「Ride the Excitement」
二代目となるYZF-R25とYZF-R3。
・YZF-R25/B3P型
・YZF-R25ABS/B6P型
・YZF-R3/B7P型※ABSのみ
となっています。
パッと見でも分かる通り見た目が大きく変わりましたがまず変更点を上げると
・LEDヘッドライトとテールライト
・倒立フロントフォーク
・ハンドルマウント周りの変更
・液晶メーター
・外装の一新
・ラジアルタイヤ(※R3のみ)
などなどがあります。
中でも特徴的なのが倒立フロントフォークによるハンドリングの向上ですね。倒立というのは外筒のアウターチューブと内筒のインナーチューブがひっくり返した形になっているフロントフォークの事。
キャビテーションという安定性の問題に強い事や、太いアウターチューブを長く取って車体側にマウントすることで剛性を上げる事が出来るメリット。
簡単に言うと路面からのショックによる曲げに強くなるのでブレーキング時や旋回時の安定性を上げる事が出来るわけですが、ただ剛性を上げるという事は必ずしも良い事とは限らず切り返し時などで機敏すぎて(撓ってくれないので)不安定に感じたりもする。
そこでYZF-R25/R3が行ったのがステム周りの改良。それが分かりやすく現れているのがR1に倣うように採用されたトップブリッジ。
ガチガチになりすぎない様にフォークを挟んでいるトップブリッジの剛性を落としてメインフレームはそのままでも良い塩梅になるように調整。
これに伴いポジションも少し見直されていて、ハンドルがブリッジの上ではなくスーパースポーツらしく下に付くようになりました。
とはいえそこまで前傾がキツいわけでもなく先代比で-22mmとの事。
そしてもう一つ上げたい特徴が外装。
幾枚ものカウルが重なったように見えるレイヤードカウルデザインなんですが更に凝った形になりましたね。
ちなみに空気抵抗を減らす事を重視されたようで結果として最高速が8km/hほどアップ。更にはヤマハとしては珍しいダウンフォースを稼ぐウィングまで装着しています。
『クロスレイヤード ウィング』
という名前だそうです。
それにしても
「ヤマハはレイヤードカウルが好きだな」
って話なんですが、ここでちょっと小話を。
「レイヤードカウルの狙いは何か」
という事について少し話というか考察を。
2006年ごろから始まったレイヤードカウルの魅力はもちろんそのデザイン性なんですが、これ単なる飾りというわけではなく機能面を考慮した造形をしています。
それを理解するために見てほしいのが市販車とは決定的に異なるカウル造形をしているレーサー。
レーサーのカウルはサイドダクト(サイドカウルの切れ込み)がほとんどありません。
これはレーサーは空気抵抗を抑える事が第一なので抵抗になるサイドダクトはラジエーター(フロント)を通った風を捌く最低限に収めるのがベターだから。
しかし一方で市販車はサイドダクトが必ず大きく設けられています・・・というか設けないといけない。何故なら市販車は信号待ちなど止まる事があるから。
停車時というのは風がないのですぐ熱くなります。そして風が無いということはラジエーターで熱せられた熱風は後ろではなく横に広がる。
そんな熱風を車体内に留めておくのはエンジンにとって非常にマズいので外に逃がすために大きなサイドダクトを設ける必要があるんですね。
だからヤマハもレイヤードカウルを始める前はサイドダクトをアレンジして魅せる造形にしていました。
これはこれでカッコ良いと思うんですが空気抵抗が上がるしレーサーとも少し外れてしまう・・・そこで登場した新世代のカウル造形がレイヤードカウル。
サイドダクトを大きく設けつつもその上から覆い隠すようにカウルを敷くことで
「サイドダクトを確保しつつ、空気抵抗を下げつつ、サイドダクトの存在感も消す」
という一石三鳥の様な事をやっている。
これがレイヤードカウルの狙い。決して自己満足的な飾りではなく機能美でもあるという話。
さすがデザインのヤマハと言えるわけですが、R25/R3ではもう取り上げておきたい一つある・・・んですがただこれ写真や言葉では言い表すのが非常に難しい。
このモデルが出た時に
「なんか頭でっかちでノッペリしてるな」
と思われた方も多いかと思います。
そう思われた方こそ是非とも実車を見て欲しい。何故なら印象がガラッと変わるから。
これ写真のアイポイントをよく見て欲しいんですが普通に見る高さじゃないんですよね。フェンダーくらいの高さから見た写真になってる。
