VMAX(2S3/2CE) -since 2008-

2008VMAX

「The Art of Engineering」

24年もの歳月を経て登場した二代目にあたるVMAXまたはVMX1700。

車体価格が先代の二倍以上となる税込2,367,000円となった事から分かるように、既存のバイクとは一線を画するスペシャルモデルへと生まれ変わりました。

2017年型VMAX1700

専用部品のオンパレードなのはもちろん、アルミだらけで可能な限り樹脂を使っていない。

更にフロントフェンダー等を見てもらえば分かる通り、組立工場からクレームが来るのも当然なほど細分化されたパーツ構成。

VMAX1700外装

前後フェンダーとタンクとサイドカウルだけでこれだけの部品数。

もうアルミ製プラモデルの域ですね。

アルミエアーダクト

更に更にVMAXのトレードマークであるエアダクトは本物のエアダクトとなり、アルミダイキャストで全て職人による手作業によるバフ掛け。

そして生産も完全受注生産、販売は定められた店のみでした。

VMAXインターカラー

さて・・・このVMAXはこう見えて初代が出る前から開発は始まっていたんです。

では何故24年もの歳月がかかってしまったというと簡単な話

”あーでもないこーでもない”

と何度も開発をやり直したから。

そのためVMAXには開発リーダーだけでも3人が歴任しており、開発に携わった人を全て含めると途方もない数で、正にヤマハが総出となって開発した様なかたち。

赤VMAX

具体的に何処をそんなにやり直したのかというと、代表的なのがVMAXの要であるエンジン。

VMAXは1679ccですが、一番初めは2000ccで開発が進んでいました。

しかしあまりに重くなり過ぎて軽快さが損なわれてしまうという事から開発をやり直し。次に作られたのが1800ccのエンジン。

音塊

「OTODAMA(音塊)」

というタイトルで2001年の東京モーターショーでもお披露目されています。

これで市販化まであと一歩という所まで来たのですが、諸事情によりプロジェクトが停滞した事と、ある技術革新が起こった事で状況が大きく変わりました。

音塊

「電子制御燃料噴射装置(通称FI)」

です。

コンパクト化&精密化出来るFIを採用しない手は無いとしてまた作り直し。

VMAX1700エンジン

これによりVMAXはエンジンの挟み角を更に狭い65°に”凝縮”する事が出来ました・・・が、コレでも終わらなかった。

このFI化で作り直したエンジンで順調に開発が進んでいたんですが、担当していたテストライダーが

「もう少しパワー(排気量)があった方が良くなるのでは」

と完成間近になって提言。

VMAX1700シート

普通ならば

「いまさら無理」

となる。

エンジンのパワーを上げるということはエンジンはもちろんフレームも足回りも再設計になるから聞けるわけがない。

しかし検討やテストの結果、そうした方が良くなるという事が分かり迷いなく再び開発のやり直し。

バンク角65°V型四気筒

この65°V型四気筒1679ccというエンジンはそんな三度のやり直しの末に完成した

まさに

「三度目の正直エンジン」

というわけ。

ただしこういった話はエンジンだけではなく、これまたアルミになったダイヤモンドフレームや足回りでもそう。

VMAX1700イギリス仕様

最初は倒立フロントフォークで進んでいたのに、ハンドリングが硬くなりすぎているとして見直され、規格外の太さを持つ専用の正立フロントフォークになった。

フロントフォークの正倒を変えるという事は、ステム周りの剛性が大きく変わってしまうのでフレームも三叉も当然ながら再設計。

細かい所で言えばタンクの上にある一見すると何の変哲も無いマルチメーターもそう。

VMAX1700有機ELメーター

これ2008年当時としては珍しかった有機ELディスプレイ。

最初は液晶で進んでいたんですが

「発光が液晶より良い」

という理由だけでここでも再設計が行われている。

VMAXマフラー

VMAXの凄い所というのは、見えないカプラーまでもが専用設計な事も、ボルト一本に至るまでデザインされている事も、樹脂がほとんど使われていない事もそうですが

この様に

「何も惜しまない開発をした事」

が一番凄い所なんです。

こんな事が当たり前のように四半世紀も続いたから開発メンバーも

「これ終わらないんじゃ・・・」

と本気で思うほどだった。

もちろんデザインも例外ではありません。

VMAX1700のデザイン案

「過去これほどスケッチしたバイクは無い」

と監修した一条さんや担当された梅本さんも漏らすほど、何十何百と練られた末のデザイン。

新型VMAXの噂が立っては消えていたのはこういった理由があったから。

