VERSYS650/ABS(LE650E/F) -since 2015-

KLE650e

「All Roads, One Bike」

シリーズ展開されるようになった事から車名に650が付いてシリーズ統一顔へと変貌した三代目のVERSYS650/LE650E型とABSのLE650F型。

今回も主な変更は

・リアをキャリアからグラブバーに変更

・リモート式プリロードアジャスターリアサス

・VERSYSシリーズで統一されたデザイン

など約10年ほど経ったにも関わらず基本的にそのままでお色直しがメイン。

兄弟車が

ER→Ninja650R/ER-6n→Ninja650/Z650

と世代を重ねていったのに対してヴェルシスはずっとそのままだったので離れ離れというか実質的に別モデルに近い存在になりました。

しかし残念ながら日本での冷遇は先代から変わらずで国内正規取り扱いをしなかったのは勿論、ブライト(正規逆輸入車)も2016年モデルをもって取り扱い終了。

ブライト最終モデル

実質的にABS付きのF型を2年売っただけ。これが最終モデルになります。

日本ではNinjaとZのツートップ体制で台数がそんなに稼げない事が関係しているかと思いますが、一方で欧米では2021年時点でも健在。

このモデルからはバリエーション展開もされており厳しいミドル市場で定評を得ています。

KLE650e

ところでヴェルシス650は先代でも言ったようにデザイン変更がメインで中身は2007年からそんなに大きく変わってない。

なのに今でも第一線で売られてるだけではなく、新しいミドルデュアルパーパスが出るたびに必ずと言っていいほど比較対象に引っ張り出されたりしています。

そしてそこで何処を見ても大体

スクリーンとメーター

「降りないとスクリーン調整出来ない」

「メーターデザインが古い」

などの細かいネガの指摘に始まり走行性能なども比較される。

系譜を見ると分かる通り物凄く息が長いモデルなので

「世代が全然違うのに比べるのは酷でしょ」

と一瞬ヴェルシス650に同情心が湧いたんですが・・・その必要はなかった。むしろそれこそ失礼な話。

わざわざ引っ張り出すのにはちゃんと理由があった。

ヴェルシス650壁紙

「ヴェルシス650はミドルアドベンチャーの要点を一番抑えてるモデルだから」

です。

・良好な防風性と視界のポジション
・乗り心地良好なシート
・オンが主軸ながらオフも多少は行ける足回り
・軽い車重とマスの集中化をもたらすパラツイン
・低中速に厚みを持たせ650ながら過不足ないパワー
・実燃費20km/L越えの燃費と19Lビッグタンク
・フォグや片手で開けるパニアなど豊富なOP
・クラスなりの車格と価格

ヴェルシス650は当たり前に思えて意外と難しいミドルデュアルパーパスの要点全てで及第点を取ってるんです。

ブライト最終モデル

だから10年以上経とうが排気量が近い新しいモデルが出るたびに引っ張り出される。

Ninja650やZ650など兄弟車がモデルチェンジしてもヴェルシス650だけは大きく変わらなかった理由もここにあるんじゃないかと思います。

『性能/利便性/コスト』

その全てが奇跡とも言えるバランスで調和しているから大きく変わらず、また変えずとも20年弱経った今でもベンチマークにされる。

カワサキヴェルシス650

カワサキブランドのエヴァみたいな顔のバイクという事から破天荒なイメージを抱きがちですが、実は全くもってリーディングエッジじゃないどころか良く出来たバランスを保ち続けている超保守的なミドルデュアルパーパスなんですね・・・だから日本には入ってこないのかもしれない。

主要諸元
全長/幅/高 2165/840/1400mm
シート高 840mm
車軸距離 1415mm
車体重量 208kg(装)
燃料消費率
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 649cc
最高出力 69.0ps/8000rpm
最高トルク 6.5kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー FTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.7L
フィルター交換時1.9L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 939,600円(税込)
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

VERSYS/ABS(LE650C/D) -since 2010-

KLE650c

「Street Surfing」

ヴェルシスとしては初モデルチェンジで二代目となったVERSYS/LE650C型とABS付きのLE650D型。

最初に主な変更点を上げておくと

・縦型デュアルヘッドライト

・角度調節機能付きスクリーン

などでどちらかというとルックス変更がメイン。

ヴェルシスは欧州がメインなのでデザインもER-6に非常に近い独特な物だったんですが、今回のモデルチェンジで更に独創的な物になりました。

LE650C壁紙

良い意味でタフギア感が増したというかボトムズ感が出たというか・・・ちなみに説明を忘れていたのですがVERSYSの名前の由来は

『Vertex(頂点)+System(システム)』

を掛け合わせた造語になり、もう一つ補足としてこのモデルまでは正確に言うとVERSYS650ではなく

『VERSYS』

だけで数字は付きません。まだこの頃はシリーズ展開しておらずこのモデルだけだったからです。

・・・ってもう書けることが無い。

以下は余談なんですが、このヴェルシスって欧州の方ではインプレや比較が結構されている一方で日本国内ではビックリするぐらい露出は疎か情報すら皆無なんですね。

逆輸入車(ブライト取扱)という事でメーカーが取り上げないというのも勿論あるんでしょうが、メディアやカワサキ系販促を見てもそもそも掲載すらしてないのが当たり前という冷遇っぷり。

