Panigale V4 -since 2018-

パニガーレV4

遂にというか、とうとうV4となったパニガーレV4。

エンジンの名前は『デスモセディチ・ストラーダレ』

デスモセディチストラーダレ

デスモ=デスモドロミック

セディチ=16(4気筒×4バルブ)

ストラーダレ=公道向け

という意味。

面白い事に70°という変則的なクランクだから点火タイミングは0-90-290-380-720という360°に近いけどちょっと違う形。

70°位相V4

360°はタイヤを落ち着かせる270°の間隔が2つあるからトラクションが有利というのはVFR400/NC30かで話したと思うんですが、ドゥカティは更に大きな340°の間隔を設けることでトラクション性を高めたわけですね。

ホンダと同じカタチは取らないというプライドでしょうか。

もう一つ面白いのが逆回転クランクを採用したこと。

逆回転ギア

これは簡単な話、前方へ回るホイールとは逆方向にエンジン(クランク)を回すことで起きようとするジャイロ効果を打ち消すのが狙い。

MotoGPではメジャーな手法でアイドラギアという転換用のギアによる損失が生まれてしまうんだけど、それでも逆回転クランクは手放せないほどの効果があるんだとか。

パニガーレV4エンジン

可変ファンネルを装備しているとはいえそんな損失を組み込んでおきながら市販車トップとなる215馬力を発揮するんだから凄いんですが・・・ってH2に続いて楕円排気ポートになっていますね。

H2で担当された恵上さんいわくコチラのほうが排気効率が良いんだそう。そのかわりコスト云々。

車体の方はフレームがモノコックタイプからツインスパーの様なフロントフレームと呼ばれる物に。

パニガーレV4車体

本来ならばタンクのある位置にはバッテリーや電装系で、ガソリンタンクはシート下。これもMotoGP技術で慣性モーメントの低減というか要するにマスの集中化が狙い。

ちなみにエンジン重量も二気筒から四気筒になったのに僅か2.2kg増、車体全体で見ても5.5kgしか増えていないっていう恐ろしさ。

LではなくVなので散々言われていた前輪荷重問題もなく、またスイングアームも長く取ることが出来たので現代的なSSとなりました。

ケーシー・ストーナー

テストPVではケーシー・ストーナー・・・って、RC213V-Sもそうだったし凄いですねケーシー。

レースに対する情熱が戻ったら是非とも復帰してほしいものです。

最後に懲りずに偉いそうに言うと、このパニガーレV4ですが本当にドゥカティは考えたなと思います。

パニガーレV4ネイキッド

というのもドゥカティは2003年からMotoGPをV4のデスモセディチで戦っていました。

何故V4にしたのかといえばボアの最大直径がレギュレーション(現在は81mm以下)で定められていたから。

更に2008年にはその公道版であるデスモセディチRRを限定1500台/787万円ながら発売。

デスモセディチRR

そしてこのパニガーレの後継ですと言わんばかりのデザインをしたパニガーレV4の登場・・・何が言いたいのかというと、MotoGPに参戦した時点でV4は既定路線だったんだろうなって話。

かといって(1198辺りで言いましたが)何の脈略もなくいきなりV4なんかにしたら波風が立つ。

だからまずMotoGPでレギュレーションを理由にV4のキッカケを作り、更にデスモセディチRRで公道版V4の布石を置き、そして非常に評価が高いパニガーレ系デザインをV4に被せる。

パニガーレV4の顔

パニガーレV4をデザインされたジュリアン・クレメンさんが

「コンペでのテーマは『パニガーレに見えること』だった」

と仰っていたのを見ても、その戦略の強かさが伺えます。

そして市場での反応を見るにその戦略は見事に決まったようですね。

パニガーレV4

だって誰もV4になった事へ違和感を覚えず、誰もがこれをスーパーバイクの後継として受け入れているんですから。

そうなればもうコッチのもの。良く回るLツインを2つ積んだかのうような速く美しく気高いスーパーバイクでしかない。

エンジン:水冷4サイクルDOHC四気筒
排気量:1103cc
最高出力:214ps/13000rpm
最大トルク:12.6kg-m/10000rpm
車体重量:175[174]kg(乾)
※[]内は前後オーリンズのSモデル

