TRICITY155(BB8)-since 2017-

トリシティ155

「Leaning Multi Wheel 第二弾」

高速道路も乗れてしまうTRICITYの155ccモデル。

「これで高速はちょっと・・・」

と思う人もいるかもしれませんが、高速道路を乗ったことがある人なら誰もが経験する横風による煽りも反対側のタイヤで踏ん張るので強かったりします。

というかトリシティというと前二輪でコケないというアピールとイメージが強すぎて、”横風に強い”とか”実質Wディスクで制動性に優れる”とか”乗り心地が凄く良い”というその他のメリットが全くもって伝わってないですよね。

トリシティ155UK仕様

まあコレばっかりは乗らないと分からないから仕方ないか。ちなみにブレーキもちょっと変わってて、本来ならリアブレーキの役割を担う左レバーが前後を担う前後ブレーキとなっています。

さて155はただ125の排気量アップかなと思ったらコチラのモデルはブルーコアエンジンなんですね。

ブルーコア

ブルーコアエンジンというのはヤマハが社内のエンジニアを総動員して作ったとされる新世代の低フリクション(低燃費)エンジン。

ブルーコアエンジンにもバリエーションが幾つかあるんですが、TRICITY155に積まれている物はNMAXの物と同様ブルーコアエンジンの中でも最上位の水冷モデル。

ブルーコアエンジン

燃焼時にピストンとコンロッドが一直線上になるオフセットシリンダー、冷却性に富んだオールアルミのDiASil(ダイアジル)シリンダー、エンジン横に設けられたコンパクトなラジエーター、低中速域と高速域での燃焼効率を両立する可変バルブVVAなどなど。

ブルーコアエンジン

最近可変バルブを取り上げる機会が多いですね。ちなみにこれもCBのVTECやBanditのVCとも動きは違います。

可変するのは吸気側のみで、BanditのVCエンジンのように中低速用と高速用のカムとロッカーアームの両方を備えており6000rpmを超えると中低速用のロッカーアームと高速用のロッカーアームを連結させる事で高速用に切り替えてる。

ヤマハVVAシステム

車の方では一昔前までメジャーだった方法。

これらの装備により従来モデルに比べ燃焼効率が50%も伸びたそう。MotoGPのエンジニアも呼び寄せたと言うだけの事はありますね。

既存の5種類以上ある小排気量エンジンを3種類のブルーコアエンジンに集約する為、1基辺りにお金かかってる事もありますが。

tricity155白

まあそんなメカニズムの話ばかりしても面白くないのでちょっと蛇足。TRICITYに対する声で多いのが

「屋根つけろ」

という意見。

確かにこれに屋根をつければ車代わりになれそうな気がしないでもない。

法律でも全長は車体長以内、高さは2m以内なら認められています・・・では何故メーカーは屋根を用意しないのかですが、恐らく2つ理由あると思います。

理由その1:車体価格が高くなってしまう

非常にシンプルかつ有力な理由。

屋根付きバイクとして現存している国産車にホンダの商用原付GYROがあります。ピザ屋でおなじみですね。

ジャイロ

ジャイロは屋根のついていないジャイロXが358,050円なのに対し、屋根付きのジャイロキャノピーは523,950円。その差16万円ほど。装備が若干異なっていますが基本的に同じバイクです。

これをTRICITYに当てはめると50万円を超える。50万円を超える125/155を買う人は125最速のYZF-R125/MT-125の売れ行きを見てもほぼ居ない。

理由その2:転んだ時に危ない

バイクというのは転倒する危険性があります。それは三輪のTRICITYでも可能性は既存のバイクよりも低いけどある。

プロであるバイクレーサーの転倒シーンを思い浮かべてもらうとわかりますが、転倒した時には必ずバイクから手を離しリリースしています。これはバイクに巻き込まれる事が一番危ないことを知っているから。

転倒

もし屋根があったら横になった屋根と車体に閉じ込められてシェイクされてしまう危険性が非常に高くなるわけです。バイクメーカーはちゃんと転倒時の事も考えて作ってるんですよ。

だから社会的責任を伴う規模の大きい日本メーカーとしては

「屋根が欲しいなら自分で付けて」

というスタンスで屋根付きを出さないのではないかと思います。

そういう事に一番うるさいホンダがGYROで出してるのは30km/hしか出せない商用の原付だからかと。

余談ですがイタリアのADVIA(アディバ)というメーカーが電動開閉機能の付いたバイクを出しています。

ジャイロ

電動開閉のオープンカーならぬオープンバイク。世界で特許を取得済み。

ただ当然ながらお高く、125でも50万円を超えます。しかも重い。

あと屋根をつけろと言ってる人に言っておきたいのが、屋根をつけても普通に濡れます。濡れないのは上半身だけで肩から手、下半身への浸水は防げません。大人しく合羽着るのが安くて確実です。

