TEMPTER(NK43A)-since 1997-

テンプター

「大人のスタンダード」

1997年に登場したテンプター/NK43A型。Savageが”獰猛なやつ”という意味だったのに対しこちらは

「Tempt(誘惑)+er(する人)=TEMPTER(誘惑する人)」

という意味。

ちなみにこれは通称名という一種のあだ名みたいなもので正式な機種名はST400Vといいます・・・そう、クラシックな見た目からも分かる通りST250のお兄さん的な立ち位置で登場したバイクなんですね。

ST400V

特徴としてはサベージと同じエンジンを王道のようなセミダブルクレードルフレームに搭載する形で他にも

・アルミバフ仕上げの二連メーター
・バフ仕上げのシリンダーヘッドカバーキャップ
・懐かしい円筒クロムメッキウィンカー
・スリムさを重視したタンクとシート
・パイプ状のグラブバー
・デュアルツーリーディングブレーキ
・アルミH型リムスポークホイール

などなどちょっとした細かい部品にクラシカルというかイギリス臭プンプンな拘りを散りばめたような形になっています。

テンプターの細部

そんな中でも面白いのが足回りブレーキで、このテンプターは相変わらず聳え立ってるエンジンも目立つんだけどこれが一番の特徴。

『機械式デュアルツーリーディングドラムブレーキ』

を採用しているんです。

テンプターブラックスタイル

デュアルツーリーディングっていうのは簡単に言うとトラックなどに多い強力なドラムブレーキのことで、例えるならWディスクブレーキならぬWドラムブレーキみたいな感じ。

ツーリーディングドラムブレーキ

なんでこれが特徴かと言うとこのブレーキシステムが使われていたのは遥か昔、まだディスクブレーキが普及してない頃に制動力をなんとかするために使われていたドラムブレーキだから。

ただしこれ正に二重苦で調整が非常に難しく、フィーリングも簡単にカックンブレーキになるからディスクブレーキの普及で廃れました。スズキが採用していたのも1972年の水牛ことGT750まで。

それをわざわざH型アルミリムと共に復刻させたんですね。当然ながらこの時代にこんなドラムブレーキが付いていたのはこのテンプターだけ。

デュアルツーリーディングブレーキ

なんで今更そんな大昔のホイール周りを復活させたのかというと

・当時ドラムブレーキによるレトロ化が流行っていた

・1950年代のイギリス車がこういうスタイルだった

という事からでしょう。

そんな昔風を通り越して本当に昔にするという加減を知らずのテンプターだったんですが、残念な事に2000年をもってモデルチェンジされることなくカタログ落ちとなりました。

スズキテンプター

理由はハッキリ言ってしまうとSR400の壁が厚すぎたから。

これなんとも因果な話で、前のページで話した通りサベージは主に北米などでエントリーであると同時にカスタムベースとしても人気が出てカスタムビルダーも参加した。

これによってカスタマイズ性の豊富さというアドバンテージ、言い換えるなら

「買った後も楽しめる付加価値であり参入障壁」

があったからロングセラーになった。

テンプター カタログ

一方でテンプターもサベージと同じように美しくもシンプルな形でカスタムにも持ってこいのポテンシャルは持っていた。

しかしそのポテンシャルを既に持っているライバルが居たことで、育ててくれる時間も環境も人も与えられなかったから短命に終わってしまったという話。

一番最初に市場に出ることで多大な利益を得る『先行者利益』という要素は親しい2つのモデルの評価をこれほどまでに変えてしまう力を持っているんですね。

しかもテンプターの場合さらに可哀想なことに上で紹介した通りホイール周りが完璧だった事からそれだけ取られて重宝されるという仕打ちまでうけました。

テンプター400カタログ写真

しかしそんなテンプターも最近はカスタムブームが落ち着いてきてレトロもパッケージングが求められる時代なったためか、当時が嘘のように再評価され中古が値上がりしているっていう。

もう少し早く出すか遅く出すかしていたらまた違った結果になっていたのではなかろうかと思うんですが、まあそれでこそのスズキとも言えるわけで。

主要諸元
全長/幅/高 2110/730/1040mm
シート高 780mm
車軸距離 1430mm
車体重量 159kg(乾)
燃料消費率 43.5km/L
※60km/hテスト値
燃料容量 12.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 396cc
最高出力 27.0ps/7000rpm
最高トルク 3.0kg-m/5000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前100/90-18(56S)
後130/80-17(65S)
バッテリー FTX9-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.8L
フィルター交換時2.4L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 469,000円(税別)
系譜図
サベージ 1986年
LS650/400
SAVAGE
(NP41A/NK41A)
テンプター 1997年
TEMPTER
(NK43A)