LE650Cブライトカタログ

載っていたのはせいぜいブライトのカタログの一コマくらいで

「これ買った人はよく見つけたな」

と感心するほどだったりします。

主要諸元
全長/幅/高 2125/840/1330mm
シート高 845mm
車軸距離 1415mm
車体重量 206kg(装)
燃料消費率
燃料容量 19.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 649cc
最高出力 64.0ps/8000rpm
最高トルク 6.2kg-m/6800rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.7L
フィルター交換時1.9L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 840,000円(税込)
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

VERSYS/ABS(LE650A/B) -since 2007-

KLE650A

「ストリートサーフィン」

ここで登場するのが今も続くヴェルシス650の始まりとなるVERSYS/LE650A型とABS付きのLE650B型で、日本に入ってきていた(ブライトが取り扱った)のはA型のみになります。

チラリと顔を覗かせるガチャピンエンジンからも分かる通りER-6がベースになったもののヴェルシスだけ特別に

・低中速に厚みをもたせるチューニング
・フルアジャスタブル倒立フォーク
・7段階プリロード及び13段階伸側減衰力の調節機能付きリアサス
・アルミスイングアーム
・19Lフューエルタンク

などのVIP待遇を受けています。

ガチャピンエンジン

念の為に補足しておくとガチャピンと言われる様になった理由はこれ。

先代比べて何が大きく変わったのかといえば共有の17インチホイールが採用されデュアルパーパスながらストリート色が強いモデルになったこと。

KLE650A壁紙

・・・なんですが、じゃあなんで特別な装備がわざわざ奢られたという話。

その理由は

『ストリートサーフィン』

というヴェルシスのコンセプトを実現するため。

これは簡単に言うと、とにかくライダーに自由なライディングをしてもらうという狙いになります。

KLE650Aサイド

ヴェルシスはER-6とほぼ共有ながら決定的に違う部分があります・・・それはポジションです。

「デュアルパーパスなんだから当たり前でしょ」

と怒られそうですがそう単純な事ではありません。

その違いを最も象徴している部分はシートになります。

KLE650A各部

ヴェルシスはER-6ベースながらわざわざ絞って反って跳ね返らせ、タンデムシートを切り離したセパレートタイプが新たに用意されている。

こうすることでライダーの有効着座面積を広げると共に高さにも差を付け、シチュエーションによって前乗りや後ろ乗りなど誰が活用する着座位置による荷重変化幅を凄く大きく取れるようになっている。

そしてここに合わせられるのがVIP待遇の各部。

極端な走行でもアンダーコントロール出来るよう掌握しやすいワイドハンドル、そしてストローク量を稼げる倒立フォーク、簡単にはヨレないアルミスイングアームなど許容量を上げるような装備が奢られてる。

LE650A壁紙

『どんな乗り方も許容する』

というデュアルパーパスの根本を大事にした結果がこれだけの特別な装備であり、ストリートサーフィンというヴェルシスの魅力なんですね。

主要諸元
全長/幅/高 2125/840/1315mm
シート高 840mm
車軸距離 1415mm
車体重量 207kg(装)
燃料消費率
燃料容量 19.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 649cc
最高出力 64.0ps/8000rpm
最高トルク 6.2kg-m/6800rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.7L
フィルター交換時1.9L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

KLE500(LE500B) -since 2005-

KLE500日本仕様

「Multi-Fun machines」

EURO2という欧州の排ガス規制を機に、実に14年ぶりというとんでもない年月の後にモデルチェンジした二代目のKLE500/LE500B型。

誰も覚えてない、もしくは知らず

「とんでもない形をしたZ1000みたいだ・・・」

と驚愕してる人も多いと思いますが、このモデルは先代と違いブライトが逆輸入車として取り扱いをしていました。

ブライト正規取り扱い

ちゃんと国内にも売ってたんです。

まず走ってるのを見た事ない人が大半だと思いますが、一部の超物好きにはフロント21インチの軽量デュアルパーパスという事で今も名前が上がったり。

KLE500Bサイド

先代からの主な変更点としては外見とシートの改良でエンジンはハーフニンジャを続投。

規制に合わせて3馬力/200rpmほど抑えられていますが、それ以外は基本的に先代を続投する形になっています。

ダカールラリーを皮切りにまさかのご長寿モデルとなったKLE500なんですが、KLE500がラリーに参戦したのはそれっきりで再戦する事はありませんでした。

では一体どうしてこんな何年も販売される事になったのか、一体何処らへんが評価されて10年以上も続くモデルになったのか気になったので欧州レビューを読み漁ってみたところ

