「個人売買は絶対にダメ」
という話はよく聞くと思います。でも何故ダメなのかは誰も教えてくれないし、書かれてもいない。
右も左も分からず免許代でヒイヒイ言ってる未来ある新参が、苦いデビューとならない為にもそこら辺を説明していきたいと思います。
※参照:国民生活センター|自動車公正取引協議会
※写真:ヤマハMOTOBOT君
どうして個人売買が駄目なのか一例として実際に起こった紛争と消費者センターの仲介結果を
「紛争解決委員会によるADRの結果の概要(pdf)」
から長くて重いので割愛して紹介。
【事案概要】
ネットオークションで落札したバイクのエンジンが掛からない
【申請者の主張】
キャブ、プラグ、ガスケットの修理費を出品者に払ってほしい
【申請者の言い分】
・届いた時点でエンジンが掛からなかった
・バイク屋に見せたらOH(修理)が必要と言われた
・タンク内部の腐食や錆や漏れが酷い
・3度修理に出したが直らない
【相手方の言い分】
・出荷前の点検では問題がなかった
・申請者の修理、エンジンの掛け方が悪い
・悪い評価を撤回し詐欺師扱いした事を謝罪してほしい
【備考】
・エンジン一発始動&アイドリング安定と書かれていた
・ノークレームノーリターンと書かれていた
・車両は相手方が業者オークションで購入した「査定:下」の物だった
【結果(仲介委員の判断)】
「エンジン一発始動&アイドリング安定」という表現があたかも相手方が保証してくれるかのような”誤解”を与えてしまった可能性を指摘した上で、申請人が相手方にした悪い評価とコメントを撤回することを条件にプラグ交換代として5000円を支払う事で和解。
申請人、相手方の双方がこれに同意したことから和解が成立した。
いやいや・・・って思いますよね。5000円じゃ修理費を賄えないし腐食や錆はどうするのよっていう。ハーネスもボロボロと書いてある。
まとめると
「完動車と思っていたのが腐った不動車で5000円しか返ってこなかった」
という事になる。明らかに申請人(落札者)が損をしている。
何のバイクを幾らで落札したのかは書いていませんが、輸送費も払ったと書いてあるので間違いなく大赤字でしょう。
これで分かる恐ろしい点は二つ
・エンジン一発始動、アイドリング安定という文字は保証ではない
・相手が個人を装った業者または関係者だった可能性が高い
という事。
何故これほど悪い条件になってしまったのかというと申請人にも落ち度があったから。
「現物を確認せず、質問もしなかったから」
という落ち度。これも少しツッコミ所がありますよね。じゃあフロントフォークのシール一つからハーネスの一本まで全部状態を質問するか、現地に行って確認しなきゃいけないのかという話になる。
でもそういう結果になった。
要するにネットでの個人売買というのは、買い手が圧倒的に不利ということ。
意図的に問題点を隠していたとしても
「聞かなかったから、確認しなかったから。」
と言われるとそれだけで買い手の落ち度になりうる。この案件の相手方(出品者)は
「錆は輸送中に起こったトラブル」
という詭弁に聞こえる弁明もしています。訴訟すればもっといい条件になったかもしれませんが時間もお金も掛かりますからね。
ちなみに車の方になりますが訴訟まで行なった例が(これまた何ページあるんだよっていう)「ネットオークションにおける出品者の瑕疵担保責任:弁護士 藤田(pdf)」として消費者庁にありました。
出品された中古のアルファロメオ164を約12万円(落札価格7万+輸送費5万)で落札したものの、ガソリンが漏れるだのドアが閉まらないだので、まともに走らせるのに修理費が30万円弱掛かった。
そこで出品者は瑕疵担保責任を果たしていない(欠陥品を売りつけた)として修理費&駐車費40万円と慰謝料30万円合わせて70万円の賠償を求めた。
結果は・・・
「相場より安いからセーフ(要約)」
として棄却。
納得いかなかった落札者が控訴したところ
