KR-1S/R(KR250C/D) -since 1989-

KR-1S

「SUPER CIRCUIT POTENTIAL」

KR-1から一年ほどで登場したレース特化モデルのKR-1S/KR250C型とKR-1R/KR250D型。

具体的には

・エンジン見直し

・ワイドリム五本スポークホイール

・ブレーキを対向4POT化

・フレーム剛性の見直し(リブの削除)

などなどの変更。

登竜門的なレースだったSP250に挑むレーサーに向けて作られた意味合いが強いRモデルは更に

・クロスミッション

・強化クラッチ

・大径キャブ

を標準装備。

ところで少し話が変わりますがレーサーレプリカというのは文字通りレーサーのレプリカなわけで

「どれだけワークスやレーサーに近いか」

が当時のセールスではとっても大事でした。

レプリカ相関図

そうなった時に

「KR-1って何のレプリカなの」

となるわけです。

カワサキのレプリカ相関図

カワサキはGPZ900のヒットから始まったアンチレーサーレプリカ路線を強め1983年にはレースから完全撤退していました。つまりワークスレーサーも市販レーサーも持っていなかった。

カワサキもそれがネックだという事が分かっていたので、1989年から全日本250クラスにワークス参戦を開始。

X-09

これがその250ワークスマシンX-09です。

チームはKR-1と同じでベースとなっているのもKR-1。

レーサーからのレプリカではなく、レプリカからのワークスレーサーという順番が逆な展開。

そんなX-09は並列二気筒ではなくV型二気筒を積んでいるわけですが・・・それがまた独創的。

009D

Vツインを引っくり返した様な形で搭載している。

最初は俗に言うL字程度の傾きだったのですが、大容量エアクリーナーボックスとクランクリードバルブまでをストレートに結ぶことを最優先した結果1993年モデルで遂に逆さまに。

なんともカワサキらしい独自性でKR250に負けずとも劣らない逆V型エンジンのレーサー。そしてそれをフィードバックしたレーサーレプリカが市場に登場する・・・ハズだった。

この頃というのはレプリカ人気(市場人気)に直結することからワークスによる全面対決状態で一番過激になっていました。

だから暫くレースから遠ざかっていたカワサキには厳しい物がありX-09は活躍できずにいた。

それと同時に90年代に入るとレーサーレプリカブームが失速し始め、また自社からアンチレーサーレプリカの急先鋒といえるゼファーが登場し大ヒット。

KR-1

つまり早い話がX-09で戦う理由、そしてKR-1を続ける意義が薄れてしまった。

そのためカワサキは1993年のシーズン終了を待たずに全日本250クラスから撤退。KR-1もそれに伴い終わりを迎える事になりました。

主要諸元
全長/幅/高 2005/695/1105mm
シート高 755mm
車軸距離 1370mm
車体重量 131kg(乾)
燃料消費率 -km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 16.0L
エンジン 水冷2サイクル2気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/10000rpm
最高トルク 3.7kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後140/60R18(64H)
バッテリー YB4L-A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR10ES
または
W31ESR
推奨オイル カワサキ純正オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.2L
スプロケ 前14|後41
[前15|後40]
チェーン サイズ520|リンク98
車体価格 559,000円(税別)
[599,000円(税別)]
※[]内はKR-1R(D型)
系譜図
KR2501984年
KR250/S
(KR250A)
KR250S1985年
KR250S
(KR250A後期)
KR250B1988年
KR-1
(KR250B)
KR250C1989年
KR-1S/R
(KR250C/D)

