徐行でバランスを崩す人と崩さない人の違い

低速域でのバランス取り

時速10km以下の低速走行でフラフラっとしてしまい立ちごけ・・・という初心者はもちろんベテランでも珍しくないバイクあるある。

そんな悩みを抱える人に向けたページなんですが、そもそもバイクがどうして倒れるのかといえば自立しない乗り物だからですね。

「じゃあどうして倒れず真っ直ぐ走れるのか」

というと一つはキャスター角と言って要するに前に引っ張る力が働くから。そしてもう一つはコマが強く回っている間は倒れないのと同じジャイロ効果(ジャイロモーメント)が働くから。

しかし時速10km以下など低速走行になるとそれらの働きが弱くなるのでフラフラしてしまうという話・・・なのに上手い人達はそんな極低速でもバランスを崩さないから格好良い。

低速域でのバランス取り

教習所の一本橋などで

「とにかくニーグリップして遠くを見ろ」

というアバウトなアドバイスをもらった人も多いと思うのですが、敵を知り己を知れば百戦殆うからずと言われるよう具体的に

「徐行でバランスを崩す人と崩さない人は何が違うのか」

という事を人間工学の視点から数値化し検証した

『低速走行におけるライダーの挙動』
(著者:横井元治、青木和夫、堀内邦雄)

という面白い研究論文があったので勝手ながら内容を非常にザックリ、その道のプロによる安全運転大会(ホンダ)の写真と共に紹介したいと思います。

一本橋

実験に使われたのはいま話した一本橋。

車両も多くの教習生を(主にクラッチ操作で)泣かせたであろう教習車としてお馴染みCB750教習車仕様に各種センサーを付けたもの。

CB750教習車仕様

これを使って一本橋の成績を参考に初心者グループと熟練者グループに分けて比較したところ大きく異なっている要素が2つほどあった。

初心者と熟練者の違い1
『転舵角の差』

徐行

転舵角というのは早い話がハンドルをどれだけ切って走ったかという事で、初心者に対し熟練者はハンドルを積極的に動かし大きく切りながら走行している事が検証で分かった。

「ハンドルをインに入れるとバイクが起きる」

という話は初心者の人も聞いたことがあると思いますが、これは進む方向(前輪の向き)に対してハンドル以降のライダーや車体は真っ直ぐだから。

点火プラグ

だから車体がアウト側に行って起きるという話で熟練者はこれを積極的に活用していたという事。

もちろんこれは蛇行する事でタイムや距離を稼ぐ狙いもあるわけですが、それだけではなく

『前後輪を直線上に並ばせない様にしている』

という狙いもある。

前後輪を直線上に並ばせないようにすると基底面といってバランスを取れる有効面積が広がるんですね。

バイクの基底面積

両足の間隔を広げた方がバランスを取りやすいのと一緒。

熟練者はこれらを利用するためにハンドルを大きく振りまわしながら走っており、反対に初心者は利用していなかったという話。

初心者と熟練者の違い2
『ハンドル荷重の差』

ハンドルへの荷重

車体が傾く時にハンドルに荷重を掛けるのは初心者も熟練者も同じだったんですが面白いことに

「荷重を掛ける方向が真逆」

という結果だった。

熟練者は車体が倒れていくイン側とは逆方向の荷重を掛けていた。これは1つ目で紹介したようにハンドルを切って起こそう(踏ん張ろう)とするから。

一方で初心者はそういう動作をしていないにも関わらず別の動作によって”倒れていく方向へ”荷重を掛けていた。

初心者がいったい何の動作によってハンドル荷重をかけていたのかというと

『頭部の動き』

です。

初心者は車体が傾くと頭部も合わせて傾け、倒れようとする車体を更に押すように荷重を掛けていたんです。

この原因は熟練者が上半身をハンドルでも支えていたのに対し、初心者はニーグリップだけで支えていたから。

低速域でのポジション

「初心者の方が正しいポジションでは」

と思えるんですが、頭というのは重心から大きく離れた場所にある重量物なので支えるのは非常に大変。だから熟練者はハンドルも使って全身で支えていた。

しかし初心者は下半身(ニーグリップ)だけなので車体が傾き始めると頭を支えきれず車体につられるように傾けていた。

それが結果として倒れようとする車体の運動を加速させてしまいバランスを取るのを難しくしていたという話。

【要約】

最初にも言ったようにアクセルを開けて加速すれば前に引っ張る力とジャイロでバランスを保てる。これは初心者の人でも体感で分かっていることだと思います。

しかし徐行の必要があるシーンというのは一時停止からの交差点侵入や、渋滞などで加速できない場合が多い。

一時停止などによる徐行

そうなった時に徐行が苦手な人はハンドルをあまり動かさず、また頭もバイクと一緒に傾けてしまうからバランスを崩してしまうというわけ。

つまりもし徐行など極低速時のバランス取りに苦労している人が居るならニーグリップと遠くを見ることはもちろんですが、このページ的に言うと

正しい例

「傾けるのはハンドルだけ(頭や車体は傾けない)」

という事を心がければ幾分は改善するかと思われます。

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スポーツバイクのポジションがキツい理由

前傾ポジション

「どうしてスポーツバイクってポジションがキツいんですか」

という先入観や固定観念に問わられていない鋭い質問を頂いたので長々と。

バイクという乗り物は因果なものでクルマと違いスポーツ性が高いバイクほど

・強い前傾になる低いハンドル

・ズルズル滑る上に足つきが悪いシート

・後ろ気味で窮屈なステップ

という苦行なポジションになる傾向があります。

スーパースポーツ、レーサーレプリカ、メガスポーツ(便宜上これ以下スポーツバイク)などが典型ですね。

レーサーレプリカのポジション

こんなポジションのバイクで街乗りやツーリングをすると漏れなく身体を痛める。

「ポジションしんどい」

と嬉しそうに話すオーナーを目にした人やドン引きした人も多いと思いますが、ポジションがキツい事にはもちろん理由があります。想像がつくとは思いますが端的にいうと

「ハングオンなど積極的に動くスポーツ走行に対応するため」

です。

ジャンル別ポジション

ちなみにこういう

・ハンドル

・シート

・ステップ

を結んだ三角形をよく見ると思いますが、何故ここなのかというとポジションであると同時にライディングする上で人がバイクに力を加えて操る箇所がここだから。

専門用語で

『荷重点』

と言います・・・突然ですがここでちょっとクイズ。

ハンドルとシートとステップ

「スポーツで要となるのはハンドル・シート・ステップのどれでしょう」

正解は

ステップが要

『ステップ(正確には足を置くフートレスト)』

です。

何故ならバイクは下半身で操る乗り物であり、その支点であり力点となるのがステップだからです。

という事でまず最初に説明するのは【ステップ】から。

ステップポジション

左がスタンダードともいえるネイキッドのステップ位置で右がスポーツの典型であるスーパースポーツのステップ位置。

明らかにスーパースポーツの方が窮屈なステップ位置なのが分かると思いますが、窮屈なステップをしている理由の一つは

「バンク角を稼ぐため」

という狙いから。

一般的にスポーツ性の高いバイクはサーキットをも楽しめるように造ってあります。そしてサーキットは公道よりも深く寝かせる必要があるのでガリガリとステップを擦ってしまう浅いバンク角では話にならない。

だから上の方に持ってきており、どうしても窮屈になってしまうという話。

ハングオフ

そしてもう一つ、後ろの方にあるのは最初に言ったようにステップで踏ん張る(荷重しやすくする)ため。

スポーツ走行時は積極的な体重(荷重)移動つまり前後左右に身体を動かす必要があるんですが、そうするためには一度腰を浮かす必要がありますよね。そうした時に足を後ろに置いていないと簡単に腰を浮かす事ができず身動きが取れない。

腰を浮かせようと思った時

椅子に座った状態で腰を浮かせようと思った際、真下ではなく少し後ろ側に足を置いたほうがヒョイっと簡単に浮かせやすいのと同じ。だから後方にあるんです。

逆に言うとずっと動けるように身構えた形だから姿勢をそれほど変える必要が無い長距離などでは辛いというわけ。

お次は高さなどが注目される【シート】について。

シートポジション

スポーツバイクはタンクに向かって細く下るようなシート形状になっています。

そのため自ずと前乗りになるしブレーキを掛けるとズルっと前に滑り落ちてしまう。

「拳一つ分ほど開けておくなんて無理」

とお思いの方も多いでしょう。

一体全体どうしてこんな形状をしているかというと、先に紹介したステップの延長線上

「自由にポジショニングするため」

にあります。

ハングオフ

サーキットなどで速く走らせるために欠かせないのが自身の重心を内側に持ってくることでコーナリングフォース、要するに強い旋回力を生むハングオン(またはハングオフ)。

その動きというのが腰を左右に回しながら落とす動きなんですが、その際に前に行くにつれ細く下がっているシートが本領を発揮するんです。

シートフォーム

ストンと導いてくれるガイドの様な働きをする。公道では煩わしく感じる滑りやすさもこの流れをスムーズにするため。

ちなみにシート後方が上がり気味なのは加速時に後輪荷重を稼ぐ狙いもあります。

後輪荷重

そして一番気にされる部分であろう高いシート高ですが、一つは先に上げたステップ位置との関係が大きい。

バンク角と踏ん張りやすさのために後方の高い位置にステップがあるのにシートは低いままだったら・・・正座になってしまいますね。

正座ポジション

だから自ずとシート高が上がってしまい足つきが悪くなってしまうという話。

ちなみに我々日本人はそうでもありませんが、手足が長い欧米人からするとSSのステップは我慢ならないほど窮屈に感じる人がとても多いんだとか。向こうの人たちより足が短くて良かった・・・のかな。

もう一つは操舵性といって重心を高い所にやる事で軽い力で寝かせられるようにするため。チックタック動くメトロノームみたいな感じです。

そして最後は最も多くの人が悲鳴を上げているであろう【ハンドル】について。

これは前方投影面積を減らし空気抵抗を抑える狙いがまず一つ。

後輪荷重

空気抵抗を抑える事は最高速はもちろんのこと、加速や燃費などに直結するだけでなく切り返しやバンクなどロールやヨーの軽快さにも影響します。

空気抵抗

これには慣性力(加速と反対向きに生じる力)に備える狙いもあります。

上半身が起きたポジションでは急加速するとハンドルにしがみつく、ハンドルを引っ張ってしまう形になってしまうんですね。その場合だとライダーは腹筋で耐えるしか方法はなく負担が非常に大きい。