「一部瑕疵に当たるので3万円のみ請求容認する」
として終わり。
要するに
「相場より安い」
という事から棄却、極一部の修理費しか認められなかった。
これは極端な例かもしれませんし、ネットオークションに出してる車両全てがそうではありませんが、どちらにせよ目利きは愚か整備すら出来ない新参が、何が隠れているか分からないパンドラの箱のような個人物に手を出してはいけない。
「安さに釣られた結果、安さに足元を掬われる」
という正に安物買いの銭失いで痛い目を見ますよ。ネットの普及でこういったトラブルがどんどん増えてると消費者庁も喚起しています。
ただしこういった個人売買トラブルはネットに限った話だけじゃないんです。厄介なことに顔見知りや友人同士の善意による個人売買でも起こりうる。
自分のバイクが今どういう状態で何処に問題を抱えているのか完全に把握してる人は居ないでしょう。
ありがちなのが
「乗らなくなったから。」
といった理由で友人に売る時。
長期間動かしていないバイクというのは各部の錆、ゴム類の割れ、ガソリン詰まり等、見た目では分かりにくい部分が駄目になっている事が多い。
買う方もバッテリーやプラグといった消耗品を交換すれば動く程度に考えていたりするので、そういった想定外の出費でトラブルが起きる。知らなかったと言い合った所で何も解決せず関係にしこりやヒビが入るだけです。
それに譲渡・名義変更手続きも自分達でしないといけない。名義を変えずに乗るなんて言語道断ですよ。
やり方は簡単ですが平日の日中に市役所や運輸局に行くのは大変です。不慣れだと何往復かする事になったりもする。
それでも友人間でやり取りする時は、売る時は廃車手続きをした後にくれてやるくらいの気持ちで、買う時は不動車を引き取るくらいの気持ちで居ることです。
じゃあバイクは何処から買えばいいのか・・・というと(当たり前ですが)バイク屋です。バイクはバイク屋で買うものです。
「でもバイク屋だって良し悪しがあるっていうし」
って思うでしょう。確かにその通り。
皆さんはバイク屋と消費者における中古車売買のトラブルって一年間にどのくらい起こっていると思いますか。
実は減少傾向とはいえ今も(把握してるだけでも)年間300件以上、一日一件ペースで起こっています。
そしてその半数は”故障・不調”によるもの。
ちなみにこれは「自動車公正取引協議会」という恐らく聞き慣れないであろう機関のデータ。
ここは
「公正な取引で信頼される販売」
を推進する機関。簡単に言うと消費生活センターの自動車・二輪車特化機関の様なもので、バイクの販売に関しセールストーク一つに至るまで厳しい取り決めをしトラブルを無くす活動をしています。
例えば車体価格を掲載するプライスカードについてもバイクの状態が消費者に明確に伝わるようルールを設けている。
ちなみに少し前までよく見ていた
「新同」「お買い得」「特価」「極上」「完全整備済」
といった謳い文句を見なくなったのは、消費者が誤解を招くとして禁止したからです。
そしていま特に力を入れているのが2016年の10月から始めた走行距離の偽装、メーター戻しの撲滅。
減算車、メーター交換車、疑義車、それぞれしっかりシールに記載して表記して売れという話。
これら公正取引協会のルール守らなかった場合、消費者庁から行政処分されます。
そしてこの公正取引協会のルールを学び、遵守してるバイク屋の事を公取協会員店と言います。
会員のバイク屋には店先にこういったシールが貼られている。ドリームやYSPやワールドやPLAZAといったディーラーも入ってます。
つまりもしバイクを買う際や検討している際にまだ店が決まっていないなら公取協会員の公取協のルールを遵守しているバイク屋から選びましょう。加盟店は“公取協のホームページ”で検索する事が可能です。
・・・なんかMOTO BOT君を使ったせいで良くも悪くも少し緩い宣伝みたいになりましたね。