車名に続く記号(型式)について~認定型式と通称型式~

型式について

第五回目は車名に続く記号について。よく考えたら説明していませんでした。

息の長いバイクに乗っている人ほどバイクを車名ではなく記号で呼ぶようになります。

これは型式といって車種に割り振られている識別コードの様なもので、どうしてこれを使うかというと型式を言えば一発でどの年式のどのバイクか分かるから。

※今現在使われている型式についてなので古いバイクは当てはまらない場合があります

ヤマハのYZF-R1を例に説明します。

R1の型式

例えば2007年式YZF-R1(4C8)に乗っているオーナーが他のYZF-R1乗りに

「YZF-R1に乗っているよ」

と言ってもどの年式のR1に乗っているか分かりませんよね。

ところが

「4C8に乗っているよ」

と言えば一発でどのYZF-R1か分かる。

「年式を言えば済むのでは?」

と思うかもしれませんが、そうすると今度はグレードが分からない。

2015~のR1はR1とMモデルがありますね。

だから”2015年式のR1″と言ってもノーマルなのかMなのか区別が付かないというわけ。

※これには色々と誤解や注意があります。

というのもこの記事を書くキッカケになったのは

「系譜さん型式を間違えていますよ、正しくはXXX(公式参照)です。」

というご指摘をいただくようになったからです。例としてYZF-R25を挙げてみましょう。

R25の型式

公式ではRG10Jと書かれています。

ところがバイクの系譜では1WD/2WDと書いてある。車検証にも1WD/2WDとは書かれていない。

となるとバイクの系譜が間違っていると思うのも当然な話です。実際よく打ち間違えていますからね。でもコレは両方間違いではないんです。

ヤマハが公式に書いているRG10Jという型式は認定型式といって、市販するにあたり国土交通省(政府)向けに用意した型式。フレームに刻印されるのもこの型式です。

ちなみに頭文字三文字のJBKというのは

『いつの規制で取得した型式か』

という事を表す型式。

2012年の第二次排ガス規制で型式認可された軽二輪(125cc超250cc以下)はJBK-認定型式、小型二輪(251cc以上)ならEBL-認定型式となる。

排ガス規制による認定型式

2016年の第三次規制に対応した軽二輪(125cc超250cc以下)は2BK-認定型式、小型二輪(251cc以上)なら2BL-認定型式となります。

そしてこの型式というのは一度取得すると大きく変更しない限りはそのまま使えます。

例えばYZF-R25がマイナーチェンジしたとします。消費者から見たら大変貌に見えても、メーカーや国土交通省が変わっていないと認識した場合わざわざ再び型式を貰いに試験を行う必要が無いんです。

これはメーカーや国土交通省の費用や手間を省くため。少し変わる度に全試験なんてやっていたら大変ですから。

しかしこれで問題となるのがモデル管理。

例えば

「RG10J(認定型式)の補修部品が欲しい」

と言われてもこれでは何年の何色のR25の補修部品が欲しいのか分からない。

要するにメーカーや消費者にとってのモデルチェンジと、国土交通省にとってのモデルチェンジにズレが生じる。

型式のズレ

そこでヤマハは”年式・グレード・仕様地・色”等が一発で分かる

『通称型式(モデルコード)』

という公認型式とは別の型式を設けています。それがR25/R3でいえば1WD/2WDというわけ。

つまりいま説明したように仮にR25がモデルチェンジした場合、公認型式はRG10Jのままの可能性はあっても、通称型式は区別するために間違いなく変わる(変える)という事です。

本当はこの三文字の後に2WD1等もう一つ文字が付きます。

これは色を表すコードなんですが、流石に全色全コード覚えている人は居ない事からかオーナー間では省略されるようになりました。

ちなみにこのアルファベット三文字(または四文字)に意味は無く、順番に1~Zまでを順番に振っているだけですが、色を表す末尾コードをZ(例えば2WDZ)まで使った場合、全く新しい通称型式が振られます。

なので必ずしも通称型式が変わったからモデルチェンジというわけではありません。

※YZF-R1(14B~2SG)等

じゃあ他のメーカーはどうか、まずはカワサキからZX-10Rを例に見てみましょう。

カワサキの型式

カワサキもモデルチェンジの度に国土交通省向けの認定型式(ZXT00C等)とは別に通称型式を振っているわけですが、ヤマハと違い通称型式に決まりがあります。

例えばZX-10R(ZX1000D)の場合、Zは四気筒、Xはフルカウル、1000は排気量クラス、Dはアルファベット順で4つ目のZX1000(四気筒フルカウル1000cc)という意味。