ポジションによる違い

それを防ぐためにも前傾にする事で前に転びそうになる重力でバランスを保っている。

陸上のスタートダッシュやスキーで前傾姿勢になるのと同じです。

RZ250Fの前傾ポジション

街乗りではキツいのにビュンビュン走っている時は不思議と前傾をキツく感じないのもこれによるもの。

ただスポーツバイクのハンドルがキツいのは低い事だけではなく

『絞り角』と『垂れ角』の問題もあるかと。

絞り角と垂れ角

簡単に説明すると『絞り角』を設ける狙いはステムシャフト(回転軸)に近づける事でハンドリングを軽くクイックするため。

そして『垂れ角』を設けるのはハングオンなどバンク中のコントロール性を上げるため。

ハングオン時のハンドル角度

公道走行だと手首を痛める原因になったりもしますが、サーキット走行となるとこれがシックリ来るのが面白いところ。

ただこれは乗り方で(特に垂れ角は)個人差というか体感差があります。

纏めると、最初にも言ったようにスポーツ性の高いバイクほどポジションがキツいのは

「ハングオンなどアグレッシブな動きに対応するため」

という事で、長々と説明してきた要素からも分かる通り想定しているスポーツ域(速度域)が高くなるほどポジションがキツくなるのはある意味では必然という話。

しかしでは

GSX-R750ポジション

「ハングオンもサーキットも無縁ならデメリットしかないのか」

というと実はそうでもないのが難しいところ。

確かに日常使いで不憫に感じる要素の多くはハングオンなど極限のコーナリング性を得るためにあります。

リーンウィズ

しかし例えタイヤなりに走るリーンウィズでもこのキツい前傾ポジションじゃないと支障が出るんです。

スポーツ性の高いバイクというのはクイックなハンドリングを実現させるためにキャスターアングル、早い話がフロントを一般的なバイクより立てています。

NKとSSのステムライン

そこで問題となるのがトップブリッジの中央に鎮座しフレームと操舵を繋いでいるステム。

人間は耳の内側にある三半規管と呼ばれるバランスを司る部分に頼ってバイクを運転しています。

そしてそんな三半規管がある頭は操舵を担っている部分

ステムシャフト

『ステムシャフトの延長線上』

にないとバランス感覚を上手く取れず真っ直ぐ走らせる事も、狙った通りのバンクをさせる事も難しくなるんです。

そのためバイクは頭をステムシャフトの延長線上に持ってくるのが定石とされ、例えハングオンとは無縁なバイクでも大きく外れた様な車種はありません。

ステムライン比較

要するにポジションというのは何処かでしらで

「楽を取るかハンドリングを取るか」

で折り合いを付ける必要がある。

つまりスポーツバイクに限って言うとフロントを立ててクイックなハンドリングと軽い寝かし込みを持ちつつ上半身が起きていて長距離も走れる

『楽ポジなスーパースポーツ』

という欲張りなバイクは不可能に近いという事。

ステムライン

ちなみにハングオンで頭を残すように言われている事もこれが理由。※レーサーは例外

そしてリーンウィズでも無関係ではない言える部分もここ。リーンウィズでも不安なく軽快に走れているのは

ステムの延長線上に頭

「キツい前傾姿勢によって頭をステムの延長線上に持ってきてるから」

という話でした。

【以下余談/持論】

ポジションがキツいスポーツバイクというのは跨っている姿勢を見ただけで乗り手の力量が知れてしまうという残酷さがあります。

スーパースポーツのポジション

というのも説明してきたようにポジションがキツいバイクというのはサーキットやハングオンを視野に入れているのでハンドルが低くシートが前下りです。

そしてそんなポジションのバイクでサーキットやスポーツ走行とは無縁な走りばかりしていると

・タンクに股をピッタリ付ける

・腕を伸ばしきってヘッピリ腰

・顎が上がってる

という間違ったポジションが身体に染み付く。

間違えたポジション

これは

・視点を確保したい(上半身を起こしたい)

・足つきを良くしたい(シート前方の絞りを利用)

・熱くキツいからニーグリップしたくない(タンクで体を支える)

という事から来ているものと思われます。

心当たりがある人は一度自分が走ってるシーンを撮って見ると想像を絶するほど変なポジションで走っている事に気付けたりします。

ポジションがキツいスポーツバイクの正しい乗車姿勢はこうです。

正しいポジション

「シート後方に座って背筋と腕を曲げて顎を引く」

上手い人達はこの下半身でホールドする正しいポジションを心得ています。

正しいポジショニング

ただし・・・このポジションでずっと公道を走るというのは色々とシンドいし乗りにくく感じるのもまた事実。

だからこのポジションでずっと走れとは言いませんが

「見られたり撮られたりする際はこのポジションを心がける」

という事を強くオススメしたいです。

正しい被写体

何故なら正しいポジションをすると見違えるほど愛車との人馬一体感が出てカッコよく見えるから。

そして

「俺はスポーツ走行を知ってるんだぜ」

というアピールになると同時にスポーツ走行を知っている人間からも

「こいつ出来るな」

と思われること間違いなしだから。

ちなみにこれは

RSV4膝スリ

「膝を擦りたいけど届く気配がない・・・」

と悩んでる人の多くにも当てはまること。

街乗りで染み付いた前乗りのまま膝を出してもまず擦れません。なぜなら前乗りというのはいま説明してきた自由なポジショニングを妨げる

『身動きが取れない乗り方』

だからです。

俗に言うハングオンはイメージとしては膝を横に出すのではなく斜め前に出すもの。

ZX-6R膝スリ

例えるならショルダータックルする感じ。

・大袈裟なほどシート後方で構えて

・大袈裟なほど腰をシートから落とし

・大袈裟なほどショルダータックル

これを意識して走れば無理膝になるかもしれないけど必ず擦れる様になる。

散々話してきたようにサーキットを視野に入れてあるスポーツバイクというのはそういう自由なポジショニングが出来るように造られているんです。

ハヤブサ膝スリ

膝を擦るという行為自体は(あくまで遊びの範疇レベルなら)想像しているほど難しい事ではなく、一度でも感覚を掴んだら次からは簡単に出来るようになります。だからこうやって偉そうに言えるわけです。

あとはハングオン攻略本なんて買わないでいいからその分のお金をサーキット走行費に充てて

峠ではなくサーキットで

練習するだけ。

このページにも言えますが読んだだけで膝を擦れる様にはなりません。

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バイク事故の原因 〜雑学編〜

『自爆による自損/単独事故』

『相手がいる対物/相互事故』

の二種類について解説してきましたが、最後にオマケとして雑学というか交通事故に関するネタをご紹介。上記を読まれてない方はそっちの方が大事なので先に読んでもらうと助かります。

その1
『ウィンカーの配置でクルマからの認識率が変わる』

バイクを発見

クルマとの事故についての解説で

「ドライバーはバイクを認識していない」

という話をしました。

バイクだけヘッドライト常灯化が義務付けられているのもこのためなんですが、更に認識してもらために編み出されたものがあります。

ということで突然ですがここでクイズ。

ウィンカーによる視認性の違いの正解

常灯ウィンカーを採用しつつも配置が違う三車種、この中で

「クルマからの認識度を上げるのに最も効果的な配置」

はABCのどれでしょう。

正解は

ウィンカーによる視認性の違いの正解

『C』

です。

これはホンダが行った検証『二輪車の発見率を向上させる灯火器配置』で判明したもの。

認識率が悪化する夜間テストでBを基準とした場合、Aだと対向車を走るドライバーからの認識率が12%低下し、Cだと12%向上した。

常灯ウィンカーの認識率についての解説

結構な違いがありますよね。

ちなみにウィンカーが常灯しない(ヘッドライトしか常灯しない)モデルの認識率はBを基準にすると23%低下とかなり悪いので該当する人は特に気をつけましょう。

それでどうしてウィンカーだけでそんなに変わるのかって話ですが、これはクルマから見た時に逆三角形だと人の顔に見えるから。

常灯ウィンカーの認識率についての解説

「そんな馬鹿な話があるか」

と思うかも知れませんが嘘みたいな本当の話。ちょっと下の写真を数秒ボーッと見てください。

目線訴求力テスト

どの写真に一番目が行きましたか・・・恐らく中段左の赤ちゃんか、右下のお婆ちゃんの写真に一番目が行ったんじゃないでしょうか。

それもそのはず人間というのはどうしても顔に一番反応してしまう習性があるんですね。そしてこの逆三角形の灯火系レイアウトはそれを応用した形だから認識率が上がるという話。

逆三角形ライト

バイク乗りからするとそうは見えないんですけど、バイクに興味がないドライバーはそこまで凝視しないから顔に見えちゃうんでしょうね。

その2
『事故を起こしやすい性格と起こしにくい性格がある』

逆三角形ライト

事故の原因はほとんどがヒューマンエラーによるもの。つまり性格にも大きく左右されるものでもある。

『若者ドライバーの性格と交通事故との関連分析』

で行われたエゴグラム(心理テスト)でどういう自我の人が事故を起こしやすいのか

・CP(理想の追求、威圧的)

・NP(優しい、過干渉)

・A(分析力、冷徹)

・FC(自由、わがまま)

・AC(素直、自主性がない)

