エンジンをかけようとセルを押すも回らなかったら誰もがバッテリーが駄目になったと考えると思います。
エンジン始動する際にキュルキュルキュルと電気の力を使ってエンジン(クランク)を回すために使うセルモーターですが、これは非常に電力が必要なので最もバッテリー負荷が掛かり、バッテリーが弱っていた場合は真っ先に動作しなくなる部分です。
セルモーターは長く掛けるなと言われるのは長時間使うとモーターが焼けるから。
バッテリー交換というのはその容易さからライトバルブ交換と並んで自分でする整備の筆頭ではないでしょうか。バッテリーくらい自分で変えろとか言われたりしますしね。
しかしその手軽さ故に軽く考えていると後で高くつく事になる落とし穴があります。何故ならバッテリー上がりはあくまでも結果であり原因とは限らないから。
何が言いたいのか分かる人は恐らく経験のある人でしょう。何を言ってるのか分からない人は拙い文章ですが後で無駄な出費や時間を取られない為にも読まれる事をオススメします。
そもそもバッテリーというのはあくまでもバイクが発電した電力を蓄える貯蔵庫のようなもので、発電はバッテリーではなく充電装置と呼ばれている別の部品が担っています。
ザックリ簡単に説明すると3つで説明できます。
【ジェネレーター/ステーターコイル】
主にクランクの脇に付いていて一緒に回り発電するのが役目・・・大体クランクの左側に付いてて中にはステーターコイルと呼ばれる物が入ってます。
エンジンの回転数が上がれば上がるほど当然ながらジェネレーターも回転数が上がるので発電量が増えます。
【レギュレーター/レクチファイア】
ジェネレーターが発電した電気を整えバッテリーを含む各部に送るのが役目・・・熱に弱いくせにものすごく熱くなるので注意。
【バッテリー】
レギュレーターによって整えられた電気を蓄えるのが役目。
信頼性も値段も高いことで知られるバッテリーメーカーのGSユアサさんですが2017年で100周年だそうです。ホンダより老舗とは・・・ちなみにGSユアサと台湾ユアサは無関係なのでご注意ください。
流れ的には
【ジェネレーター】
↓
【レギュレーター】
↓
【バッテリーを始めとした各部】
↓
【エンジン(ジェネレーター)】
↓
以下略
という流れです。なんだかこう書くと永久機関のような気がしますね。ガソリン使ってるから全然永久機関じゃないですが。
冗談はさておき問題はここからで、もしもジェネレーターやレギュレーターが壊れたらどうなるのかというと・・・
ジェネレーターが故障した場合
発電しないジェネレーター
↓
整える電気が来ないレギュレーター
↓
吸われる一方のバッテリー
↓
バッテリー上がり(スッカラカン)
↓
セルが回らない
レギュレーターが故障した場合
発電するジェネレーター
↓
ちゃんと整えないレギュレーター
↓
整ってない電圧を浴び続けるバッテリー
↓
バッテリー上がり(過充電またはスッカラカン)
↓
セルが回らない
このように非常に厄介な事にジェネレーターの故障でもレギュレーターの故障でも出て来る症状は全部バッテリー上がり。
JAFの出動理由の第一位が「バッテリー上がり」なのはご存知かと思いますが、これは自動車だけでなくバイクでもそうです。これは単に出先でバッテリーが寿命を迎える人が多いからではありません。
バッテリー上がりの原因はジェネレーターやレギュレーターの故障なのに、勝手にバッテリーが原因だと決めつけ
“バッテリー交換や再充電だけして走りに行く”
という行為をしてしまう人が多いから。
新品や充電済のバッテリーは蓄えられているので、ジェネレーターが壊れていようがレギュレーターが壊れていようがバッテリーが力尽きるまで走れてしまう。
結果として出先でバッテリーが力尽きロードサービスのお世話になるっていう失敗をする。そしてまたバッテリーの再充電や交換をして走りだし、同じ目にあってやっと原因が他にあるんじゃないかと気付く。お金も時間も勿体無い行為です。
JAF出動理由第一位の「バッテリー上がり」というのは、何もバッテリーの寿命だけではなくこういったパターンも含まれているということ。クーラーなど快適装備満載の自動車と違い多くの電力を必要としないバイクの場合むしろコッチの方が多いかもしれない。
じゃあどうやってバッテリーの問題なのかレギュレーターやジェネレーターの問題なのかを見分けるのかって話ですが、まず起こりがちな症状を見てみましょう。
【レギュレーター故障時】
・ライトバルブがすぐ切れる
・バッテリーが膨らんでる
・メーター(針の動きなど)がおかしい
・異臭がする
等が挙げられます。
これはレギュレーターが故障すると電圧のコントロールが効かなくなるので、簡単にいうと質の悪い電気が駆け巡る事になるから。
その結果、ライトバルブが切れたり、バッテリーが駄目になったり、カプラを溶かしたりする。最悪の場合ほかの部分までヤラれます。
【ジェネレーター故障時】
・エンジンの掛かりや吹け上がりが悪い
・ファンやメーターなど一部が作動しない
・焼けた臭いがする
等が挙げられます。
ジェネレーターが故障するということは発電されていないということなので慢性的な電力不足に陥ってる状況。
