簡単だからこそ要注意 日常メンテナンス

メンテナンス

第四回目は日常のメンテナンスについて。

バイクというのは(車もそうですが)乗り方こそ教習所で学べますが、日常のメンテナンスについては教えてもらえませんよね。

こまめにバイク屋へ点検に出すのが一番確実ですが、懐事情を考えると難しいのが現実。

そこで自分で出来るメンテナンスと注意点を書いていきます。

が、まず初心者の方が第一に頭に叩き込んでおかなければいけない事があります。それは・・・

「締め過ぎは駄目」

ということ。専門用語でオーバートルクといいます。太いネジから細いネジまで締め付ける部品というのはコレが決まっています。

締め過ぎるとどうなるかというとネジ穴が馬鹿になったり、締め付けられる側の部品を壊してしまったりしてしまう。

締め付けられる側というのは基本的に大きい部品だったり、換えが効きにくいor換える事を想定していない部品の場合が多いので高く付きます。

どれくらいの力で締めればいいのかはサービスマニュアルを読むか、やってく内にネジ(ボルト)の頭のサイズでおおよそ判別が付くようになります。

まあとにかく初心者の方は

・両手で思いっきり締める

・体重を乗せて締める

といった締め方をしては”駄目”と覚えておきましょう。締め過ぎは駄目だと頭に入れておけばそこまで神経質になる必要はありません。

思いっきり締めていいのはアクスルシャフトくらいです。

アクスルシャフトというのはホイールを固定している太い鉄の棒です。正確にはこれも締め過ぎは駄目なんですが、100~150N・mとかなり高めで実質的に結構力を入れて締めないといけないので。

まあそんな事より日常でやれるメンテナンスと注意点を挙げていきましょう。

1.チェーンメンテナンス

チェーンメンテナンス

恐らく誰もが一度はやるだろうチェーンのクリーニング&注油というメンテナンス。

「バイク豆知識:チェーンはチューンでチャーン」でも言っていますが、エンジンが生む動力で走る上で最もフリクションロス(動力ロス)の大きい部分なのでチェーンの状態次第で馬力が10%前後も違ったりします。

【手順】

1:クリーナーを掛ける(できれば走行後)

2:チェーンブラシ(真鍮ブラシは絶対ダメ)で軽く磨き拭き取る

3:チェーンルブを掛けて拭き取る(できればその後は放置)

という簡単かつ効果が絶大なメンテナンス。

【注意点1】危ない事を理解する

スタンドで上げてやる場合は絶対に回しながら磨いたり拭いたりせず、進行方向と反対にタイヤを回すこと。

チェーンメンテナンス方法

何故かというとチェーンとスプロケットに指を挟む恐れがあるから。

これ本当に気を付けてください。手で回す程度の速さでも最悪の場合、指を無くす恐れがあります。

【注意点2】こまめに見ないならクリーナーはNG

今時のチェーンというのはほぼシールチェーンです。シールチェーンというのは削れる部分に予めグリスを注入しシールで密閉しているタイプ。つまりシールチェーンの寿命というのはシールの寿命といえるわけです。

シールチェーン

そしてチェーンクリーナーというのはそのシールが破れないように保護している油膜を少なからず落とします。

系譜でも言っていますが”チェーンメンテ大事” “チェーンメンテは絶対にしろ”と言われているのを見てクリーナーとルブを買ってやったはいいもの、数回やったきりで乗りっぱなし等にした場合アッという間に油膜が切れてチェーンの寿命を延ばすどころか縮めてしまうハメになる。

だからもしズボラで500~1000km毎にキッチリチェーンメンテを出来ないと思うならクリーナーはあまり使わない方がいいです。ルブだけ振って拭き取るようにした方が少なくとも悪影響は少ない。それすら面倒ならドライタイプのチェーンルブを振りましょう。

チェーンメンテで検索すると

・最初に付いているグリスを綺麗に落としてルブを塗り直す人

・灯油をクリーナー代わりに使う人

・エンジンオイルをルブの代わりに使う人

といった事をしている人がいますが、こういった行為をする人は常にチェーンに気を配りメンテナンスを怠らない上級者です。ズボラメンテなのに真似をしないように。

2.洗車

洗車

これも絶対に一度はするでしょう。異常のある部分を見つけるキッカケにもなることからメンテナンスの一つとして捉えられています。

基本中の基本ですね。ちなみにチェーンメンテするなら洗車を済ませてからしましょう。

【手順】

1:水を掛ける

2:洗剤つけて洗う

3:拭き取る

4:場合によって磨く

当たり前ですね。

【注意点1】いきなりゴシゴシ洗わない

最初に水でよく洗わないままゴシゴシ磨くというのは表面に付いている見えない小石を車体に擦り付けてる事と同義で傷が付きます。

わかってると思いますが磨く手順も上の方から。できればカウル等の外装を洗うスポンジと油が付着していたりするホイールやエンジンカバー等の下回りのスポンジは分けましょう。理由は今言った事と同じです。

