クローズド専用タイプになるH2R。
H2の200馬力に対して310馬力と一気に100馬力以上のアップ。いやアップというかH2Rの上をカットしたのがH2と言ったほうが正しいです。
なんでカットしてるのかって言うと騒音は勿論なんだけどそれより耐久性の問題で、H2に対しこのH2Rはクローズド専用って事でその耐久性を無視してる。
だからH2Rはマニュアルによると
「8000rpm以上での走行時間が15時間に達する毎にオーバーホール」
だそうです。
さぞスペシャルなエンジンをしているんだろうなと思ったんですが、意外なことにH2とH2Rの主要部品はカムとクランクが違うくらいでほとんど同じ。
H2から+100馬力の過給というのは、それだけ負担があるということですね。
そんなH2Rの最大の特徴はやっぱりウィング。
始まりはZZR1100のテールカウルだったでしょうか。それから12Rのサイドカウルに採用され、H2Rで遂にアッパーカウルまで付いた。
クローズド専用なだけあって遠慮なく伸びてます・・・
「ここまで来ると飛べそうだな」
なんて思ったら後のカワサキモーターサイクルフェア2017でこんなCGが。
「H2-AIR Type-1」
航空宇宙部門が手がければ本当に飛べるみたい・・・冗談に聞こえない悪ノリですね。
話を戻すと、H2Rはアッパーカウルは勿論のことインナーパネルまでもカーボンを使い、触媒も保安部品も取っ払ったおかげでH2より20kg以上軽い216kgとなってます。
ちなみに斜めにカットされたフルチタンサイレンサーは直管だから120dbと物凄く音がデカい。
飛行機のエンジンを間近で聞くのと変わらず会話も出来ないレベルです。
だから公道はおろかサーキットでも場所によっては走れない。鈴鹿や茂木も無理じゃないかな。
それじゃ駄目だろと思うのですが
「引っ掛かる時は社外に変えてね」
との事・・・いや逆ですよね普通。
そんな川重の結晶の様なH2Rですが実は唯一、川崎重工グループ外で開発に多大な貢献をしたメーカーがあります。
皆さんご存知ブリヂストンです。
カワサキからH2/H2R製作にあたって
「最高時速350kmに耐えるタイヤが無いから作って」
とお願いされたんです。
BS開発部の青木さんいわく、タイヤへの負担というのは速度に対して二次曲線的に挙がってしまう特性。だから300km/hと310km/hでもタイヤへの負担は全く違う。
それを踏まえた上でもう一度。
「最高時速350kmに耐えるタイヤを作って」
なんて言われたら目ン玉が飛び出るほど驚いても無理がない話。
「Kawasakiは一体何を・・・」
となる。MotoGPとほぼ変わらない速度レンジなわけですから。
でもソコは流石ブリヂストンと言うべきでしょうか、MotoGP用のタイヤ設備でMotoGPで培った技術を元にH2開発チームに飛び入り参加し開発。
そして出来上がったのがレーシングバトラックスV01というクローズド専用タイヤ。
しかも市販品よりも先に作られた先行品でH2R専用のオーダーメイドタイヤです。
時速350kmが如何に厳しい域なのかをローレット加工(リムの滑り止め)が表していますね。
ちなみにH2Rも2017年にマイナーチェンジが入りZX1000Y型となりました。
内容はH2と同様なので割愛します。
ところでH2/H2RといえばTeam38という言葉を目にした事があると思います。
このTeam38(サンパチ)は1975年にカワサキ社員が自主的に集まって結成された歴史あるチーム。
名前の由来は拠点が川崎重工の第38工場だから。
カワサキが84年にワークス撤退を決めた際も
「バイクメーカーがレースを止めてはいけない」
と自社のバックアップやお金が無い中でもプライベーターとして参戦し続け、ワークス復活までライムグリーンを途絶えさせなかった熱いチーム。
H2/H2Rはそんな熱い人達が中心となって作ったバイク・・・ですが、何故にここまで突き抜けたバイクを作ったかというと
「最近のバイクは高性能だけど面白くない」
という声が多く聞かれるようになったから。
だからこそのスーパーチャージャー。どの速度域からでも、蹴られるような、乗り手を振り落とすような加速を持たせたかった。
未亡人製造バイクと言われ今も愛されるマッハ3の様なバイクを作ろうとなった。
H2/H2Rはラップタイムを縮める事が目的のSSではありません。フレームもヘナヘナだし従順でもない。
でもそれでこその”H”なんです。
いつの間にか消えてしまったジャジャ馬バイクの再来というわけ。
主要諸元
全長/幅/高 | 2070/770/1160mm [2070/850/1160mm] |
シート高 | 830mm |
車軸距離 | 1450mm |
車体重量 | 216kg(装) |
燃料消費率 | – |
燃料容量 | 17.0L |
エンジン | 水冷4サイクルDOHC四気筒 |
総排気量 | 998cc |
最高出力 | 310ps/14000rpm |
最高トルク | 16.8kg-m/12500rpm |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前120/600R17 後190/650R17 |
バッテリー | – |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
SILMAR9B9 |
推奨オイル | カワサキ純正オイルR4/S4 または MA適合SAE10W-40 |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量5.0L 交換時3.9L フィルター交換時4.4L |
スプロケ | 前18|後42 |
チェーン | サイズ525|リンク116 |
車体価格 | 5,400,000円(税込) [5,940,000円(税込)] ※[]内は17以降(ZX1000Y) |