F4 第二世代 -since 2009~-

第二世代F4

2009年にフルモデルチェンジ

750ccは廃止され1000ccへ一本化されました。

一般的にこの年式から第二世代と言われています。

見た目はLED化やマフラーエンドなどの細部がリファインしたくらいで大きくは変わってませんね。

マフラーエンド

かと言って古さも感じない。

完成されたデザインって事なんでしょう。奇才マッシモ・タンブリーニ恐るべしです。

ちょっとF4の話というよりMVアグスタの話ばかりしてしまったので、少しF4の中身の話を。

F4最大の特徴は「ラジアルバルブ」

ラジアルバルブ

ラジアルバルブっていうのは文字通りバルブがちょっと傾いている事。

(少しだから見ても分からないと思いますが)

トラコンとかモード切り替えとかそこら辺の機能はF4でわざわざ説明する必要もないかと思うので割愛。

先にも話したけどF4のエンジンはフェラーリのエンジニアが作った物ということで当然ながらラジアルバルブもフェラーリが生み出した技術。

フェラーリ642

ラジアルバルブは吸排気口の面積を大きく取れるというメリットがある。

ただFerrariのそれとは違いF4はロッカーアームを使わない直動型のラジアルバルブ。

その開発が非常に難航したんだけど、それを救ったのはなんと当時ホンダのF1エンジニアだった日高義明さん。

F4にホンダの技術が入っていたとは驚きですね。

ホンダフェラーリ

MVアグスタのよってフェラーリとホンダの技術が融合って歴史的な事じゃなかろうか。

そんな紆余曲折がありつつも形となったMV AGUSTA F4は伝説になった・・・かといえばそうでもなかったです。

ライバルメーカーたち(というか日本メーカー)との競争激化で経営不振に陥ると、ハスクバーナやドゥカティといった買収していたメーカーを売却し最後にはほぼMVアグスタ一本に。

そして社名もMVアグスタに改名し元のカジバはその一部門になるという上下がひっくり返ったような会社に。

それでも不振が続いたため、買収され、売られ、捨てられと2000年代は色んなメーカーを転々としていました。

アグスタ本社前

そんなこんなでたらい回しにあっていたMVアグスタですが、2010年に売却という形で晴れて自由の身(カジバ経営)に。

そこでMVアグスタが最初に取った行動は値下げでした。

それも289万円から210万円と大幅なもの。

理由は当初は円高だと言われてましたが円安になっても値段はそれほど変わらず。

走る宝石といえど売れないとまた飼い殺しに合っちゃうからそれを防ぐためか

もっと多くの人に乗って欲しいのか公式アナウンスは無いのですが

どちらにしろハードルを下げてきたわけですね。

日本で「MVアグスタ」というとその知名度・認知度の低さからBimotaと同様に

超高級ブランドバイクと捉えられている人が多いです。

アグスタ工場

確かに安くはないですがよく考えてみてください。

ブレンボ&オーリンズのCBR1000RR SPが200万円なのに対し

ブレンボ&フェラーリエンジンのF4が220万円って超高額でしょうか?

1000RR SPと同じブレンボ&オーリンズを装備したトップグレードのF4RRでも300万円です。

安くはないですが超高級でもないですよね。ドゥカティとどっこいくらい。

むしろ一台一台職人の手によって作られているフェラーリバイクと考えれば安いと思っても不思議じゃない。

F4RR

フェラーリエンジンですよ。

マッシモ・タンブリーニが作った走る宝石ですよ。

(アフターサービスはあまり期待できませんが・・・)