の要素から8パターンに性格を分類し検証したところ、もっとも事故を起こしやすいタイプが判明。

逆N型

高CP:支配的で厳しい

低NP:思いやりが無い

中 A:平均的な現実主義

高FC:本能で動く

低AC:協調性が無い

逆N型と呼ばれる自己主張が強い良く言えばリーダータイプ、悪く言うと人の悪いところばかり指摘し相手を傷つける人。

そしてもう一つ。

W型

高CP:理想が高い

低NP:思いやりが無い

中A :平均的な現実主義

低FC:気分転換が下手

高AC:素直で協調的

W型と呼ばれる他人からの目や評価を気にしすぎて胃潰瘍や鬱になってしまう様な人。

この2タイプの性格の人が事故を起こしやすい。

両者の共通点はNP値が低いことで要するに

「他人への思いやりが無い人ほど事故を起こす」

という話。

これは分かりますよね、公道はみんなで使うものなんだから煽った煽られたどっちが優先だと言い合うのではなく譲り合いの精神が大事。

ちなみにNP値が高く最も運転に適した性格と言われているのはこれ。

N型

中CP:平均的な責任感や道徳心

高NP:思いやりがある

中 A :平均的な現実主義

中FC:適度な自尊心

低AC:他人に惑わされない

へ型と呼ばれ対人関係のトラブルとは無縁で付き合いもそつなくこなすけど自分をちゃんと持っている人。いわゆる出来る人ですね。

ついでにNP値が高いもう一つの性格も紹介。

N型

低CP:責任感がない

高NP:過保護過干渉

中 A:平均的な現実主義

低FC:気分転換が下手

高AC:自主性がない

自分を大した人間じゃないと思っており気分転換が下手で結構引きずってしまう様な人。これあれですよね、俗に言う

「いい人で終わってしまう人」

ですよね・・・当てはまる人が多いんじゃなかろうか。

ただ断っておくとこれはあくまで若者を対象とした検証を掻い摘んだ内容なので話半分程度に。

その3
『ネズミ捕りは怯えさせる事が目的』

ネズミ捕り

いつもどおり運転していたにも関わらず待ってましたと言わんばかりに止められて、何かと思ったら交通違反で切符を切られる・・・経験したことがある人も多いかと。

「なんで警察はコソコソ取り締まるんだ」

と思う人そしてそれを批判する人が居ますが、これにはちゃんとした理由があります。

オービス

『ドライバーの交通取締りへの関心と危険意識に関する研究』によると、ネズミ捕りを実施するとその近辺の平均車速が下がる効果が実証されています。

要するにみんな捕まりたくないから慎重に運転する様になるんですが、ここで重要となるのが捕まるパターンが

「いつも通りの運転だったのに」

という事。

人間不思議なもので交通違反をしている自覚がある時は運転に対する危機意識が物凄く高い。スピードを出している時に余所見しない事や、後ろが気になってしまうのもそういう事。

しかしネズミ捕りに捕まってしまう時というのはその危機意識の低下していた時、つまり

『無意識な交通違反』

という非常に危ない運転をしていた証なんです。

だからネズミ捕りをやる場所っていうのは捕まえやすい場所でやってるわけじゃない。

『無意識な交通違反を起こしやすい場所』

で行われる様になってる。もっと分かりやすく言うと事故の恐れがある場所や過去に事故があった場所。そういう所で実施することで運転に対する危機意識(リスクの意識)を向上させる啓発的な意味合いが強いんです。

伝聞でも危機意識がUP

ただしこれ面白い事にやり過ぎても効果がない。やり過ぎるとみんな慣れてしまって再び危機意識が低下し始める事も実証されている。

だから根こそぎ取り締まるのではなく一定の成果が上がった段階で終了するようになっています。

ネズミ捕りの心理

何処でやってるのか分からずビクビクしてしまう事・・・そして

「俺が捕まってから一度もやってるのを見ない」

というのもそういう理由なんです。

その4
『交差点に信号機がある理由』

片想い

当たり前ですが交通量の多い交差点には信号機が設置されています。

じゃあどうして信号機があるんでしょう・・・事故を防ぐためですよね。でももっと正確に言うと直角事故を防ぐためです。

クルマもバイクも運転という行為をすると、どうしても視野角が狭くなり前の方しか見えなくなる。教習所でも習いましたよね。

運転中の視野角

つまり言い換えると横方向が死角になってしまう。だから信号機が無い19世紀初頭はクルマ同士の直角事故が絶えなかった。

運転中の視野角

これを防ぐために

「運転者が前方だけ見れば済むように」

配置されたのが警察官の手信号であり自動化した信号機。

結局なにが言いたいのかというと信号無視は論外として、信号のない交差点は直角事故が当たり前だった大正時代にタイムスリップした事と同義で本当にデンジャラスだからスピードを出して駆け抜ける行為は本当に危険ですよって話。

その5
『不景気になると交通事故が減る』

不景気になると交通事故が減る

米クイーンズ大学名誉教授ジェラルド・J・S・ワイルドさんの本『交通事故はなぜなくならないのか』によると不景気になると交通事故が減るとの事。

一体なにがどうなってそうなるのかって話ですが、非常にザックリいうと第一に不景気になると時間あたりの貨幣価値が下がる。要するに成果に対する報酬が減るという事ですね。

急ぐことによるリスクとリターン

ということは時にはスピード違反や信号無視などのリスクを犯してまで時間短縮して成果を積み上げても得られるメリットが減る事になる。しかし一方でそれに伴うガソリン代や保険料そして事故の際の修理費などのリスクは景気に左右されないので増える。

急ぐことによるリスクとリターン(不景気)

つまり不景気になるとリスクとリターンのバランスが崩れ、リスクのわりに得られるメリットが少なくなるからリスクを犯す人が減ってそれが結果として交通事故の減少につながるという話。

プロボックス

という事は恐れ知らずの公道最速車として呼び声高いプロボックスの人達は景気が良いのか・・・。

その6
『「バイクは危ない」で話を終わらせる人の心理』

バイクは危ないで話を終わらせる人

これもクルマとの事故についての解説で話したのですが、バイクからすると危険な乗物はバイクを轢いてくるクルマの方。

それでもバイクとクルマが事故を起こしクルマに過失があっても世間様は

「バイクは危険だな」

としか言わない。

じゃあダンプカーなど大型車に過失がある事故でクルマのドライバーが亡くなるニュースが流れた場合はどうでしょう。

「クルマは危険だな」

ってみんな言うでしょうか・・・言わないですよね。

「ダンプカーは危険だな」

って声の方が多いでしょう。

公道ゴーカート

少し前に都心をカートで走るのが流行りました。あれが目につくようになった時

「公道カートは危険だから規制しろ」

って声が多く上がった。

その一方で話題になっている高齢者のアクセルとブレーキの踏み間違いによる暴走事故。あれが連日ニュースで流されていますがクルマを規制しろって言われてるでしょうか・・・言われてないですよね。

「高齢者から免許を取り上げろ」

という声しか聞こえない。事故を起こした人が安全なクルマを作るようインタビューで答えて炎上したのが記憶に新しいかと。

結局なにが言いたいのかっていうと

「バイクは危険な乗物」

と皆が口を揃えて言う背景には

「便利なクルマを危険な乗物と思いたくない」

という潜在的な思いがあるから。

便利な乗物

何故これがまかり通ってるのかといえばクルマが一番多くの人に使われていて手放せないものになってるから。

だからクルマを愛用しているドライバーはクルマが相手を死傷させる悲惨な交通事故を見ると

「クルマは便利な乗物」

「クルマは危険な乗物」

という矛盾から来る不快感が発生する。すると別の要素を追加し危険な乗物という要素を消すことで正当化しようとするんです。

事故の相手がバイク

バイクは体が剥き出し(追加要素)

バイクは危ない

事故の相手が自転車

自転車は軽装で無法者(追加要素)

自転車は危ない

事故の相手が大型車

大型車は堅牢で死角が多い(追加要素)

大型車は危ない

歩行者などクルマが100%悪い事故

ドライバーの属性(追加要素)

クルマではなくドライバーが危ない

これを認知的不協和といいます・・・でもそうやってクルマのドライバーが

「クルマは危険な乗物だ」

と認知することが出来ない(危機意識を高く持てない)から事故が起こるという話。

その7
『バイク乗りの片想いだから事故が起こる』

片想い

上の話の続きみたいなものですがクルマとバイクの悲惨な事故を減らす手っ取り早い方法があります。

『普通(自動車)免許に二輪免許を付帯(教習を義務付ける)』

という方法です。

実は公道のバイク率が増えるほどバイクでの死者割合って減るんです。

ドイツの125事故

これは自動車免許を取得して一定期間経った人に125ccまでのバイクを乗れる様に規制緩和したドイツの例。

バイクが死傷事故を起こす相手は基本的にクルマだという話を覚えているでしょうか。つまりクルマが減ればそれだけバイク対クルマの事故が減るということ。

しかし大事なのはもう一つの要素。

「バイクを理解するクルマ乗りが増えたから」

ドイツの125事故

だから規制緩和で新参ライダーが増えたにも関わらず減った。

これ日本でも既にその傾向があるって知ってましたか。経済性の高さと小型AT限定免許の教習時限が緩和されたことで原付二種がクラスで唯一安定して右肩上がりしている。小型限定免許の所有者はここ10年で6倍ほどにまで増えています。

日本における125ccの死傷者数

にも関わらずこの通り死者数は増えておらず毎年150人前後で推移している。

普通免許に付帯するのが手っ取り早いのはこの流れを更に大きくすることが出来るからという話。

ちなみにクルマしか乗らない人はバイクが町中に溢れることを良く思わないかもしれませんが実はそれちょっと安直。

バイクというのはエンジンに跨って乗る小さい乗物なので公道の占有率が低い。つまりバイクが増えれば増えるほど渋滞が緩和されるんです。

渋滞の関係

欧州が125ccを緩和した狙いもこれ。だからクルマにしか乗らないと考えている人ほど実はバイクを(自分以外に)推し進める方が理に適っていたりする。

話が散らかって来た感もあるので二輪免許の付帯は置いておくとしても、バイクとクルマの事故が絶えないのはバイク乗りの片想いでクルマ乗りが振り向いてくれないから。

相思相愛の関係

この片想いを改善する事が、互いのことを思いやれる相思相愛の関係を築く事がクルマとバイクの事故を無くす上で非常に大事な事なんです。

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~認定型式と通称型式~

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エンジンオイルの劣化は色や粘度では分からない~規格・添加剤・劣化など~

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バイク事故の原因 ~対車両・相互事故編~

対車両・相互事故

バイクで事故は大まかに分けて

・自爆による自損/単独事故

・相手がいる対物/相互事故

の二種類があり、今回は相手がいる対物/相互事故について。

※参照:警察庁事故統計|交通事故総合分析センター

『バイク事故の原因~自損・単独事故編~』について先に書いたんですが、バイク乗りで気をつけなければいけないのはどちらかといえばこっち。何故ならバイク乗りが亡くなってしまう原因の大部分を占めるのはこっちの事故だから。

世間ではよくバイク事故が報道されると

「バイクは危ないなー」

なんて言われますよね。じゃあなんでバイクは危ない乗物なんでしょう。

「身体が剥き出しだから」

「自立せず転倒するから」

それはちょっと間違い。バイクが危ないと言われる理由は混走だから・・・もっとストレートにいうと

「クルマに挟まれたり轢かれたりするから」

です。

ライダーが亡くなってしまう二輪車事故のうち車両相互(相手がいる)事故の割合は約68%もあり、そして車両の内訳は約85%が四輪車。

対車両の割合

だから少し文句のような事を言わせてもらうと

「バイクは危ない乗物だ」

と言う資格があるのはバイク乗りだけでクルマにしか乗らない人にはない。何故ならバイクから見ると本当に危ない乗物は自分を轢いてくるクルマであり、クルマは事故のリスクをバイクに一方的に押し付けてる形だから。