LS650/LS400Savage(NP41A-B/NK41A-B)-since 1986-

サベージ

「ビッグ・シングル 独立宣言」

ビッグシングルクルーザーのLS650Savage/NP41A型とLS400Savage/NK41A型。

スズキいわく獣のような”獰猛さ”という意味がある通称サベージですが最初に構成を紹介すると

・SOHC4バルブ空冷シングル
・オートデコンプ連動セルスターター
・高張力鋼管セミダブルクレードルフレーム
・スズキ初のベルトドライブ(400はチェーン)
・リターン式5速ミッション
・フラットハンドルとアップハンドルの2パターン

などとなっています。

何よりも目につくのはやはり直立不動で鎮座しているビッグシングルエンジンですね。

LS650サベージ

94×94mmというスクエアシングル(400は88×65mm)で、一軸バランサーを組み込むだけでなくクランクとジェネレーターの間にフライホイールを起きフィーリングを重視したエンジン。

さらにカムチェーンテンショナーもクランクに内蔵させることでスリムさを犠牲にすること無く、空冷フィンを含めシリンダーをキレイに仕立て上げています。

サベージのエンジン

「ミドルシングルクルーザーにしては色々と創意工夫がされてるんだな」

と思うわけですがそれもそのハズ、実はこのエンジンはDR600の部品を流用しつつもサベージのために用意された新設計したエンジンなんですね。

他にもデザインコンセプトである

『ロー・ロング・ニート』

を表現するためスピードメーターをタンクに設置しセンサーもドライブから取り、フロントまわりをスッキリさせるなどの工夫が施されています。

サベージカタログ

でも更に凄いのはこれだけの事をやっていながら

『499,000円(400は479,000円)』

と50万円を切る破格の安さだったこと・・・この事でサベージは2005年にBOULEVARD S40(LS650B)と改名されつつも2019年まで大きく変わることなく販売される超ご長寿モデルになりました。

LS650B

意外と知られていないんですがアメリカなどでは650モデルが2019年まで約33年間も継続して販売されていたんですよこのモデル。

LS400サベージカタログ

日本では出てはすぐ消えて、クルーザーブームが到来したことで1992年に再度B型として登場したもののまたすぐ消えて・・・を繰り返した事から誰も覚えていないかネタ扱いかのどちらかにされがちですけどね。

じゃあ

「何がそんなにウケたのか」

という話をすると安かったのも勿論あるけどそれだけでロングセラーになったわけじゃない。

このサベージはスズキのグローバルクルーザー戦略における”第二弾”で、スズキは前年にあたる1985年に第一弾としてVS750イントルーダーというVツインのモデルを出しました。

VS750イントルーダー

イントルーダーシリーズの始祖となるモデルなんですがデザインが非常に好評で、ドイツなどでは今でもスズキを代表する三英傑に挙げられるほど好評だった。

そんなVS750の弟分として片肺だけ取り出したような形で翌年に出たのがサベージ。

LS650サベージカタログ写真

VS750の流れを組みつつ圧倒的な安い価格だっただけでなく

・大きすぎず小さすぎない車体
・セオリー無視のビッグシングル
・人畜無害な性能

などによりクルーザーの入門としてこれ以上の最適解はないと主にエントリー層に人気が出たんですが、それだけじゃない。

ブルバードS40

サベージは空冷シングルというシンプルさから

『整備やカスタムにうってつけ』

と人気が出たんです。

ガレージ文化やカスタム文化が盛んな海外でこれは非常に重用な要素で、この需要がカスタムビルダーを呼び、それがサベージを長生きさせることになった。

もちろんこれは市場の流れを変えたり歴史に名を残したりするほどの人気ではなかった。でもそんな需要をスズキ自身も切らずに何年も何十年も応えたからこそここまで来れた。

NK41Bのカタログ

『メーカー×ユーザー×カスタムビルダー』

三位一体となって愛されたからことでサベージそしてブルバードS40はご長寿クルーザーとなれたんですね。

主要諸元
全長/幅/高 2195/690/1080mm
{2195/775/1130mm}
シート高 650mm
車軸距離 1480mm
車体重量 160kg(乾)
[159kg(乾)]
{161kg|160kg(乾)}
燃料消費率 42.0km/L
[40.0km/L]
※60km/h走行テスト値
燃料容量 10.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 652cc
[396cc]
最高出力 30.0ps/5500rpm
[24.0ps/7000rpm]
最高トルク 4.5kg-m/3000rpm
[2.7kg-m/4000rpm]
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57H)
後140/80-15(67H)
バッテリー FB14L-B2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DP8EA-9
または
X24EP-U9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.8L
スプロケ [前17|後50]
チェーン [サイズ520|リンク110]
車体価格 499,000円(税別)
[479,000円(税別)]
※[]内はLS400
※{}内はアップハンドル仕様
系譜図
サベージ 1986年
LS650/400
SAVAGE
(NP41A/NK41A)
テンプター 1997年
TEMPTER
(NK43A)
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