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4

【関連車種】
CBR1000RRの系譜YZF-R1の系譜GSX-R1000の系譜ZX-10Rの系譜

1299series -since 2015-

1299パニガーレ

モデルチェンジで1299となったパニガーレ。

1299(1285cc)ってSBKのレギュレーションをオーバーしているのでは・・・と思いますが、SBK用のホモロゲモデルはPanigale R(1198cc)として切り離される形となりました。

先代が好評で気を良くしたのか、凄い軽いモデル1299スーパーレッジェーラも登場。

1299スーパーレッジェーラ

なんとスイングアームとホイールがカーボンに。

そのためお値段もグッと上がって900万円。

にしても市販モデルがレースモデルを追い越してしまうというスーパーバイク初の珍事なんですが、何をしたのかといえば相変わらずボアアップ。

先代から更に4mmボアを拡大し116mmとなりました・・・ドゥカティはボアの限界に挑戦しているんでしょうかね。

1299ピストン

もうアレですよ、CD/DVD並のサイズですよ。

ボアは一般的に100mmが現実的な限界と言われています。

この理由の一つはボアが大きくなるという事はバルブも大きくする必要があり重くなるから。

じゃあなんでドゥカティのスーパーバイクが100mm超えを平然とやってのけるのかというと、それはもちろんデスモドロミック機構によるもの。

パニガーレ1299

デスモドロミックだから多少バルブが重くなろうがカムプロファイルを尖らせようが、バルブサージングやジャンプといった問題が起こらない。

ただし、それでも避けられないのが火炎伝播の問題。

これは要するにプラグから燃え広がる膨張が(ボアが広すぎて)間に合わなくなる。どうなるかと言うと、熱損失になる。

ビッグVツインが熱い熱い言われるのはこれが大きな理由。回転数が高くなれば流速が増すので問題にはならないんですが・・・

1299顔

まあスーパーバイクなんだから

「求めるは高みのみ」

って事なんでしょうね。

また性懲りもなく小言を言わせてもらうと、パニガーレを見て思うのは

「SBKって本当にもうセールスに関係ないんだな」

って事です。

DUCATI2012

最初にも言いましたがドゥカティがSBKに血眼になっていたのはそれが生き残るための道だったから。

しかしリーマンショックで撤退し、その後どうかと言うとワークス参戦していた頃ほどの成績は残せていないのが実情。

まあそれは当たり前なんですが、じゃあSBKで大戦果を挙げているZX-10RやRSV4が成績に見合うほど人気で売れてるかといえば売れてない。

ドゥカティ

つまりドゥカティがSBKからMotoGPにスイッチした事や、そのMotoGPフィードバックでパニガーレを造り1299というレギュレーションを無視するモデルチェンジをした事。

これらから察するにもはやドゥカティにとってSBKは生き残るための手段では無くなったんだろうなと。

1299パニガーレファイナルエディション

まあ良く言えばパニガーレがそんな事を吹き飛ばすほどカッコいいデザインで不動の人気を獲得したからってのもあるんでしょうけどね。

相変わらずトリコローレがよく似合う。

エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:1285cc
最高出力:209ps/10500rpm
最大トルク:14.5kg-m/9000rpm
車体重量:166kg(乾)
※スペックはEU仕様

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4

1199series -since 2012-

1199パニガーレ

再び大変貌となった1199パニガーレ。

パニガーレというのはドゥカティ本社の所在地の名前から。

916系のデザインとLツインこそ継承していますが、トレリスフレームでも乾式クラッチでもセンターアップマフラーでも無い・・・1198の系譜で言った懸念をものともせずやってきました。