何故そう言い切れるのかっていうとバイクとクルマによる死傷事故においてバイク側の人間は実に70%が第二当事者だから。

二輪と四輪の過失割合

第二当事者というのは事故の過失が小さい方。つまりバイク乗りは貰い事故ばかりで亡くなっているという事。

こう言うと

「バイクの方が交通弱者だから過失が小さいのでは」

と思うかも知れませんがそうじゃない。確かにバイク乗りが事故の際に検査だけだろうと病院に行くと対物事故から対人事故に切り替わるため過失が1ほどクルマの方に行くわけですが、そもそもバイクとクルマの事故においてバイクは

「ただ直進していただけ」

という場合が大半なんです。

具体的にどういう事故があるのかというとバイクとクルマの事故で最も多いのは

『出会い頭事故』

出会い頭

駐車場や脇道などから合流する際に本線を走っていたバイクとぶつかってしまう事故で二輪事故に占める割合は全体の約30%、死者割合は約32%。

その次に多いのが

『右折事故』

右折事故

右折車が間に合っておらず直進してくるバイクとぶつかってしまう右直事故とも呼ばれるもので二輪事故に占める割合は全体の約19%、死者割合は約24%。

バイクとクルマの事故はこの二つが大部分を占めています。

どうしてこれが危ないのかといえば単純にバイク乗りからするとこれらは

「壁に激突するようなものだから」

です。

目の前にいきなり1トン越えの壁が現れるようなものだから大惨事となる。事故時の衝突部位もバイクは正面衝突が最多です。

ちなみにクルマ同士の場合は追突が最多で約58%ですが、相手がバイクだと追突は約8%しかない・・・どれだけバイクとの出会い頭や右折事故が多いか分かるかと思います。

じゃあなんでバイクになるとそうなるのかって話ですがこれは

「四輪ドライバーの安全確認が不十分だったから」

というのが理由。

四輪の判断ミス

「ドラレコ付けて被害者前提の運転する前に安全確認しろ」

と声を荒げたい所ですが、そう言ったところで痛い目を見るのはバイクの方。だから自己防衛をしなきゃいけないのが現実。

じゃあクルマとの事故を防ぐためにどうすればいいか。

ドライバーの理解

「なぜドライバーはそうしてしまうのか」

という事を理解するのが最も効果的ですよね。

恐らくバイク乗りなら誰しもが無理やり割り込んだり横切ったりするクルマにヒヤリとした経験があると思います。

ヒヤリとする右折

なんかクルマよりバイクに乗ってる時の方がそういうの多い気がしませんか・・・実はそれ気のせいじゃないんです。

『直進二輪車に対向する右折車運転者の認知判断及びギャップ利用特性|土木計画学研究』

によると右折待ちのクルマが

A.対向車がクルマ

B.対向車がバイク

で右折を決断するタイミングを検証したところ

「対向車がバイクの場合、右折の決断する許容間隔が50%短い」

という結果が出たんです。

簡単に言うと対向車がクルマだったら右折してこない距離でも対向車がバイクだったら右折を決断するドライバーが多いという事。

ギリギリだった自覚は無い

しかも最悪な事に間一髪な右折だったとしてもドライバーは

「余裕を持った右折だった」

と勘違いしているっていうオマケ付き。

この強引な割り込みについて教習所などで

「バイクは小さいから遠くに見えるんだよ」

って習った人も多いかと思いますが・・・そう単純な話じゃない。どうしてバイクが割り込まれやすいのかというと途中であげたように

『発見の遅れ』

が第一にある。

発見の遅れというと優しい感じがしますが、要するにバイクを見落としていたという事。これも上記の検証論文で分かった事なんですが右折待ちのドライバーは

「2/3以上が50m先のバイクを認識出来ていない」

という事が分かった。

ドライバーのバイクへの認識

驚愕の事実ですよね。

僅か50mですよ、50mといえば白線5本分、時速60kmで走っていたら僅か3秒の距離。しかも検証では中央分離帯に敷居や木々などの死角が無い対向二車線でやってこの結果だった。

この原因はドライバーが対向車よりも曲がる先の方を注視するから。

ドライバーの目線

だからクルマよりも小さいバイクを見落としてしまうというわけ。

ただし事故の要因はまだある。

事故ニュースで当事者が稀に

「間に合うと思った」

などと供述していたりしますよね、認知していたにも関わらず何故か強引な割り込みをして事故を起こしてしまう。

この原因はクルマのドライバーが相手との間隔を『距離』で測るから。対してバイク乗りは相手との間隔を『速度』で測っている。

つまり認識していた1/3以下の人ですら

クルマ「まだ遠いから行けるな」

と判断しバイクが何キロ出ているか考えず侵入してしまう。そしてバイク乗りも

バイク「60km/h出してるし来ないだろう」

と考えてしまうからミスマッチによって事故となってしまう。

間隔のミスマッチ

これが二番目に多い『判断の誤り』の正体なんです。

長々と話してきましたが以上の事を踏まえて要点をまとめると

・事故の大多数は交差点の出会い頭か右折

・50m先に居るドライバーはコチラを認識していない

・来るか来ないかを速度で判断してはいけない

これを頭に叩き込んでおけば対車両・相互事故(対四輪事故)のリスクを間違いなく減らせるかと。

もっと極端で単純に言うならば、右折や合流をしたがっているクルマを見かけたらコチラが見えていない前提で運転する事。

最後におさらいを兼ねて一つ問題。

「どんな運転をすると四輪との事故を起こしやすいでしょうか」

簡単ですかね・・・そう、信号ダッシュを始めとした先頭を突っ走る行為です。

信号ダッシュの危険性

すり抜けや信号の変わり目で前が空くとバイクは加速性能が良いので加速したくなりますが、それは事故を誘発する非常に危険な運転。

何故なら合流したがっているドライバーや右折待ちのドライバーは突っ走って来るバイクが見えていないし、見えていたとしても速度ではなく距離で間隔を測っていて読み間違えているからです。

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事故は大まかに分けて

・自分だけの自損/単独事故

・相手がいる対物/相互事故

の二種類に分けられますが、今回は自損/単独事故の原因と対策について(特に)初心者の方に向けたページ。

初心者が起こしがちな自損/単独事故の大半はブレーキに起因する転倒だと思います。

代表的なのがパニックブレーキ(急ブレーキ)でフロントタイヤをロックさせ転倒してしまう『握りごけ』というやつ。

ブレーキロック

なんで急ブレーキをかけるとロックしてしまうのか簡単にいうと

「バイクが止まる体勢に入ってないのに強いブレーキを掛けたから」

です。

ブレーキを掛けて止まる時に大事になるのはよく言われる”荷重”というやつ。

普通に止まる時はいきなりブレーキを強く握ったりしないですよね。これはブレーキを徐々に握る事で荷重をフロントに寄せていき、フロントタイヤを地面に押し付けグリップ力を稼ぐことで初めて強力なブレーキが出来る事を体感で分かっているから。

ブレーキをかけると

1.ブレーキを掛ける

2.フロントが沈む

3.タイヤが押し付けられてグリップが増す

4.ブレーキが効く

という流れ。

ところが急ブレーキだと荷重が寄っていない状態からフロントに強烈なブレーキを掛けて止めようとしてしまうからロックして転倒してしまうという話。

これに関連する事として

「ロックはしなかったけど止まったと同時にバランスを崩して転倒した」

というパターン。

これはフロントブレーキを強く掛けて止まった事で勢いよく沈んだフロントフォークが勢いよく戻るから。

フロントブレーキで止まると跳ねる

「最後はリアブレーキで止まりましょう」

と立ちごけ攻略本などで言われるのもこれが理由で”ボヨン”とフロントが跳ねるのを抑える狙いがあるんです。

前後ブレーキのバランス

ただし誤解してはいけないのはリアブレーキを強く多用すればいいという話ではない事。

さっきも言ったようにブレーキを掛けると荷重がフロントに寄るという事は、言い換えるとリアの荷重が減るという事でもある。つまり強烈なブレーキングをするほどリアブレーキの限界は下がるんです。

急制動でリアだけロックさせてしまった経験がある人は多いと思いますが、それは

「リアブレーキを強く掛けすぎたから」

ではなく、ブレーキを強く掛けた事で

「リア荷重(グリップ力)が通常より落ちたから」

ということ。

前後ブレーキのバランス

この図はそれを怒られそうなほど簡単に現したもの。減速Gによって許容範囲が変わることや、路面が悪いほどブレーキを強く掛けられないのが分かるかと思います。

ちなみにこれはアクセルも一緒で荷重を無視して乱暴に開けたらスリップする。速い人というとアクセルもブレーキもガンガン出来る人と思うかもしれないけどそうではなく、速い人というのは非常に繊細なアクセルやブレーキ操作が出来るから速いんです。

アクセルワーク

脱線してしまいましたがまあ小難しい話は抜きにして要するにブレーキは

『路面が良い場合はフロント8:リア2』

『路面が悪い場合はフロント6:リア4』

と覚えておきましょう。

※クルーザーやスクーターなどリアヘビーなバイクはもっとリア重視

しかし・・・

「繊細にやる時間が無いからパニックブレーキなんだろ」

と言われると返す言葉もなく

「パニックブレーキを防ぎたいならゆとりある運転を」

という至極当然な事しか言えないんですが、一つだけ役に立ちそうな情報がありました。

『制動行動におけるドライバの心拍数変化』というホンダが四輪の方で試した検証資料があったんですが、それを本当にザックリ応用するとパニックブレーキの確率を抑える効果がある行動として

ブレーキに備える

『常にブレーキを掛けられる状態にしておく』

という方法が使えるかと。

要するにブレーキを構えていればパニックを起こして咄嗟にブレーキを思い切り握ってしまう危険性を減らすことが出来るという事。

だからイレギュラーな事が起こりそうな時は

『指を1~2本ブレーキレバーに添えておく』

という行為をすれば少しはパニックブレーキを起こす確率を減らせるかと思います。

コーナリング

「なんで1~2本なの4本でしっかり添えてた方が良いんじゃないの」

と初心者の人は思うでしょう。

教習所でブレーキをする時は4本でしっかり握れと習うから・・・でもそれがもう一つの代表的な自損事故である

『曲がれず壁に激突』

に関係します。

ワインディングロードでのブレーキ

コーナーなのに全く曲がろうとせず一直線に壁に向かってしまい転倒。一般の人からすると理解出来ない行動だけどバイク乗りからしたら凄く分かる一種の金縛りのような事故。

どうしてあれが起こるのかというと『医学でコーナリングを極める:BikeBros』に面白い分析があったのでザックリ言うと、一つはGを受ける事で三半規管が錯誤し平衡感覚を失ってしまうから。