ちなみにこのVMAXは先代とは違いアメリカがデザインコンセプトではありません。

VMAXコンセプトデザイン

力の象徴『金剛力士像』がデザインコンセプト・・・そうこのVMAXは”和”なんです。

洋から和になった理由、そしてここまで贅沢な開発プロジェクトが許された理由は、VMAXの総括プロデューサーだった牧野さんの信念にあります。

VMAXフェイス

「日本のバイクメーカーとして、ヤマハ発動機としての意地と技術を示したい」

という信念です。

時も金も手間も惜しまず開発を続ける事が出来たのは、社員一丸となってこの信念を貫いたから。

生産終了となった2017年までマイナーチェンジすら一切なかったのは、持ちうる全ての技術を出した妥協のないものだから。

ヤマハの至宝

そしてVMAXを『ヤマハの至宝』と言っていたのは

「自分たちの意地を形にした自慢のバイクだから」

主要諸元
全長/幅/高 2395/820/1190mm
シート高 775mm
車軸距離 1700mm
車体重量 311kg(装)
[310kg(装) ]
燃料消費率 16.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1679cc
最高出力 151ps/7500rpm
[200ps/9000rpm]
最高トルク 15.1kg-m/6000rpm
[17.0kg-m/6500rpm]
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前120/70-18(59V)
後200/50-18(76V)
バッテリー YTZ14S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
または
IU27D
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量5.9L
交換時4.3L
フィルター交換時4.7L
スプロケ
チェーン
車体価格 2,200,000円(税別)
※[]内はEU仕様
系譜図
Vmax1200 1985年
Vmax
(1FK~4C4)
1700 2008年
VMAX
(2S3/2CE)

Vmax1200(1FK~) -since 1985-

vmax1200

「スーパースプリント アメリカン」

対北米戦略車として造られたVmaxまたはVMX1200。

昔はV-MAXとハイフンが付いたりしていたのでハイフンがあったり大文字だったりしても間違いではないんだけど、一応いまはVmaxと小文字で書かれるように統一されているようです。

さて

「アメリカを造る」

という目標から始まったプロジェクトは、当時としては最高馬力となる145馬力を引き下げたドラッガーへとたどり着きました。

Vmax1200リア

まずこうなった経緯から説明すると、この頃のヤマハは日欧でこそ人気を獲得していたけど北米では今ひとつ波に乗れていない状態だった。

そんな中でUSヤマハからある提案がされました。

「V8のマッスルバイクを造れ」

という言っている意味がよく分からない提案。

しかしヤマハは郷に入っては郷に従えと、開発チームをアメリカに送り出した。

そこで目にしたものは若者から年配の人まで夢中になってドラッグレースを楽しんでいる姿だった。

Vmaxプロトタイプ

そういう事かと理解したヤマハは

「ゼロヨン10秒を切るバイク」

という目標を掲げ、当時最大排気量だったベンチャーロイヤルのV4エンジンをベースに145馬力という当時としては最高となる馬力を叩き出すエンジンを開発したというわけ。

VMAX1200エンジン

しかし見てもらうと分かる通り、VmaxのエンジンはVの挟み角が90°ではなく少し狭い70°になっている。

だから点火タイミングも180-270-470-720と、180°の直四とも、同じ180°クランクのV4とも、ハーレーなどに代表される45°Vツインとも違う独特なもの。

VMAX1200点火タイミング

何故70°なのかというと

・狭くして間延び感を抑え生きたサウンドを出したい

・でもキャブレターは4つ積みたい

という反比例する二つの狙いを両立させるために導き出した挟み角が70°だったから。

ただし90°でないため一次振動という大きな振動が発生する。だからVmaxはその振動を消すために馬力ロスとなる一次バランサーを採用しています。

つまり馬力を出すにはVmaxのエンジンは不利な形・・・にも関わらずVmaxが145馬力を叩き出せたのは、有名なコレのおかげ。

ブイブースト

「V-BOOST」

ですね。

V-BOOSTというのは一気筒に一つ付いているキャブの下にある混合気の通路インテークマニホールドの前後を連結(貫通)させて擬似的に一気筒デュアルキャブにする仕組み。

