色んなメーカーが同じ土俵で競い合ってる数少ないジャンルがスーパースポーツ。
【特徴】
250cc/600cc/1000ccなど量販車レースに沿った排気量で明確に分かれておりバチバチなクラス。
基本的にサーキット走行を考えられたジャンルなので排気量が大きくなるほど日常使いに向かなくなる傾向があります。
最近のモデルは一昔前のレーサーより速かったりする。
【歴史】
最初に謝っておくとスーパースポーツという言葉主体で掘っていくと軸がブレてしまうので省かせてもらいます。
例えば1964年に出たローマの休日でおなじみベスパの派生モデル。
これも名前はスーパースポーツ(スーパースポルト)だったり。他にもSSという名前の付くモデルは色々あります。
じゃあ何処にスーパースポーツというジャンルの軸を置くべきか考えたのですが
『レーサーの側面も持った誰でも買える量販車』
というのが一番分かりやすいかと思いました。
そうした時に歴史上ハッキリしているのは1907年から続く最古のレースであるマン島TT。
公道を猛スピードで駆け抜けていくデンジャラスなレースとしておなじみですね。
これに挑戦するために各々がチューニングしたバイクを持ってきて走らせたのがスーパースポーツの始まり・・・ってそれじゃ釈然としないのでもう少し掘ります。
マン島TTは最初こそ色んな人が参加するレースだったものの1947年からWGP(現MotoGP)の一戦に加えられるとメーカーによるGPレーサー(レース用プロトタイプマシン)が当たり前な状況になりました。
日本メーカーが活躍したのもWGPになってからの話。だから凄いんですけどね。
しかし他のコースとの問題からマン島TTは1976年を最後にWGPから離脱。
代わりに1977年から始めたのが
『TTフォーミュラ』
というレース。
排気量さえ守れば何しても良かったものから一転、シリンダー数や重量などまで厳しく制限されたプロダクションレースに変わりました。
※プロダクションレース=一般量販車によるレース
これはWGPのポイントが懸かってる一戦ではなくなった事で離れていくワークス(メーカー)の代わりにアマチュアを呼び込まないといけなかったから。
これが今もスーパースポーツで行われているマン島TTレースの始まりになります。
補足というか余談ですがGPレースからナショナルレースへ事実上の格下げとなり人気に陰りが見えていたマン島TTを再浮上させるキッカケとなったのが1978年に出たマイク・ヘイルウッド。
簡単に言うとかつての英雄が帰ってきて優勝した形なんですが、この時のベースマシンがドゥカティの900SS(スーパースポーツ)というバイクでレプリカが出るほどの人気となりました。
スーパースポーツという言葉がプロダクションレーサーをさす言葉として定着したのはこのマシンの影響かもしれない・・・。
ただ実はこのマン島TTのような厳しい上限を設けたプロダクションレースには前例がある・・・それは70年代前半のアメリカです。
アメリカはアマチュアレースが盛んに行われていたんですが、70年代に入るとヤマハのTZ750を始めとした市販版GPレーサーがレース界でブイブイ言わせていました。つまりWGPと代わり映えしないレース状態になっていたんですね。
「これならもうWGPだけいいじゃん」
となりアメリカのロードレース人気は急落していた。
そんな状況を危惧したアメリカレース協会の御曹司であり自身もレーサーだったスティーブ・マクラグリンという人が
「GPじゃない普通のバイクによるレースをやろうよ」
と言って1973年にAMA(アメリカのバイク協会)プロダクションレースを開催。
・CB750FOURやZ1など量販車の高性能化が起こっていた事
・アメリカ人はプロダクションが大好きな事
・ホットロッド(チューニング)文化が盛んなお国柄だった事
などなどの理由からレースには腕に自信のあるショップやライダーがこぞって参加し大盛況。
ちなみに記念すべき第一回、1973年の優勝は皆さんご存知ヨシムラZ1です。※写真は翌74年モデル
このプロダクションレースは
「どんなチューニングをしてもいいがプロダクションのスタイルを崩してはいけない」
という美徳とも粋とも言える暗黙のルールも相まってあっという間にアメリカで一番人気のロードレースとなり、わずか4年後となる1977年には
『AMAスーパーバイク選手権』
という正式な選手権に格上げ。
エディ・ローソンのKZ1000Rや最近モーターショーに出たフレディ・スペンサーのCB750Fなどが有名ですね。
ZRXやCB-SFでおなじみのカラーリングの元ネタです。
マン島TTはこれに習った面が少なからずあったわけですが
・欧州のフォーミュラ
・北米のスーパーバイク
とレギュレーションに多少の違いこそあれど同時期に
「身近なバイクによるアマチュアレース」
を始めた事でプロダクションレースはあっという間に国際的に認知され、また人気がウナギ登りになった事で日本を含めた各国も追従。
そうして世界規模になった事で1988年にプロダクションレースの頂点を決める世界選手権として開催されるようになったのが今も続いている
『WSB(ワールドスーパーバイク)』
というスーパースポーツによる世界レースです。※SBKとはWSBの1000ccクラスのこと
スーパースポーツはどうしてもレースの話になってしまうんですが、総括というか主旨を戻すとプロダクションレースは
・自分のバイクでも参加できる
・自分のバイクがレースで戦う姿を見れる
・レースのバイクを買って乗ることが出来る
という億単位のお金が動くGPレースでは絶対に不可能な魅力を持っていたから人気になった。
そしてその人気っぷりから戦績が量販車というメーカーが売らないといけない商品の売上に直結するほどの影響力を持つようになったため、自分たちのマシンつまりGPマシンだけを造っていればよかったメーカーも無視できない存在になったいうか
「プロダクションレースで勝つ事が何よりの宣伝になる」
と捉えるようになり、自社が持つGP技術を一般量販車という枠に収めつつレースを意識したモデルを次々と発売するようになった。
「レーサーの側面も持った誰でも買える量販車(スーパースポーツ)」
がこのプロダクションレースによって次々と生まれ、またそれがGPとは少し違う形でメーカー間競争を招いた事で性能がドンドン向上していき、いつしかスーパースポーツと呼ばれるようになったという話。
だから申し訳ないんですがスーパースポーツは名前だけでなく定義も何処からかはハッキリとは断言できず
「1970年代後半のプロダクションレース人気から」
というのが最も正解に近いんじゃないかと考えます。
【最後に】
初心者の方でスーパースポーツに乗りたいなって思った人の中には
「こんなの自分に乗れるだろうか」
という不安を抱いてしまう人も多いかと思います。
確かにスーパースポーツは排気量が大きくなるほど公道では乗りにくい部類のバイクになります。
・足付き悪い
・燃費悪くて熱い
・荷物載らない
・整備しにくい
・前傾ポジション
などなどストリートとサーキットでは求められるものが違う事から何かと我慢を強いられるシーンが多い。
でも乗ってる人って結構見ますよね。足ツンツンで立ちごけしたりツーリングという違う使い方をして体を痛めたりする人が当たり前にいる。
なんでそうまでしてスーパースポーツに乗るのかっていうと、スーパースポーツにはそれを補って有り余る魅力があるから。
「俺は技術の粋を集めたクラス最速マシンに乗っている」
この事実に酔いしれる事が出来るのがスーパースポーツの魅力。
もしもカッコいいと思えるスーパースポーツがあるなら是非とも乗ってそれを味わう事をおすすめします。
該当車種
・GSX-R1000|GSX-R750|GSX-R600の系譜
などなど