コーナリング

『空間失調症』

という戦闘機などで有名な状態に陥ってしまうから身体を傾けないといけないのに傾ける事ができずにああなってしまう。加速では起こらず減速でのみ起こるのは減速Gの方が何倍も強烈だから。

それと合わせて金縛りの要因になり得るのが最初に言ったブレーキレバーを四本指で、要するにグーで握ってしまう行為。

ブレーキレバーの握り方

バイクというのは極論するとライダーが余計な事をしない限り目線を向けた方向へ素直に曲がってくれる乗物。

しかし4本指で思い切り握ってしまうブレーキングをしてしまうと、腕にも力が入ってしまい曲がろうとするハンドルを抑えつけてしまうんです。

これが結果として

『曲がりたくても曲げられない状況』

を起こしてしまってるというわけ。

手をグーにした時とチョキにした時どっちが腕に力が入っていないか自分で試してみれば一目瞭然かと思います。

ブレーキレバーの握り方

加えてグーでブレーキを握ってしまうと支点が無いためブレーキの強弱を付けるのが難しく、硬直だけでなくロックを誘発してしまうという面もある。握りごけ対策で指を1~2本と言ったのもこのため。

ブレーキレバーもそういう操作を前提にした形になってますしね。

ブレーキレバーの形

だからレーサーなんかを見ると分かりますがグーでブレーキを握るのはロッシくらい。そのロッシですら最近は2本指に変えたりしているようですが。

まとめというか締めというか・・・

まだ経験の浅い初心者の人に事故に関するアドバイスで出来る事があるとするなら、ワインディングを駆け抜ける時や見通しが悪い場所を走る時など緊張を強いられる場面では

ブレーキレバー1本がけ

「ブレーキレバーに指を1~2本添えて、握るのでなく引くようにブレーキを掛ける」

という事を心掛ければ握りごけや金縛りの危険がほんの少しかもしれないけど改善するよという話・・・ただやってみる場合は必ずブレーキの遊びの調節と確認をやってから慎重に挑戦しましょう。慣れるまではブレーキ出来なかったり違和感があると思うので。

あと最後になりますが事故を起こさない運転で最も確実なのは

「スピードを出しすぎず、よそ見もしない」

という事もお忘れなく。それと迷ったら多少高くてもABS付きを買いましょう。

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リザーバータンクは高性能の証 ~リアサスペンションの構造~

リザーブタンク付きサスペンション

第十二回目はリアサスペンション・・・というかリザーバータンク付きリアサスペンションについて。

今どきは二本サスにしろ一本サスにしろ筒状のサブタンクが付いている物が多いですよね。

リアサスペンション

誇らしげに社名が入っているリザーバータンクが付いているだけで何だか高性能なサスペンションというイメージを持つと思います。

実際それは正しくてリザーバータンクというのは高性能なサスペンションの証みたいなものです。

オーリンズ製リザーブタンク付きサスペンション

では何故コレがあるのか、何故コレが高性能の証なのかリアサスペンションの構造から物凄くザックリと説明。

サスペンションは伸び縮みする事で乗り心地や路面追従性を向上させているわけですが、一重にリアサスペンションといっても『スプリング』と『ダンパー』があります。

リアサスペンションの分類

そして実際に伸び縮みする皆が思うリアサスペンションの役割というのはスプリングが担っているわけですね。

ただし、スプリングというのは跳ね出すといつまでもビョンビョンと跳ね続ける。

スプリングとダンパー

そこでそのスプリングの跳ねを良い感じに収束させるのが同じ様にストロークするダンパーの役割。

ここまでは何となく分かる人も多いかと。

そんなダンパーの中にはオイルとガスが入っており、その中にはピストンがあります。

リアサスペンションの構造

このピストンにはオリフィスと呼ばれる小さな穴が空いていて、スプリングの伸縮と同じ様にこのピストンが上下する事で穴をオイルが通る様になっています。

そしてオイルが通る際に発生する抵抗が跳ね続ける(ダンパーから見ると上下に動き続けようとする)スプリングを落ち着かせている。

『減衰力』って聞いたことがあると思いますがそれです。

ダンピングフォース

お風呂を混ぜようと動かしたら重くなるのと同じような原理。

これがダンパーの仕組み・・・物凄くザックリですが。

「じゃあリザーバータンクは何のためにあるのか」

って話になるんですが、それは上の図のようなシンプルな構造では問題があったから。

最も大きな問題が

『キャビテーション』

です。

キャビテーションというのは早い話が低圧になることでオイル内に気泡が発生してしまう現象の事。

キャビテーション

炭酸飲料の蓋を開けたら急にシュワシュワと泡立つのと同じ様な現象。

キャビテーションによって発生する気泡は空気なのでオリフィスを通っても減衰力にならない、それはつまりダンパーの役割を果たせないという事。

だからピストンには低圧にならない様にワンウェイの通り道が設けられています。

チェックバルブ

「これだと縮む時は減衰力を稼げないのでは」

と思いますが正にその通りでこの状態では縮む時は減衰力が働かない。

そこで新たに考えられたのが『ツインチューブ式(複筒式)』と呼ばれているサスペンション。

複筒式サスペンション

こうすることでオイルの圧力を保ちつつ伸縮それぞれで減衰力を発生させる事が出来るようになった。

これで万事解決・・・かと思いきやコレでもまだ問題はあった。

一つは容量の問題。

複筒式にすると単筒式に比べ有効容量がどうしても少なくなってしまう。

複筒式のスペース

つまりオイル容量の減少による熱(熱ダレ)への弱さ、ピストン径の小径化による伸縮時の応答性の悪化などの問題があったんです。

そしてもう一つは『エアレーション』というやつ。

エアレーション

これはダンパー内のオイルと空気が、振動やロール・ピッチ・ヨーなどの動きでシェイクされる事によりオイル内に気泡が発生してしまう現象。

キャビテーションと同じ様にダンパーとしての役割を果たせなくなってしまう。車ならまだしも動きも熱も激しいバイクならではの問題。

そんな中でド・カルボンという偉い博士が1953年に閃きました。

「単筒でオイル室とガス室を仕切ればいい」

デ・カルボン式

オイル室とガス室の間に敷居のようなフリーピストンを設ける方法を思いついたわけです。

こうすれば単筒式の武器である有効容量を確保しつつ、空気と油が混じってしまうエアレーションも圧力差によって発生するキャビテーションも防ぐことが出来る。

デ・カルボン式フロー

ついでに仕切ってあるから上下左右どうつけても大丈夫。

「低圧によって発生するキャビテーションはどうしてるの」

と拙い文章ながら理解した人は思うかもしれませんが、それを防ぐためにガス室には高圧(窒素)ガスを封入しています。

高圧ガス

こうしてダンパー内の圧力を最初から高い状態にしておく事でキャビテーションを防いでいる。

「サスには高圧ガスが入っている」

と言われる際のガスとはこの事で

「サスが抜けた」

と言われるのはこの高圧を封入しているシールが圧力に負けて抜けてしまった事を表しているわけです。

シール

ついでに言うと、一昔前のバイクのリアサスがオーバーホール不可なのは圧力に耐えられるシールが無く溶接で封入していたから。

何がともあれこれで問題は解決・・・ってリザーバータンクはどうしたって話ですね。

仕切りを設けることでキャビテーションもエアレーションも、そして更には取付角度の問題も解決したド・カルボン式でしたが、一方で新たなデメリットがありました。

それは横の容量は稼げても縦の容量(ストローク)が稼げない事です。

複筒式と単筒式

ガス室とフリーピストンを設ける必要がある事からストロークを稼げないんです。

全長に対してストロークを稼げないとなると乗り心地や足つきの悪化に繋がってしまう・・・そこでどうしたか。

ここまで来ればピンと来た人も多いでしょう。

リザーブタンクのメリット

ガス室とフリーピストンを別に設ければいい。

こうすれば縦の容量も稼ぐことが出来る。リザーバータンクというのはこのためにあるんです。

こうして数々の問題を解消しただけでなく、弱点をも克服したリアサスペンションがリザーバータンク付きド・カルボン式。

SHOWAリアクッション

「リザーバータンクは高性能の証」

と言える理由はここにあるわけです。

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~リアサスペンションの構造~

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バイク事故の原因~雑学編~

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コールドスタートでエンジン回転数が上がる理由~ファストアイドルの必要性~

第二十一回
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~ファストアイドルの必要性~

車名に続く記号(型式)について~認定型式と通称型式~

型式について

第五回目は車名に続く記号について。よく考えたら説明していませんでした。

息の長いバイクに乗っている人ほどバイクを車名ではなく記号で呼ぶようになります。

これは型式といって車種に割り振られている識別コードの様なもので、どうしてこれを使うかというと型式を言えば一発でどの年式のどのバイクか分かるから。

※今現在使われている型式についてなので古いバイクは当てはまらない場合があります

ヤマハのYZF-R1を例に説明します。

R1の型式

例えば2007年式YZF-R1(4C8)に乗っているオーナーが他のYZF-R1乗りに

「YZF-R1に乗っているよ」

と言ってもどの年式のR1に乗っているか分かりませんよね。

ところが

「4C8に乗っているよ」

と言えば一発でどのYZF-R1か分かる。

「年式を言えば済むのでは?」

と思うかもしれませんが、そうすると今度はグレードが分からない。

2015~のR1はR1とMモデルがありますね。

だから”2015年式のR1″と言ってもノーマルなのかMなのか区別が付かないというわけ。

※これには色々と誤解や注意があります。

というのもこの記事を書くキッカケになったのは

「系譜さん型式を間違えていますよ、正しくはXXX(公式参照)です。」

というご指摘をいただくようになったからです。例としてYZF-R25を挙げてみましょう。

R25の型式

公式ではRG10Jと書かれています。

ところがバイクの系譜では1WD/2WDと書いてある。車検証にも1WD/2WDとは書かれていない。

となるとバイクの系譜が間違っていると思うのも当然な話です。実際よく打ち間違えていますからね。でもコレは両方間違いではないんです。

ヤマハが公式に書いているRG10Jという型式は認定型式といって、市販するにあたり国土交通省(政府)向けに用意した型式。フレームに刻印されるのもこの型式です。

ちなみに頭文字三文字のJBKというのは

『いつの規制で取得した型式か』

という事を表す型式。

2012年の第二次排ガス規制で型式認可された軽二輪(125cc超250cc以下)はJBK-認定型式、小型二輪(251cc以上)ならEBL-認定型式となる。

排ガス規制による認定型式

2016年の第三次規制に対応した軽二輪(125cc超250cc以下)は2BK-認定型式、小型二輪(251cc以上)なら2BL-認定型式となります。

そしてこの型式というのは一度取得すると大きく変更しない限りはそのまま使えます。

例えばYZF-R25がマイナーチェンジしたとします。消費者から見たら大変貌に見えても、メーカーや国土交通省が変わっていないと認識した場合わざわざ再び型式を貰いに試験を行う必要が無いんです。

