Z400(ER400D) -since 2019-

Z400/ER400D

「BUILT TO BE SEEN」

30年以上ぶりに名前が復活したZ400/ER400D型。

基本的にNinja400と共有なので認定型式ではEX400Gとなっていますが、モデルコードはER400D型。ちょっと紛らわしいですね。

ER400Dサイド

大きな違いとしてはカウルがほぼ無い事もそうなんですが、ハンドルをセパレートタイプからバーハンドルに変更しトップブリッジ上部にマウント。

アップライトなポジションにであると同時にストリートファイターらしくワイドになってます。なんでも90mmもワイドなんだとか。

ER400Dハンドル

メーターもNINJA400の物ではなくZ900と同じ多機能デジタルメーター。本当に時代の進化を感じる。

リアサスペンションも街乗りを重視する形にセッティングされ直しています。

元というか兄弟車のNinja400を系譜の中でベタ褒めしたんですが、発売からしばらく経って界隈からの意見はどうなっているのかというと・・・本当に絶賛の嵐しかない。

何が素晴らしいと言われているのかというと

『圧倒的な切り返しの軽さ』

です。

それを踏まえてZ400を見ていると、カウルが無いぶんNinja400より1kg軽くなっている上にアップライトなワイドハンドル・・・つまりその圧倒的な切り返しの軽さの更に上を行く切り返しの軽さを持っているという事になる。

ER400Dディメンション

あともう一つ付け加えるとするとエンジン。

これは乗ってみた人なら分かるんだけど、ハッキリ言って一般的なライダーならこの時点でかなりオーバースペック気味。

「Ninja400ならミニサーキット楽しそう(ちょうど良さそう)」

っていう声が聞かれるんだけど上級者でも無い限りSPA直入などのミニサーキットレベルでは余すパワーを持ってる。何でかって言うと軽い上にモリモリパワーが出るから。

エンジンパフォーマンス

オートポリスなんかの広い国際サーキットの方が向いてると言っていいほど。

「なんで例えがSPA直入とオートポリスなの」

とツッコミを入れてもらうと助かるのですが、これは2019年から

『Ninja LIMITEDクラス』

というNinja400ワンメイクレースが始まっていてSPA直入(ミニサーキット)やオートポリス(国際サーキット)で激闘を繰り広げているから。

NINJA400リミテッドクラス

これを取り上げたかったからという魂胆。まあカワサキのサーキットですしね。

ただそうは言ってもこれはクローズドの話。

「サーキットもレースも興味ない」

という人も多いでしょう・・・そういう人こそストリートファイターのZ400。

街乗りで文字通りブンブン振り回せるストリートファイター仕様なうえに車体価格もカウルが無い分40,000円も安いというコスパ。

2019Z400

ジムカーナの定番車種に時間の問題だろうなと思ったり。

主要諸元
全長/幅/高 1990/800/1055mm
シート高 785mm
車軸距離 1370mm
車体重量 166kg(装)
燃料消費率 24.8km/L
※WMTCモード値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 399cc
最高出力 48ps/10000rpm
最高トルク 3.9kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後150/60R17(66H)
バッテリー FTX9-BS
プラグ LMAR9G
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.3L
交換時1.6L
フィルター交換時2.0L
スプロケ 前14|後41
チェーン サイズ520|リンク106
車体価格 620,000円(税込)
系譜図
D1974年
400RS/Z400
(D)
T1979年
Z400LTD/CUSTOM
(T/R)
/EX400G2019年
Z400
(ER400D)

Z400LTD/CLASSIC(Z400T/R) -since 1979-

Z400LTD

「REAL AMERICAN」

先に紹介したZ400のエンジンをベースに

・プルバックハンドル

・ティアドロップタンク

・専用フレームにハイバックシート

を施してアメリカンスタイルにしたモデル。

Z400LTDカタログ写真

俗に言うジャメリカンというやつなんですが、イージーライダーや白バイ野郎ジョン&パンチなどで高まっていたアメリカン人気に火を付けブームを巻き起こすキッカケになったモデルでもあります。

