規制の歴史と今後

排出ガス規制の歴史と今後

排出ガス測定

年を追うごとに強まってくる規制。そこで少し規制について勉強をしてみましょう。

規制というのは凄く大まかに分けて

・排出ガス規制

・騒音規制

この二つがありますが、今回は排出ガス規制のお話。

 

 

これから説明する事の補足として最初に説明しておきたいのですが、規制というのは導入されて1~3年程度の猶予があります。

ざっくり説明すると

規制の流れ

・新型車はその年から

・現行車は1年後から

・輸入車は2年後から

といった感じになってます。さすがに国もメーカーの事を考え規制と同時に販売禁止なんて事はしません。我ながら分かりにくいイラストですねスイマセン。

 

 

もう一つ念のため排出ガス規制で測定されるものを。

CO(一酸化炭素):危険性は言わずもがな。

HC(炭化水素):太陽光(紫外線)に当たると有毒な光化学スモッグに変化する。

Nox(窒素酸化物):オゾンを破壊すると言われていて発がん性も非常に高い。

 

そしてこれらCO&HCとNoxはトレードオフという厄介さ。

空燃比と排出ガス規制

燃料を濃くすればNoxは抑えられるけどCOとHCが大量に出る。

燃料を薄くすればCOとHCは抑えられるけどNoxが大量に出る。

それら三つとも抑えないといけないなんて大変ですね。

 

さて本題。

二輪車で排出ガス規制が最初に設けられたのは1998年と意外にも浅かったりします。

 

【1998年排出ガス規制値】

4サイクル|2サイクル

CO値 13.0|8.0

HC値 2.00|3.00

NOx値 0.30|0.10

 

という特に2stに厳しい規制が生まれました。

NSR250R

これによって無くなってしまったのが、今もなお語られることが多いNSR250を始めとした2stですね。

98年に126~250cc(軽二輪)に導入され、251cc~(小型二輪)のバイクにも翌年から導入されました。

 

次に排出ガス規制強化が入ったのはそこから少し離れた2006年の事。これが大問題でした。

 

【2006年排出ガス規制値(98年規制値)】

CO値 2.0(13.0)

HC値 0.30(2.00)

NOx値 0.15(0.30)

 

98年の排ガス規制と較べてもらえると分かるのですが、98年の規制値から更に7~8割減という何かの間違いじゃないのかと思うほどの厳しい数値。

しかも更に追い打ちを掛けたのが

『暖気モード(暖機後測定)から冷機モード(いきなり測定)』

に測定方法が変わったことです。簡単に言うと冷機時は綺麗に燃焼できない。

ゼファーΧ

これにより細かい設定が難しいキャブ車、燃料を濃くする必要がある空冷が全滅しました。

代表的なのはゼファーやXJR400でしょうか。

 

 

実は急にこれほどまで厳くなったのには国の都合が背景にあります。

それは1997年に日本が議長国となり

「みんなで温暖化の原因を減らそう」

という取り決めをした京都議定書。その始まりの年が2005年だったんですが。

チームマイナス6パーセント

議長国である日本は2012年までに温室効果ガス-6%という非常に厳しい数値を己に課しました。

そして目をつけられたのが今まで排出ガス規制が緩かった二輪だったんです。二輪は温室効果ガス排出の割合で言うならホントに微々たる物なんですけどね。

 

問題だったのは段階的に規制値を強めていった車と違い、今までの規制値は何だったのかと思えるほどいきなり厳しい規制値を敷いたこと。

これに対しバイクメーカーは当然ながら反発し

「せめてもう少し規制値を年単位で刻んでくれ」

と抗議しましたが、国際的なメンツが掛かってる以上なんとしても成功させたい政府は聞く耳を持たず問答無用の規制強化。

結果は皆さんご存知の通り、各メーカーともラインナップが壊滅状態に陥るという惨事になってしまいました。

 

そんな悲惨な状況から立ち直りつつあった2012年に二度目の規制強化が入りました。

規制なんてあったっけ?って思ってる人も多いと思います。それもそのはず。

 

【2012年排出ガス規制値(06年規制値)】

CO値 2.62(2.0)

HC値 0.27(0.30)

NOx値 0.21(0.15)

 

2006年の無慈悲な規制よりも少し緩くなったんです。まあ誤差ですが。

 

これは国がWMTC(Worldwide-harmonized Motorcycle Test Cycle)という国際基準に準拠する形になったから・・・そして京都議定書の削減期間が終わったから。

WP29

この規制値は国連の自動車基準調和世界フォーラム(UNECE/WP29)で協議し策定された基準で、国連のATMである日本も当然ながら加盟しています。

ちなみに測定方法やクラス分けも変更されました。

 

【クラス1(アーバンクラス)】
50cc~150ccかつ最高速度100km/h未満

 

【クラス2(ルーラルクラス)】
150cc未満かつ最高速度130km/h未満
もしくは
150cc以上かつ最高速度130km/h未満

 

【クラス3(モーターウェイクラス)】
最高速度130km/h以上

 

 

何故規制で国際協調する必要があるのか?