これはメーカーや国土交通省の費用や手間を省くため。少し変わる度に全試験なんてやっていたら大変ですから。

しかしこれで問題となるのがモデル管理。

例えば

「RG10J(認定型式)の補修部品が欲しい」

と言われてもこれでは何年の何色のR25の補修部品が欲しいのか分からない。

要するにメーカーや消費者にとってのモデルチェンジと、国土交通省にとってのモデルチェンジにズレが生じる。

型式のズレ

そこでヤマハは”年式・グレード・仕様地・色”等が一発で分かる

『通称型式(モデルコード)』

という公認型式とは別の型式を設けています。それがR25/R3でいえば1WD/2WDというわけ。

つまりいま説明したように仮にR25がモデルチェンジした場合、公認型式はRG10Jのままの可能性はあっても、通称型式は区別するために間違いなく変わる(変える)という事です。

本当はこの三文字の後に2WD1等もう一つ文字が付きます。

これは色を表すコードなんですが、流石に全色全コード覚えている人は居ない事からかオーナー間では省略されるようになりました。

ちなみにこのアルファベット三文字(または四文字)に意味は無く、順番に1~Zまでを順番に振っているだけですが、色を表す末尾コードをZ(例えば2WDZ)まで使った場合、全く新しい通称型式が振られます。

なので必ずしも通称型式が変わったからモデルチェンジというわけではありません。

※YZF-R1(14B~2SG)等

じゃあ他のメーカーはどうか、まずはカワサキからZX-10Rを例に見てみましょう。

カワサキの型式

カワサキもモデルチェンジの度に国土交通省向けの認定型式(ZXT00C等)とは別に通称型式を振っているわけですが、ヤマハと違い通称型式に決まりがあります。

例えばZX-10R(ZX1000D)の場合、Zは四気筒、Xはフルカウル、1000は排気量クラス、Dはアルファベット順で4つ目のZX1000(四気筒フルカウル1000cc)という意味。

これがNinja650/Z650になるとEX650J/ER650Gになります。

カワサキの型式2

Eは二気筒、Ninja650はカウルが有るのでX、Z650は無いのでR、650は排気量クラス、Jはアルファベット順で10つ目、Gは7つ目という意味。

本当はこの下にイヤーコードが付きます。

2006年式ZX-10RならZX1000D6、2007年式ならZX1000D7、2010年からはZX1000JAなどなど。

だから前期後期という分け方は本当は正しくないんだけど、まあ分かりやすい様にという事で・・・ちなみにカラーコードは含まれていません。

比較的分かりやすい事からオーナー間ではE型やJ型などナンバリングにあたる末尾アルファベット一つを取って言っている人が多いですね。

次はスズキの場合。

簡単なんですが、これまた色々と説明しないといけない事があります。

スズキの型式

基本的にK1やK7等のナンバリングが付いているだけなので最も分かりやすい。

Kというのは2000年代、Lは2010年代と言う意味。K3なら2003年モデル、L2なら2012年モデルという具合。

アルファベット順なので2020年モデルはM0という事になります。

ただしスズキは一部の車種に違う機種名を設けています。そのせいで混乱を招いたのがGSX250Sとコブラ。

通称名(車名)機種名(コード)認定型式
COBRAGSX250SGJ73A
GSX250S 刀GSX250SSGJ76A

この事からGSX250Sがコブラなのかカタナなのか混乱する人が出ました。

ただしどちらも車名と思って言っているのでGSX250S(車名)といえばカタナになります。

これは車名に名詞が入っていたからで、アドレスV125やバンディット1250FなどもUZ125やGSX1250FAという機種名を別に用意されています。

ちなみに2000年代まではA~Yというアルファベットでした。上の250カタナで例えるなら91年式はGSX250SSM、92年式はGSX250SSNという感じです。

話を現代に戻すとGSX-R1000で言うなら2005年式ならGSX-R1000K5、2017年式GSX-R1000AならGSX-R1000AL7、GSX-R1000RならGSX-R1000RL7となります。単純明快ですね。

ただカワサキでも言える事ですが、

「L5に乗っている、E型に乗っている」

と末尾だけを言っても、年や何代目かというだけで肝心の車名が全く分からないので注意しましょう。

小話ですが、これ系譜を書く上でも実は凄く困っている事なんです。例えばタイトルにK9と書いても本当はK9なんて型式じゃないから。

かといって

「GSX-R1000-Since2009-(GSX-R1000K9/L0/L1)」

と書くと重複しているみたいですよね。

本当はGT78Aといった認定型式を書いた方が良いのかもしれませんが、系譜が長いと被りが生まれてします。

GSX1100S KATANAなんて20年間のモデル全部GS110Xですからね。その後に続くフレームナンバーで分けろと言われそうですが、それだと本当にマニアにしか伝わらない。

しかもこの認定型式というのはメーカー問わず仕様地によって変わってくるので、逆輸入車などは特に一概に全てがコレとは言えない難しさがある。

気を取り直して最後はホンダ・・・ホンダを最後に持ってきたのはちゃんと訳があります。

ホンダのバイク乗りは一番型式で呼ぶ人が多いイメージですね。RC30やSC59やNC42など聞いたことがあると思います。

RC30は公認型式

が、実は皆が言っているその型式というは国土交通省用の公認型式なんです。

だから他の三メーカーと違って車検証にもバッチリ記載されています。

CBR1000RRを例に挙げてみましょう。

CBR1000RRは2004年モデルはSC57ですが、2006年モデルもSC57です。

つまりSC57だけではモデルチェンジ前のSC57なのか、モデルチェンジした後のSC57なのか正確には分からず管理できませんよね。

ホンダの型式

じゃあどうやって把握しているかというと・・・実はスズキとほとんど一緒なんです。

04年式はCBR1000RR4、09年式はCBR1000RR9

10年式からはアルファベットになりCBR1000RRA

12年式のABS付きはRの代わりにAが入ってCBR1000RAC

14年式のSPはRの代わりにSが入ってCBR1000SAE、15年式はSAF

という具合です。聞きなれないと思います。

認定型式

ちなみに1994年式CBR900RRはCBR900RRRで綺麗なトリプルアール・・・だからなんだって話ですが。

ここまで認定型式が広まったのはホンダ自身も認定型式を宣伝に使ったりしたからでしょう。

RC

VTR1000SPなんて認定型式はSC45なのにアメリカではRC51を名乗ってましたし。

ホンダは認定型式がそのままモデルコードとして認知(誤解)される様になった事で、結果として型式が変わらないモデルチェンジが多くなり前期・中期・後期という呼ばれ方をすることが多くなったというわけです。

だいぶ長くなってしまいましたが、以上が型式に関する話になります。

「結局どう呼べばいいの?」

と思われるならとりあえずサイトの横に書いてある型式を言っておけば大丈夫かと。

「本当のコードはこうだ」

と世論に歯向かって正す必要も無いと思いますし、無理して型式で言う必要もないです。

本来これらの通称型式やモデルコードというのは我々ライダーの為ではなくバイクを管理する人達の為にあるコードですから。

どのバイクを指してるのか伝われば言い方なんて何でもいいんですよ。

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簡単だからこそ要注意 日常メンテナンス

メンテナンス

第四回目は日常のメンテナンスについて。

バイクというのは(車もそうですが)乗り方こそ教習所で学べますが、日常のメンテナンスについては教えてもらえませんよね。

こまめにバイク屋へ点検に出すのが一番確実ですが、懐事情を考えると難しいのが現実。

そこで自分で出来るメンテナンスと注意点を書いていきます。

が、まず初心者の方が第一に頭に叩き込んでおかなければいけない事があります。それは・・・

「締め過ぎは駄目」

ということ。専門用語でオーバートルクといいます。太いネジから細いネジまで締め付ける部品というのはコレが決まっています。

締め過ぎるとどうなるかというとネジ穴が馬鹿になったり、締め付けられる側の部品を壊してしまったりしてしまう。

締め付けられる側というのは基本的に大きい部品だったり、換えが効きにくいor換える事を想定していない部品の場合が多いので高く付きます。

どれくらいの力で締めればいいのかはサービスマニュアルを読むか、やってく内にネジ(ボルト)の頭のサイズでおおよそ判別が付くようになります。

まあとにかく初心者の方は

・両手で思いっきり締める

・体重を乗せて締める

といった締め方をしては”駄目”と覚えておきましょう。締め過ぎは駄目だと頭に入れておけばそこまで神経質になる必要はありません。

思いっきり締めていいのはアクスルシャフトくらいです。

アクスルシャフトというのはホイールを固定している太い鉄の棒です。正確にはこれも締め過ぎは駄目なんですが、100~150N・mとかなり高めで実質的に結構力を入れて締めないといけないので。

まあそんな事より日常でやれるメンテナンスと注意点を挙げていきましょう。

1.チェーンメンテナンス

チェーンメンテナンス

恐らく誰もが一度はやるだろうチェーンのクリーニング&注油というメンテナンス。

「バイク豆知識:チェーンはチューンでチャーン」でも言っていますが、エンジンが生む動力で走る上で最もフリクションロス(動力ロス)の大きい部分なのでチェーンの状態次第で馬力が10%前後も違ったりします。

【手順】

1:クリーナーを掛ける(できれば走行後)

2:チェーンブラシ(真鍮ブラシは絶対ダメ)で軽く磨き拭き取る

3:チェーンルブを掛けて拭き取る(できればその後は放置)

