売なしのため |
>車乗りの多くが(簡単に乗れる事で)二輪を知るキッカケになったからです。
本当にコレが大事ですよね。個人的には、二輪AT免許の時にも期待していた事です。