年を追う毎にどんどん採用車種が増えていくスリッパークラッチ。
ついにはNinja250にまで積まれる様になりました。
しかしNinja250へのスリッパークラッチ採用が発表された際
「250にスリッパークラッチなんて要らないだろ・・・」
という声を多く聞きました。
確かにスリッパークラッチというと急激なエンブレによるホッピングを抑える”バックトルクリミッター”という機能だと誰もが思いますしその通りです。
バックトルクって何よ?って人に簡単に説明
普通バイクは(車もだけど)エンジンの力でミッション(ギア)→スプロケ→チェーンと伝ってタイヤを回して走りますよね?
しかし急激なシフトダウンをするとエンジン側とタイヤ側で大きな回転差が生じてしまい、逆(タイヤからエンジンへ)の力(バックトルク)によってチェーンが暴れてタイヤがトラクションを失って跳ねたり(ホッピング)タイヤのロックを起こしてしまうんです。
80年代初頭までレーサーはこの問題に非常に頭を悩ませていました。
(今も完全に解消されたわけではないんですが)
そこで生まれたのがバックトルクリミッター機能。
バックトルクリミッターとかスリッパークラッチとか色んな呼び方で言われますが、”バックトルクリミッター”というのはそのバックトルク対策の機能の総称で、”スリッパークラッチ”というのはその役目を担う構造の一つ名称で言うなればバックトルクリミッター付きクラッチ・・・説明ベタですいません。
例えばもしクラッチじゃなくてホイール内でバックトルクを解消する構造が生まれてもバックトルクリミッターホイールとかスリッパーホイールとは言えるけどスリッパークラッチとは言わない。
そして肝心なそのスリッパークラッチの構造ですがこれまた簡単に説明すると
既存の一般的なクラッチは
物凄く単純で詳しい人に怒られそうですがまあこんな感じになってます。
クラッチを切る(クラッチを握る)と赤と青が離れる状態。
半クラッチは赤側と青側が中途半端にくっついてる状態と考えて下さい。
じゃあそれに対しスリッパークラッチがどうなってるかというと・・・
こんな感じです。(詳しい人は怒らないで下さい・・・)
注目して欲しいのはエンジン側とミッション側の間のギザギザ。傾斜したギザギザが付いているのが分かりますか?
このオス・メス状のカムになっているこれこそがバックトルクリミッター機能を持つスリッパークラッチの正体です。
最初に言った通り、ホッピングやロックといった現象はバックトルク(タイヤ側からの力)がエンジンの力を上回るほど強烈で、エンジン側(赤)よりミッション側(青)が速く強い回転をするから起こるわけです。
ではスリッパークラッチの場合どうなるかと言うと・・・
図を見ると分かる通り傾斜が付いている為に噛んでたのがズレて半クラの状態になるわけですね。
これが原理。
で、ここからが本題。
傾斜が付いてるから抜けるのは分かってもらえたと思うのですが、じゃあ逆にエンジン側(赤)が速く強い時、すなわち通常の時はどうなるか?
傾斜の角度を見て何とか分かってもらいたいのですが、エンジン側(赤)が速く回るとミッション型(青)を巻き込んで自然と深く噛んで回る様になるわけです。
これがどういうとことかというと、発進時などの半クラ操作が容易になり自然に噛むことで従来の様に強く押し付ける必要がなくなったためバネレートを柔くできクラッチを軽くすることが可能になったわけです。
副産物と言えば副産物と言えるかも知れませんが、スリッパークラッチにはこういった隠された機能が付いているわけなんです。
だからメーカーのサイトを見てもらえば分かる通りスリッパークラッチではなく
「”アシスト”&スリッパークラッチ」
と言ってるわけなんですね。
Ninja250やXV1900やV-STROM1000といったサーキット走行を主体としないバイクにも採用されるのにはこういった理由からによるものが大きいんです。