系譜の外側|ザンザス

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)
-since 1989-

テンガイ

「EXPAND YOUR HORIZONS」

リクエスト理由は間違いなく名前だなと思ったのでタイトルオチになってるんですが、真面目に話すとTengai/KL650B型は1989年に登場しました。

・水冷DOHC単気筒651ccエンジン
・セミダブルクレードルフレーム
・フロント21インチ/リア17インチ
・23Lのビッグタンク

などなど諸元からも察せるとおりオンロードもオフロードも走れるビッグシングルのデュアルパーパス。ただ日本では正規販売されていません。

テンガイのロゴ

ちなみにこの天涯/Tengaiという名前の由来ですが最初に書いたキャッチコピーから見てもおそらく

『遠く離れた地へ』

という意味かと。

英語圏のバイクメディアでは

「これは”The end of the sky”という意味だ」

と紹介されていましたが・・・なんかイメージ変わりますね。

 

そもそもこのモデルの狙いが何かと言えば一つ前のDR-BIGでも話した通りダカールラリー(通称パリダカ)ブームがフランスやイタリアを中心に欧州で起こっていたからです。

テンガイの壁紙

ただしKL650”B”となっている通りTengaiはいきなり造られたわけではなく、1987年に発売されたKLR650/KL650Aがベース。こっちは日本でも販売されました。

KLR650A

これにフルカウルを付けてフロントブレーキを2ポット化など強化を図り長距離向きにしたのがTENGAI/KL650Bというわけでなんですが、このA型はTengai/B型とは違い海外において非常に人気があり2007年まで販売された大ベストセラー車だったります。欧州向けに14Lタンクなどで軽量化をし走破性を高めたC型もありました。

2008年にはKLR650/KL650Eへフルモデルチェンジされ2020年時点でまだ絶賛販売中。つまりTENGAIの系譜は途絶えていないんですね。

KLR650E

「Oh・・・Ninja250R」

 

あとKLR650というとディーゼルエンジンを積んだM1030M1という軍用モデルも有名ですね。

M1030M1

ただこれはカワサキではなくイギリスのクランフィールド大学が開発しHDT(Hayes Diversified Technology)というディーゼル屋が生産しているモデル。

D650Aとして市販化される計画もあったんですが米軍海兵隊やNATO諸国からの需要が増加したことで取りやめ。現在はジェット燃料タイプのM1030M2などマルチ燃料モデルも造っているんだとか。

 

それで話をTengaiに戻しますが、このモデルについて知りたい事があるとするならば

『ダカールラリーとの関係性』

かと思います。

テンガイのイラスト

カワサキはペリメーターフレームやユニトラックサスなどモトクロス方面ではパイオニア的な存在なんですが、これがラリーとなると皆無といっていいほど話を聞きませんよね。

それもそのはずカワサキは国内メーカーで唯一、ダカールラリー用のファクトリーマシン開発もワークス参戦もした事が無いんです・・・が

「じゃあカワサキ車がラリーに出た事は無いのか」

というと、それも違う。

ファクトリーマシンを開発してワークス参戦という対応はしませんでしたがカワサキのバイクでダカールラリーに挑む人たちはいました。

ダカールラリー公式のリザルト資料によると本格的にカワサキのバイクがダカールラリーに出場し始めたのは第九回となる1987年から。

KLR650ダカール

TengaiのベースにもなっているKLR650のラリー仕様で6台ほど出場したようです。

これらはラリー人気が爆発していたフランスやイタリアなど現地カワサキによる活動。要するにサテライトチーム(俗に言うセミワークス)だった模様。

 

もっと遡ると第七回の1985年。

DKV750

アウディの前身に当たるDKVが製作したDKV750というバイクなんですが、これオリジナルフレームにGPz750のエンジンを積んでる・・・四気筒で挑戦という無謀な行為をしたのはヤマハ(FZ750のラリーマシン)だけじゃなかったんですね。

 

でも更に驚き、一番古くまで遡ると1979年つまり第一回にカワサキ車で挑んだ人も居た。

KL250

車種はこのKL250。KLX250/D-TRACERの始まりとなるバイクです。

当時はKLR650がまだ無いどころか、オフロードを走れる高性能4stビッグバイクって高級外車を除けばSR400のご先祖様であるXT500くらいでしたからね。

 

「それでTengaiはいつ出てくるんだ」

って話ですがTengaiが出てきたのは現地カワサキが参戦し始めてから三年後、第十二回となる1990年から。

1990年ダカールラリーエントリーリスト

それまでのKLR650から代わるように総勢6台のTENGAIがエントリーしました。しかも一人は山村雅康さんというその道では有名な日本人国際ラリースト。

そしてその時のマシンがこれ。

KLR650TENGAI ダカールラリー

名前の通りどこからどうみてもTengaiですね。

50Lのガソリンタンクを積んでいた事くらいしか情報が無いのですが#85Charbonnierという方が12位という好成績を収めています。

 

