Vulcan500LTD(EN500C) -since1996-

EN500C

「STREET SMART」

A/B型最終年度の一年前となる1996年にクロスフェードする形で登場したVulcan500LTD/EN500C型。

・タンク容量を+4Lし15Lに
・タンクオンメーター
・合わせてボディを大型化
・シート高を15mm下げ715mmに
・ホイールをキャストからスポークへ変更
・駆動をベルトからチェーンへ変更
・六速から五速ミッションへ変更
・スラッシュマフラー

などなど利便性を更に向上させるとともに更にクルーザーらしいフォルムへとモデルチェンジしました。

EN500Cメーター写真

まあ正直に言ってしまうと日本でこのモデルに興味がある人は非常に少ないかと思います。ただし、カワサキにとってこのモデルは間違いなく社史に刻まれるモデルかと。

というのもこのVulcan500LTDは1996年から大きなモデルチェンジをすることなく、実に2007年まで主に北米で販売されていたロングセラーモデルなんですね。

なんでそんなに続いたのかといえば454LTDでも話した通り、このクラスが向こうにとってのエントリークラスだからというのが大前提としてあるんですが、そのクラスの中でもVulcan500LTDは非常に良く出来ていたから。

まず上げられるのが乾燥重量199kgとクルーザーとしては非常に軽い部類だった事。そしてもう一つはバランサーを搭載した事で非常に滑らかに回り、かつ高速巡航も出来るポテンシャルをもったエンジンだった事。

EN500Cスペック

これらの要素から

「ちょい乗りにも使えるクルーザー」

という評価を得た。それは必然的に初心者にうってつけなモデルという需要を得たんです。

EN500Cサイド

ありのまま北米での評価というか世論を書くと、向こうでバイクと言えばクルーザーでありクルーザーといえばやっぱりハーレーという常識がある。だからカワサキにも張り合えるようにVNシリーズというビッグVツインモデルを用意している。バルカンといえばそっちを思い浮かべる人も多いかと。

しかし自分がどれだけバイクに適正があるのか、何処でどんな使い方をするか分からない状況で、初っ端からいきなりビッグクルーザーというのは賢い選択ではないという常識もある。

じゃあ小さいクルーザーにするかというとそれだとクルーザーらしさが薄れるし、大型に混じって走るのはパワー的な面でキツい・・・そういった問題がある中で、5000ドル程度で買えて、軽くて脚付きも良くて、ジェントルだけど元気なパラツインを持っているVulcan500LTDというのは非常に有力な選択肢になる。

カワサキEN500

だからVulcan500LTDはエントリー層に人気あった。

これ本当に面白いんですよ。

というのもVulcan500LTDには兄弟車としてGPZ500Sというロードスポーツモデルがあったんですが、あっちはあっちでロードスポーツが盛んな欧州において

「バイクに乗ってみたいならコレを買っておけ」

と言われる初心者向けベストバイクという立ち位置で人気だった。

EN500Cカタログ写真

それを北米ではVulcan500LTDが担っていたという話。

主要諸元
全長/幅/高 2290/840/1230mm
[2320/830/1125mm]
シート高 730mm
[715mm]
車軸距離 1555mm
[1595mm]
車体重量 186kg(乾)
[199kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 11.0L
[15.0L]
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 498cc
最高出力 60ps/9800rpm
最高トルク 4.6kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後140/90-15(70S)
バッテリー YB12A-A
プラグ D9EA
または
X27ES-U
推奨オイル SAE10W-40
オイル容量 全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ
チェーン
車体価格
系譜図
EN4541985年
EN454/LTD
(EN450A)
EN500A1990年
Vulcan500/LTD
(EN500A/B)
EN500C1996年
Vulcan500/LTD
(EN500C)
EN6502016年
Vulcan S
(EN650A-B/C-D/G/J)

Vulcan S(EN650A-B/C-D/G/J) -since 2016-

バルカンS

「Fun Riding Urban Runner」

先代にあたる500LTDの生産終了から9年後の2016年に登場したVulcan S/EN650A型と、ABS付きのEN650B型。

カワサキの得意とするオフセットレイダウンリアサスペンションである事からも分かる通り、この代からタイで生産されているNinja650系と同じFI化された水冷DOHC並列二気筒649ccが積まれた形になっています。

バルカンSカタログ写真

そんなVulcan Sですがコンセプトを一言で現すと

「既存のクルーザー像に囚われない」

ということになります。

先ず分かりやすいのがデザインで、パッと見でも分かる通りローロングながら逆三角形ヘッドライトやラジエーターシュラウド。それにギュッと凝縮された流線型のボディなど明らかに従来のクルーザースタイルと違うモダンな見た目。

