H2/H2Rの系譜

H2
(ZX1000N/X)
-since 2015-

H2

「何の制約も無しに自由に二輪車を作れるなら何を作るか」

Ninjaシリーズ30周年を記念して発売されたH2とH2R。

カワサキが出した答えはスーパーチャージャー付きのバイクでした。

H2サイド

「直四でトレリスフレームにプロアームに星形ホイール」

これだけ聞くとアグスタF4かと思いますね。

「カワサキなのに何故バックボーンでもツインスパーでもなく、トレリスフレームなんだ」

という所なんですが、これだけのパワーを真正面から受け止める事は不可能、だから"耐えるアルミ"ではなく"撓って吸収する鉄"のトレリスフレームで行くと決めたようです。

H2吸気口

専用設計で剛性をフルオーダーメイドのように細かく設定出来る事や、排熱やダクトを考えると塞いでしまうツインスパーよりもトレリスの方が相性が良いという事もあったかと思います。

 

まあそれより何より量販車初となるスーパーチャージャー。

車では聞き慣れた技術だけど、バイク一辺倒な人はスーパーチャージャーって聞いてもピンと来ない人も居ると思うので簡単に説明すると。

H2Rスーパーチャージャー

エンジンの最大の課題の一つは吸気なわけですが、如何に効率よく空気をエンジンに送り込めるかが大事なわけで。

最近のハイパワー車では当たり前となった大きく口の空いたラムエアダクトも空気を吸って走行風を利用して空気を無理やり送り込む為にある。 でも当然ながら走行風も相当な強さのものが必要なので効果があるのは200km/h以上出てる時だけ。

 

「強制的に押し込めるようにタービン(コンプレッサー)を付ければいい」

っていうのがターボチャージャーとスーパーチャージャー。

H2タービン

ターボはエンジンから勢いよく出て行く排気ガスの力を使ってタービン(プロペラ)を回して空気を送り込む方法。

排気ガス(排気圧)って燃焼運動において一番無駄にしてるエネルギーだったりします。

ただ排気ガスを利用しているだけあってどうやってもターボは

吸気

燃焼

排気

タービン

ターボ吸気

となるのでタイムラグが出来てしまう。

 

対してこのH2でも採用されてるスーパーチャージャーっていうのはピストンが付いているクランクの回転を使って回す方法。

H2スーパーチャージャー

ターボの様に排気ではなくエンジンから直接動力を取ってるので

吸気

燃焼(クランク)

タービン

ターボ吸気

となるのでラグが少ない。

その変わり捨てていた排気エネルギーを使っているターボと違い、クランクから取っているので効率はターボと程は良くない。

ただバイクに限って言うと間違いなくスーパーチャージャーの方が相性が良いでしょう。アクセルワークでタイムラグがあるというのはバイクにとっては致命的。

タービンを回すためにエキゾースト(排気)をすぐに収束する必要があって糞詰まりしてしまうターボと違って排気系が自然吸気と同じ様に出来る事も大きいです。

GPZ750ターボ

ターボについては>>750TURBOをどうぞ

 

ただし、恐らく車に詳しい方ならH2のスーパーチャージャーを見て疑問に感じると思います。

一般的にスーパーチャージャーというのは、ローターを回転させて圧縮する容量形(リショルム式やルーツブロア式)が基本。

コンプレッサー

ところがH2のコンプレッサーはペラを回し遠心式で圧縮する遠心形なんです。これ本来ながらターボで使われる方法。

H2スーパーチャージャー

なんでこんな事をしてるのかというと、自動車の多く採用されている容量式は嵩張って重い上に、クランクの高回転についていけずレスポンスが落ちるから。

だからペラで圧縮する回転式にした。

簡単に言っていますがクルマと違いバイクはクランク自体が超高回転。H2Rでは16000rpmまで回ります。

そしてこのペラはその更に8倍速、最大13万回転/分で回る。これを達成させるにはミクロン単位の精度を出さないといけない。

ガスタービンエンジン

これはカワサキが高いガスタービン技術を持っていたから可能だったこと。

「カワサキではなく川崎重工(全体)の製品」

と言っているのはこういう所からなんですね。

H2インペラ

そんなターボみたいなスーパーチャージャーなんですが、更に凄い事があります。

空気は圧縮すると物凄く熱くなる性質があります。それをエンジン内で更に圧縮すると更に高温になり、意図しない異常燃焼(ノッキング)の問題が起こる。

熱くなるほど膨張するので吸気充填効率も悪くなります。

インタークーラー

だからターボもスーパーチャージャーも圧縮した空気をエンジンに送る前にインタークーラーという一旦冷やす冷却器を通すのが一般的。

 

車のボンネットにある郵便ポストとかもですね、昔はそれがターボの証でした。

WRX

話を戻すと、H2にはその大事なインタークーラーが付いてないんです。

正確に言うと

"付けなくても冷やせるようにしている"

です。

H2エンジン

普通ならばプラスチックを使う部分であるエアクリーナーボックスやファンネルをH2ではアルミ製にしている。

熱伝導率が高いアルミを使うことで

吸気口

チャージャー

アルミインテーク(ここで熱を奪う)

アルミファンネルネット(ここでも奪う)

エンジン

となってるわけ。

H2エンジンサイド

これにシリンダーヘッド周りの冷却経路を使った冷却も加わっています。

本当にそれで大丈夫なのかと一部で話題となりました。当たり前ですが、本当に大丈夫でした。

H2サイドビュー

徹底的な吸気効率を上げることで熱を篭もらせない様にしているそうです。アンダーカウルを付けなかったにも、熱を篭もらせないためなんだとか。

 

当たり前ですが、凄いのはエンジンだけじゃありません。

H2フェイス

他にもまだまだ色々あるんですが、もう一つ挙げるとするならカウル造形。

これは航空宇宙部門の技術に基いて設計したもの。

リバーマーク

チャージャーのガスタービン技術もそうですがH2が凄いのは

「部門に作らせた」

ではなく

「二輪に技術移管させて作った」

つまり、川崎重工の技術を全て二輪部門に集約して作ったというのが凄いんです。

H2広告

川崎重工の技術力とブランド力を知らしめる為のバイクであり、川崎重工の技術自慢バイクでもあるわけです。

生産ももちろん少数または一人一人が一台を担う手作業での組み立て、部品の選別も手作業です。

これで3,024,000円(2017年時点)。安くは無いけど、決して暴利ではない。

 

ちなみに言い忘れていたんですが、2017年にマイナーチェンジが入りZX1000Xとなりました。

H2カーボン

目立つ変更点としては

・5馬力アップ
・KCMF(コーナリングマネジメント制御)
・OHLINSリアサスペンション
・アップダウン両対応クイックシフター
・メーターやエンブレムの変更

といったところです。

上の写真はアッパーカウルがカーボン仕様となっている限定モデル。まあH2自体、毎年受注生産の限定モデルみたいなものですが。

エンジン:水冷4サイクルDOHC四気筒
排気量:998cc
最高出力:
200ps/10000rpm
[205ps/11000rpm]
最大トルク:
14.3kg-m/10000rpm
[13.6kg-m/10000rpm]
車両重量:238kg(装)
※[]内は2017年モデル

系譜図

マッハ3 1969年
500SS MACH3(H1)
マッハ4 1972年
750SS MACH4(H2)
H2 2015年
Ninja H2(ZX1000N/X)
H2R 2015年
Ninja H2R(ZX1000P/Y)
H2SX 2018年
Ninja H2SX/SE(ZX1002A/B)

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