ここで改めて時系列を振り返ってみたいんですがTengai/KL650Bが発売されたのは1989年。でも実際にダカールラリーにTengaiが出走したのは1990年。

KL650B

当時ダカールラリーはファクトリーマシン(市販車じゃない純レーサー)が禁止されていない時代だったにも関わらずTengaiは市販モデルが先でした。加えてTengaiのデザインは伊カワサキ。

あくまで憶測ですがこれらから思うに

・ダカールラリーに予算を割けないカワサキ本社

・とにかくラリーだった仏伊カワサキ

この両社の妥協点として形になったのがTengaiなんだろうと思います。

テンガイ500

ちなみにあまり知られていませんが500cc以上の輸入車に高い関税を敷いていたイタリアなど向けに500ccモデルもありました。

 

それにしても四輪でラリーといえばミツビシやスバルなど重工系メーカーというイメージがあるのに、我らが川崎重工は何故そうもラリーに興味が無いんだろうかと少し悲しくなりますよね。

でもカワサキも最初から興味が無かったわけじゃないんです。ほんの少しだけ、運命の悪戯のような事がなければカワサキは日本のどのメーカーよりもダカールラリーに邁進するメーカーになっていたかもしれない過去があるんです。

それはカワサキがまだ世界進出に成功していなかった1960年代末の話。この頃カワサキは後に発売され世界的ヒットとなるZ1(900Super4)の企画が進んでいたんですが、これとは別にもう一つ企画されていたバイクがありました・・・それがこれ。

ロブスター

『コードネーム:LOBSTER』

カワサキはダカールラリーすら生まれていない時代に初の4stビッグバイクとしてZだけではなくビッグオフローダーを出す計画も進めていたんです。Z1の開発責任者だった種子島さんもZことステーキよりもロブスター推しだった。

しかしターゲットだった北米地域マネージャーが

「アメリカで求められているのはステーキだ、ロブスターじゃない」

と折れなかったためZ1を優先することに。当時のカワサキにはロブスターもステーキもどっちもやるほどの力は無かったんですね。

しかもそのステーキがアメリカ人に大ウケしたことで次もステーキ、その次もステーキとステーキ推しになりLOBSTERは開発打ち切り。

KLR600のカタログ

結局カワサキがビッグオフローダーを出したのはZ1から10年後となる1982年KL500/KL500Aと1984年KLR600/KL600Aでした。

これがKLR650そしてTengaiに続くんですが、何故これを出したかといえばLOBSTERを諦めていなかったから・・・じゃないんです。

カワサキがロブスターを諦め必死にステーキを焼いていた1976年にヤマハから出たあるバイクが人気でした。そのバイクはありそうでなかった4stビッグオフのパイオニア的な存在として、そして新たに始まったダカールラリーにもうってつけだった事から初回から三連覇という異形を成し遂げた。

そのバイクの名はXT500・・・そうSR400のご先祖様。KL500はこの対抗馬として出された背景があるんです。

西ドイツカワサキの責任者になっていた種子島さんはXT500のヒットに悔しい思いをすると同時に、ロブスターの経緯を知らない販売サイドから

「カワサキはいつになったらビッグシングルを出すんだ」

と突き上げまで食らい閉口してしまったそう。

テンガイのカタログ

もちろんカワサキがZというステーキを選んだ事が正解だったのは歴史が証明しているし、KLRも最初に説明したように海の向こうでは認められロングセラー車になっている・・・ただ

「ステーキかロブスターか」

この究極の二択を迫られた時もしもカワサキがロブスターを選んでいたらTengaiを始めとしたラリーに対する姿勢、そして未来つまり現代のブランドイメージも大きく変わっていただろうなと。

 

主要諸元

全長/幅/高 2175/920/1300mm
シート高 870mm
車軸距離 1480mm
車体重量 159kg(乾)
燃料消費率 -
燃料容量 23.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC単気筒
総排気量 651cc
最高出力 48ps/6500rpm
最高トルク 5.6kg-m/5500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前90/90-21(54S)
後130/80-17(65S)
バッテリー YB14L-A2
プラグ DP8EA-9
または
X24EP-U9
推奨オイル SAE10W-40から20W-50
オイル容量 全容量2.5L
交換時2.2L
フィルター交換時2.5L
スプロケ 前15|後43
チェーン サイズ520|リンク106
車体価格 -

系譜の外側一覧

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DN-01
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カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
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XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

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本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
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ZR-7/S
(ZR750F/H)

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CBX1000
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GX750
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SUZUKIのZUZUKI
GAG
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Z1300/KZ1300
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NM4-01/02
(RC82)

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FZX750
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GSX1400
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タブーを犯したターボ
750Turbo
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NR
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TRX850
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GS1200SS
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ZEPHYR1100/RS
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RZV500R
(51X/1GG)

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RG500/400Γ
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CX500/650TURBO
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RF400R/RV
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WING
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DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

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