【関連車種】
NSR250Rの系譜TZR250の系譜250Γの系譜

KR-1(KR250B) -since 1988-

KR-1

「レーシングパフォーマンス」

先代KR250とは打って変わり遠慮なくカウルが付いたレーサーレプリカとして登場したKR-1/KR250B型。

アンチレーサーレプリカ路線を改め、真っ向勝負を挑んだモデルです。

KR1カタログ

ただこれは正確に言うと

「レーサーレプリカブームだから出した」

というよりもブームの熱源である

「F3やSP250のために出した」

というのが正しい表現かと思います。※レプリカブームの背景はそのうち書きます

じゃあそのレースに向けたKR-1がどんなバイクだったのかと言うとKR250とは打って変わって非常にオーソドックスな造り。

KR1のボディ

もちろん極太フロントフォークや、このクラスでは非常に珍しい前傾の強いバランサー付き並列二気筒エンジンなど特徴はあります。

しかもKR-1はバランサー付けた上にラバーマウントというW防振仕様で振動がほとんどない。

KR-1

ただこの250とは思えないゴツいアルミツインスパーフレームを見れば分かる通り、剛性がガチガチ過ぎてお世辞にも乗りやすいレーサーレプリカとは言えなかった。

でもバランサーによるスムーズな吹け上がりと乾燥重量123kgというクラス最速の軽さを持っていたから速かったのもまた事実。

KR250Bカタログ

「手強いけどハマれば速い」

というレーサーレプリカだろうが変わらずカワサキらしさがあるバイクでした。

主要諸元
全長/幅/高 2005/690/1115mm
シート高 750mm
車軸距離 3165mm
車体重量 123kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 16.0L
エンジン 水冷2サイクル2気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/10000rpm
最高トルク 3.7kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/70R17(48H)
後130/60R18(60H)
バッテリー YB4L-A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR9ES
または
W27ESR
推奨オイル カワサキ純正オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.2L
スプロケ 前14|後41
チェーン サイズ520|リンク98
車体価格 559,000円(税別)
系譜図
KR2501984年
KR250/S
(KR250A)
KR250S1985年
KR250S
(KR250A後期)
KR250B1988年
KR-1
(KR250B)
KR250C1989年
KR-1S/R
(KR250C/D)

KR250S(KR250A後期) -since 1985-

カワサキKR250S

「スーパーフレキシブル・タンデムツインクォーター」

わずか一年で追加モデルとして発売されたKR250S。

・ラバーマウントミラー

・シート形状の変更

・専用カラーリング

などなどの変更が加わっているのですが一番は

『KVSS(カワサキ・バルブ・シンクロナイゼーション・システム)』

という排気デバイスが付いたこと。

KVSS

これは簡単に言うと両方のエキゾーストチャンバーをバイパスで繋げ、回転数に応じてバルブ開閉して繋げるようにしたもの。

こうすることで互いの排気が互いの掃気の際にそのまま流れていってしまう混合気を押し戻す事が出来て充填効率を上げる事ができる。

これは主に低域で効果を発揮するデバイスで低速トルクのアップが狙いです。

KR250Sカタログ写真

実はKR250Sを出したのはこのデバイスを付けるために出された様なモデル。

というのも実は無印版のKR250があまりにも低速トルクが無く、煽りが足りずエンストして発信する事すら出来ない人が続出したから。

これはテストライダーが清原氏を始めとしたレーサーのみで

「レーサーレプリカなんだからこれくらいが普通だろう」

と想定していた使用域が余りにも高かった事が原因のよう。

KR250S/KR250A

『スーパーフレキシブルパワー』

とキャッチも柔軟性をアピールする物に変わっているのもそのためです。

ところでKR250/Sというと何と言っても中身はレーサーレプリカなのに見た目はレーサーっぽくないのが印象的ですが、これには止むに止まれぬ事情があったよう。

日の丸テール

車体設計を担当した新谷さんいわくKR250を開発していた当時は

『カウルの認可が下りない時代』

だった。

だからホンダのVTと同じ様にメーターバイザーという名目でアッパーカウルだけ付けたスポーツネイキッドとして出し、カウルは後から付けたい人だけ付けてもらうオプションで計画で進んでいた。

しかし発売直前でカウルが認可される様になり初のカウルマシンとしてガンマが大ヒット。

空前のカウルブームとなった事からオプションのサイドカウルとアンダーカウルを標準装備に急遽変更しこの形になった。

KR250S

「カウルは付けているけどレーサーっぽくない」

と言われた真相にはこういう背景があったわけです。

主要諸元
全長/幅/高 2035/685/1170mm
シート高 770mm
車軸距離 1360mm
車体重量 139kg(乾)
燃料消費率 42.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷2サイクル2気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/10000rpm
最高トルク 3.7kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-16(54H)
後110/80-18(58H)
バッテリー FB4L-A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
B9ES
推奨オイル カワサキ純正オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.5L
スプロケ 前14|後38
チェーン サイズ520|リンク98
車体価格 508,000円(税別)
系譜図
KR2501984年
KR250/S
(KR250A)
KR250S1985年
KR250S
(KR250A後期)
KR250B1988年
KR-1
(KR250B)
KR250C1989年
KR-1S/R
(KR250C/D)