最後に余談

MV500Tre

最初に言った通りMVアグスタは「サーキットの覇者」が原点です。

意外に思うかもしれませんが

再建してレース規格に沿った規格で進化してきたF4

実はレースではガチンコ(ワークス参戦)で世界と戦った事はまだありません。

このことから「アグスタなのは名前だけ(中身はカジバ)」とか「負けてる事を恐れてる」とか色々と陰口を叩かれました。

上にも書いてますが、飼い殺し状態だった事や予算の問題、当然技術的な問題など様々な理由で再建後もずっと参戦せずにいたのは事実です。

まあそれだけMVアグスタへの期待が大きいということでもありますが。

が、自由の身になって最初にしたことが値下げなら次にしたことは

F3を開発しWSB(ワールドスーパーバイク)のSSK(ミドルスーパースポーツ部門)へのワークス参戦でした。

かつてのサーキットの覇者がどれだけやれるのか、それはそれは世界が興味津々。

F3

最初はみな期待していなかったものの、実力も年を追う毎に増し僅か数年で優勝争いが出来るレベルにまで達しました。

SBK F4さらに、2015年からF4RCで待望のSBKワークス参戦が決定。

サーキット覇者の伝説が再来するのか見届けてみるのも面白いかもしれませんね。

レースがよく分からない人は「ロードレースの系譜」もどうぞ。

エンジン:水冷4サイクルDOHC4気筒(本国仕様)
排気量:998cc
最高出力:
195{201}ps
13400{13600}rpm
最大トルク:
11.3{11.6}kg-m/9600rpm
車両重量:191{190}kg(乾)
※{}内はRRモデル

系譜図
アグスタ125

1923年~
F4が生まれるまで

F4_750

1999年~
第一世代F4

F4_1000

2009年~
第二世代F4

F4 第一世代 -since 1999~-

カジバ

時代はそれから少し飛んで1990年代中頃。

イタリアでCAGIVA(カジバ)というメーカーが当時ありました。

ドゥカティやハスクバーナを筆頭にバイクメーカーを次々に買収し僅か10年で超巨大オートバイメーカーへと成り上がった会社です。

巷でこのメーカーが

「マッシモ・タンブリーニやフェラーリのエンジニアと協力してフェラーリバイクを作ろうとしている」

という噂が広まっていました。

もともとドゥカティとフェラーリは本社も近く企業間の仲も良好なうえに

その道中の高速道路で謎の赤いカウルを付けたバイクの目撃情報が多々あったからです。

プロトタイプF4

それがこのバイク。

なんかF4とは似ても似つきませんよね。

ゴッツいツインスパーフレームだし何より美しくない。

それもそのはずでこのプロトタイプはいわばフェイクモデル。

実はもう一台、謎の赤いバイクが存在したんです。

それがこれ。

マッシモ・タンブリーニが生み出したトレリスフレームと片持ちスイングアーム・・・

カジバ916

どう見てもドゥカティの916・・・・・・じゃなかった。

(上の写真がプロトタイプで下は916)

916

なんと皮こそ916だけどトレリスフレームとピボットプレートのハイブリッドフレームに直四のフェラーリエンジンを積んでいる。

もうお分かりになったと思います。

アグスタF4カウルレス

そう、コレこそがF4(フェラーリ4)だった。

カジバはアグスタのブランド使用権を取得し1999年にMVアグスタの名を復活。

アグスタF4

そして発表されたのがMVアグスタF4でした。

名門の復活、タンブリーニの設計&デザインに世界中が称賛。

オルガンパイプマフラーと呼ばれる四本出しに度肝を抜かれた人も多いのでは?