【注意点2】洗うタイミングに気をつける

絶対にしてはいけないのが走行後の洗車。これはバイクがまだ熱い状態だから。そんな状態で水を掛けるとエンジンを始めとした各部に収縮差が生まれ凄く痛みます。

場合によっては塗装表面が剥離や溶解蒸発を起こしマダラになったり剥がれたりといった事にも繋がります。

これは走行前の洗車にも言えること。濡れたままの状態で走り出すのは止めましょう。

【注意点3】磨いてはいけない部分がある

洗車用品の中にはコンパウンド、またはコンパウンド入りワックスというシャンプーとは別に外装に艶を出す為の用品、人間で言えばトリートメントの様なものがあります。

これはシャンプーで綺麗にした後、綺麗で柔らかい布などで擦るように塗る事でテカテカになるわけです。

シャンプーで汚れを落とす

コンパウンドで下地を作る

ワックスで仕上げる

コンパウンドというのは簡単に言うと塗装の表面を軽く削って慣らす研磨剤。線キズなど簡単なキズならコンパウンドで磨く事で見えなくなります。(周りを削る事で傷を消す)

クルマ用の物で大丈夫なのですが、バイクの場合クルマと違って絶対にコンパウンドを掛けてはいけない部分があります。

まず一つ目はスクリーン。

スクリーン

スクリーンをコンパウンドで磨くと、研磨剤なので小傷だらけとなり曇った様になります。こうなると素人には修復不可なので買い換えるしかありません。

もう一つはマット(艶消し)系。

マットブラック

これも取り返しがつかないので要注意です。

艶消し塗装というのは簡単に言うと表面を敢えてデコボコにさせる事で艶を消しているので、もしもそんな表面にコンパウンドを掛けると表面を均す事になり艶が出てしまう。

問題なのは一度コンパウンドを掛けて均してしまうと、もう二度と艶消しにはならないということです。塗装されている部品は基本的に高いので気を付けましょう。

ちなみにコンパウンドはあくまでも下地処理なのでコンパウンドだけ掛けてワックスやガラスコーティングをしないという行為も絶対に止めましょう。

3.プラグ交換

デンソーイリジウムプラグ

ここまでは自分でやる人も多いかと。正しくいうとスパークプラグといってエンジンの上に付いていてガソリンに着火するライターの様な装置ですね。

だいたい5000km~10000kmで交換が必要になります。いわゆる高級版のイリジウムプラグは10000km持つのが普通ですが、プラグメーカーのデンソーやNGKは5000kmで変えるように言っています。

【手順】

1:プラグホールの上に乗っている部品をどける

2:プラグケーブルを引っこ抜く

3:プラグを外す

4:新しいプラグを付ける

5:元に戻す

プラグホールにアクセス出来るようにする方法は車種によって様々なので。同一車種に乗っている先人たちを参考にされてください。

【注意点1】プラグホールに物を落とさないように

スパークプラグを差し込む穴の下はもうエンジン内部(燃焼室)です。

ホコリ等のゴミならまだしもネジなどを落としてしまうと、最悪の場合エンジンを開けないといけなくなります。

【注意点2】締め過ぎ注意

新しいプラグをはめる時は車載されているプラグレンチを使うのが一般的ですが、絶対に最初は手で増す事。

そして手で回らないほど固くなったらソコからスパナやメガネでプラグレンチを

「1/3から1/2」

ほど回すこと。間違ってもメガネやスパナで何周もギューッと締めるような事をしてはいけません。

※この回す範囲はクロスプレーンのR1など一部のバイクでは当てはまらない場合があります。デンソーやNGKのホームページで該当のプラグ説明を読むようにしましょう。

3.オイル交換

メーカーオイル

これも自分でするメンテナンスの代表格の一つですね。特にコダワリが無いならメーカーが用意しているオイルを使いましょう。

【手順】

1:オイル注ぎ口の蓋(キャップやボルト)を開ける

2:ドレンボルトを外す

3:オイルを抜く

4:オイルエレメントを交換する

5:ドレンボルトを締めてオイルを注ぐ

ドレンボルト

【注意点1】締め過ぎ注意

ドレンボルト(オイル栓)は非常にナメやすい上にエンジンに直接付ける部品です。

ドレンボルトに限った話ではないですが、いきなり工具で締めようとせず最初は手である程度締めた後に工具で締めましょう。締め過ぎは本当に注意です。オイル交換の際はまず少し緩めた後にもう一度締めてみてどれくらいの硬さで締まっているか確認すると失敗しにくい。

ちなみにこれはスピンオン式やエレメント交換形のカバーなどにも言えます。

オイルフィルター

オイルフィルターの場合はドレンボルトよりも更に締め付けトルクは弱く設定されている事が一般的で成人男性なら手で済ませる人もいるくらいです。

【注意点2】ちゃんとオイルゲージを見る

慣れてくるとやりがちな行為。

既定値のオイルを入れてオイルゲージを確認せずに終わる。万が一レベルゲージの正常ラインを越えていたり届いていなかったりした場合はエンジンにダメージが行きますし、故障の可能性が高いのでそのまま走っていると最悪の場合廃車になります。

ちゃんと確認しましょう。

【おまけ】よく分からないまま進めない

「何か違うような気がする」

「手順通りなのに上手くいかない」

そう思ったら一旦手を止めて誰かに聞きましょう。怪しいまま進めてしまっても十中八九は傷口を広げるだけで、最悪の場合取り返しのつかない事態になります。

周りに詳しい人が居なかったらSNSを始めとしたネットで聞く事。それでも分からなかったら、勇気を出してバイク屋に聞くこと。

多少説教されたり嫌な顔をされたりするかもしれませんが、一生引きずるような後悔はしなくて済みます。

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