バイクのリサイクル率は0.3% ~再資源化率97.5%では見えない中古車事情~

バイクリサイクル

経産省の調査によると54.5%の人しか知らないようですが、バイクは基本的に無料でリサイクルに出すことが出来ます。

車に詳しい方なら

「自動車リサイクル法か」

とピンと来るかもしれませんがそれとは別。実はバイクは自動車リサイクル法の対象外なんですね。

自動車リサイクル法は対象外

理由は車検の有無からも分かるように排気量によって管轄がバラバラでお手上げ状態だから。

でもそれじゃダメだよねと霞が関がメーカーを睨んだのかは分かりませんが、国内大手4社が中心となって2004年に法律改定による特例認定のリサイクル共同事業を自主的に設けました。

自動車リサイクル法が使えるメーカー

予めリサイクル費用(4000~6000円ほど)を車体価格に加える形で予算を捻出しており、このおかげで2011年10月以降ここ書かれたメーカーのバイクは原則として指定取引所に持っていけば無料でリサイクルに出すことが可能となっています。

※部品取り後など一部のみの引き取りは不可

※廃車が確認できる書類(廃車受付書や返納書)が必要

リサイクル費用

もしも指定取引所に持っていけない場合は全国15,000店以上ある取扱業者(要するにバイク屋)に頼む事も可能ですが、その場合は運搬料を請求される可能性がありますのでご注意を。

つまりバイクをリサイクルに出そうと思ったら

【手段1】取引所に直接持っていく

【手段2】バイク屋に持ち込んで代行してもらう

【手段3】バイク屋に取りに来てもらって代行してもらう

の3つの手段があるわけです。大物家電と一緒ですね。

リサイクルのマテリアルフロー

そうやって出されたバイクは材質ごとに分解/分別/破砕されることで

『再資源化率97.5%(※川崎重工業2019環境報告書より)』

と非常に高い効率でリサイクルされるわけです・・・が、ここからが本題。

粉砕によるリサイクル

上の写真を見て勿体ないと感じるバイク乗りが多いように

「リサイクルに出すくらいなら売るわ」

と思われる人が大半かと思います。

実際のところ、この二輪リサイクルはほとんど活用されていません。

2017年度を例に上げると約60万台ほどの使用済みバイク、分かりやすく言うと

「ナンバープレートを返納した廃車」

が出ました。

内約は少し古い2002年資料なので現在は原付一種が減って原付二種以上がもう少しあるかと思います。

廃車の割合

それで2017年度に出た使用済みバイク60万台のうち何台が再資源化つまりリサイクルされてたのかというと・・・たったの1719台。

リサイクルされた件数

わずか0.3%ほどしかリサイクルされてないんです。

ちなみに車(乗用車)は年間400万台ほどの使用済み自動車が出て約300万台ほどがリサイクルされている。

どうしてバイクはここまで極端に低いのかというと、我々が廃車にするのは勿体ないと考えるように業界の人間も勿体ないと考える人が圧倒的に多いから。

ユーザーがバイクを手放すとなった時、基本的にバイク屋や買取業者に依頼すると思います。

そうしてドナドナされたバイクは店頭に中古車として並ぶか業者オークションに流され、違うバイク屋を経由して新しいオーナーの元へ行く。

中古バイクの流れ

いわゆるリサイクルではなくリユースの流れですね。

しかしこのリユースの循環に乗れる廃車は極わずかで、60万台中2万台ほどとされています。(正確な中古台数は把握されてない)

いつまでも問題なく乗れて値も付くバイクなど存在しない事を考えればわかると思いますが、じゃあ大半は何処にいってるのかという話。

まず一番最初に行われる可能性がある事としては引き取ったバイク屋がバラして部品需要に切り替えるという行為。

部品化

旧車や事故車などそのままで売るよりも部品単位にしたほうが売れる、バッテリー買取や部品流用した方が儲かると判断されるとバイク屋で分解され部品となって消えます。

しかしこれも全体から見ると本当に極わずか。

では多くのバイク屋が廃車をどうしているのかというと・・・実は消費者と同じ様に買取業者に売るんです。

キャリアカー

こういうキャリアカーにバイクを積んでる風景をバイク屋で見たことがある人も多いのではないかと。

ちなみにこの買取業者というのは我々が知るバイク王などの買取業者ではなく、業者オークション関係が行っている出張買付の業者。バイク屋に出向いて不要なバイクを買い取りそれを業者オークションに出品するわけです。

