「GO EVERYWHERE with EXCITMENT」
スクーター版アドベンチャーと言えばいいのか、スクーターの皮を被ったアドベンチャーと言えばいいのか・・・公式的にはSUV感があふれるビッグスクーターなX-ADV。
日本ではあまり見ないもののイタリアなどでは一定の成功を収めているインテグラにオフロード要素を取り入れたモデルです。
未舗装路の走行を想定したスクーターといえば・・・
EZ-9を思い出しますね。これは公道走行不可でしたが。
ちなみに雪道用のEZスノーというモデルもありました。
更にいうならばこのEZ-9はアメリカではCUBいう名前で販売されていた歴史があります。
それよりX-ADVの話ですよね。
何故ベースのINTEGRAから20万円アップの120万円もするのかという話ですが、一番大きいところは何と言っても足回り。
新設計の倒立フォーク、ラジアルマウントキャリパー、ダブルディスクブレーキ、17インチスポークホイール。
そしてリアも専用設計でホイールベースを伸ばすアルミスイングアームと15インチスポークホイール。
フラットダート等コンディションが良くない路面でもしっかり追従し軽快に走れるように足回りが本当に豪華に。インテグラにアフリカツインの足回りを突っ込んだみたいな形。
ちなみに本当はサスのストローク量をアップしているのでINTEGRAから更に足つきが悪くなっているんですが、日本仕様はサスペンション長を変更して30mmダウン。INTEGRAと同じ最低地上高になっています。
他にも灯火系はフルLED、キーレス、多機能デジタルメーター、五段階可変式スクリーン、ETC、グリップヒーター、ハンドガード、ローレシオ化されたDCTなどなど。
DCTの基本的な仕組みについては「>>VFR1200X(SC70)の系譜」をどうぞ
2018年モデルからはNCシリーズと同じようにレッドが500rpm上がりトラクションコントロールも装備。
ただX-ADVは更にアフリカツインと同じ様に
「G(グラベル)モード」
も装備しました。
これはDCT(クラッチ)制御で、半クラの時間を短くしてアクセルに対するツキの良さを増す制御スイッチ。
さて・・・ベースとなっているINTEGRAでよく言われていたのが
「INTEGRAはビッグスクーターか否か」
という事。
「どう見てもビッグスクーター」
という意見が圧倒的だとは思いますが、少なくともX-ADVが誕生できたのはINTEGRAがビッグスクーターではなかったからという面が大きいんです。
起伏の少ない林道やフラットダートなどのあまり荒れていない未舗装路というのは走破性よりも安定性が大事なので、低重心でロングスイングアームでエンストの心配がないビッグスクーターというのは(小径ホイールを除けば)意外と悪くなかったりする。
もちろんスタックの恐れがあるゲロデロな道や、腹を打つようなガレ場はまず無理ですが、スクーターで突撃している猛者も昔からチラホラ居ます。
「そもそもそんな軽度な未舗装路なら何でも大丈夫」
と突っ込まれそうですがでは何故いままでX-ADVの様にファッションだけでなく本当に大径ホイールとロングストロークサスを履いて走破性を上げたビッグスクーターアドベンチャーが存在しなかったのかというと
「そういう道をビッグスクーターでガンガン走るのは構造的にマズいから」
というのがあります。
その典型なのがエアクリーナーボックスの位置。
スクーターに広く採用されているユニットスイング式のエアクリーナーボックス(吸気口)というのはリアタイヤの脇にあります。
この様に低い位置に吸気口があると前輪が巻き上げた砂や埃を大量に吸ってしまう。まして未舗装路ならなおのこと。
エアクリーナーボックスを開けたことがある人ならわかると思いますがオンロードのみでも結構ゴミを吸っていたりします。
砂や埃を大量に吸ってしまうとフィルターを詰まらせるだけでなく、フィルターを通り抜けてエンジンまで届くと当然ながらマズい。ボックスの浸水も当然アウト。
だから上で紹介したEZ-9もエアクリーナーはわざわざシート裏に設置されています。
ところがX-ADV(INTEGRA)は中身がNC系。
言ってみればビッグスクーターに擬態したロードバイク、つまりエアクリーナーボックスも一般的なオートバイと同じ位置にある。
コレがミソ。※上の写真はベースのインテグラ
上の方にあるから防塵性が高いんです。
もちろんインジェクション等も高い位置に事や、異物で千切れたり滑ってたりしてしまうベルトではなくDCTなのも大きな要因。
要するにビッグスクーターアドベンチャーなんていうニッチなバイクに仕上げる事が出来たのは、ベースにあたるインテグラがビッグスクーターではなく
「ビッグスクーターに擬態したロードバイクだったから」
というわけ。
だからビッグスクーターの低重心な姿を保ったままアドベンチャー要素を取り入れる事が出来た。
有りそうで無かったのは何処も作らなかったわけではなく、何処も作れなかったから。
X-ADVはビッグスクーターに擬態している事を最大限活かしたビッグスクーターアドベンチャー・・・と言うより
「ビッグスクーター”モドキ” アドベンチャー」
と言ったほうが正しいかもしれないですね。
主要諸元
全長/幅/高 | 2230/910/1345mm |
シート高 | 790mm |
車軸距離 | 1580mm |
車体重量 | 238kg(装) |
燃料消費率 | 27.0km/L ※WMTCモード値 |
燃料容量 | 13L |
エンジン | 水冷4ストロークOHC4バルブ直列2気筒 |
総排気量 | 745cc |
最高出力 | 54ps/6250rpm |
最高トルク | 6.9kg-m/4750rpm |
変速機 | 電子式6段変速(DCT) |
タイヤサイズ | 前120/70R17(58H) 後160/60R15(67H) |
バッテリー | YTZ14S |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
FR6G-11K |
推奨オイル | Honda純正ウルトラG1(10W-30) |
オイル容量 | 全容量4.1L 交換時3.2L フィルター交換時3.4L (クラッチ含む) |
スプロケ | 前17|後38 |
チェーン | サイズ520|リンク118 |
車体価格 | 1,209,600円(税別) |
主な変更
2018年:ホンダセレクタブルトルコン(二段階+OFF)を装備
2019年:ETC2.0を標準装備