という簡単かつ効果が絶大なメンテナンス。

【注意点1】危ない事を理解する

スタンドで上げてやる場合は絶対に回しながら磨いたり拭いたりせず、進行方向と反対にタイヤを回すこと。

チェーンメンテナンス方法

何故かというとチェーンとスプロケットに指を挟む恐れがあるから。

これ本当に気を付けてください。手で回す程度の速さでも最悪の場合、指を無くす恐れがあります。

【注意点2】こまめに見ないならクリーナーはNG

今時のチェーンというのはほぼシールチェーンです。シールチェーンというのは削れる部分に予めグリスを注入しシールで密閉しているタイプ。つまりシールチェーンの寿命というのはシールの寿命といえるわけです。

シールチェーン

そしてチェーンクリーナーというのはそのシールが破れないように保護している油膜を少なからず落とします。

系譜でも言っていますが”チェーンメンテ大事” “チェーンメンテは絶対にしろ”と言われているのを見てクリーナーとルブを買ってやったはいいもの、数回やったきりで乗りっぱなし等にした場合アッという間に油膜が切れてチェーンの寿命を延ばすどころか縮めてしまうハメになる。

だからもしズボラで500~1000km毎にキッチリチェーンメンテを出来ないと思うならクリーナーはあまり使わない方がいいです。ルブだけ振って拭き取るようにした方が少なくとも悪影響は少ない。それすら面倒ならドライタイプのチェーンルブを振りましょう。

チェーンメンテで検索すると

・最初に付いているグリスを綺麗に落としてルブを塗り直す人

・灯油をクリーナー代わりに使う人

・エンジンオイルをルブの代わりに使う人

といった事をしている人がいますが、こういった行為をする人は常にチェーンに気を配りメンテナンスを怠らない上級者です。ズボラメンテなのに真似をしないように。

2.洗車

洗車

これも絶対に一度はするでしょう。異常のある部分を見つけるキッカケにもなることからメンテナンスの一つとして捉えられています。

基本中の基本ですね。ちなみにチェーンメンテするなら洗車を済ませてからしましょう。

【手順】

1:水を掛ける

2:洗剤つけて洗う

3:拭き取る

4:場合によって磨く

当たり前ですね。

【注意点1】いきなりゴシゴシ洗わない

最初に水でよく洗わないままゴシゴシ磨くというのは表面に付いている見えない小石を車体に擦り付けてる事と同義で傷が付きます。

わかってると思いますが磨く手順も上の方から。できればカウル等の外装を洗うスポンジと油が付着していたりするホイールやエンジンカバー等の下回りのスポンジは分けましょう。理由は今言った事と同じです。

【注意点2】洗うタイミングに気をつける

絶対にしてはいけないのが走行後の洗車。これはバイクがまだ熱い状態だから。そんな状態で水を掛けるとエンジンを始めとした各部に収縮差が生まれ凄く痛みます。

場合によっては塗装表面が剥離や溶解蒸発を起こしマダラになったり剥がれたりといった事にも繋がります。

これは走行前の洗車にも言えること。濡れたままの状態で走り出すのは止めましょう。

【注意点3】磨いてはいけない部分がある

洗車用品の中にはコンパウンド、またはコンパウンド入りワックスというシャンプーとは別に外装に艶を出す為の用品、人間で言えばトリートメントの様なものがあります。

これはシャンプーで綺麗にした後、綺麗で柔らかい布などで擦るように塗る事でテカテカになるわけです。

シャンプーで汚れを落とす

コンパウンドで下地を作る

ワックスで仕上げる

コンパウンドというのは簡単に言うと塗装の表面を軽く削って慣らす研磨剤。線キズなど簡単なキズならコンパウンドで磨く事で見えなくなります。(周りを削る事で傷を消す)

クルマ用の物で大丈夫なのですが、バイクの場合クルマと違って絶対にコンパウンドを掛けてはいけない部分があります。

まず一つ目はスクリーン。

スクリーン

スクリーンをコンパウンドで磨くと、研磨剤なので小傷だらけとなり曇った様になります。こうなると素人には修復不可なので買い換えるしかありません。

もう一つはマット(艶消し)系。

マットブラック

これも取り返しがつかないので要注意です。

艶消し塗装というのは簡単に言うと表面を敢えてデコボコにさせる事で艶を消しているので、もしもそんな表面にコンパウンドを掛けると表面を均す事になり艶が出てしまう。

問題なのは一度コンパウンドを掛けて均してしまうと、もう二度と艶消しにはならないということです。塗装されている部品は基本的に高いので気を付けましょう。

ちなみにコンパウンドはあくまでも下地処理なのでコンパウンドだけ掛けてワックスやガラスコーティングをしないという行為も絶対に止めましょう。

3.プラグ交換

デンソーイリジウムプラグ

ここまでは自分でやる人も多いかと。正しくいうとスパークプラグといってエンジンの上に付いていてガソリンに着火するライターの様な装置ですね。

だいたい5000km~10000kmで交換が必要になります。いわゆる高級版のイリジウムプラグは10000km持つのが普通ですが、プラグメーカーのデンソーやNGKは5000kmで変えるように言っています。

【手順】

1:プラグホールの上に乗っている部品をどける

2:プラグケーブルを引っこ抜く

3:プラグを外す

4:新しいプラグを付ける

5:元に戻す

プラグホールにアクセス出来るようにする方法は車種によって様々なので。同一車種に乗っている先人たちを参考にされてください。

【注意点1】プラグホールに物を落とさないように

スパークプラグを差し込む穴の下はもうエンジン内部(燃焼室)です。

ホコリ等のゴミならまだしもネジなどを落としてしまうと、最悪の場合エンジンを開けないといけなくなります。

【注意点2】締め過ぎ注意

新しいプラグをはめる時は車載されているプラグレンチを使うのが一般的ですが、絶対に最初は手で増す事。

そして手で回らないほど固くなったらソコからスパナやメガネでプラグレンチを

「1/3から1/2」

ほど回すこと。間違ってもメガネやスパナで何周もギューッと締めるような事をしてはいけません。

※この回す範囲はクロスプレーンのR1など一部のバイクでは当てはまらない場合があります。デンソーやNGKのホームページで該当のプラグ説明を読むようにしましょう。

3.オイル交換

メーカーオイル

これも自分でするメンテナンスの代表格の一つですね。特にコダワリが無いならメーカーが用意しているオイルを使いましょう。

【手順】

1:オイル注ぎ口の蓋(キャップやボルト)を開ける

2:ドレンボルトを外す

3:オイルを抜く

4:オイルエレメントを交換する

5:ドレンボルトを締めてオイルを注ぐ

ドレンボルト

【注意点1】締め過ぎ注意

ドレンボルト(オイル栓)は非常にナメやすい上にエンジンに直接付ける部品です。

ドレンボルトに限った話ではないですが、いきなり工具で締めようとせず最初は手である程度締めた後に工具で締めましょう。締め過ぎは本当に注意です。オイル交換の際はまず少し緩めた後にもう一度締めてみてどれくらいの硬さで締まっているか確認すると失敗しにくい。

ちなみにこれはスピンオン式やエレメント交換形のカバーなどにも言えます。

オイルフィルター

オイルフィルターの場合はドレンボルトよりも更に締め付けトルクは弱く設定されている事が一般的で成人男性なら手で済ませる人もいるくらいです。

【注意点2】ちゃんとオイルゲージを見る

慣れてくるとやりがちな行為。

既定値のオイルを入れてオイルゲージを確認せずに終わる。万が一レベルゲージの正常ラインを越えていたり届いていなかったりした場合はエンジンにダメージが行きますし、故障の可能性が高いのでそのまま走っていると最悪の場合廃車になります。

ちゃんと確認しましょう。

【おまけ】よく分からないまま進めない

「何か違うような気がする」

「手順通りなのに上手くいかない」

そう思ったら一旦手を止めて誰かに聞きましょう。怪しいまま進めてしまっても十中八九は傷口を広げるだけで、最悪の場合取り返しのつかない事態になります。

周りに詳しい人が居なかったらSNSを始めとしたネットで聞く事。それでも分からなかったら、勇気を出してバイク屋に聞くこと。

多少説教されたり嫌な顔をされたりするかもしれませんが、一生引きずるような後悔はしなくて済みます。

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コールドスタートでエンジン回転数が上がる理由~ファストアイドルの必要性~

第二十一回
コールドスタートでエンジン回転数が上がる理由
~ファストアイドルの必要性~

コールドスタートでエンジン回転数が上がる理由~ファストアイドル(暖機)の必要性~

アイドリングの必要性

最近のバイクは冷え切った状態からエンジンを掛けるコールドスタートという行為をすると勝手にグワーンとエンジンの回転数を上げてそこを維持しますよね。

あれはファストアイドル(もしくはファーストアイドル)という予め仕組まれている制御なんですが、何のためにやってるのかといえばもちろんエンジンを温めるため。

急速暖機というやつですが、しかし少し疑問に思わないでしょうか。

「温めるだけならそんな回転数を上げなくてもいいのでは」

ということに。

どうして回転数を上げるのかというとエンジンを温めるだけが目的じゃないからです・・・という話を怒られそうなくらい割愛して長々と。

暖気によるクリアランス

確かに暖機には燃焼ペースを上げてエンジン(水温やエンジン)を最適な温度にまで温めて(熱膨張させて)ピストンやカムなど各部のクリアランスを適正に保つ狙いもあります。

温まっていないままだとヘッド周りが異常摩耗したりガソリンが吹き抜けてオイルを希釈しちゃいます。

ただしメーカー的に言うともっと大事な狙いが別にあります。

『排気ガス規制への対応』

です。

燃焼時に出てくるHC、CO、NOxは人間にとって非常に有害なのでそのまま大気放出してはいけませんという規制があるのはご存知と思いますが、これを解決するため排気系に詰め込まれるようになったのがこれ。

三元触媒

『三元触媒』

簡単に言うとレアアースで出来たフィルターみたいなもので、これが有害物質を化学反応で綺麗にしてくれる・・・んですが、残念ながらこの三元触媒は付けただけで解決するほど便利な代物じゃない。

「温まっていないと働かない」

という欠点があるんです。300℃前後まで温めないと効果を発揮しない。

この欠点が無視できなくなったのが2006年の排ガス規制。

排ガステスト

『測定は暖機後ではなく冷機状態から』

に変更されたんです。つまり触媒が効かない状態からの測定になってしまった。

そこでメーカーはリタードとよばれる点火時期を遅らせる制御をコールドスタート時に行うようにしました。この制御をするとまだまだエネルギーがある燃焼ガスを排気に捨ててしまう取りこぼしの様な形になります。

