Vmax1200(1FK~) -since 1985-

vmax1200

「スーパースプリント アメリカン」

対北米戦略車として造られたVmaxまたはVMX1200。

昔はV-MAXとハイフンが付いたりしていたのでハイフンがあったり大文字だったりしても間違いではないんだけど、一応いまはVmaxと小文字で書かれるように統一されているようです。

さて

「アメリカを造る」

という目標から始まったプロジェクトは、当時としては最高馬力となる145馬力を引き下げたドラッガーへとたどり着きました。

Vmax1200リア

まずこうなった経緯から説明すると、この頃のヤマハは日欧でこそ人気を獲得していたけど北米では今ひとつ波に乗れていない状態だった。

そんな中でUSヤマハからある提案がされました。

「V8のマッスルバイクを造れ」

という言っている意味がよく分からない提案。

しかしヤマハは郷に入っては郷に従えと、開発チームをアメリカに送り出した。

そこで目にしたものは若者から年配の人まで夢中になってドラッグレースを楽しんでいる姿だった。

Vmaxプロトタイプ

そういう事かと理解したヤマハは

「ゼロヨン10秒を切るバイク」

という目標を掲げ、当時最大排気量だったベンチャーロイヤルのV4エンジンをベースに145馬力という当時としては最高となる馬力を叩き出すエンジンを開発したというわけ。

VMAX1200エンジン

しかし見てもらうと分かる通り、VmaxのエンジンはVの挟み角が90°ではなく少し狭い70°になっている。

だから点火タイミングも180-270-470-720と、180°の直四とも、同じ180°クランクのV4とも、ハーレーなどに代表される45°Vツインとも違う独特なもの。

VMAX1200点火タイミング

何故70°なのかというと

・狭くして間延び感を抑え生きたサウンドを出したい

・でもキャブレターは4つ積みたい

という反比例する二つの狙いを両立させるために導き出した挟み角が70°だったから。

ただし90°でないため一次振動という大きな振動が発生する。だからVmaxはその振動を消すために馬力ロスとなる一次バランサーを採用しています。

つまり馬力を出すにはVmaxのエンジンは不利な形・・・にも関わらずVmaxが145馬力を叩き出せたのは、有名なコレのおかげ。

ブイブースト

「V-BOOST」

ですね。

V-BOOSTというのは一気筒に一つ付いているキャブの下にある混合気の通路インテークマニホールドの前後を連結(貫通)させて擬似的に一気筒デュアルキャブにする仕組み。

V-BOOSTの仕組み

簡単に表すとこんな感じで、6000rpmから徐々に開き、8500rpmで全開となります。

これはキャブレターが横並びな直四ではなく前後にあるV4だから可能となった仕組みであり、微塵もガソリンを惜しまないアメリカ向けらしい仕組みですね。ちなみに燃費は街乗りで10km/L前後。

そして合わせて必須となるのがW吸気でも枯渇しない大容量エアクリーナーボックス。

1986VMAX1200

そのためVmaxはタンク下が全面エアクリボックスとなっておりガソリンタンクはシート下。

これは低重心にするためでもあるんだけど、この関係でタンク容量はリザーブ込みで15Lしかない。

つまり10km/L×15Lで街乗りしていると満タンでも150km/Lしか走れないという割り切りっぷり。

ちなみ吸気はVmaxのトレードマークでもある大きなエアダクトから・・・と思いがちだけど実はこれダミーで、本当はこのダミー同士の間から普通に吸っていたりします。

VMAX1200サイド吸気口

ここで少し面白い小話をすると、このVブーストはフルパワーの逆輸入車のみに付けられた構造で、国内仕様には付いておらず95.2馬力しかなかった。

そのことから日本でも年を追うごとに(後にワイズギアからV-BOOSTキットが出たものの)逆輸入が人気となりました。

しかし逆輸入と一重にいってもVmaxだけで主に7つの仕様地があり馬力はバラバラ。

カナダ仕様145馬力
アメリカ仕様143馬力
カリフォルニア仕様135馬力
南アフリカ仕様135馬力
欧州仕様
※V-BOOST無
100馬力
日本仕様
※V-BOOST無
97馬力