4年ほど前に改正された中型限定自動二輪免許(現:普通自動二輪)の若者が増えてきたのも追い風でした。

相変わらずカワサキカワサキは先見の明が凄いな・・・と言いたいところなんですが、実際は先に紹介したアメリカ向けにも同じモデルがある。

KZ440LTD

つまり結局の所これもアメリカで街乗りに最適なクルーザーとして売り出す狙いがあったモデル。しかも狙い通り人気が出てたよう。

だからこれジャメリカンとか言われますが、実際に本場アメリカで売ってしかも通用していたモデルなんですね。

評価された理由は先代400RS/Z400でも話した通りバランサーを組み込んだ360度クランクという振動が無く、かつ豊かなトルクを生むエンジンのおかげで全く疲れないから。

この事からカワサキは2年目の1980年にはエンジンを改良し

・サイレントカムチェーン

・AT式カムテンショナー

・セルスタートのみ

などの改良を施し使い勝手と静寂性を向上。

合わせて紹介で申し訳ないのですが、この時に先に紹介したZ400のボディにこのエンジンとキャストホイールを付けたモデル

Z400カスタム

『Z400CUSTOM/KZ400G』

も併売する形で登場。Z400も物凄くレアだけどそれ以上にレアなZ・・・まず見ること無いと思います。

話をLTDに戻すと1982年には更に静寂性を追求するため駆動をチェーンからベルトドライブにしたモデル

Z440LTD/KZ400T

『Z400BeltDrive/KZ400T』

へとモデルチェンジ。

”サイレントライディング”という造語を用いて静寂性をアピールしていました。アメリカンなのにサイレントってなんだか面白い話ですけどね。

補足としてコレとは別にZ400LTD-II/KZ400Kというモデルもありました。

Z400LTD-II

ただこちらはZ400FX/KZ400E(四気筒)のエンジンを積んだモデル。LTDモデルが(日米問わず)思わぬ人気を呼んだ事から出された背景があるものと思わます。

ここから400RS/Z400はGPZ400SやER-4として、それとは別の形で成功したLTDモデルはバルカンやエリミネーターへと発展していく事になるんですがNinja400の系譜あたりで書いたと思うので割愛させてもらいます。

主要諸元
全長/幅/高 2095/825/1175mm
[2110/785/1110mm]
シート高 740mm
[770mm]
車軸距離 1390mm
[1375mm]
車体重量 169kg(乾)
[166kg(乾)]
燃料消費率 46.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 12.0L
[16.0L]
エンジン 空冷4サイクルSOHC2気筒
総排気量 398cc
最高出力 36ps/8500rpm
最高トルク 3.20kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前3.25S19-4PR
後130/90-16(67S)
[前3.50S19-4PR
後4.10S18-4PR]
バッテリー FB12A-A
プラグ B7ES
推奨オイル SAE10W40~20W50
オイル容量 全容量2.9L
スプロケ 前15|後45
[前16|後40]
チェーン サイズ530|リンク100
[サイズ530|リンク104]
車体価格 340,000円(税別)
[350,000円(税別)]
※[]内はCLASSIC(Z400R)
系譜図
D1974年
400RS/Z400
(D)
T1979年
Z400LTD/CUSTOM
(T/R)
/EX400G2019年
Z400
(ER400D)

400-RS/Z400(Z400D) -since 1973-

Z400D

「美しいツインのロードスター」

Z400といえばと恐らく多くの人が1979年に出た直4のZ400FXを思い浮かべると思いますが最初はこのモデル。

しかし重要なのは単純に最初というだけではなく

『Z史においてもっとも貢献したZ』

という事。

そこらへんも含めて少しお付き合いを。

400RSカタログ写真

名前からも分かる通り前年に出ていたロードスターシリーズの750RS(Z2)、650RS(W3)に次ぐ立ち位置で1974年に400RSとして登場しました。

ちなみに開発も稲村さんを筆頭としたZ1/Z2と同じ開発チームで兄貴たちの流れを組む車体デザインなんですが、デザイナーだけは外部から引っ張ってきたよう。

Z400カタログ写真

エンジンの方はOHC二気筒の至ってシンプルなデザイン。変わっている事といえばドドッ、ドドッと来る昨今の180度クランク二気筒ではなく、ドッドッドッと等間隔で来る360度クランクにバランサーを付けたものであること。

さらに2年後の1976年にはZ750FOUR(750RSから改名)に習って400RSからZ400へと改名され、1977年モデルではエンジンと電装系を改良し1馬力アップとなりました。