これは本来オーバーヒート時などに行われる制御なんですが、これをコールドスタート時にもやる事でエネルギーが余ったガス(高温の排ガス)をエキゾースト内の触媒に浴びせることで温めてるんです。

触媒の位置

つまり語弊を恐れずに言うとエンジンを温めてると思いがちなファストアイドルは、実はエンジンを温める為の熱を触媒に割り振ってる形なんです。

ちなみにファストアイドル中の回転数が安定しないのもこれが理由。

リタードすることでエネルギーを捨てるということは本来ならば回転に使うはずのエネルギーを捨てるわけで、受け止めるエンジンからすると肩透かしを食らうようなもの。だから回転数が一瞬落ち込んだりして最悪止まってしまう。

そのためバイクにはライダーのアクセルワークで開閉するメインスロットルとは別にバイク自身が判断して開閉するアイドル用のバイパスみたいなものが設けられており吸気量を増やしています。

ISC

分かりやすくいうとバイク自身が開閉できるアイドリング用アクセルが設けられているということ。

ちなみに昨今の完全ワイヤレスな電子スロットルモデルはメインスロットルもECU制御なのでそちらで兼ねるようになっており付いていません。勝手にアクセルひねった状態に制御するなんて時代の進化は凄いですね。

まあ触媒云々なんて興味が無い人も多いでしょうからこの辺にして、もう一つ紹介しておきたいのが愛車を大事にしたいオーナーなら気をつけてほしいこと。

アイドリングの注意点

コールドスタート時にエンジンの回転数を上げるのはエンジンを保護する狙いがあるわけですが、それは一番最初に説明したシリンダーやピストンやカムなどのクリアランス(熱膨張)を適正に保つためだけではなく、クランクシャフトとよばれる非常に重要な棒状の部品のためでもあります。

メインシャフト

これが燃焼による上下運動を回転運動に変換しミッションに伝達することでバイクを走らせる。

ちなみにこのクランクシャフトは昔こそ組立式といってバラバラなものを繋ぎ合わせて一本にしていましたが、強度や重量バランスなど求められる精度が段違いなエンジンの要とも言える部分なため今は鍛造による一体型のものが主流になっています。

鋳造クランク

それで圧力を受けつつ回転するので当然ながらそのままだとエンジンをゴリゴリやってしまうので、支える部分(赤い矢印)が設けられています。

しかし見て分かるように一体型なのでベアリングを打ち込んだりする事は出来ない。そこで登場するのがプレーンベアリング(通称メタル)と呼ばれる合金のカバー。

メタル

これで軸受を囲う事で摩耗しないようにしている・・・・一体どうやってという話ですよね。ここからがアイドリングと関係してきます。

なんとこのメタルを付けることでクランクシャフトが浮くんです。浮かせることで摩耗することを防いでいるんです。物凄く簡単に表すとこんな感じ。

クランクシャフトとメタル

「ちょっと待ってなんでクランクシャフトが浮いてるの」

というツッコミを期待しているんですが、このメタルとクランクシャフトの間にはオイルが流れています。だからクランクシャフトが浮くという話なんですが、恐らく多くの人はこういうイメージをされていると思います。

クランクシャフトとメタルの誤解

いわゆるオイルによるコーティングで摩耗を防ぐイメージ。

でも実際はこうじゃない。こういう形でクランクシャフトを浮かせてる。

クランクシャフトとメタルの正解

わかりにくくて申し訳ないんですが要するにオイルのヌメヌメで摩耗を防いでるわけじゃない。オイルの流れ(油圧)で浮かせているんです。流体潤滑といって水上スキーで引っ張られ続ける限り水の上に立てるのと同じ原理。

じゃあエンジンが止まってる時のクランクはどうなってるのかというと、当たり前ですが落ちてます。

クランクシャフトとメタルの停止時

この状態からスタートする。

これだとゴリゴリやってしまうんじゃないかと思いますが、この時は前回の動作時に流れていたオイルが表面に付いているまさに皆が考える潤滑である境界潤滑があるから少しの間は大丈夫。

だからその境界潤滑で持ちこたえてる間にオイルを勢いよく流して浮かせる流体潤滑に切り替えるというわけ。

じゃあオイルの流れを何処で起こしているのかといえばもちろんオイルポンプ。

オイルポンプ

オイルポンプがどうやって動いているかといえばエンジンから動力を拝借して・・・そしてエンジンが回るほどオイルポンプも回る・・・そう、ファストアイドルでエンジンの回転数を上げるのは前回のオイルでなんとか踏みとどまっているクランクシャフトに急いでオイルを流して浮かせる為にやってる面が強いんです。

コールドスタートからだとクリアランスはガバガバな上にオイルもカチカチだからいつものアイドリングより頑張ってもらわないとしっかり押し流す事が出来ない。だから回転数を上げる。

「オイル交換しないとエンジンが壊れるぞ」

って言われる要因の一つはここで、このメタルとクランクシャフトの関係は単純に当たらないよう潤滑すればいいわけでもない非常にシビアな部分なんです。

クランクシャフトとオイルの関係

なぜなら最初に回転運動するエンジン性能に直結する部分であり、潤滑というのは言い換えると損失でもあるから。

だから開発者の人たちは焼き付き(油膜切れによる損傷)を起こさないギリギリを狙って1/1000mm単位でメタルとクランクシャフトのクリアランスを設計してる。そんな繊細な場所に送るオイルがダメダメだとそりゃ焼き付くよねって話であり、オイル交換はちゃんとしましょうという話。

たまにコールドスタートなのにギアを入れファストアイドルを切った状態での暖機する人が居ますが止めておいた方がいいのはここまで読むと分かるかと。油圧が稼げないからですね。

未来ある若者ライダーへのページなので最後に一言だけ余計な事を言わせてもらうと

「暖機って走りながらでも良いんだよ」

という事を知ってほしいです。

正しい暖機

暖機は長々と停車したままする必要はありません。

ファストアイドルで優先して温めているのは触媒だし油圧も10秒ほども経てばほぼ行き渡るからです。

大事なのはいきなり高回転や低回転など極端なアクセルワークをしないこと。自分の右手で普段のアイドリングより少し高めに維持しながら走るだけで十分な暖機になる。

停車状態で暖機したいならどんなに長くともファストアイドルが収まるまで。長々とやると近所迷惑なだけではなく排熱が追いつかず熱疲労を起こしてそれが故障に繋がったりもします。

そもそも暖機ってタイヤとかブレーキとか駆動系にも必要でそれには走るしか無いわけですからね。

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第二回目はわからない人にとっては一生分からないままとなりかねない馬力とトルクについて。

高馬力、トルクがある、下がスッカスッカ。なんとなくイメージでは分かってるものの、今ひとつハッキリせず調べてみると

「1mを1kgでウンタラカンタラ」「馬1頭がウンタラカンタラ」「自転車ウンタラカンタラ」

というちょっとよく分からない例えを目にし諦めてる人が多いのでは。

まず大前提として覚えておいてほしいのは

「トルク(回転する力)×回転数=馬力(仕事量)」

という事でトルクと馬力というのは切っても切り離せない関係という事。

しかしながらエンジンで考えると難しいので別の物・・・そうですね、公園にある回るジャングルジムで例えましょう。

回転式ジャングルジム

ヨイショと”押し回して”遊ぶ遊具で中々のデンジャラスさから撤去が相次いでいる「正式名称:回転式ジャングルジム」です。

ある日、ジャングルジムを押し回す力が強いホンダ君と、ホンダ君の半分の力でしか押し回す事が出来ないスズキ君の二人が

「どちらが多くジャングルジムを回せるか勝負だ」

として勝負することになりました。

「ホンダ君が勝つに決まってるじゃん・・・」

とジャッジとSTOPコールを頼まれたヤマハ君は思いましたが、ヤマハ君が二人の回す回数を数えてみると、ホンダ君とスズキ君のジャングルジムを回す速さは全く一緒で勝負がつかなかった。

普通はホンダ君が勝つと思いますよね。でもこれにはヨイショと押し回すだけではなく押し回す”回数”が関係しているんです。

【押し回す力が強いホンダ君】

押し回す回数は10秒に1回だった。

【押し回す力が弱いスズキ君】

押し回す回数は5秒に1回だった

押し回す力が大きいホンダ君は押し回す間隔が10秒で、押し回す力が小さいスズキ君は押し回す間隔が5秒。

つまりスズキ君はホンダ君の倍の速さで押し回することで自身の倍の回す力を持つホンダ君と引き分けに持ち込めたんです。でもこれは反対に言うとホンダ君はスズキ君の半分の回数で引き分けに持ち込めたとも言えます。

そしてこの一件を馬力とトルクに例え直すと

押し回す力=トルク

押し回す回数=回転数(rpm)

x周回すのに掛かった時間=馬力

となるわけです。つまり上の二人をエンジンで例えると、トルク(押し回す力)こそ違えど発生させている馬力は二人とも同じという事になります。

ここでもう余り見なくなった性能曲線を今度はカワサキ君と回転ジャングルジムで例えてみましょう。

フレームの種類

カワサキ君がジャングルジムを一番力強く押し回せるのは押し回すペース(エンジン回転数)が1分あたり7500回(7500rpm)の時。この時の押し回す力が一番強い(最大トルク)

しかし押し回す力(トルク)こそ少し落ちるものの、まだまだ押し回すペース(エンジンの回転数)を上げられるので、時間辺りでジャングルジムを一番速く(多く)回せるのは1分あたり9500回(9500rpm)の時。これが最大馬力。

それ以上になると押し回すペース(エンジン回数)が速すぎて手が追いつかず、回す力(トルク)を上手く伝える事が出来なり、時間あたりのジャングルジムの周回数(最大馬力)も落ちてしまうというわけ。

で、単気筒エンジンよりも四気筒などの多気筒エンジンの方が馬力が上がりやすいのは何となくわかると思います。この理由を(誤解を恐れずに)言うと、ヨイショと回す手の数は気筒の数ということ。

もしも4つ手あれば時間辺りの押し回すペース(エンジンの回転数)を増やせますよね。押し回す力(トルク)じゃないですよ、押し回す回数(エンジン回転数)です。

つまり最初に言ったホンダ君とスズキ君の勝負で例えるなら、ホンダ君が片手(単気筒)でやっていたのに対し、スズキ君は両手(二気筒)でやっていた様なもの。

だから両手を使っているスズキ君の方がジャングルジムを回す効率は悪く、すぐにお腹(燃料)が減ってしまうというわけです。

・・・分かりにくかったかな。

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