他にもフランス仕様などもありますが、代表的な仕様地はこれくらい。つまり最高馬力のフルパワー仕様はカナダ仕様という事になる。

そのため

カナダ仕様

「カナダ仕様こそ真のVmax」

という認識が広まった。

ただし差があると言っても数馬力で、晩年には横並びとなったのに

「カナダ仕様こそ真のVmax」

という認識は生産終了まで覆る事はなくカナダ仕様だけが突出して人気でした。

どうしてここまで仕様地へのこだわりが生まれたのかと言えばもちろん

「怒涛の加速」

を最高の形で味わいたい人が多かったからでしょう。

VMX1200エンジンカタログ

発売当時フルスロットルに出来る人は誰も居ないんじゃないかと言われるほどでした。

「SSの方が速いんじゃないの」

と思う人が居るかもしれませんね。

たしかにタイムや実速度だけで見ると昨今のSSの方が速い。でも乗り比べてどちらが速く感じるかと言えば10人中10人がVmaxと答えるでしょう。

VMX1200ポジション

それはこの伏せようにも伏せられない体感的な速度やGを考慮していない低いポジション。

そこに合わせられる6000rpmからターボのようにドッカン加速するVブーストがあるから。

Vmaxは

「”乗る”ではなく”しがみ付く”バイク」

と言ったほうが正しい感じです。

VMX1200パンフレット

ただそんな狂気さにはもう一役買っている要素があります・・・それはヘロヘロなフレーム。

普通に走っていても剛性が足りていないのを感じ取れるほどヘロヘロだったから

「設計ミスじゃないのか」

とか

「リコールしろ」

とか言われる始末でした・・・が、これはワザとそうしているんです。

その狙いはコンセプトの一つにあります。

VMAX1200魔神

「何よりもエンジン」

というコンセプト。

「とにかくエンジンを、エンジンだけを感じ取って欲しい」

という思惑があり、それにはエンジンを受け止めるフレームの包容力は邪魔な存在。

だから可能な限り剛性を落とし存在感を消しているというわけ。

ただこれにはVmaxが歴史に名を残す事となったもう一つの理由、デザインにも関係しています。

Vmaxコンセプト

Vmaxは見て分かる通り

「アメリカの具現化」

がデザインコンセプトです。

そこで開発チームの一員でもあったGKデザインの一条さんは、アメリカでアメ車の代名詞であるV8エンジンの車を中古で購入。

そして乗り回しているうちに

「デカいエンジンに緩いボディで力任せに地面を蹴る愛おしい感覚こそアメリカ」

という事に気付かされた。

VMX12

Vmaxのフレームが弱い理由はここにも繋がっているというわけ。

ちなみにVmaxを手掛ける上で一条さんが大事にしたのは

「マイナスのデザイン」

という考え。

VMX1200ファイナルモデル

Vmaxというと”マッチョ”という言葉がピッタリなんですが、よく見てみるとシート回りやエキゾーストなど絞る所は徹底的に絞ってある。

これが

「膨らみを持たせる程、膨らんでいないマイナスの部分が際立つ」

というマイナスのデザイン。

センスの次元が違いすぎて今ひとつピンと来ない人も多いと思います。

しかしそんな人も一条さんがVmaxのデザインで強く影響されていると言った物を見れば、その意味が分かります。

そしてその強く影響されている物も、これまた実にアメリカらしい物。

F102

米空軍の戦闘機F102です。

言われてみれば確かにボディ後部のクビレと前方にあるエアダクトなどVmaxと通ずる所がありますね。

ちなみに一条さんは根っからの飛行機好き。

言い忘れていましたが、タイトルに型式を書いていないのは物凄い数になるからで・・・モデルチェンジの略歴を含め箇条書きで書いていこうと思います。

初期型 1985~1986

1985年式

フロント5本スポークホイール。

カナダ仕様:1GR/1VM

アメリカ仕様:1FK/1UT

カリフォルニア仕様:1JH/1UR

二型 1987~1989

1987年式

フロントのディッシュホイール化。

カナダ仕様:2LT/3JP3

アメリカ仕様:2WE/3JP1

カリフォルニア仕様:2WF/3JP2

三型 1990~1992

1990年式

デジタル進角&吸排気見直し

カナダ仕様:欠番

アメリカ仕様:3JP-4/7/9

カリフォルニア仕様:3JP-5/8/A

日本仕様:3UF-1/2

四型 1993~1994

1994年式

フロントフォーク大径化&ディスクローターの大径化&4POTキャリパー化など。

カナダ仕様:3JP-B/E

アメリカ仕様:3JP-C/F

カリフォルニア仕様:3JP-D/G

日本仕様:3UF3/4