もしも心当たりがある人は要注意です・・・というかそのままだと近い将来ロードサービスにお世話になること間違い無しです。
しかしこれらの症状が必ずしも現れるとは限らないのがこれまた悲しい現実。
だからこそ後で泣きを見ない為にも”セルが回らないor弱々しい”となったら、バッテリーが原因だと決めつけず本当にバッテリーの寿命なのかを確認するようにしましょう。
素人でも簡易ではありますが調べる方法はあります。
ただそれにはテスター(電子測定器)が必要になります。
ホームセンターに行けば1500円くらいで買えるのでついでの時にでも買われる事をオススメします。無駄な時間と出費が増やすことを考えたら安いと思いますので。
あと当然ながらセルを掛けられないほど弱ったバッテリーではテストできないので新しいバッテリーもしくは充電されたバッテリーが必要です。
充電はガソリンスタンドやバイク屋に持って行けばやってくれる所が多いですが、これを機に買うのもいいかもしれません。
過充電防止機能が付いてる物が一般的ではありますが、長時間の繋ぎっぱなしは過充電を招き更に悪くしてしまう恐れがあるので気をつけましょう。
お高い充電器は更にサルフェーション除去機能も付いていたりします・・・サルフェーションっていうのは硫酸鉛のことです。
バイクでメジャーな鉛バッテリーの中には鉛と硫酸が入っているんですが、放電をするとこれが硫酸鉛という電気を通さない結晶となり電極板に張り付いていく。しかもこいつらお互いにくっつきやすい性質を持ってます。
しっかりした充電が出来ていれば再び分解されるんですが、そのままにしておくとドンドン出来てドンドン電極板を覆っていき最後には充電出来なくなってしまう。
大量の電力を使うセル始動による短距離の走行が良くないと言われることや、一度上がったバッテリーは寿命が縮むと言われるのは過放電でこのサルフェーションが大量に発生してしまうから。
つまりこの憎きサルフェーションを除去してくれる機能が付いてるハイスペック充電器なら蘇生率も高いと思われるのですが費用対効果は・・・無理してまで買うほどではないかと。
長くなってスイマセン。
肝心の原因を調べる方法
用意するものは電圧計とある程度元気なバッテリー(再充電時は一時間ほど寝かせること)を積んだ愛車だけです。
【第一段階】
バイクのキーをONにした(エンジンは掛けない)状態で10秒ほど待って電圧を安定させた後、テスターをDC20またはDCV20に合わせバッテリーターミナル(バッテリーのプラスとマイナス)にそれぞれテスターを当てる。
※ プラス(赤い方)の扱いには十分注意しましょう。
・数値(電圧)が12.5~13V付近を指している場合
バッテリーOK→第二段階へ
※この数値は車種により若干違います、特にヤマハ車は高い場合が多いので注意
・11Vなど数値が低い
バッテリーNG→再充電しても低い場合は要バッテリー交換
・16Vなどかなり高い(無いとは思いますが)
バッテリーNG→要バッテリー交換
※バッテリーOKなのにセルが回らない場合はセルモーターの故障が疑われます
※キルスイッチも忘れず確認を
【第二段階】
エンジンを掛けて回転数を5000rpmまで上げる。
※第一段階で計った数値を仮に13.0Vとした場合
・14Vなど+1.0V前後で推移する
正常→バッテリー上がりの原因はバッテリー劣化
・12.5Vなど数値が下がっていく
電圧不足→レギュレーターもしくはジェネレーターの故障で充電できていない
・回転数に応じて16V~と青天井で跳ね上がっていく
電圧異常→レギュレーターの故障で過充電を起こしている
です。
電圧が高すぎる場合はほぼレギュレーターの故障。
電圧が低いなどの異常が見受けられた場合はジェネレーターの可能性もありますがジェネレーターはそう簡単には壊れません。
ただ軽量化第一のスーパースポーツなどは設計の無理が祟っているのか、ジェネレーターが壊れやすかったりする持病を持っている場合もあります。
ありがちなのはステーターコイルに巻かれているエナメル線の焼けやショート。
あとジェネレーター側に大きな転倒歴がある人も一応注意を。
ただそれらを除くと基本的に故障するのはレギュレーターです。風当たりのいい場所にヒートシンク付きで配置されているのを見ると分かる通りレギュレーターは余分な電力を熱に換えるのもお仕事なので凄く熱くなります。
その熱でパンクしちゃうわけです。あまりの壊れやすさから消耗品とも言われてたり・・・にしては高いですけどね。
ちなみにジェネレーターかレギュレーターか故障の原因をテスターでハッキリさせるにはエンジンからの電圧を測る必要があります。
もしもここの時点で電圧がおかしかったからジェネレーター(発電)の故障。
反対に正常だったレギュレーター(制御)の故障という事になる。
ただこれは少し難易度が高いのでソコら辺はバイク屋に任せるとして大事なのは最後にもう一度言いますが
「バッテリー上がりは結果であり原因ではない」
という事です。
セルが回らなかったり弱々しかったらレギュレーターやジェネレーターも少しでいいから疑ってみる事。
楽しい思い出を作るはずのツーリングが苦い思い出にならない為にもです。