歴史上もっとも美しいバイクとして今でも名前があげられる916シリーズ。
ナンバリングの通りエンジンのストロークを2mm伸ばし916ccとなりました。
鬼才マッシモ・タンブリーニの代表作として有名ですね。
ちなみにタンブリーニはCRC(Centro Ricerche Cagiva)というカジバ子会社のボス。
だからもしドゥカティがカジバに買収されていなかったら誕生していないバイクだったりします。パゾを作ったのもここ。
設計において参考にしたのがC593というカジバが誇るGP500マシン。
だから最初はトラスフレームではなくアルミツインチューブも検討されたんだそう。でもやっぱりトラスフレームの方が合っているという事でトラスフレームに。
とはいえクロームモリブデン鋼管を使った完全新設計なもので、916は見た目でも分かるよう非常にスリムになりました。フレーム重量も僅か8kgという軽さ。
そんな916でもう一つ欠かせないのが片持スイングアームとセンターアップマフラー。
今でこそスーパーバイクのアイデンティティの一つですが、当時はホンダ車みたいだと言われました。
実際センターアップマフラーや片持ちスイングアームはNRに影響を受けたとタンブリーニ自身も明言しています。
もちろんただ真似たかっただけではなく、耐久レースにおけるタイヤ交換の優位性も採用の理由。それに一応パテントには触れない形なんだとか。
ちなみにそんなスイングアームを造ったのはブレンボ。
なんでも安定供給してくれる会社がブレンボしかなかったからだそう。ブレーキももちろんホイールもブレンボのブレンボ尽くしっていう。
916といえば何よりもその洗礼されたデザインが有名ですが
「開発に四年以上、のべ4,000時間を掛けた」
とタンブリーニが言うだけあり性能面でも非常に評価が高く、主戦場であるSBKでも圧倒的な速さでデビューイヤーで優勝。
まさに非の打ち所がないスーパーバイクとして絶大な人気を誇り、ドゥカティ(カジバ)の業績をV字回復させる事になりました。
グレードは公道向けSTRADA、オーリンズなどを装備したチューニングモデルのSP、955ccにまでスケールアップしたレーシングのCORSA(二年目からは996cc)の三種類。
更に二人乗りのBIPOST、そしてSENNAモデル。
これはカジバショップを経営していてプライベートでもドゥカティが大好きだったセナが注文した事が始まり。
不運なことにその直後にセナは事故で亡くなってしまうのですが、友人だったカスティリオーニ(MV AGSTA創業メンバー)がセナモデルとして市販しようと企画。
中身は実質SPで赤ホイールなのが特徴。
好評だったためか97年にはシルバーボディのSENNA2も登場。
そして98年にはブラックボディのSENNA3が発売されました。
特に初期カラーであるグレー/レッドホイールはセナカラーとして多くの人に定着し、その後も数々のモデルで登場することに。
ちなみにセナモデルの売上はセナの死後に設立されたセナ財団(ストリートチルドレン救済団体)に寄付される様になっています。
最後に・・・爆発的な人気となった916ですが最初の頃は日本にほとんど入ってきませんでした。
よりにもよって916発表と同時にボローニャの塗装工場が火事で全焼してしまったからです。
だから916の最初期のモデルはボローニャではなくカジバのバレーゼという小さな工場でカジバのバイクと一緒に造ることに。
その関係でその頃に造られた916はスクリーンにカジバの象さんが刻印されており、そして肝心の塗装は外注でドゥカティレッドじゃなかったりします。
ただ幸か不幸かヘッドライトが日本の保安基準を満たしていない事が発売後に判明したため国内にはほぼ入ってきていない模様。
※916の簡易版モデルチェンジ歴
【1995年モデル】
二人乗り用のBipostoが登場。
リアサスをオーリンズにしたSPが登場。
【1996年モデル】
ブレーキとクラッチにアジャスターが付きSTRADAの名を削除。
【1997年モデル】
エアクリーナーボックスを始めとした細部の見直し。
SPをベースに996cc化とチタンコンロッドを採用した916SPS(ホモロゲ)が登場。
【1998年モデル】
クラッチホースを始めとした細部の見直し。
エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:916cc
最高出力:114ps/9000rpm
最大トルク:9.0kg-m/7000rpm
車体重量:195kg(乾)
※スペックはEU仕様STRADA