トリシティに関係ない話ばかりですね。

MW155

でも恐らくバイクに乗られてる方はTRICITYに興味のない、または一度乗ってみただけの興味本位の人、ぶっちゃげると

「これ買うくらいならNMAX買う」

って人が多いかと思います。

でもそれはヤマハも狙い通りというか織り込み済みで、このバイクは新規需要掘り起こしを狙って作られた側面が強いバイク。国内新車販売台数100万台という目標に向けてヤマハが出したバイクでもあります。

というのもヤマハが過去に行った調査でバイクに乗らない人の乗らない理由を聞いたところ

「転倒が怖い」

という意見が大多数を占めていた。

つまりトリシティというのはそういった声を聞いて作られたバイクなんです。自立しないので前二輪であろうとコケる時はコケる。でも前にタイヤが2つあるから”転倒しなさそう”というイメージが湧いて転倒の怖さを軽減してる。後ろに乗る人も前が二輪だと安心でしょう。

二人乗り

芸能人の多用など普通では見ないような方法で宣伝をしている事を見ても、ターゲットが我々バイク乗りでは無いことは明白ですね。

そういった層がメインターゲットだからトリシティ(125)は原二クラスの中でも年間8000台前後と新型原二としては今ひとつな販売台数なんだけど、新規(またはリターン)ライダーの割合は恐らくトップかと思われます。

欧州モデル

トリシティでリーンというバイクでしか味わえない面白さを安全に知り、バイクに目覚めている人が増えているのは間違いない。

そう考えるとトリシティが市場に与える影響というのは”販売台数”という数字だけで片付けられる簡単な物ではないでしょう。

余談:トリシティに興味のない既存のバイク乗りへ

関係のない話ばかりしてきたのはあんまり興味が無かったからなのですが、密かにブームの兆しを見せている遊びを見て改めました。

それはトリシティによるオフ路走行。発端はタンデムスタイルさん(参照)かな?

トリシティオフ走行

もともと石畳やギャップを物ともしない走りが武器だから、多少の悪路はそつなくこなせる走破性を持ってる。

最低地上高が低いから岩だらけのガレ場とかの極端な場所は流石に無理だけど、多少の悪路なら写真のようなブロックタイヤを履かずとも難なく走れるしチェーンを巻けば雪道でも走れるATV(四輪バギー)のようなバイクに早変わり。

デュアルパーパス顔負けな走りが出来るかもしれない。

でも元々そういう走行を前提にしているわけではないので、走行した場合は汚れ(特に砂など)をちゃんと落とすようにしましょう。

主要諸元
全長/幅/高 1980/750/1210mm
シート高 780mm
車軸距離 1350mm
車体重量 165kg(装)
燃料消費率 41.7km/L
※WMTCモード値
燃料容量 7.2L
エンジン 水冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 155cc
最高出力 15ps/8000rpm
最高トルク 1.4kg-m/6000rpm
変速機 Vベルト式
タイヤサイズ 前90/80-14(43P)
後130/70-13(57P)
バッテリー YTZ7V
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR8EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.0L
交換時0.9L
スプロケ
Vベルト BB8-E7641-00
車体価格 420,000円(税別)
系譜図
トリシティ125 2014年
TRICITY125/A
(2CM)
トリシティ155 2017年
TRICITY155
(BB8)

【関連車種】
PCXの系譜LEADの系譜CYGNUSの系譜Addressの系譜

TRICITY125/A(2CM)-since 2014-

トリシティ125

「Leaning Multi Wheel」

2013年の東京モーターショーで発表され話題になった前二輪の三輪車。でも一応原付二種というバイク扱いなので小型二輪以上の免許が入ります。これくらいなら自動車免許でも良いような気も・・・。

知らない人の為に補足しておくと、この前二輪のバイクを一番最初に出したのはイタリア最大手のPIAGGIO(傘下にVespa・aprilia・MOTO GUZZI)というバイクメーカーから出たMP3というバイクが初出。

PIAGGIO MP3

2007年に発売され、欧州でヒットを飛ばしました。

向こうでは国によっては車の免許で乗れたり、数時間の講習を受けるだけで乗れたりする事もヒットの要因だったりします。フランスが正にそれで、2015年時点で70000台も売れるほどの大ヒット。