そんな中でも最大の変更点はトラスフレームを辞めてモノコックフレームになった事。

1199パニガーレ フレーム

これは簡単な話フレーム兼エアクリーナーボックスで、そこのスロットルボディを内蔵というか組み込んでいる形。

916のカーボンエアクリーナーボックスを思い出させますね。

1199パニガーレディメンション

もう半分フレームレス状態。

こうした理由は軽量化はもちろん前輪荷重割合を少しでも増やすため。

スーパークアドロ

エンジンも新世代『スーパークアドロ』になりました。

エンジンの方も大変貌で、コグドベルトを遂に辞めてカムチェーンとカムギアのハイブリッドであるセミカムギアトレイン方式に。

1199エンジン

元々コグドベルトを採用し続けた理由はチェーンより精度高く軽いからなんだけど、恐らくプーリーの小型化などのコンパクト化において強度が限界だったからじゃないかと。

ユーザーとしてはメンテンスフリーになるわけなのでありがたい話ですけどね。

セミカムギアトレイン

そしてスーパークアドロといえばもう一つ忘れちゃいけないのがビッグボア。

ボアが更に拡大され112mmとなり二気筒最大馬力となる195馬力に。

流石にデコンプが付きましたが・・・112mmですよ。

ピストン

身近なもので言えばカップヌードルのBIGサイズ(108mm)がスッポリ収まる直径。

どんだけデカイんだって話。

この他にもクイックシフター、TCSやEBC(エンブレコントロール)、モード切り替えなどなど。

Sモデル以上になるとオーリンズの電子制御サスペンションを装備しています。

1199トリコローレ

これはSのちょい上になるSトリコローレというモデルでOPのデータロガーを標準装備。

正直ドゥカティはグレードがありすぎてシンドいので割愛しますが、一つだけ外せないであろうグレードというかモデルが2014年に出たこれ。

1199スーパーレッジェーラ

『1199Superleggera』

スーパーレッジェーラとは凄く軽いという意味で、その名の通りパニガーレRより14kgも軽い乾燥重量155kg。

フレームやホイールの材質をアルミからマグネシウムに変更し、カーボンボディやらチタンボルトやらを奢って、SBK用のピストンをそのまま等など・・・で、限定500台の650万円。

ちなみにこはホモロゲではなく単にスペシャルなバイク。

ところでパニガーレが日本に入ってくる時マフラーが話題になりましたよね。

日本の規制を通すために特別仕様として消音カバーに加えスペシャルマフラーが・・・

パニガーレ日本仕様

・・・これテルミーニョ製のマフラーなんですけどね。

カムチェーンを始めとしたエンジンノイズを拾わせない為に伸ばしたんでしょうが、マフラー1つでデザインってここまで崩れるものとは。

そんなスーパーバイクとしてのブランドポイントを大きく変えてきた外してきたパニガーレでしたが市場の反応はとても良く、ドゥカティは業績を大きく伸ばす事に。

ドゥカティ1199パニガーレ

パニガーレが何故売れたのかって言えばデザインの素晴らしさの一言に尽きるでしょう。

エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:1199cc
最高出力:195ps/10750rpm
最大トルク:13.4kg-m/9000rpm
車体重量:164kg(乾)
※スペックはEU仕様

