カワサキも四輪を造った事がある ~軽自動車からフォーミュラーまで~

川崎重工業

二輪と四輪というのは開発者がどちらも”クルマ”と言うことからも分かる通り非常に親しい乗り物。

だからホンダやスズキは四輪(以下:自動車)も手掛けてますし、ヤマハもトヨタのV6/2.5Lエンジンやランクルなどに使われているX-REASというサスペンション機能やパフォーマンスダンパーなどを手掛けています。

LFAのV10エンジンもヤマハですね。

LFAエンジン

正確に言うと設計が共同で生産はトヨタ(F1の設備)、そして組み立てがヤマハなようですが。

それ以前もOX99という・・・って今回はカワサキの話でした。

我々が知らないカワサキの別の顔

でも話した通りカワサキはバイクメーカーの中でも自動車と一番と縁のないメーカーと思われがちですが、自動車に関しては溶接&塗装ロボットという別の角度から深く関わっています。

カワサキの自動車用ロボット

実はホンダのバイク製造ラインにも噛んでたりしているので

「ホンダ製=カワサキ製』

という半分冗談だけど半分本当なネタもあったり。

カワサキは他にも

・ATV(バギー)

・スノーモービル

・船舶

・飛行機

・列車

など色んな乗り物に携わっているんですが、その中で自動車にだけ手を伸ばしていないのは不思議ですよね・・・でも実は参入を画策した事はあるんです。

それは二輪事業が安定し始めた1961年の頃。

KZ360

『KZ360』

自動車業界へ切り込むというトップダウンによって生まれたSOHC二気筒エンジンの軽自動車。

ちなみにエンジン開発をしていたのは後にZ1エンジンを造ることになる稲村さんです。

ほぼ完成していたんですがマツダR360などライバル車に設備や販路で先を越された事で事業撤退が決断され日の目を見ずに終わってしまいました。

しかしこれで終わりじゃありません。

それから数年後の1960年代半ば、まだZ1すら出ていない北米で新たなカワサキカーが生まれます。

当時カワサキは既に北米進出を果たしていたのですが今ひとつ波に乗れない状況でした。そこで現地のエンジン事業部に所属していたDarrel Krauseという方が

「KAWASAKIの名を全米に知らしめる方法を」

と考えた結果やっぱりレースだという結論に。

クラス3

「レースで活躍すればカワサキの名前と技術の高さが全米に轟く」

という事でアメリカで行われていた450ccのレースに焦点を当ててUSカワサキ主体で極秘裏に開発がスタート。

カワサキのレーシングマシンの中身

右も左も分からない状況だったんですがガレージ文化があるアメリカらしく、その道のプロを雇ったりチューニング屋から町工場まで色んな所に助力を求めたりしてなんとか形にすることに成功。

そうして形になったのがこのマシン。

カワサキのレーシングマシン

アルミモノコックフレームにスノーモービル用2st440cc二気筒エンジン。

ライムグリーンのボディは何処からどう見てもカワサキですね。タイムも狙えるほどの性能であとは調整だけという所にまで来た・・・んですが、ここから不運が重なります。

予定されていたモーターショーでのお披露目がテスト中のトラブルで間に合わなくなってしまったんです。

テスト風景

そこで仕切り直しとしてわざわざラグナセカサーキットを貸し切って発表&デモランという計画に改められたんですが、その肝心のデモランでもエンジントラブルを起こしてしまい走らせる事が出来ないという痛恨のミスを犯すんです。

もともと本社である日本のカワサキがこのプロジェクトに重きをおいていなかったということもあり、この一件で責任者だったDarrel Krauseさんは別のプロジェクトへの異動を命じられ、開発は奇しくもZ1が出た1972年に棚上げとなり自然消滅しました。

カワサキレーシング

なお現在このマシンのカバーボディは個人が所有しており、エンジンやシャーシは行方不明との事。

英語の全文はこちら(http://thekneeslider.com/kawasaki-factory-auto-racing)

しかし実はカワサキはその後もう一度1991年に自動車を造っています・・・しかも今度は日本の本社で。

それがこれ。

KAZE-X11

『KAZE-X11』

鈴鹿に拠点を置くウエストレーシングカーズというレーシングカーコンストラクターとカワサキが共同開発したフォーミュラーマシン。

アルミモノコックフレームに160馬力までチューニングしたZZR1100(北米名ZX11)のエンジンと専用5速ミッションを搭載。車体重量もわずか409kgで岡山国際(旧TI)サーキットを36秒台で走るF3並のスペックを備えていました。

パワーユニット

1993年までの約三年間で10台ほど造られたようですが、そもそもこれ何で造ったのかのかというと車名にKAZE(カワサキファンクラブ)という名前が入っていることからも分かる通り

「KAZE会員に乗って楽しんでもらおう」

と考えての事。

ちなみに設計者である大西さんいわく、このマシンを作るためにフェラーリの工場見学やジムラッセルレーシングスクール(名門スクール)に入学しノウハウを学ぶなどかなり本気だったというか造り手も楽しむためにやってた面もあったよう。

まさにバブル恐るべし・・・なんですが不幸にも完成と同時にバブルが崩壊。プレス発表までこぎ着けたものの企画は打ち切り。

カワサキのフォーミュラーカー

※写真はチームグリーンブログより

大分県のSPA直入というミニサーキットでデモランが打ち切りになる寸前に行われており辛うじて数名だけ乗れたそうですが、それを最後に表舞台から姿を消すこととなりました。しかもそのデモランで大西さんがクラッシュして一台潰してるっていう・・・

最近どこかのを引っ張ってきてカワサキワールドに展示したようですね。

それにしてもまさかカワサキがF3並のフォーミュラーマシン試乗走行を企てていたとは。

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