「FORGED THROUGH ADVENTURE」
2019年に登場したCRF1100LのSD10型。
最初に変更点を上げると
・防風性能を上げた新型フェアリング
・エンジンを見直し1082ccにしつつ-2.5kg(DCT:-2.2kg)軽量化
・出力特性およびDCTの見直し
・排気デバイスを搭載した新開発マフラー
・クロスパイプを廃止した新設計フレーム
・リアサスペンションレイアウトを変更
・ハンドルポジションを22.5mmアップ
・6軸IMUによる電子制御
・Apple CarPlay対応6.5インチTFTメーター
以下はASモデル
・手動5段階可変スクリーン
・コーナリングライト
・電子制御サスERRA※OP
などなど排気量を上げただけかと思いきや実はほぼ全面的に変わってるフルモデルチェンジになっています。
いくつかピックアップするとまずエンジン。
ストロークを6.4mm伸ばす事で1083ccとしているんですが、単純に伸ばしただけではなくピストンを20%軽量化することで往復部の耐久性も先代と変わらず確保。
さらにバランサギアのノイズ(遊び)対策として一歯少ないギアをスプリングで重ね、相手を挟み付けるように噛み合わせることで解消していたサブギア機構も交差(精度)を上げることで廃止。
これにより排気量を上げたにも関わらずエンジン単体で-2.5kg(DCT:-2.2kg)の軽量化に成功。
合わせてマフラーもEURO6に対応しつつ小型化し、音の変化を楽しめるCBR1000RR譲りの排気デバイスも装備。
お次はフレームなんですがコッチもすごい。
メインパイプの幅を20mm狭めると同時にクロスパイプを廃止というこれまた大胆な変更を敢行しました。
これは軽量化と同時にフレームに靭やかさをもたせ、マシンの挙動を穏やかにすると同時に安定した旋回特性にするため。
「アドベンチャーでこれって強度とか大丈夫なの」
と不安に思ってしまうところですが、代わりにヘッドパイプ周りとピボット周りそれにエンジンハンガーを見直すことで同等の強度を確保。
合わせてリアアームとスイングアームも鋳造と鍛造を連結させたものにしボディ全体で2.3kgの軽量化を実現しています。
ただ恐らく一番分かりやすく感じるであろう変更点は足付きじゃないかと思います。
というのもこの代の日本仕様はサスのストローク量を40mmほど減らす事で足付きを改善した先代でいうLD(Low Down)モデルが標準になりました。
これは日本国内では環境の関係も相まってASのLD(Low Down)モデルが人気というかほぼそっちばかり売れた事が理由。
だからモデル数を絞ることによるコスト削減でLDのみになったんですが、砂漠の女王レプリカ(詳しくはNXR750参照)というバックボーンも相まって足長モデルを欲する要望がユーザーから出た事で欧州と同じ標準サス仕様のSモデルも限定受注ながら販売。
まあSモデルは相当な物好きかスキルを持った玄人向けモデルなので除いたとしてもCRF1100Lは
【ノーマルモデル】
・CRF1100L
・CRF1100L DCT(DUAL Clutch Transmission)
【AdventureSportsモデル】
・CRF1100L AS(Adventure Sports)
・CRF1100L AS DCT
・CRF1100L AS ES(Electric Suspension)
・CRF1100L AS ES DCT
と6パターンもあって
「色々あってよく分からん」
と感じている方も多いかと思います。しかし今回の開発の狙いを知ればそれが明確になると思うので少しご紹介。
CRF1100Lへのモデルチェンジンの狙いがなんだったのかというと大きく分けて三つあり、一つはパワーを上げること。
これは既存のCRF1000Lに対するアンケートを取った所
「もう少しパワーが欲しい」
という声が多く聞かれたから。だから排気量を上げる事になったんですが重くなることを何としても避けたいという事で最初に話したようストロークを上げるだけではなくほぼ全面的に作り直されることになった。
そしてもう一つがよく分からんっていう人へのヒントになる開発の狙い。
「ノーマルモデルとアドベンチャースポーツの区別化」
です。
先代でASが追加されたもののビッグタンクか否か程度の違いでコンセプトが立っていないという事からCRF1100Lではそれをより鮮明に出そうとなった。
AdventureSportsにのみ
・コーナリングヘッドライト
・可変式スクリーン
・チューブレスタイヤ
・SHOWAの電子制御サスペンションEERA