V-BOOSTの仕組み

簡単に表すとこんな感じで、6000rpmから徐々に開き、8500rpmで全開となります。

これはキャブレターが横並びな直四ではなく前後にあるV4だから可能となった仕組みであり、微塵もガソリンを惜しまないアメリカ向けらしい仕組みですね。ちなみに燃費は街乗りで10km/L前後。

そして合わせて必須となるのがW吸気でも枯渇しない大容量エアクリーナーボックス。

1986VMAX1200

そのためVmaxはタンク下が全面エアクリボックスとなっておりガソリンタンクはシート下。

これは低重心にするためでもあるんだけど、この関係でタンク容量はリザーブ込みで15Lしかない。

つまり10km/L×15Lで街乗りしていると満タンでも150km/Lしか走れないという割り切りっぷり。

ちなみ吸気はVmaxのトレードマークでもある大きなエアダクトから・・・と思いがちだけど実はこれダミーで、本当はこのダミー同士の間から普通に吸っていたりします。

VMAX1200サイド吸気口

ここで少し面白い小話をすると、このVブーストはフルパワーの逆輸入車のみに付けられた構造で、国内仕様には付いておらず95.2馬力しかなかった。

そのことから日本でも年を追うごとに(後にワイズギアからV-BOOSTキットが出たものの)逆輸入が人気となりました。

しかし逆輸入と一重にいってもVmaxだけで主に7つの仕様地があり馬力はバラバラ。

カナダ仕様145馬力
アメリカ仕様143馬力
カリフォルニア仕様135馬力
南アフリカ仕様135馬力
欧州仕様
※V-BOOST無
100馬力
日本仕様
※V-BOOST無
97馬力