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4

1198series -since 2009-

1198

わずか二年で無印の1098も1198へクラスアップ。

目立つ変更点といえば何処よりも速くトラクションコントロールを搭載した事。

※Sモデルのみで末期には無印も装備

DTC

DTC(ドゥカティ・トラクション・コントロール)という装備で八段階調整。

世界で絶賛された1098を引き継ぐ無難な展開で相変わらず人気だったんですが、ここで少し転機が訪れます・・・それはSBKからの(ワークス)撤退です。

DUCATI2009

要因となったのはリーマン・ショックによる不況。

ドゥカティは2002年からMotoGPにも参戦していたんですが、不況による業績悪化から予算をイケイケだったMotoGPに絞る決断をしました。

DUCATI ケーシー・ストーナー

更に2012年にはアウディ傘下に。

アウディはVW傘下だから

【VW&ポルシェ】>【ランボルギーニ&アウディ】>【ドゥカティ】

という事になりますね。

ドゥカティを孫扱いするVW恐るべし。

1198S

さて・・・もうグレードの違いを書くのも面倒臭くなってきたのでソコらへんは各々で調べてもらうとして少し小話をします。

日産のGT-Rを造った水野さんという方がこんな話をされていました。

GT-R

「ブランドは武器だけど、時代の進化を止めてしまうという恐ろしさも持っている。」

これは水平対向RRにこだわる某メーカーに対しての発言だったんですが、これはドゥカティにも同じことが言えると思います。

・Lツイン

・デスモドロミック

・トラスフレーム

・片持ちスイングアーム

・乾式クラッチ

・ピボットレス

そして

・916を継承したデザイン

1198ディメンション

ドゥカティが工業製品として見たときにお世辞にも優れた物とは言えないにも関わらず、人気があって売れるのはこういった芸術性というかブランドがあるからでしょう。

例えばその一つであるLツイン。

単純にレースで勝つためだけを考えればLツインなんて捨てて直四なりV4なりにしたほうが遥かに良い話。

元々Lツインというのは一番熱くなるヘッドを効果的に冷やすため、つまり空冷時代に生まれたアイディア。

Lツイン

しかし時代は水冷、そうなるとL型のデメリット”前輪荷重不足”が顕著に目立つようになる。

V型の弱点は前輪荷重が不足しがちになってしまう事。これは前方に伸びるシリンダーのせいでクランクを前に寄せられないからです。

L字二気筒

ましてほぼ前方に伸びるL型になると尚の事エンジンを前に寄せられない。

どんどんビッグボアショートストロークになっていったのも、リア周りにカーボンやマグネシウムなどを奢っているのも前輪荷重割合を少しでも増やすため。

それでも一番重いエンジン(クランク)が寄せられないので限界がある。

1198SP

「ドゥカティはハンドリングが独特で難しい」

って聞いた事があると思います。これがその現れ。

良く言えばハンドリングが軽い、悪く言えばフロントがおぼつかず曲がり難い。

でもLツインを始めとしたそれらがブランドに直結しているから簡単には止められない。定石を外してしまうと999の二の舞どころか、それ以上になるのは目に見えているわけですから。

1198R

「ブランドが進化を止めてしまう」

というのはこういう事。

反対に日本車は多気筒が良いと分かれば多気筒化し、V型が良いと分かればV型にも簡単に変える身軽さを持ってる。

でもその代償としてドゥカティの様な付加価値は付かないし築かれない。

一概にどちらが良くてどちらが悪いと言えないですよね。ブランドって難しい。

1198

まあでも一つ言えるのはドゥカティのスーパーバイクは高級車の部類に入るから

「日本車と違って贅沢で自由に造れるからいいよな」

と思われがちだけど、速いだけでは許されない制約の多さに実は一番苦悩しているのではないかと。

エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:1198cc
最高出力:
170ps/9750rpm
最大トルク:
13.4kg-m/8000rpm
車体重量:171kg(乾)
※スペックはEU仕様

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4

1098series -since 2007-

1098

999の不評もあり現代版916の様な姿となった1098シリーズ。

デザインを担当したのはジャンアンドレア・ファブロという方。

ドゥカティ内で

「916の流れを伝統(継承)化した方がいい」

という意見で一致する事になりこうなった背景があります。

1098モック

999とは対照的に1098は両持ちスイングアームで進んでいたよう。

このモデルでフレームも新たに作り直され、エンジンも999Rで培ったテスタストレッタの改良型テスタストレッタ・エボルツィオーネになりました。

テスタストレッタ・エボルツィオーネ

エボルツィオーネ(Evoluzione:進化)って無駄に言いたくなる響きですね。

日本語だと『進化した狭い頭』だから何もカッコよくないんですが。

そんなエボルツィオーネ最大の特徴はボア径がとうとう104mmと大台を超えた事。

後に追加されるホモロゲモデル1098R(1998cc)に至っては更に拡大され106mmに。

回転数が落とされているとはいえ、よくコンロッドが千切れないなって話。大きくなったらそれだけ重くなりますからね。

TSE

ちなみに

「ドゥカティはエンジンがすぐ掛からなくなる」

と言われているのはこの無茶なビッグピストンと狭い頭(高圧縮)による始動性の悪さが大半の原因だったりします。

1098ディメンション

四気筒勢に対抗するのはここまでしないと難しいんでしょうね。

ちなみにそのSBKのレギュレーションは四気筒も二気筒も1000ccまでだったのに排気量が1099cc(ホモロゲは1198cc)になったもんだから

「SBKに出れないじゃん」

と言われたんですが、ひと月も経たずにレギュレーションが二気筒は1200ccまでに改定されました。

これは

「SBK皆勤賞のドゥカティが脅した」

という見解もあれば、事前にリークされていたという見解もあって真意は分かりません。

1198R

でも排気量アップと引き換えに改造範囲が更に厳しくなったので一概に有利になったとは言い切れない部分があります。

そんな1098ですが、最初にも言ったように916のリボーンだと非常に人気が出ました。

販売台数もV字回復し年間販売台数は五万台を突破。

1098R

正に

「スクーターの様に売れたよ」

と言わしめた916の再来となったわけです。

エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:1099cc
最高出力:160ps/9750rpm
最大トルク:12.5kg-m/8000rpm
車体重量:173kg(乾)
※スペックはEU仕様の無印