F4四本出し

今ではすっかりアグスタの象徴になりましたね。

ちなみにモデルをざっくり紹介すると

oro

最初が1999年のF4 Oroで限定300台

そして同年に出た廉価モデルがF4 750S

セナモデル

2002年~のEVOまたは750SRモデルとSENNAモデル限定300台

750SPR

2004~は750Sをベースにレースユースに特化したSPRモデル

こちらも限定300台。

なんかもうF4になるとOHLINSやbremboが当たり前なんで書く気も・・・ってよく見てください。

F4oro足廻り

なんとSHOWAのサスにNISSINのキャリパーではありませんか。

フェラーリバイクにしちゃ随分と庶民的だな~。

って思ったけどよく見たら巷に溢れてる物と違ってF4専用のオーダーメイド品な模様。

ブレンボだオーリンズだと騒ぐクラスとは次元が違うって事ですかね・・・

F4 1000S

そして2005年には排気量を1000ccまで上げたF4 1000AGOとSが追加。

その後も

Tamburini、Senna、Vektro Strada、Pista、R、CC、RR312等など

合わせると10以上の限定モデルを出してるので書ききれません。

全部書くととんでもない量になっちゃうので割愛させてもらいます・・・ごめんなさい。

まあしかしそんな中でもコレだけは知っとけというのが2006年に発表されたF4CC

アグスタF4 CC

CCは普通の限定モデルであるF4のエンジンの排気量を更に上げ1078ccとしたスペシャルなエンジンを搭載したスペシャルモデル

・・・最早なにがスペシャルで何がスペシャルじゃないのかわかりませんね。

ちなみにCCというのは社長であるクラウディオ・カスティリョーニの頭文字から。

カウルはカーボン、細部のアルミは全て手仕上げ、公称200馬力オーバー。

F4CCテール

お値段驚きの1500万円。

ドゥカティのデスモセディチも裸足で逃げ出す値段ですね。

そりゃブレンボも付くわって話です。

ちなみに見慣れないサスペンションはMARZOCCHI(マルゾッキ)製。

知る人ぞ知るイタリアのサスペンションメーカーです。

エンジン:水冷4サイクルDOHC4気筒(本国仕様)
排気量:749{1078}cc
最高出力:
126{200}ps
12600{12200}rpm
最大トルク:
7.5{12.7}kg-m
10500{9000}rpm
車両重量:180{187}kg(乾)
※{}内はCCモデル

系譜図
アグスタ125

1923年~
F4が生まれるまで

F4_750

1999年~
第一世代F4

F4_1000

2009年~
第二世代F4

F4が生まれるまで -since 1923~-

MotoGP

MVアグスタの歴史を知っている人は少ないと思います。

ということでまずMVアグスタの歴史からサラッとご紹介していこうと思います。

もともとMVアグスタというのはアグスタ伯爵が作ったイタリアの航空機(主にヘリコプター)メーカーでした。

アグスタ伯爵

しかし敗戦で飛行機の製造を禁止されるハメに。

どうしようか考えてた伯爵は「イタリアの名誉を取り戻せる事業を」と考えました。

すると当時すでにレースで世界中から喝采を浴びていたフェラーリをみて

「じゃあうちはオートバイ界のフェラーリを作ろう」と思ったのがキッカケ。

ちなみにMVアグスタのMVはMeccanica(力学) Verghera(町の名前)という意味があります。

さて、オートバイ事業に参入したアグスタは当時大手だったベネリやドゥカティから技術者をヘッドハンティングし、次々と高性能バイクを生み出していきます。

この時まだ1940年代。ホンダがやっと創業した頃です。

そしてフェラーリと同じようにレースへ注力。

その結果としてMVアグスタはWGP(現MotoGP)で圧倒的な速さを誇り、タイトル総ナメ状態が20年近く続きました。

その伝説は今も語られ続けています。

4C500

その速さの最大の理由として挙げられるのが、世界初にして唯一無二だった並列四気筒エンジン。

ホンダがCB750FOURを作り上げる実に20年前の時点でアグスタは既に直四を作っていたのです。

当時ちょうど視察に訪れていた本田宗一郎もコレにはビックリで工場まで押しかけたとか。

アグスタ750S

しかしそんな栄光の歴史とは裏腹に71年、転機が訪れました。

当時社長をやっていたドメニコ・アグスタが急死し、弟のコラード・アグスタが社長に就任。

その弟の経営方針の転換でアグスタはオートバイ事業からの完全撤退が決定しました。

というのも実はこの頃アグスタは経営危機に陥っていた。

そこで解禁され好調だった航空機製造への一本化の為にオートバイ事業を切ったと言われています。

これでアグスタはオートバイの世界から消えてしまうことになったわけです。

ちなみに航空機製造のアグスタは今でもアグスタウェストランドとして現存。

アグスタ社製ヘリコプター

富士山やアルプスなどで警察が使っているヘリコプターもアグスタ製だったりします。

系譜図
アグスタ125

1923年~
F4が生まれるまで

F4_750

1999年~
第一世代F4

F4_1000

2009年~
第二世代F4

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