「何の気兼ねもなく乗れる日常万能車」

という感じで評価されていました。

KLE500B

並列二気筒エンジンを中低速寄りにチューニングしたものだからコンパクトで、トルクも回転数に依存せず出てくれるから取り回しが良い。

加えて6速だから街乗りだけではなくツーリングもお手の物だし、オフロードの方もフロントが21インチな事もあって多少のことなら難なくこなせる。

オマケにハンドルガードやアンダーガードまで標準装備で車体価格も安いという事も相まって一番気軽に乗れる下駄車&エントリーモデルというミドルデュアルパーパス冥利に尽きるような需要があったようです。

余談ですけどこれなにが面白いってベースとなっているEX-5/GPZ500も向こうでは

「買って間違いないロードスポーツのエントリーモデル」

みたいな評価だった事。

兄弟車

やはり血が繋がっているだけの事はある。出来る兄弟ですね。

ちなみにKLE500はGPZ500向けのハイカムやピストンなどでパワーアップが出来るちょっと美味しい思いを出来る立場でもありました。

主要諸元
全長/幅/高 2215/880/1270mm
シート高 850mm
車軸距離 1500mm
車体重量 181kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 498cc
最高出力 44.9ps/8300rpm
最高トルク 4.2kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前90/90-21(54S)
後130/80-17(65S)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR9EA
または
X27ESR-U
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前17|後44
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

KLE500(LE500A) -since 1991-

KLE500A

「WILD AT HEART」

カワサキが1991年に発売したKLE500/LE500A型。

日本も発売されたKLE400の欧州専売モデルで、400と同じくトレール用のパイプフレームにハーフニンジャことEX500(GPZ400Sの500版)のエンジンを中低速よりにチューニングしたものを積んだデュアルパーパスになります。

このモデルを出した理由はダカールラリー、そしてそこからのデュアルパーパスという文化が欧州で流行っていた事が要因かと。

KLE500のカタログ写真

ただカワサキはダカールラリーにはワークス参戦もしていなかったのでインスピレーションやバックボーンがあるわけでもなく、ダカールラリーを睨んで造られたわけでもない。

正直に言うと燃料タンクが15Lしかないのも見ても分かる通り、あくまでも需要があるから造られた雰囲気ラリーレイド的な存在でした。

ただしそこで終わらなかったからヴェルシスへと続く長い系譜になった。

KLE500ラリーレイド

なんとこのKLE500もダカールラリーに1991年から参戦したんです。

「ダカールはテンガイじゃなかったっけ」

と思われている方も多いかと。

確かにテンガイもフランスカワサキ主導で参戦していたんですが、一方でKLE500もイタリアカワサキが主導して参戦していたんです。

1992年のダカールラリー

このダカールラリー参戦がKLE500の命運を決めました。

というのもイタリアヤマハはKLE500が1991年に発売されるとすぐにダカールラリー参戦を計画し、API(イタリアの石油企業)というメインスポンサーの獲得に成功したことで実現。

しかし伊カワサキはタンクを54Lのビッグタンクに変更したくらいで、それ以外の部分は大きくKLE500からかけ離れるようなチューニングをしなかった。

1992年のダカールラリー

要するにプロダクション(市販車)みたいな形でレースに出場。

もちろんワークス体制でバリバリのファクトリーマシン(試作車)を用意していたライバルには敵わなかったんですが、見事に走り切る事に成功し500クラスとしては優秀な成績だった。

いろんなページで言ってるように当時のラリーは欧州をメインに一番加熱していた時代だったからこの事で

「カワサキの市販デュアルパーパスやるじゃん」

と最高のアピールになったんです。

またEX-5/GPZ500ベースで価格も抑えていた事も相まって飛ぶように・・・とまでは言わないけどイタリアやスペインを中心に広く認知されるようになった。

LE500Aのカタログ写真

ダカールラリーというバックボーンを販売後に作るという一風変わった背景を持ってるKLE500。

「試合に負けて勝負に勝ったデュアルパーパス」

と言えるかと。

主要諸元
全長/幅/高 2215/880/1270mm
シート高 850mm
車軸距離 1500mm
車体重量 181kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 498cc
最高出力 48ps/8500rpm
最高トルク 4.3kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前90/90-21(54S)
後130/80-17(65S)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR9EA
または
X27ESR-U
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前16|後44
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)
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