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4

999series -since 2003-

999

デザインが大変貌した999シリーズ。

もはや伝統と化していた916系から全く別物に変わったため様々な波紋を呼びました。

ピエール・テルブランチ

デザインを担当されたのはカジバではなくドゥカティに所属していた南アフリカ出身のピエール・テルブランチさん。

実はこの少し前にドゥカティはカジバから離れ、テキサスパシフィック(元TPGキャピタル)という投資ファンドが親会社となっています。

2003年ドゥカティ

916やモンスターの大ヒットでイケイケだったドゥカティが高く売れるとして、経営が苦しくなっていたカジバが売りに出した形。

そんな916をデザインしたタンブリーニ公認デザイナーであるテルブランチ作999ですが、両持ちスイングアームや縦目二眼などを見ても分かるよう明らかに916の流れを否定するようなデザイン。

999プロトタイプ

最初は片持で話が進んでいたんですが、部品点数の削減などの問題もあり両持ちに変更された経緯があります。

まあこれも流れを断ち切る狙いが少なからず影響しているんでしょうね。

これが出た時はそりゃもう称賛否両論雨あられでした・・・というか、どちらかと言うと否定的な意見が多かったです。

999

売れ行きも乏しく値下げまでされる始末。

もう世界中のあちこちで批判されたんですが、個人的にはちょっと可哀想だなと思います。

ドゥカティ999

人気が無いだけだったら残念だったねで済むんですが、この999はスーパーバイクの存在意義であるSBKにおいて三度もの優勝を飾っている。

要するにスーパーバイクの名に恥じぬ速さと結果を残しているんです。

999のシャーシ

市販のストリート版も改良を重ね続けてきた先代998がベースなので性能の評判も悪くない。2005以降のモデルではスイングアーム補強や新設計のチタンバルブエンジンやらの改良まで入りました。

名実ともにスーパーバイクの名に恥じぬマシンだった999。

にも関わらず人気が出なかった・・・何故なら

999s

「916っぽくないから」

結局皆が求めているのは916であってスーパーバイクではないって事ですね。

間違ってもドゥカティ自体が999を失敗作だと思ってるわけじゃないですよ。それに999はそれまでスーパーバイクに興味を示さなかった人が振り向いた怪我の功名の様な部分もあるわけで。

999カタログ写真

ただ改めて振り返ってみるとレース結果と人気にズレが生じ始めたのはこの頃からだったのかも。

エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:999cc
最高出力:124ps/9500rpm
最大トルク:10.4kg-m/8000rpm
車体重量:199kg(乾)
※スペックはEU仕様の無印

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4

998series -since 2002-

998

先に紹介した996Rのフィードバックである998シリーズ。

大台の100mmボアとなったテスタストレッタエンジンの始まりであり、916系として最後のスーパーバイクになります。

998

テスタ(頭)+ストレッタ(狭い)=テスタストレッタ。

頭というのはヘッドのことで、バルブ核を狭くし燃焼室をコンパクト化した事が語源です。

998はマトリックスに登場したので覚えている人も多いのではないかと。

ちなみにそのマトリックスエディションも登場しました。

998マトリックス

実はこれ限定モデルとはまた違った意味で非常にレア。というのもこれは二人乗り仕様だから。

元々ドゥカティは一人乗り用の”モノポスト”と二人乗れる”ビポスト”があるんですが、日本に入ってくるモデルは基本的にモノポストだけだった。

998リア

ただこのマトリックスエディションは映画のシーンで二人乗りしている事からもビポストだけ。だから日本に入ってきたのもビポストだけ。

数少ない二人乗り仕様スーパーバイクなわけです。

2002年ドゥカティ

ちなみにRモデルは通例通り排気量が999ccまで上げられた別エンジンの豪華モデル。

最初にも言った通り998は916系の最後になるんだけど、次が一年ほどで登場したためモデルライフは意外にも短いものでした。

998ファイナルエディション

そのためか、今でも高値安定だったりします。

エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:998cc
最高出力:
123ps/9500rpm
最大トルク:
9.8kg-m/8000rpm
車体重量:198kg(乾)
※スペックはEU仕様の無印