バルカンSリア

テールライトも薄型のLEDタイプで、メーターも多機能LCDタイプ。

しかしVulcan Sが枠に囚われないという要素はデザインだけじゃありません。面白いのは中身の方にある。

Vulcan SにはERGO-FITと称した可変ポジション機能が備えられています。

エルゴフィット

フットペグ:標準/+25mm/+50mm(シフトロッド別売)

ハンドル:標準/前方へ+36mm(別売)

シート:後方へ50mm/標準/前方へ53mm(別売)

と18通りのポジション変更が行える親切機能でなんですが、さらに嬉しいのが標準の段階でハンドル位置を44mm手前(ライダー側)に寄せている仕様にしている事。

バルカンSのハンドルポジション

カタログが用意されなかったりする事から日本での販売はオマケという印象を受けそうになるんですが、こうやってわざわざ日本仕様を用意する力の入れよう。

だからフォワードコントロールの大型クルーザーにありがちな

「ハンドルやステップが遠くて手足が伸び切ってしまう」

という心配が無く、シート高も705mmしかないから脚付きも抜群。

何故これほどまでに、クルーザーにも関わらずここまでポジションにこだわっているのかというと

「スポーツ走行を楽しむため」

です。

バルカンSの壁紙

最初にも話した通りエンジンは万能の象徴とも言えるミドルスポーツNinja650の並列二気筒エンジンをベースに低中速を強化したもの。そしてリアサスペンションも7段階のプリロード調節機能付きで良好なダンピング性能を可能とするリンク式オフセットレイダウンリアサスと、クルーザーらしかぬモノを持っている。

そこに合わせられるのがいま話したERGO-FITという親切機能。そしてシート後方と盛り上がりやニーグリップを考慮したワイドタンクなどでガッチリと身体をマシンにホールド出来るようデザインされた車体。

これによりクルーザーながらマン・マシンの一体感を持って軽快に走れる様になっているんです。当然ながらステアリングもクルーザーらしからぬ軽快さ。

カナダ仕様

これは乗り出すのが億劫にならない街乗りにも使えるクルーザーという先代で評価された部分を更に研ぎ澄ませたスポーツクルーザーと言えるわけですが、もっと突っ込んで語弊を恐れず例えるなら・・・

2016バルカンS

「フォワードコントロールのロー&ロングネイキッド」

という表現がピッタリなモデルじゃないかと。所詮はクルーザーだと高を括って乗ると唸ること間違いなし。

主要諸元
全長/幅/高 2310/855/1090mm
シート高 705mm
車軸距離 1575mm
車体重量 224kg(装)
[227kg(装)]
{229kg(装)}
燃料消費率 23.3km/L
<23.0km/L>
※WMTCモード値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 649c
最高出力 61ps/7500rpm
最高トルク 6.4kg-m/6600rpm
<6.3kg-m/6600rpm>
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70-18(59H)
後160/60R17(69H)
バッテリー YTZ10
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル SAE10W-40
オイル容量 全容量2.3L
交換時1.6L
フィルター交換時1.8L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク120
車体価格

770,040円(税別)
[760,000円(税別)]
{770,000円(税別)}
<830,000円(税別)>

[]内はABS装備のB型
{}内はG型
<>内はJ型

系譜図
EN4541985年
EN454/LTD
(EN450A)
EN500A1990年
Vulcan500/LTD
(EN500A/B)
EN500C1996年
Vulcan500/LTD
(EN500C)
EN6502016年
Vulcan S
(EN650A-B/C-D/G/J)

Vulcan 500(EN500A/B) -since1990-

EN500A

「STREET SMART」

1990年に登場したキャストホイール仕様のEN500A型とスポークホイールLTD仕様のEN500B型。アメリカなど一部の国ではこのモデルからVulcan500という名前でも販売。

EN500B

ナンバリングからも分かる通り排気量を44cc上げたわけですが、これが何故かというとGPZ500という欧州向けのヒットモデルとエンジンを共有し足並みを揃える事になったから・・・と言えるんですが、もっと厳密に遡るとベースがGPZ900Rからその後継であるGPZ1000RX~ZX-10になったから。

ハーフニンジャの経緯

先代と同じように流用しているからボアストローク比も一緒で、997ccを半分だから498ccになっているという単純明快な話。

EN500の仕様

ただしこのモデルからはVulcanという名前がつけられている事からも分かる通り、車体の方も少し大型化され存在感をアップさせると同時に、キャブを絞るなどして低中速トルクを重視するセッティングがなされており、先代のまんまNinja切り取ったエリミネーターかと思うようなタイプよりもクルーザーらしい性格となりました。