>>補足:二気筒エンジンが七変化した理由-クランク角について-

少しややこしいのですが更に翌1978年には再びモデルチェンジし、六速ミッション化やシートカウルなどを装備。Z2に近い車体デザインに変更されたのが特徴です。

Z400最終型

混乱している人も居るかと思うのでまとめると

1974年400RS:初期型

1976年Z400:車名を変更したモデル

1977年Z400:エンジン及び電装系を改良(D3型)

1978年Z400:Z2ルックに変更されたB型

というのが400RS~Z400のモデルチェンジ歴になります。

さてさて・・・最後にちょっと小話。

実はこの400RS/Z400もともと国内市場を狙って開発されたバイクじゃないんです。

Z400B型カタログ

「400なんだから国内向けだろ」

と思いがちなんですが・・・これ900Super4(Z1)と同様にアメリカ向けに開発されたバイクなんです。

カワサキは北米進出を狙って神戸牛を食べさせるステーキ作戦を立てたのは有名かと思います。

・NY STEAK→1972年900Super4(Z1)

・TARUTARU STEAK→750SQUARE4(ボツ)

・T-BORN STEAK→1976年Z750TWIN

・SIRLOIN STEAK→1976年Z650

などで初っ端のニューヨークステーキ作戦が大成功を収めていたんですが、一方でアメリカの営業から

「気軽に乗れるCB350が売れてるからその対抗馬を出せ」

という強い要望があった。

そうして始まったのがガツンと食べてもらう神戸牛ではなく、ペロッと誰でも食べてもらえる様にという思いを込めて

『HALIBUT(ひらめ) STEAK』

と名付けられた作戦であり、それが形となったのがこの400RS/Z400(北米名KZ400)というわけ。

KZ400

そうして登場した400RS/Z400は狙い通りアメリカで大ヒット。

川崎重工単車部の年間売上1000億円突破の原動力となりました。※ステーキ作戦の企画をした種子島さんの証言(Riders Club/No45)より

「BIG IS BIGGERなアメリカでどうしてこんな小排気量が売れたのか」

と不思議に思う方もいるかと。

アメリカKZ400のカタログ写真

その理由の一つはオイルショックです。

第4次中東戦争によって原油価格が四倍ほどにまで跳ね上がった事であのアメリカ人ですら燃費を気にするようになり、車よりもエコなバイクを好むようになった事が一つ。

そしてもう一つは400という手頃な価格と使い勝手から日常の用途や初めてのバイクとしてにうってつけだったから。

この二つの理由から400RS/Z400は人気を獲得。そのため向こうではZ400DELUXEというモデルも登場しました。

KZ400DX

アメリカらしいモデルですね。

アメリカでは1981年にKZ440にモデルチェンジし初代から合わせ約10年間に渡って広く長く愛されたZとなりました。

KZ440

カワサキはこのヒラメステーキの大ヒットによって

「肉だけではダメなんだ」

という事に気づき二気筒にも注力していく事となります。

Z400D型カタログ

日本ではCB400FOURや400SS/KH400があったからあまり人気は出なかったものの、世界ではZとして大成功を収めた

「カワサキの考えを改めさせた偉大なZ」

というわけ。

主要諸元
全長/幅/高 2080/810/1120mm
<2045/810/1130mm>
シート高
車軸距離 1360mm
車体重量 170kg(乾)
<167kg(乾)>
燃料消費率
燃料容量 14.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC2気筒
総排気量 398cc
最高出力 35ps/8500rpm
[36ps/8500rpm]
最高トルク 3.17kg-m/7500rpm
[3.3kg-m/7000rpm]
変速機 常時噛合式5速リターン
{常時噛合式6速リターン}
タイヤサイズ 前3.25S-18-4PR
後3.50S-18-4PR
{前3.00S-18-4PR
後3.50S-18-4PR}
バッテリー 12N 12A-4A-1
プラグ B8ES
<B6ES>
{B7ES}
推奨オイル カワサキRSオイル
または
SAE 10W40
オイル容量 フィルター交換時3.0L
交換時2.6L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ530|リンク100
車体価格 298,000円(税別)
[310,000円(税別)]
※[]内は77年式Z400(D3)
※{}内はZ400後期(B型)
※スペックは北米仕様を参照
系譜図
D1974年
400RS/Z400
(D)
T1979年
Z400LTD/CUSTOM
(T/R)
/EX400G2019年
Z400
(ER400D)

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