KR250(KR250A) -since 1984-

カワサキKR250

「SUPER LUXURY SPORTS」

レーサーレプリカブーム黎明期に登場したKR250/KR250A型。

まさにカワサキの2stレーサーレプリカを代表する車種・・・なんですがその割にはレーサーレプリカ特集でも端折られる事が多いモデル。知らない人も多いのではなかろうか。

KR250後期

カワサキはGPZ400Rなどのアンチレーサーレプリカ路線でレースから離れてしまったのが大きな理由でしょうか。

ただこのKR250もれっきとしたレーサーレプリカなんですよ。

このKR250は1977年から1983年まで参戦していたWGP250のワークスレーサーKR250のレプリカです。

KR250A

同じ名前だからちょっとややこしいんだけど後ろに見えるのがそうで、WGP(ロードレース世界選手権)250部門でチャンピオンを四度も取った凄いマシン。

そしてちゃんとレプリカと言えるようレーサーと同じタンデムツイン形式のエンジンを積んでいます。

タンデムツインエンジン

タンデムツインというのは文字通り単気筒がタンデムするよう縦に二個並べられたエンジンの事。

エンジン幅をシングル並のスリムさに出来るメリットがあります。

これだけでも十分ユニークなんですが、KR250はもう一つ紹介したいユニークな物を備えています。

RRISシステム

『R.R.I.S.(ロータリー&リードバルブインテークシステム)』

とよばれる吸気方式です。

と言ってもピンと来ない人が多いと思うので簡易ながら説明。

2stの吸気方式というのは大まかに分けて三種類あります。

一つはピストンバルブ方式。

ピストンバルブ

早い話が吸気ポートの弁の役割も全てピストンにさせるもっともシンプルな方式。

次はクランクケースリードバルブ方式。

クランクケースリードバルブ

吸気ポートの弁の役割をリードバルブと呼ばれる負圧で開く弁に任せ、クランクに直接繋げている方式。

ピストンの位置に依存せず吸気が出来るメリットがあり晩年はこっちが主流でした。

※後にピストンバルブにもリードバルブが付きました

そして最後はロータリーディスクバルブ方式。

ロータリーディスクバルブ

これはクランクと一緒に回る円盤を弁にしている方式。

絵が下手で申し訳ないんですが、常に回転数に応じた正確な開閉が出来るのがメリット。

クランク回転角に応じて吸気ポートが開いたり塞がったりするメダルゲームみたいな開き方。

で、もう一度KR250の吸気方式をおさらいすると

レーサーレプリカKR

『ロータリー&リードバルブインテークシステム』

と二つの吸気方式が合体した様な名前になっていますよね。

これがどういうことかというと、方式としてはロータリーディスクバルブと同じ。ただその吸気口の一部にリードバルブが設けられている。

レーサーレプリカKR

弱い負圧の時は開かないけど、強い負圧の時にはパカっと弁が開いてグングン吸気する可変バルブみたいな機能。

スペースに余裕があるロータリーディスクバルブならではの手法ですね。

KR250

これのおかげでKR250は2stらしさ全開の二段ロケット加速をします。

ちなみにこの機能はARとKR25にしか採用されていない珍しい機能。

KR250カタログ

横から顔を出しているキャブはそれを示しているKR250のアイコン。

そしてそれと同時に

「他所と同じことはしない」

というポリシーをデザイン共々よく表しているカワサキらしいレーサーレプリカというわけ。

主要諸元
全長/幅/高 2035/685/1185mm
シート高 790mm
車軸距離 1360mm
車体重量 133kg(乾)
燃料消費率 40.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷2サイクル2気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/10000rpm
最高トルク 3.7kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-16(54H)
後110/80-18(58H)
バッテリー FB4L-A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
B9ES
推奨オイル カワサキ純正オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.5L
スプロケ 前14|後38
チェーン サイズ520|リンク98
車体価格 498,000円(税別)
系譜図
KR2501984年
KR250/S
(KR250A)
KR250S1985年
KR250S
(KR250A後期)
KR250B1988年
KR-1
(KR250B)
KR250C1989年
KR-1S/R
(KR250C/D)