主要諸元
全長/幅/高 2290/840/1230mm
[2320/830/1125mm]
シート高 730mm
[715mm]
車軸距離 1555mm
[1595mm]
車体重量 186kg(乾)
[199kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 11.0L
[15.0L]
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 498cc
最高出力 60ps/9800rpm
最高トルク 4.6kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後140/90-15(70S)
バッテリー YB12A-A
プラグ D9EA
または
X27ES-U
推奨オイル SAE10W-40
オイル容量 全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ
チェーン
車体価格
系譜図
EN4541985年
EN454/LTD
(EN450A)
EN500A1990年
Vulcan500/LTD
(EN500A/B)
EN500C1996年
Vulcan500/LTD
(EN500C)
EN6502016年
Vulcan S
(EN650A-B/C-D/G/J)

EN454/LTD(EN450A) -since1985-

EN450

「FIRE YOUR IMAGINATION」

カワサキが1985年に出したEN450または454LTD、それにLTD450など国によって色んな名前を持つEN450A型。カワサキのパラツインミドルクルーザーつまりVulcan Sにつながる系譜の始まりはこのモデルになります。

LTD450

日本ではEN400の方が有名かと思いますが、これはそのフルサイズバージョンで残念ながら欧米専売モデル。そのため基本的に欧米(特に北米)での話を中心に進めます。

先ず持って最初に説明すると海の向こうでこのクラスは今も昔もエコノ(エコノミー)クラスと呼ばれる日本で言う250に近いクラスで、カワサキも70年代から空冷パラツインであるZ440/LTD(日本版Z400/LTD)というネイキッドスタイルのモデルを出していました。

EN454エンジン

それがここにきて一気に15馬力アップとなる水冷ハイパワーエンジン搭載のベルトドライブクルーザー”EN”へと進化。エコノミーというには明らかにオーバースペックなモデルを投入したわけですが、これは前年デビューしたある有名なモデルが関係しています。

1984年に出たカワサキの有名なモデルといえば・・・そう、トップガンでお馴染み元祖NinjaことGPZ900R。

ハーフ忍者エンジン

このEN450もとい454LTDはGPZ900のエンジン部品を流用することで、コストをエコノミークラスに抑えつつもハイパワー化することに成功したという話。

ヘッドもピストンも当然ボアストローク比も同じ、GPZ900Rのカムチェーン側を2つだけ切り取ったような文字通りハーフNinjaエンジン。908ccの半分だから454ccなんですが、アメ車に詳しい方は”454”というナンバリングを聞くとシボレー(ビッグブロック)を思い浮かべるのではないでしょうか。

知らない人に簡単に説明すると、454というのは1970年にシボレーが開発したエンジンの事。

『V8で7.4L(454立方インチ』

というアメリカを具現化したようなエンジンの事で、コルベットなど搭載されたモデルには454というナンバリングが付き、アメリカで非常に人気でした。

454LTDカタログ写真2

そんなモデルとナンバリングが偶然にも同じだった為か、アメリカのバイク雑誌サイクルガイドが両者を競わせる企画を実施。

すると

「454LTDの方がコルベット454LSより1/4マイルでは1秒以上速い」

という結果に。これが話題となり、エコノクラスながら速くて軽くて便利そして何より破格なバイクという形で人気に。

454LTDカタログ写真

しかしそんな人気とは裏腹に残念ながら454LTDは販売から5年目となる1990年を最後に生産終了となりました。理由はメイン市場だったアメリカでのGPZ900R生産を打ち切ったから。そのため454LTDも道連れに近い形で生産終了。

良くも悪くもGPZ900Rと一蓮托生だった454LTD。これがVulcan Sへと続く系譜の始まりになります。

ちなみに気になる車体価格は当時のアメリカの平均が4万ドル程度だった自体になんとお値段お驚きの$1999。

主要諸元
全長/幅/高 2205/820/1220mm
シート高 745mm
車軸距離 1485mm
車体重量 180kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 11.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 454cc
最高出力 50ps/9500rpm
最高トルク 4.0kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後140/90-15(70S)
バッテリー YB12A-A
プラグ D9EA
または
X27ES-U
[DR8ES
または
X27ESR-U
※CAモデル]
推奨オイル 10W-40
オイル容量 全容量3.4L
スプロケ
チェーン
車体価格
系譜図
EN4541985年
EN454/LTD
(EN450A)
EN500A1990年
Vulcan500/LTD
(EN500A/B)
EN500C1996年
Vulcan500/LTD
(EN500C)
EN6502016年
Vulcan S
(EN650A-B/C-D/G/J)
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