だから実車を見る場合もっと上から見下ろすようになるから写真とは全く違うバイクに見える。
この写真でもまだ低いので再現しきれてないんですが、要するに大きなヘッドライトで少しマヌケに思えてたイメージが、実車を前にすると先鋭なレーサーのイメージに一変する。
これはもちろん狙ってやっている事で
「俯瞰で見るとヘッドライトの存在感が消える」
という意匠を更に強くしているから。だからカタログの表紙でもサイドスタンド側から撮った珍しい構図になっています。
つまり傾けている時が一番カッコいいバイクというわけ。
「ワインディング中が一番カッコよく見えるデザイン」
というYZF-Rシリーズの特徴を更に研ぎ澄ませたデザインになっているんですね。
ちなみにカタログスペック的な方は先代からほとんど変わっていません・・・最後に少し個人的な事を言わせてもらうと正直このモデルは意外でした。
というのもこのクラスは今ではレースと密接に関係していて、市場だけではなくレース界隈でも盛り上がりが見られる状態。
つまりもうスーパースポーツとしての道を歩み始めているわけですね。
※R25はAP250やJP250(250ccレース)
※R3はSSP300(世界スーパースポーツ選手権)
そして正直に言うとR25/R3はスペック的に(レースベースが無いことを含め)既にレースで少し引けを取ってる状態にあります。
ところが紹介してきた変更点からも分かる通り改良は足回りと装備に特化してきた。
そういう状況下にありながら
『絶対的な速さ』
ではなく
『ドラバビリティ』
を上げてきたわけです。しかもありがたい事に車体価格もそれほど上げてない。
要するに
「SSに片足突っ込んでるけど、体はストリートに残した」
ということが意外という話。
これは先代の
「毎日乗れるスーパースポーツ」
というコンセプトが非常に高評価だった事が影響しているのかも知れませんが、ここで思い出すのがYZF-Rシリーズの始まりとなる1998年のYZF-R1/4XV型。
元々YZF-Rシリーズというのは
『ツイスティ(ワインディング)ロード最速』
という公道で楽しむことをコンセプトとしたモデルでした。
ただ時代と共に環境が変化したことでYZF-Rシリーズはサーキット志向なバイクになっていきました。
そんな中でのYZF-R25/R3だけ明らかに方向性が違う。
YZF-R的に言うと
「ツイスティロードがサーキットよりも前に来ている」
そう考えるとこのYZF-R25/R3っていうのはYZF-Rシリーズである事は間違いないんだけど、それは今ではなく黎明期のYZF-Rシリーズに近いと言えるのではないかと。
もちろんお世辞にもYZF-R1の様に
『ツイスティロード最速バイク』
とは言えないけども
『ツイスティロード最高バイク』
とは言えるんじゃないかと。
まあ何にせよ騙されたと思って一度見に行ってください。
主要諸元
全長/幅/高 | 2090/730/1140mm |
シート高 | 780mm |
車軸距離 | 1380mm |
車体重量 | 167kg(装) <170kg(装)> [170kg(装)] |
燃料消費率 | 27.2km/L [27.6km/L] ※WMTCモード値 |
燃料容量 | 14.0L |
エンジン | 水冷4サイクルDOHC2気筒 |
総排気量 | 249cc |
最高出力 | 35ps/12000rpm [42ps/10750rpm] |
最高トルク | 2.3kg-m/10000pm |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前110/70-17(54S) 後140/70-17(66S) |
バッテリー | GTZ8V |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 | LMAR8A-9 |
推奨オイル | ヤマルーブ プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに | 全容量2.4L 交換時1.8L フィルター交換時2.1L |
スプロケ | 前14|リア43 |
チェーン | サイズ520|リンク112 |
車体価格 | 599,400円(税別) <642,600円(税別)> [675,000円(税別)] ※<>内はR25ABS/B6P型 |