などが用意されているのは
「どこまでも行けるアフリカツイン」
というツアラーというかトラベルエンデューロ色を明確化に分かりやすく打ち出す狙いがあり、反対に無印の方はリアキャリアなどの装備を極力省くことで装備重量の軽さを優先することで
「どこでも行けるアフリカツイン」
というビッグオフ色を明確に打ち出す形にした。
つまりどっちが上位でどっちが下位とかではなく方向性が違う別のモデルであり、あとは好みに合わせてMT/AT(DCT)を選んでねっていう話。
先代の開発の狙いも含めたうえでチャートを作ればもう少し分かりやすいかなと思ったんです・・・が、思ったほど分かりやすくなかった。
まあ参考程度に。ちなみに上下対応のクイックシフターやDCT用シフトペダルがOPで用意されています。
ところでアフリカツインは2016年に登場し2018年にASモデルが追加・・・と思ったら2019年にフルモデルチェンジ。
「モデルチェンジ早くないか」
と感じている方も多いかと思います。
こうやって並べてみるとなんと毎年何かしらのモデルチェンジをしている。
これ何故かというと森田プロジェクトリーダー曰く
「アフリカツインを今度こそ本気で育てる」
という思いがあるから。
系譜を見てもらえるとわかる通りアフリカツイン(XRV)は知名度のわりに一度生産を終了しています。累計7.3万台以上を売るほどの人気だったんですが、もともと限定販売が前提だったためか2001年に生産終了。
それ以降ずっと再販の声があったにも関わらず応えられずにいたことをホンダも相当心苦しく思っていたようで、今度こそアフリカツインというブランドを途切れさせずまた育て上げるという意思の現れがこのモデルチェンジラッシュなわけですね。
もちろん意気込みだけでなんとかなるほど甘い世界ではないんですが、幸いにもアフリカツイン日本はもちろんビッグアドベンチャーの本場欧州でも向こうでも
「本当に道を選ばずオフロードもしっかり走れる」
としてかなり評判が良く、難攻不落の絶対王者GSが君臨するドイツですら地元誌MOTORRAD(Beliebteste Honda-Modelle im vergangen Jahrzehnt)によると登場から4年ほどで既に1万台も売れ
「ここ10年で最も成功したホンダ車」
と称されたりしています。これはもしかすると・・・もしかするかも知れない。
主要諸元
CRF1100L | CRF1100L Adventure Sports |
|
全長/幅/高 | 2310/960/1350 S:2330/960/1395 |
2310/960/1520~1580 S:2330/960/1560~1620 |
シート高 | 810~830mm S:850~870mm |
|
車軸距離 | 1505mm S:1575mm |
|
車体重量 | 226kg(装) S:226kg(装) DCT+10kg ES+2kg |
238kg(装) S:240kg(装) DCT+10kg ES+2kg |
燃料消費率※WMTCモード値 | 21.3km/L | |
燃料容量 | 18.0L | 24.0L |
エンジン | 水冷4サイクルOHC二気筒 | |
総排気量 | 1082cc | |
最高出力 | 102ps/7500rpm | |
最高トルク | 10.7kg-m/6250rpm | |
変速機 | 常時噛合式6速リターン | |
タイヤサイズ | 前90/90R21(54H) 後150/70R18(70H) |
前90/90R21-54H 後150/70R18-70H (チューブ) |
バッテリー | HY110 | |
プラグ | SILMAR8A9S | |
推奨オイル | Honda純正ウルトラG1(10W-30) | |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量4.8L 交換時3.9L フィルター交換時4.0L DCT:全容量5.2L 交換時4.2L(フィルター交換時) 交換時4.2L(クラッチ交換時)] |
|
スプロケ | 前16|後42 | |
チェーン | サイズ525|リンク124 | |
車体価格 | 1,470,000円(税別) DCT+100,000円(税別) |
1,640,000円(税別) DCT+100,000円(税別) ES+300,000円(税別) |
系譜図
【関連車種】
SUPER TÉNÉRÉの系譜|V-STROM1000の系譜|VERSYS1000の系譜|R1200GSの系譜