「なぜ自ら出品しないのか」

と思うかもしれませんが、大した値がつかない車両をわざわざオークション会場まで持っていって出品しても手間賃と手数料で採算割れを起こすから。

だから買付にくるオークション買取企業に複数台を纏めて買い取ってもらうというわけ。

これとは別に輸出関連買取業者による買取もあります。

こちらも同様に大量に買い付けるんですが、出す先は業者オークションではなく輸出するんです。(個人を相手にしている所もある)

中古車の業者間の流れ

つまりこの時点で1/5ほどの中古車がリサイクルに回されずアジア市場に消えている事になる。

しかしこれで終わらないからリサイクルがほとんど行われない。

2017年度におけるオークション出品数は全てを合算すると約45万台ほどで、そのうち約40万台が落札(成約)された。

一体だれがこのバイクを買っているのかと言うとバイク屋・・・じゃないんです。結局これも大半は輸出業者なんです。

中古車の業者間の流れ2

どうしてそれほどまでにアジアに輸出されるのかと言うとアジアで需要があるから。

アジアでは日本における大物家電と同じ様に

「日本車が間違いないのは分かるけど、中国車やコピーバイクの安さも魅力的」

という背に腹は代えられない考えを持って居る人が多い。

そこで注目されるのがジャパニーズバイクでありながら比較的安い古い中古の日本車というわけ。

アジアへの輸出

国内では需要がない車両でも値が付くためリサイクルに回されず、買い取られて輸出されていくという話。

ちなみにこれは不動車や部品取り後のジャンクに近い状態でも同様。部品単位ですら需要があるから輸出されているのが現状なんです。

要するに我々が

「リサイクルに出すくらいなら売るわ」

と思うように中古車業界の人も

「リサイクルに出すくらいなら売るわ」 

という考えがあるからリサイクル率が0.3%という圧倒的に低いものとなり、同時にものすごい勢いで中古車が輸出され無くなっていってるというわけ。

ちなみに2000年代は原付がほぼ全てを占めており輸出率も50%だったものの、2010年代になると経済発展の影響か上のクラスまで需要が広がり今では全体の90%が輸出されています。

これは国内に置けるリサイクル環境も影響しています。

最初に言った様にバイクにリサイクルはメーカーによる自主取り組みなので、勝手に解体してはいけないという決まりがある自動車リサイクル法が適用されない。

しかもフロン(エアコン)やエアバッグなど特別な許可が必要な物もほぼ備えていない。

自動車のリサイクル

つまり誰もが本当に気軽に取り扱えて、売買出来る資源という扱いになってるわけです。

そのためバイクの解体を生業としてる業者はほぼ居らず、またリサイクルに出しても手間賃が掛かるだけで何の旨味も無いので持っていくようなことはしない。

そのためか2020年をもって多くの海外メーカーがリサイクルの共同事業から撤退する旨の発表がありました。

2020年からの二輪リサイクルメーカー

「リサイクルされないなら取り組まなくてもいいじゃん」

という事なのかは定かではありませんが、ただ一方で日本メーカーは継続する意思を示しています。

その理由はアジアの経済発展と生産設備の向上で

「いずれアジアへの輸出も出来なくなる」

と考えているから。

中国がプラスチックゴミの輸入を止めた途端に国内の焼却施設がパンクしたのが記憶に新しいと思いますが、バイクで同じ様な事態にならないように今のうちから備えてるという話。

まとめると中古車の大まかな流れは現状こうなっている。(画像クリックで拡大)

中古バイクの全行程

「最終地点がリサイクルではなく輸出になっている」

というのがバイクがリサイクルされない最大の要因。

良く言えばどんな状態になっても価値があることからリユースネットワークが徹底している。悪く言えば資源が海外に流出しているというお話でした。

参照
自動車リサイクル促進センター
二輪リサイクル取り組み実施報告書(経済産業省/JAMA)
二輪リサイクルの進化/中古二輪のフローに関する一考(廃棄物資源循環学会誌)
その他聞き取りなど

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