五型 1995~2002

1996年式

レギュレーター・クランクケース変更&カートリッジ式オイルフィルターへ変更

翌96年にはドライブシャフト周りが見直されカナダが140馬力に、アメリカ仕様が135馬力にダウン。

カナダ仕様:3JP-J/K/L/R/U/|5GK-1/4/7/B

アメリカ仕様:3JP-H/M/S/V/X|5GK-2/5/9

カリフォルニア仕様:3JP-J/N/T/W/Y|5GK-3/6/A

日本仕様:3UF-5/6 ※1998年モデルをもって廃止

最終型 2003~2007

最終型

点火方式をデジタル化とサスペンションのリセッティング。

カナダ仕様140馬力(最終年度135馬力)、アメリカ仕様&南アフリカ仕様135馬力

カナダ仕様:5GK-E/N/T/Y|4C4-5

アメリカ仕様:5GK-C/L/R/W|4C4-3

南アフリカ仕様:5GK-G/H/P/U/V|4C4-1/2

となっています。

オーナー間では通称型式ではわかりにくいので、認定型式で区別するのが広まっているようですね。

補足:車名に続く記号(型式)について~認定型式と通称型式~

最後に

改めてVmaxを振り返ってみると、最後の最後まで変わらずとも色褪せなかった名車ですね。

歴代VMAX1200

何がそんなに人を惹きつけたのかと言えばデザインと、そのデザインに負けない

「怒涛の加速」

でしょう。

この怒涛の加速が一体どんなものなのかというのは実は簡単に説明できるんですよ・・・なぜならVmaxに乗ったことがない人も怒涛の加速を知ってるから。

VMAX1200ポスター

それは初めてバイクに乗ってアクセルを捻った時です。

首がモゲると思ったその感覚、ウィリーして吹っ飛ぶと思ったその感覚。

ブイマックス1200カタログ写真

Vmaxはそんな懐かしい感覚を思い出させてくれる怒涛の加速を持ったドラッガー。

病み付きになる人が多いのも納得でしょう。

主要諸元
全長/幅/高 2300/795/1160mm
シート高 765mm
車軸距離 1590mm
車体重量 283kg(装)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1197cc
最高出力 145ps/9000rpm
最高トルク 12.4kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前110/90-18(61V)
後150/90-15(74V)
バッテリー YB16AL-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
または
X24EPR-U9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.7L
交換時3.5L
フィルター交換時3.8L
スプロケ
チェーン
車体価格 890,000円(税別)
※スペックはフルパワー仕様
※価格は90年国内仕様
系譜図
Vmax1200 1985年
Vmax
(1FK~4C4)
1700 2008年
VMAX
(2S3/2CE)

「Vmax1200(1FK~) -since 1985-」への3件のフィードバック

  1. 最終型Vmaxをバイク屋さんで見て大型免許を取りました。2007年から17年間札幌から始まり全国を転勤にも一緒に回って最後は現在福岡で散歩してます。最近ではクーラント漏れがあり、知らない土地でバイク修理の店を探そうと考えています、まだまだ一緒に走って行きます。

  2. 燃費に関してですけど、乗っていらっしゃったのは北米仕様ではありませんか?

    北米仕様はメーターがマイル仕様です。
    内側にキロ表示がありますけど。
    当然、トリップもマイル表示です。
    私も乗ってましたけど(2EE)、
    街乗りでリザーブまで120マイル走りますよ。

    トリップで見ると10/1リットル
    は10km/1リットルではありません。
    16km/1リットルです。

  3. わたしはこのバイクに乗るために二輪の免許を取得しました。
    普通二輪、大型二輪と連続取得の後、初バイクで99年2LTを購入。
    以来ずっとこれだけに乗ってます。

    買うなら98年か99年が私のお勧めです。
    ・排ガス検査がない
    ・マフラーの音量規制が若干緩い
    ・シフトドラム対策が行われ故障も安心

    そろそろもう一台予備車両か予備のエンジン買っとくかと思い始めています。

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