他にもフランス仕様などもありますが、代表的な仕様地はこれくらい。つまり最高馬力のフルパワー仕様はカナダ仕様という事になる。

そのため

カナダ仕様

「カナダ仕様こそ真のVmax」

という認識が広まった。

ただし差があると言っても数馬力で、晩年には横並びとなったのに

「カナダ仕様こそ真のVmax」

という認識は生産終了まで覆る事はなくカナダ仕様だけが突出して人気でした。

どうしてここまで仕様地へのこだわりが生まれたのかと言えばもちろん

「怒涛の加速」

を最高の形で味わいたい人が多かったからでしょう。

VMX1200エンジンカタログ

発売当時フルスロットルに出来る人は誰も居ないんじゃないかと言われるほどでした。

「SSの方が速いんじゃないの」

と思う人が居るかもしれませんね。

たしかにタイムや実速度だけで見ると昨今のSSの方が速い。でも乗り比べてどちらが速く感じるかと言えば10人中10人がVmaxと答えるでしょう。

VMX1200ポジション

それはこの伏せようにも伏せられない体感的な速度やGを考慮していない低いポジション。

そこに合わせられる6000rpmからターボのようにドッカン加速するVブーストがあるから。

Vmaxは

「”乗る”ではなく”しがみ付く”バイク」

と言ったほうが正しい感じです。

VMX1200パンフレット

ただそんな狂気さにはもう一役買っている要素があります・・・それはヘロヘロなフレーム。

普通に走っていても剛性が足りていないのを感じ取れるほどヘロヘロだったから

「設計ミスじゃないのか」

とか

「リコールしろ」

とか言われる始末でした・・・が、これはワザとそうしているんです。

その狙いはコンセプトの一つにあります。

VMAX1200魔神

「何よりもエンジン」

というコンセプト。

「とにかくエンジンを、エンジンだけを感じ取って欲しい」

という思惑があり、それにはエンジンを受け止めるフレームの包容力は邪魔な存在。

だから可能な限り剛性を落とし存在感を消しているというわけ。

ただこれにはVmaxが歴史に名を残す事となったもう一つの理由、デザインにも関係しています。

Vmaxコンセプト

Vmaxは見て分かる通り

「アメリカの具現化」

がデザインコンセプトです。

そこで開発チームの一員でもあったGKデザインの一条さんは、アメリカでアメ車の代名詞であるV8エンジンの車を中古で購入。

そして乗り回しているうちに

「デカいエンジンに緩いボディで力任せに地面を蹴る愛おしい感覚こそアメリカ」

という事に気付かされた。

VMX12

Vmaxのフレームが弱い理由はここにも繋がっているというわけ。

ちなみにVmaxを手掛ける上で一条さんが大事にしたのは

「マイナスのデザイン」

という考え。

VMX1200ファイナルモデル

Vmaxというと”マッチョ”という言葉がピッタリなんですが、よく見てみるとシート回りやエキゾーストなど絞る所は徹底的に絞ってある。

これが

「膨らみを持たせる程、膨らんでいないマイナスの部分が際立つ」

というマイナスのデザイン。

センスの次元が違いすぎて今ひとつピンと来ない人も多いと思います。

しかしそんな人も一条さんがVmaxのデザインで強く影響されていると言った物を見れば、その意味が分かります。

そしてその強く影響されている物も、これまた実にアメリカらしい物。

F102

米空軍の戦闘機F102です。

言われてみれば確かにボディ後部のクビレと前方にあるエアダクトなどVmaxと通ずる所がありますね。

ちなみに一条さんは根っからの飛行機好き。

言い忘れていましたが、タイトルに型式を書いていないのは物凄い数になるからで・・・モデルチェンジの略歴を含め箇条書きで書いていこうと思います。

初期型 1985~1986

1985年式

フロント5本スポークホイール。

カナダ仕様:1GR/1VM

アメリカ仕様:1FK/1UT

カリフォルニア仕様:1JH/1UR

二型 1987~1989

1987年式

フロントのディッシュホイール化。

カナダ仕様:2LT/3JP3

アメリカ仕様:2WE/3JP1

カリフォルニア仕様:2WF/3JP2

三型 1990~1992

1990年式

デジタル進角&吸排気見直し

カナダ仕様:欠番

アメリカ仕様:3JP-4/7/9

カリフォルニア仕様:3JP-5/8/A

日本仕様:3UF-1/2

四型 1993~1994

1994年式

フロントフォーク大径化&ディスクローターの大径化&4POTキャリパー化など。

カナダ仕様:3JP-B/E

アメリカ仕様:3JP-C/F

カリフォルニア仕様:3JP-D/G

日本仕様:3UF3/4

五型 1995~2002

1996年式

レギュレーター・クランクケース変更&カートリッジ式オイルフィルターへ変更

翌96年にはドライブシャフト周りが見直されカナダが140馬力に、アメリカ仕様が135馬力にダウン。

カナダ仕様:3JP-J/K/L/R/U/|5GK-1/4/7/B

アメリカ仕様:3JP-H/M/S/V/X|5GK-2/5/9

カリフォルニア仕様:3JP-J/N/T/W/Y|5GK-3/6/A

日本仕様:3UF-5/6 ※1998年モデルをもって廃止

最終型 2003~2007

最終型

点火方式をデジタル化とサスペンションのリセッティング。

カナダ仕様140馬力(最終年度135馬力)、アメリカ仕様&南アフリカ仕様135馬力

カナダ仕様:5GK-E/N/T/Y|4C4-5

アメリカ仕様:5GK-C/L/R/W|4C4-3

南アフリカ仕様:5GK-G/H/P/U/V|4C4-1/2

となっています。

オーナー間では通称型式ではわかりにくいので、認定型式で区別するのが広まっているようですね。

補足:車名に続く記号(型式)について~認定型式と通称型式~

最後に

改めてVmaxを振り返ってみると、最後の最後まで変わらずとも色褪せなかった名車ですね。

歴代VMAX1200

何がそんなに人を惹きつけたのかと言えばデザインと、そのデザインに負けない

「怒涛の加速」

でしょう。

この怒涛の加速が一体どんなものなのかというのは実は簡単に説明できるんですよ・・・なぜならVmaxに乗ったことがない人も怒涛の加速を知ってるから。

VMAX1200ポスター

それは初めてバイクに乗ってアクセルを捻った時です。

首がモゲると思ったその感覚、ウィリーして吹っ飛ぶと思ったその感覚。

ブイマックス1200カタログ写真

Vmaxはそんな懐かしい感覚を思い出させてくれる怒涛の加速を持ったドラッガー。

病み付きになる人が多いのも納得でしょう。

主要諸元
全長/幅/高 2300/795/1160mm
シート高 765mm
車軸距離 1590mm
車体重量 283kg(装)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1197cc
最高出力 145ps/9000rpm
最高トルク 12.4kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前110/90-18(61V)
後150/90-15(74V)
バッテリー YB16AL-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
または
X24EPR-U9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.7L
交換時3.5L
フィルター交換時3.8L
スプロケ
チェーン
車体価格 890,000円(税別)
※スペックはフルパワー仕様
※価格は90年国内仕様
系譜図
Vmax1200 1985年
Vmax
(1FK~4C4)
1700 2008年
VMAX
(2S3/2CE)