という事でフランスのメーカーでスクーターを作ってたプジョーからもMETROPOLISという同じタイプのバイクをトリシティが出る2年前の2012年から発売。

プジョー メトロポリス

つまりトリシティは遅い登場だったわけですが、ヨーロッパでの評価やシェアが高いヤマハとプジョーに市場を奪われたピアジオが怒って2015年に特許侵害で訴訟。判決は探しても見つからなかったのですが、今でも普通にヤマハもプジョーも売っているので敗訴か和解をしたんでしょう。

というかそれが特許侵害になるとテレスコピックサスペンション(一般的なフロントフォーク)を採用しているバイクは全部BMWの特許侵害になっちゃいますし。※テレスコピックサスペンションはBMWが発祥

ヤマハとしてはトリシティの元になっているのは実は34年前に作っていたパッソル。

三輪パッソル

HY戦争でもっと台数を稼ぐために考えた案の一つにコレがあった。もしもHY戦争が長引いてたり勝ったりしてたらもっと前に出てたかもしれませんね。

ちなみに三輪の初出は1974年にダイハツが造った

『ハロー』

というモデル。

ダイハツハロー

今でこそピザ屋やヤクルトで多少は見慣れている形ですが当時は異端車でした。

って、いい加減トリシティの話をしろと怒られそうなのでトリシティに話を戻しましょう。

トリシティで語ることと言ったらLMW(Leaning Multi Wheel)つまり前輪が2つあることですね。

LMW

これは片持テレスコピックサスペンションとそれを支えるハンガー状のパラレログラムリンクというレイアウトになっており、バイクのようでバイクじゃない様なフロントまわりをしてる。

一つのホイールにつき二本を付けてるのでなかなか迫力のある足回りですが、片側二本のうち前の方はガイドのみの役割でサスペンションとしての仕事は後ろのフォークが担っているとの事。

LMWメカニズム

片持ちだからタイヤ交換が凄く楽そうに見えるけどキャリパーも内側だから逆に大変なのかな。恐らくタイヤライフも荷重が二分するのでタイヤ交換の機会は減りそうですが。

どうしてパラレログラムリンクなんていう仕組みになってるのかというと、左右のタイヤを車体と同様に左右を狂いなくリーン(傾け)させて曲がるため。大島優子さんが”り~ん”と言って手を傾けていたのが記憶に新しいと思います。

大島優子トリシティ

ちなみに当時トリシティに試乗したら大島優子さんのクリアファイルがもらえるっていうキャンペーンがあったんですが、バイク屋に在庫の電凸する人や、(免許を持っていない事から)クリアファイルだけクレと交渉しに来る人などで溢れかえり一部のバイク屋は大変だったとか・・・AKBの力恐るべしですね。

さっきから脱線してばかりですね。スイマセン。

じゃあこのパラレログラムリンクがどういう仕組みなのかって事ですが、前にタイヤが二輪もあるからといって左右のタイヤの動きがバラバラだったり、片方が接地しなくなる事があると安定せずに危ない。

トリシティ車体構成

両方同じように傾き、同じように設置する必要がある。つまり今まで一輪で100担っていた仕事量を左右で綺麗に50:50にしないといけないわけです。その為のパラレログラムリンク・・・って言っても分からないですよね。

まあとにかくこうしたのは何度も言いますがリーンするため。

トリシティハンドリング

「トリシティってどんなハンドリングなんだろう?」

と考えている方も多いと思いますが、若干安定性重視ながら基本的にバイクと一緒。それはパラレログラムリンクによって一般的なバイクと同じようにリーンで曲がるからです。

主要諸元
全長/幅/高 1905/735/1215mm
シート高 780mm
車軸距離 1310mm
車体重量 152kg(装)
[156kg(装)]
燃料消費率 38.8km/L
※WMTCモード値
燃料容量 6.6L
エンジン 水冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 124cc
最高出力 11ps/9000rpm
最高トルク 1.0kg-m/9000rpm
変速機 Vベルト式
タイヤサイズ 前90/80-14(43P)
後130/70-13(57P)
バッテリー YTZ7V
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR8EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量0.9L
交換時0.8L
スプロケ
Vベルト 2CM-E7641-00
[BB8-E7641-00※18以降]
車体価格 330,000円(税別)
系譜図
トリシティ125 2014年
TRICITY125/A
(2CM)
トリシティ155 2017年
TRICITY155
(BB8)