わずか二年で無印の1098も1198へクラスアップ。
目立つ変更点といえば何処よりも速くトラクションコントロールを搭載した事。
※Sモデルのみで末期には無印も装備
DTC(ドゥカティ・トラクション・コントロール)という装備で八段階調整。
世界で絶賛された1098を引き継ぐ無難な展開で相変わらず人気だったんですが、ここで少し転機が訪れます・・・それはSBKからの(ワークス)撤退です。
要因となったのはリーマン・ショックによる不況。
ドゥカティは2002年からMotoGPにも参戦していたんですが、不況による業績悪化から予算をイケイケだったMotoGPに絞る決断をしました。
更に2012年にはアウディ傘下に。
アウディはVW傘下だから
【VW&ポルシェ】>【ランボルギーニ&アウディ】>【ドゥカティ】
という事になりますね。
ドゥカティを孫扱いするVW恐るべし。
さて・・・もうグレードの違いを書くのも面倒臭くなってきたのでソコらへんは各々で調べてもらうとして少し小話をします。
日産のGT-Rを造った水野さんという方がこんな話をされていました。
「ブランドは武器だけど、時代の進化を止めてしまうという恐ろしさも持っている。」
これは水平対向RRにこだわる某メーカーに対しての発言だったんですが、これはドゥカティにも同じことが言えると思います。
・Lツイン
・デスモドロミック
・トラスフレーム
・片持ちスイングアーム
・乾式クラッチ
・ピボットレス
そして
・916を継承したデザイン
ドゥカティが工業製品として見たときにお世辞にも優れた物とは言えないにも関わらず、人気があって売れるのはこういった芸術性というかブランドがあるからでしょう。
例えばその一つであるLツイン。
単純にレースで勝つためだけを考えればLツインなんて捨てて直四なりV4なりにしたほうが遥かに良い話。
元々Lツインというのは一番熱くなるヘッドを効果的に冷やすため、つまり空冷時代に生まれたアイディア。
しかし時代は水冷、そうなるとL型のデメリット”前輪荷重不足”が顕著に目立つようになる。
V型の弱点は前輪荷重が不足しがちになってしまう事。これは前方に伸びるシリンダーのせいでクランクを前に寄せられないからです。
ましてほぼ前方に伸びるL型になると尚の事エンジンを前に寄せられない。
どんどんビッグボアショートストロークになっていったのも、リア周りにカーボンやマグネシウムなどを奢っているのも前輪荷重割合を少しでも増やすため。
それでも一番重いエンジン(クランク)が寄せられないので限界がある。
「ドゥカティはハンドリングが独特で難しい」
って聞いた事があると思います。これがその現れ。
良く言えばハンドリングが軽い、悪く言えばフロントがおぼつかず曲がり難い。
でもLツインを始めとしたそれらがブランドに直結しているから簡単には止められない。定石を外してしまうと999の二の舞どころか、それ以上になるのは目に見えているわけですから。
「ブランドが進化を止めてしまう」
というのはこういう事。
反対に日本車は多気筒が良いと分かれば多気筒化し、V型が良いと分かればV型にも簡単に変える身軽さを持ってる。
でもその代償としてドゥカティの様な付加価値は付かないし築かれない。
一概にどちらが良くてどちらが悪いと言えないですよね。ブランドって難しい。
まあでも一つ言えるのはドゥカティのスーパーバイクは高級車の部類に入るから
「日本車と違って贅沢で自由に造れるからいいよな」
と思われがちだけど、速いだけでは許されない制約の多さに実は一番苦悩しているのではないかと。
エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:1198cc
最高出力:
170ps/9750rpm
最大トルク:
13.4kg-m/8000rpm
車体重量:171kg(乾)
※スペックはEU仕様