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4

996series -since 1999-

ドゥカティ996

ホモロゲと同じ996ccが標準となったのは1999年の事。

「851SPが888になって916CORSAが996で・・・」

と混乱している人もいると思うので説明するとドゥカティのスーパーバイクシリーズというのは

STRADAや無印:公道向けモデル

S:ハイパフォーマンスモデル

SP/SPS:先行ホモロゲモデル

大体がこんな感じで松竹梅展開といえばそうなんだけど、ホモロゲは公道走行をあまり鑑みていないレースのためのモデルだから一概に松とは言えなかったり。

996CORSA

ちなみにCORSAっていうモデルがあるんですが、それはDUCATI CORSAというワークスが手がけたモデルの事です。

なぜグレードで排気量が違うのに同じナンバリングだったりするのかというとホモロゲ取得やセールスアピールの都合。

996イエロー

しかしレースで培ったものは必ずフィードバックするのがドゥカティ。

先行モデルのワークスチューンで培ったノウハウをSTRADA/無印へ下ろす事で(排気量が合わせられる事で)ナンバリングが新しくなるというわけ。

1999年SBKチャンピオン

無印モデル発売

豪華なホモロゲも発売

レースで活躍

無印モデルへフィードバック

以下繰り返し

つまりこの996で言えば、これは916CORSA(996cc)で培った技術がフィードバックされたマシンという事。

996

見た目こそ916とさほど変わらないものの、デュアルインジェクターやエンジンまわりの補強など大きく改良。

ちなみに二年目からブレンボがマルケジーニを買収したことでマルケホイールとなり、先代ではSPSだけだったチタンコンロッドを竹モデルであるSから装備。

ホモロゲのSPSは更にオーリンズ倒立サスを装備。

996R テスタストレッタ

そしてSPSの後釜として2001年に登場した996Rは

『テスタストレッタ』

という元フェラーリのエンジニアであるジュリアーノ氏が造った新エンジンを搭載。

996カタログ写真

これで一度は奪われたSBKチャンピオンの地位を見事に奪還しました。

秘訣はトリプルインジェクター・・・ってそんなの市販車じゃない。

エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:996cc
最高出力:112ps/8500rpm
最大トルク:9.5kg-m/8000rpm
車体重量:198kg(乾)
※スペックはEU仕様のMonoposto

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4

916series -since 1994-

916

歴史上もっとも美しいバイクとして今でも名前があげられる916シリーズ。

ナンバリングの通りエンジンのストロークを2mm伸ばし916ccとなりました。

鬼才マッシモ・タンブリーニの代表作として有名ですね。

マッシモ・タンブリーニ

ちなみにタンブリーニはCRC(Centro Ricerche Cagiva)というカジバ子会社のボス。

だからもしドゥカティがカジバに買収されていなかったら誕生していないバイクだったりします。パゾを作ったのもここ。

C593

設計において参考にしたのがC593というカジバが誇るGP500マシン。

だから最初はトラスフレームではなくアルミツインチューブも検討されたんだそう。でもやっぱりトラスフレームの方が合っているという事でトラスフレームに。

とはいえクロームモリブデン鋼管を使った完全新設計なもので、916は見た目でも分かるよう非常にスリムになりました。フレーム重量も僅か8kgという軽さ。

カジバC593

そんな916でもう一つ欠かせないのが片持スイングアームとセンターアップマフラー。

今でこそスーパーバイクのアイデンティティの一つですが、当時はホンダ車みたいだと言われました。

実際センターアップマフラーや片持ちスイングアームはNRに影響を受けたとタンブリーニ自身も明言しています。

もちろんただ真似たかっただけではなく、耐久レースにおけるタイヤ交換の優位性も採用の理由。それに一応パテントには触れない形なんだとか。

916サイド

ちなみにそんなスイングアームを造ったのはブレンボ。

なんでも安定供給してくれる会社がブレンボしかなかったからだそう。ブレーキももちろんホイールもブレンボのブレンボ尽くしっていう。

916sps

916といえば何よりもその洗礼されたデザインが有名ですが

「開発に四年以上、のべ4,000時間を掛けた」

とタンブリーニが言うだけあり性能面でも非常に評価が高く、主戦場であるSBKでも圧倒的な速さでデビューイヤーで優勝。

DUCATI 916

まさに非の打ち所がないスーパーバイクとして絶大な人気を誇り、ドゥカティ(カジバ)の業績をV字回復させる事になりました。

グレードは公道向けSTRADA、オーリンズなどを装備したチューニングモデルのSP、955ccにまでスケールアップしたレーシングのCORSA(二年目からは996cc)の三種類。