 

少し話がズレますが、何故規制を国ごとではなく世界で協調しないといけないのかというと

「環境問題や安全性の問題は地球規模なので皆で足並みを揃えよう」

っていうことなんです。

 

ですがこれは自動車メーカー(二輪含む)の圧力ならぬ後押しもあったと思われます。

規制が統一化されれば国によってセッティングや部品の作り変えを行なう必要がなくなり大幅なコスト削減になるからです。

ただ日本を含む加盟国も全てを協調しているわけではありません。例えば自動車のデイライトも国際基準として明記されているのですが日本は拒否してたり。

 

さて話を戻して・・・次に規制が入ったのは2016年。

欧州とほぼ完全に足並みを揃えた規制値になりました。

 

【2016年排出ガス規制値(12年規制値)】

クラス1|クラス2|クラス3

CO値 1.14|1.14|1.14(2.62)

HC値 0.30|0.20|0.17(0.27)

NOx値 0.21|0.17|0.09(0.21)

 

2012年の排出ガス規制値のおおよそ半分です。いわゆるEURO4と呼ばれる規制です。

この規制でも数多くの名車が消えていきました。

ただこれについては排ガスではなくOBD(車載式故障診断装置)の義務化という規制が大きな理由。

OBD

これは簡単にいうと自己診断機能で、専用機器を繋ぐことで断線や異常などを検知する機能。

これが義務付けられたことでセンサーなどを完備していない既存車の多くがカタログ落ちしてしまったんです。

バイクメーカーが販売網再編(実質ディーラー化)に動いた理由の一つはここにあります。

 

が、しかし・・・実はこれ"STAGE1"なんです。

 

STAGE1があるという事は・・・STAGE2があるんですね。

2018年6月にSTAGE2となるEURO5への移行が正式決定されました。

 

【2020年排出ガス規制目標値(2016年規制値※クラス3)】

CO値 1.00(1.14)

HC値 0.10(0.30)

NOx値 0.06(0.21)

排気量や性能などクラス分けなく一律。

もうここまで来たら外の空気吸うより排気ガス吸ったほうが綺麗なのではないかと思う規制値の高さ。

OBDもSTAGE2となり

・回路故障+排ガス閾値診断

だけだったものに加え

・性能劣化を検知

・市場における故障頻度の検知

・トルク低下検知

などが加わります。

 

※適応時期

新型車:2020年末より

継続車:2022年末より

原付一種:2025年末より

原付はメーカーが悲鳴を上げたこともあってか猶予をもたせたようです。

 

 

長い余談・・・

もしかしたらこれを読んでバイク界の未来に絶望してる人が居るかもしれませんが、実は近年になって排気ガスを浄化する触媒(キャタライザー)の技術が飛躍的に向上しました。

つまり誤解を恐れずに言うと、キャタライザー技術の向上によって実は排出ガスはそこまで深刻な問題では無かったりします。

 

2006年の規制以降のバイクにはその問題を解決するために三元触媒というものが使われています。

三元というのは上で言ってる通りCOとHCとNoxを3つとも同時に浄化する触媒の事です。

細かく言うと、プラチナがHCやCOを酸化させCO2と水に、ロジウムがNoxを窒素と酸素に分解します。

キャタライザー

最近では当たり前になった通称お弁当箱がそうですね。この中で無害化してるわけです。

 

ただし、当然ながらこれらにもデメリットもあります。

プラチナやロジウムといったレアアースは当然ながらお高い。だから車体価格に跳ね返ってきます。

最近バイク高くなりましたよね。CB400SFなんて今や100万円ですよ・・・ちょっと前まで60万円くらいだったのに。

 

ここでちょっと思い出して欲しいのは無慈悲な規制が行われた2008年のFI化の流れ。FI化でどのバイクも車体価格が軒並み上がりましたのを覚えていると思います。

これには理由があって、メーカーの開発者は白紙の状態からバイクを作るとき

”販売価格XXX万円で利益率○○%”

という風にはじめに予算というか枠が決められていてます。

その枠の中でコストと性能を睨み合いながら設計するわけですが、こうして作られたバイクが後々の規制で

「このままでは規制に通らない、通すためにはFI化や三元触媒装着するしかない」

となった時、既存の設計のまま付ける”いわゆる後付”だと当然ながら当初の設計予算からオーバーする。

DENSO FI

その分は車体価格に丸々反映させるしかないわけです。

昔からある既存車の値段が高くなっていってる気がするのはこういう事からなんです。

 

しかしメーカーだって好きで値上げしているわけではありません。むしろメーカーとしても値上げは苦渋の決断なんです。

だからメーカーはFI化や触媒というコスト増をニューモデルや大幅なモデルチェンジなどでは設計の時点で他の部分をコストカットし帳尻を合わせ、値上げを極力抑えたりしている。

 

コストカットというと聞こえが悪いですが、単純に質を落としているわけでないですよ。

最近でいうならNC700というバイクが出ましたよね。コストパフォーマンスに重きを置いたバイクですが、単純に安物部品で作ったわけではありません。

エキゾースト直下型キャタライザー

要素の一つに触媒技術の革新があります。

排気ガスが出てくるエキゾーストを直ぐに一本に纏め直下に触媒(キャタライザー)を置くことで効率と触媒数の削減に成功しコストを抑えてある。

新型車が意外とリーズナブルだったりする背景には、こういった規制に対する設計時期によるジェネレーションギャップも要因の一つなわけです。

まあグローバル戦略車が増えたというのが大きいですが。

 

ただ排出ガス規制によるデメリットはもう一つあります。コッチの方が問題かな。

DN-01キャタライザー

上で言った触媒というのは理論空燃比1:14.7に近い空燃比じゃないと仕事をしません。

しかし最もパワーが出る空燃比である出力空燃比は12.5(濃いめ)です・・・つまり排出ガス規制によってパワーを出すのが難しくなってるんですね。

これまた上で言った通り既存のエンジンで通すとなると尚の事です。

 

メーカーが

「規制が厳しすぎて売ることが出来ない」

という問題に陥ってるのは排ガス規制よりも圧倒的に騒音規制の方です。

>>騒音規制についてはコチラ

 

お知らせ|更新履歴