「2-STROKE INCENTIVE PERFORMANCE」
KE125以来11年ぶりの登場となったKMX125。モトクロッサーKX125がベースとなっています。
排気デバイスKIPSの採用で22馬力に上がったパワーも目を引くけど、最大の売りはクラス初採用となったディスクブレーキ。
この頃はまだまだドラムブレーキが主流でディスクはタブーに近かった。泥や石といったゴミがキャリパーに入ってきてトラブルを招く恐れがあったからですね。サスペンションのストローク量が多い事からブレーキラインの取り回しの大変さもあります。
しかしドラムブレーキは重くなる上に効きがコントローラブルじゃない。そんな中でカワサキはライバルに打ち勝つ為にタブーとされていたディスクブレーキを採用したモトクロッサーでレースに挑み、トライアンドエラーを繰り返すことで実用化にこぎつけたわけです。始まりはZ400FXのリアキャリパーの流用からだったそうです。
そして1982年の市販モトクロッサーKX125にて標準採用され、市販車KMX125にも下りてきたというわけ。
このカワサキが形にしたオフロード車でのディスクブレーキは制動力が一気に上がった革新的な装備で、モトクロスレースの走り方を一変させました。
ただもう一つ忘れてはならない革新がユニトラックサスです。今ではスポーツバイクでは欠かせない装備となっているリンク式モノサス(一本サス)ですね。
これは初期の物で現在の物(ボトムリンク式)とは少し違うので違和感があるかもしれませんが、これがリンク式モノサスペンションの原型。
こうすると何が良いのかというのを簡単に言うと、スイングアームが直接サスペンションを動かすわけではないので、ホイールトラベル(ホイールの上下の動きの幅)を大きく取れ、初期沈みは柔らかく吸収し路面を追従する一方で沈み込みが深くなると踏ん張る(簡単に底打ちしない)プログレッシブ(二次曲線)な特性を得られる。
これが出るまでのいわゆる二本サスというのは衝撃を受けたら受けた分だけ比例してサスペンションが縮んでいた。それで問題となるのは底打ちした時。ドッタンバッタンと動くオフロードでサスペンションが底打ちをすると吸収しきれなかった分の衝撃がライダーに来るので吹っ飛んでしまう。
だからとっても硬いサスペンションにして底打ちさせないようにしていたんだけど、そうすると今度は簡単なギャップを全く吸収せず弾くようになるからポンポン跳ねるようになりスピードを出すのが難しい状況だった。
そんなデメリットを解消したユニトラックサスは上で紹介したディスクブレーキ以上に革新的なサスペンションで、始めて装備したモトクロッサーKX125は圧倒的な速さを誇り、ライバルメーカーも後を追うようにリンク式サスペンションへと変わっていきました。
ただ面白い事にこのユニトラックサスを最初に考えたのはモトクロッサーKX125の開発メンバーではありません。これを実現させようと開発していたのは同じ設計室で進められていたKR350/250というロードレーサーのチーム。
先に挙げたサスの問題を抱えていたKXの増田さんがその構造を見て
「これはオフロードにこそ必要だ」
という事で拝借のような応用。それが正しい判断で大成功に繋がったというわけ。
このユニトラックサスペンションによる大変貌&快進撃によりカワサキは
“速く走る為に大事なのは馬力ではなくサスペンション”
とそれまでの考えを改める事になりました。
主要諸元
全長/幅/高 | 1988/840/1165mm |
シート高 | 845mm |
車軸距離 | 1375mm |
車体重量 | 96kg(乾) |
燃料消費率 | 44.0km/L ※定地走行テスト値 |
燃料容量 | 9.0L |
エンジン | 水冷2サイクル単気筒 |
総排気量 | 124cc |
最高出力 | 22ps/9000rpm |
最高トルク | 1.7kg-m/8500rpm |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前2.75-21(4PR) 後4.10-18(4PR) |
バッテリー | YB4L-B |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
BR8ES |
推奨オイル | – |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量1.2L |
スプロケ | 前14|後48 |
チェーン | サイズ428|リンク128 |
車体価格 | 282,000円(税別) |