『カフェレーサー』の『カフェ』とは 〜モッズとロッカーズ〜

カフェレーサーとは

「カフェレーサーとは何ぞや」

という話をしたいと思います。

写真参照:When The Youth Of The ’60s Erupted Into Violence

現代でカフェレーサーというとザックリですが低いハンドルとバックステップでスポーツに特化したポジションのネイキッドですね。

オシャレバイクというイメージを持たれている方も多いかと。

kカフェレーサーのイメージ

ソコらへんも含めてカフェとは何なのかを長々と。

カフェレーサーが生まれたのは1960年頃のイギリスになります。

この頃イギリスは経済が思わしくなく職にあぶれたり不本意な仕事をせざるを得ない若者が多かった事で、若者の間で社会や既存の価値観への反抗心が高まっていた。

その結果として生まれブームとなったカウンターカルチャーが

『モッズ(モダンズの略称)』

とよばれるもの。

モッズ

・前髪を垂らす長めの髪型

・ピチピチスーツにミリタリーコート

・ソウルミュージックやR&B

などなど。

簡単に言うと

『大人からすると非常識な物事』

で身を固めるライフスタイルやそれに興じる若者達の事です。

モッズのビートルズ

『ビートルズ』などが正にモッズファッションですね。

若い人は『SEKAI NO OWARI』と言ったほうがピンとくるでしょうか。

そんな非常識を貫く若者たちにとって移動手段であるバイクも当然ながら非常識なものに・・・それがこれ。

モッズのバイク

ベスパやランブレッタなどいわゆるスクーターをベースにミラーやライトを限界まで装着するカスタム。

スクーターだったのはせっかくの洋服を汚さない為。

「いやいや全然カフェが見えてこない」

と感じるかと思いますが・・・ここからが本題。

モッズの生活

モッズとよばれる若者が何して過ごしていたかというと主にナンパ。クラブでオールナイトフィーバーするのが日課でした。

1960年代前半はそんなモッズにハマる若者が急増していたわけですが、その一方で同じ様に社会に対する反抗心は持ちつつも

「モッズは軟弱者のスタイルだ」

と共感しない若者の集団がいた・・・それが『ロッカーズ』です。

ロッカーズ

名前の由来はロックンロールを愛してやまない事から。

リーゼントを決めて革ジャンと革パンにエンジニアブーツ。そしてバイクはNorton、TRIUMPH、BSAなどのスポーツバイクをベースにレーサーの様なカスタム。

同じカウンターカルチャーながらモッズとは大きく異なるスタイル。

ロッカーズのカップル

当時のイギリスの若者はこのロッカーズかモッズかの二者択一な風潮でした。

ここで少し補足。

同じ時期に流行ったカウンターカルチャーであるモッズとロッカーズですが、先に確立したのはロッカーズ。

元々イギリスには

『タンナップボーイズ(100マイル/時速160km以上で走る若者達)』

という日本で言う暴走族が存在していたんですが、アメリカでヒットしていた

『The Wild One(和名:乱暴者)』

という暴走族映画の主人公であり頭役だったマーロン・ブランドに憧れるタンナップボーイズが続出。

乱暴者

『タンナップボーイズ×乱暴者』

という形でミックス(タンナップボーイズの過激化)されカルチャーとして確立されたのがロッカーズなんです。

そしてそんなロッカーズの溜まり場だったのが24時間営業の『ACE CAFE LONDON』というカフェ。

エースカフェロンドン

クラブマークのロゴを見たことがある人も多いのではないでしょうか。

ロッカーズはタンナップボーイズが元なので

『速い奴がカッコいい』

という単純明快なルールが設けられておりモッズが夜な夜なクラブで遊ぶのは対照的にカフェ間の競争や

『ジュークボックスレース』

といってジュークボックスの再生と同事に決められたコースをどれだけ早く走って帰って来れるか、曲をタイムレコード代わりにして競争するのが日課だった。

ロッカーズのバイク

この事から『カフェレーサー』という名前が付いたとされています。

ただしこれにはもう一つ別の解釈というかニュアンスもあります。

結局のところレースと言えど公道なので当然ながら競争するとなると事故が絶えず騒音も酷かったのでロッカーズはモッズ以上に社会から嫌われる存在でした。

そのため

「カフェにいるレーサーモドキ」

という皮肉を込めて

ロッカーズのレース

『カフェレーサー』

と呼ぶ人たちも居たんですね。

※最初は皮肉の方を主題に書いていましたスイマセン。

【余談】

どうして『ロッカーズ』だけでなく『モッズ』まで説明したのかというと、ロッカーズ/カフェレーサーが廃れたのはモッズの台頭によるものが大きかったから。

そして趣向の違いからも分かるように犬猿の仲で、最終的にはスタイルを巡って大乱闘にまで発展したから。

『1964年ブライトンビーチの暴動』

ブライトンビーチの暴動

これがその乱闘で参戦者は1000人以上。

メディアが仕向けたという説もあるものの、何れにせよスタイルの違いだけでここまで熱くなれる時点で若者がどれほど夢中だったかが分かりますね。

ただ残念ながらこの一件からカウンターカルチャー自体に冷めてしまう若者が急増しブームも鎮火。

そして元々ロッカーズはモッズに食われ気味なカルチャーだった事に加え、溜まり場だったエースカフェが1969年に閉店してしまった事で自然と廃れていきました。

ちなみにエースカフェは2001年から再び営業を開始しており現代では

エースカフェロンドン

『ロッカーズ/カフェレーサーの聖地』

として超人気スポットになっています。

またウェアやグッズなども販売しており日本でも展開しているのでロッカーズになりたい方は【公式ショップ】をどうぞ。

最後になりますがこの歴史を描いた1979年製作の映画があります。

さらば青春の光

『さらば青春の光』

日本語で検索しても漫才コンビしかヒットしませんがそれの元ネタ。

モッズの主人公を中心とした映画ですが興味のある方はレンタルサービスなどでどうぞ。

「『カフェレーサー』の『カフェ』とは 〜モッズとロッカーズ〜」への1件のフィードバック

  1. いつも貴サイト精読させていただき楽しみにしております。音楽サイドから申し上げますと、映画「さらば〜」に描かれたようなモッズが存在したかどうかは本場UKでも歴史的検証が学問レベルで行われていたようで、ミュージシャン(ビートルズも含む)に「あなたはモッズでしたか?」と問うたインタビューが数多く残されています。答えは「NO」か「さあ、どうだろう?」のようです。映画はTHE WHOのピート・タウンゼントの原作で実際に発生したブライトン騒動に着想を得て当時ヒットしたウエストサイドストーリーのごとくモッズとロッカーズの衝突の物語に仕上げたフイクションであるのが真相のようです。レコード会社が仕掛けたネオモッズムーブメント(1977年THE JAMのデビュー)の一環として低予算で作成された映画だと言うことですが世界的に大ヒットしてフォロワーを産んだようです。因みに劇中モッズが着用しているコートをモッズコートと呼称しているのは日本だけだとか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です