これがNinja650/Z650になるとEX650J/ER650Gになります。

カワサキの型式2

Eは二気筒、Ninja650はカウルが有るのでX、Z650は無いのでR、650は排気量クラス、Jはアルファベット順で10つ目、Gは7つ目という意味。

本当はこの下にイヤーコードが付きます。

2006年式ZX-10RならZX1000D6、2007年式ならZX1000D7、2010年からはZX1000JAなどなど。

だから前期後期という分け方は本当は正しくないんだけど、まあ分かりやすい様にという事で・・・ちなみにカラーコードは含まれていません。

比較的分かりやすい事からオーナー間ではE型やJ型などナンバリングにあたる末尾アルファベット一つを取って言っている人が多いですね。

次はスズキの場合。

簡単なんですが、これまた色々と説明しないといけない事があります。

スズキの型式

基本的にK1やK7等のナンバリングが付いているだけなので最も分かりやすい。

Kというのは2000年代、Lは2010年代と言う意味。K3なら2003年モデル、L2なら2012年モデルという具合。

アルファベット順なので2020年モデルはM0という事になります。

ただしスズキは一部の車種に違う機種名を設けています。そのせいで混乱を招いたのがGSX250Sとコブラ。

通称名(車名)機種名(コード)認定型式
COBRAGSX250SGJ73A
GSX250S 刀GSX250SSGJ76A

この事からGSX250Sがコブラなのかカタナなのか混乱する人が出ました。

ただしどちらも車名と思って言っているのでGSX250S(車名)といえばカタナになります。

これは車名に名詞が入っていたからで、アドレスV125やバンディット1250FなどもUZ125やGSX1250FAという機種名を別に用意されています。

ちなみに2000年代まではA~Yというアルファベットでした。上の250カタナで例えるなら91年式はGSX250SSM、92年式はGSX250SSNという感じです。

話を現代に戻すとGSX-R1000で言うなら2005年式ならGSX-R1000K5、2017年式GSX-R1000AならGSX-R1000AL7、GSX-R1000RならGSX-R1000RL7となります。単純明快ですね。

ただカワサキでも言える事ですが、

「L5に乗っている、E型に乗っている」

と末尾だけを言っても、年や何代目かというだけで肝心の車名が全く分からないので注意しましょう。

小話ですが、これ系譜を書く上でも実は凄く困っている事なんです。例えばタイトルにK9と書いても本当はK9なんて型式じゃないから。

かといって

「GSX-R1000-Since2009-(GSX-R1000K9/L0/L1)」

と書くと重複しているみたいですよね。

本当はGT78Aといった認定型式を書いた方が良いのかもしれませんが、系譜が長いと被りが生まれてします。

GSX1100S KATANAなんて20年間のモデル全部GS110Xですからね。その後に続くフレームナンバーで分けろと言われそうですが、それだと本当にマニアにしか伝わらない。

しかもこの認定型式というのはメーカー問わず仕様地によって変わってくるので、逆輸入車などは特に一概に全てがコレとは言えない難しさがある。

気を取り直して最後はホンダ・・・ホンダを最後に持ってきたのはちゃんと訳があります。

ホンダのバイク乗りは一番型式で呼ぶ人が多いイメージですね。RC30やSC59やNC42など聞いたことがあると思います。

RC30は公認型式

が、実は皆が言っているその型式というは国土交通省用の公認型式なんです。

だから他の三メーカーと違って車検証にもバッチリ記載されています。

CBR1000RRを例に挙げてみましょう。

CBR1000RRは2004年モデルはSC57ですが、2006年モデルもSC57です。

つまりSC57だけではモデルチェンジ前のSC57なのか、モデルチェンジした後のSC57なのか正確には分からず管理できませんよね。

ホンダの型式

じゃあどうやって把握しているかというと・・・実はスズキとほとんど一緒なんです。

04年式はCBR1000RR4、09年式はCBR1000RR9

10年式からはアルファベットになりCBR1000RRA

12年式のABS付きはRの代わりにAが入ってCBR1000RAC

14年式のSPはRの代わりにSが入ってCBR1000SAE、15年式はSAF

という具合です。聞きなれないと思います。

認定型式

ちなみに1994年式CBR900RRはCBR900RRRで綺麗なトリプルアール・・・だからなんだって話ですが。

ここまで認定型式が広まったのはホンダ自身も認定型式を宣伝に使ったりしたからでしょう。

RC

VTR1000SPなんて認定型式はSC45なのにアメリカではRC51を名乗ってましたし。

ホンダは認定型式がそのままモデルコードとして認知(誤解)される様になった事で、結果として型式が変わらないモデルチェンジが多くなり前期・中期・後期という呼ばれ方をすることが多くなったというわけです。

だいぶ長くなってしまいましたが、以上が型式に関する話になります。

「結局どう呼べばいいの?」

と思われるならとりあえずサイトの横に書いてある型式を言っておけば大丈夫かと。

「本当のコードはこうだ」

と世論に歯向かって正す必要も無いと思いますし、無理して型式で言う必要もないです。

本来これらの通称型式やモデルコードというのは我々ライダーの為ではなくバイクを管理する人達の為にあるコードですから。

どのバイクを指してるのか伝われば言い方なんて何でもいいんですよ。

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