更に二人乗りのBIPOST、そしてSENNAモデル。

これはカジバショップを経営していてプライベートでもドゥカティが大好きだったセナが注文した事が始まり。

不運なことにその直後にセナは事故で亡くなってしまうのですが、友人だったカスティリオーニ(MV AGSTA創業メンバー)がセナモデルとして市販しようと企画。

916SENNA1

中身は実質SPで赤ホイールなのが特徴。

好評だったためか97年にはシルバーボディのSENNA2も登場。

916SENNA2

そして98年にはブラックボディのSENNA3が発売されました。

916SENNA3

特に初期カラーであるグレー/レッドホイールはセナカラーとして多くの人に定着し、その後も数々のモデルで登場することに。

ちなみにセナモデルの売上はセナの死後に設立されたセナ財団(ストリートチルドレン救済団体)に寄付される様になっています。

最後に・・・爆発的な人気となった916ですが最初の頃は日本にほとんど入ってきませんでした。

よりにもよって916発表と同時にボローニャの塗装工場が火事で全焼してしまったからです。

ドゥカティ916

だから916の最初期のモデルはボローニャではなくカジバのバレーゼという小さな工場でカジバのバイクと一緒に造ることに。

その関係でその頃に造られた916はスクリーンにカジバの象さんが刻印されており、そして肝心の塗装は外注でドゥカティレッドじゃなかったりします。

916ヘッドライト

ただ幸か不幸かヘッドライトが日本の保安基準を満たしていない事が発売後に判明したため国内にはほぼ入ってきていない模様。

※916の簡易版モデルチェンジ歴

【1995年モデル】

二人乗り用のBipostoが登場。

リアサスをオーリンズにしたSPが登場。

【1996年モデル】

ブレーキとクラッチにアジャスターが付きSTRADAの名を削除。

【1997年モデル】

エアクリーナーボックスを始めとした細部の見直し。

SPをベースに996cc化とチタンコンロッドを採用した916SPS(ホモロゲ)が登場。

【1998年モデル】

クラッチホースを始めとした細部の見直し。

エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:916cc
最高出力:114ps/9000rpm
最大トルク:9.0kg-m/7000rpm
車体重量:195kg(乾)
※スペックはEU仕様STRADA

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4

888series -since 1993-

888

レースベースであるSPモデルのみだった888ccが公道モデル(STRADA)にも降りてきたのが1993年の事。

排気量だけでなく各部もレースで培われた改良が施されている851系の最終型。

ちなみに851系(特にこの888)は本土イタリアにおいてVFR750R/RC30と双璧を成すレジェンドバイクです。

それが何故かといえば、AMA(アメリカのレース)はもちろん、本命だったスーパーバイク世界選手権において前人未到の三連覇(90~92)を成し遂げたから。

888ストラーダ

ここで少しまた話がそれてしまうんですが、ドゥカティは851が出た1985年にカジバに買収されハスクバーナ共々カジバ傘下になりました。

カジバグループ

原因はもちろん経営がよろしくなかったから。これが何故かと言うと実は日本メーカーの影響。

日本メーカーが

『安くて速くて壊れないバイク』

を下は50から上はリッター超えまでフルラインナップした事でシェアがどんどん奪われていったんです。

このためイタリアは70年代後半に380cc以上の輸入を禁止する保護貿易政策を取った歴史があります。それでもイタリアのバイクメーカーはバタバタと倒れて行きました。

当時のドゥカティ本社

そんな中でドゥカティがどうして生き残る事が出来たのかというと

「レースで活躍したから」

です。

レースで活躍した事でセールスが大きく伸びる事となり、後にカジバ傘下になったとはいえ生き残る事が出来た。

ドゥカティがレースに血眼になるのは、レースが好きだからというより、それが生き残る道だと分かっているからなんですね。

※888の簡易版モデルチェンジ歴

【1993年モデル】

SPが7馬力アップしフロントフォークをSHOWAに。

エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:888cc
最高出力:
104ps/9000rpm
最大トルク:
8.0kg-m/7000rpm
車体重量:210kg(乾)
※スペックはEU仕様のSTRADA

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4