ヨシムラによるコンプリートカタナことKATANA1135R。
1000台限定だったファイナルエディションをベースに95馬力から150馬力になり車重も250kgから197kgともはや別バイク状態。
台数は僅か5台で車体価格は358万円。更にお金さえ用意すれば買えるわけではなく購入するにはまずヨシムラからの質問やカタナに対する考えを書いた書類審査を勝ち抜く必要がありました。
ちなみにアフターも面倒を見る代わりに転売不可という条件付きだったんですがそれでも応募者は30人ほど居たんだそう。
ただし現在は別オーナー(ショップ含む)の手に渡っており今でもワンオーナーで所有されているのは一台だけだったかと・・・自信ないですが。
話を戻すと1135Rは多方で取り上げられ伝説化しているので有名かと思いますが、実はこのモデル本当は造る予定ではなかった事をご存知でしょうか。
ソコらへんの話を経緯と共に書いていきます。
昔を知らない人の為に補足するとヨシムラはKATANA1135Rを出すに至るまでずっとカタナとの関係が続いていました。
始まりはカタナが出た1982年のAMA(アメリカ市販車レース)で、同年には鈴鹿8耐などもカタナレーサーを用意し奮闘。
翌年からレギュレーション(ルール)が750ccに変更される事が決まっていたにも関わらずヨシムラはカタナに全力投球でしたわけです。
その後はスズキに沿ってGSX-R750に移行していったんですが、一方で1994年にビッグネイキッドブームの影響で
『NK1(750cc以上のネイキッド限定)』
というレースが鈴鹿で開催される事が決まるとヨシムラはこれに迷わず参戦・・・ベースはもちろんカタナ。
どう考えても分が悪い旧世代のカタナで互角に戦っていたんですが、その勇姿を目の当たりにしたカタナオーナー達から
「NK1と同じチューニングをしてくれ」
という依頼が飛び込んでくる様に。
理由はもちろんオーナーの誰もが諦めかけていた『世代の性能格差』を解消出来ると思ったから。そういう人たちにとってNK-1カタナは本当に希望の光だったんです。
ここからヨシムラはレースで培った技術をストリートに応用する形でカタナとの関係が継続。
そんな中で2000年に飛び込んできたのがファイナルエディション発売の報。
当然ながらヨシムラの耳にも入ったんですが当時ヨシムラは前年に発表した隼のコンプリートマシンX1で手一杯でカタナまで手が回らない状況だった。
しかしずっと付き合い続けていたカタナの最後なのに何も出来ないのは駄目だと当時の営業課長だった上野さんや開発課長だった村田さんは考えた。
「いま買わないともう二度と手に入らない・・・」
そう考えた末なんと会社の承諾なしに無断でファイナルエディションを5台調達し、X1の生産が落ち着くまで工場の隅に隠しておくという手段に。
そしてX1が落ちついた頃になって引っ張り出した所、まんまとカタナに携わり続けてきたカタナ愛溢れるメンバーがホイホイと釣られる様に自然と集まりだし
「これまでの全てを投じたカタナを造りたいね」
という話になり自主的に開発がスタート。
これが1135Rが開発される事になった経緯。
発売がファイナルエディションの翌年だった事や、僅か5台だけだった事はこれが理由。
そして転売不可や書類審査という高い敷居が設けられたのは
「自分たちと同じくらいカタナ愛を持ってる人に乗ってもらいたい」
という思いがあったから。
では出来上がった1135Rがどういうバイクだったのかというと開発コンセプトは
「公道を楽しめて長く愛されるKATANA」
・・・そう、意外に思うかもしれませんが1135Rはカリカリのレーサーではありません。
一般ユーザーが公道で楽しめる事を最重要視したモデルで、チューニングにありがちな耐久性の軽視などをしていない。
ここが1135Rの凄いこと。
性能が最重要視されるレースで培ったノウハウだけでなく、レースの反響で培ったストリートでの感性のノウハウまでカタナの全てを網羅していたヨシムラからこそ造れた
『世代を越える性能と感性を持ったカタナ』
である事が凄いんです。
1982年のデビューからずっと付き合い続けたカタナ愛溢れるヨシムラカタナの集大成と呼ぶにふさわしいモデルでした。
主要諸元
全長/幅/高 | – |
シート高 | – |
車軸距離 | – |
車体重量 | 197.8kg(乾) |
燃料消費率 | – |
燃料容量 | – |
エンジン | 空冷4サイクルDOHC4気筒 |
総排気量 | 1135cc |
最高出力 | 150ps以上 |
最高トルク | – |
変速機 | – |
タイヤサイズ | 前120/70ZR17(58W) 後190/50ZR17(73W) |
バッテリー | – |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
– |
推奨オイル | – |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
– |
スプロケ | – |
チェーン | – |
車体価格 | 3,580,000円(税別) |
カスタム箇所
φ74ヨシムラピストンKIT
ST-1カムシャフト
スペシャルチタン手曲サイクロン
ヨシムラミクニTMR-MJNφ40A/SキャブレターKIT
スロットルホルダー&グリップラバー
カーボンヒートガード
デジタルシングルメーターKIT
スペシャルオイルクーラーKIT
Mgエンジンカバー
Mgシリンダーヘッドカバー
オイルキャッチタンク
強化クラッチスプリング
スペシャルジェネレーターカバー
ヘッドポーティング
面研
シリンダーボーリング
ヨシムラスペシャル加工フレーム(強化&ヒップUPタイプ)
カーボンフェンダー
スペシャルアルミ軽量タンクKIT
3次元削出トップブリッジ(シリアルNo、刻印)
削り出しオリジナルステップKIT
FFVSフロントフォーク&リアショック
スピードフローブレーキホース(フロント・リヤ)
カスタムシートJOYスペシャル
小型ウインカー
フロントキャリパー
ディスクブレーキ
リアキャリパー(軽量NISSIN)
サイドスタンド
小型軽量バッテリー
スペシャルスイングアーム
MAGTAN軽量ホイール
ファイナルRK520&チェーン
AFAMスプロケット
STACKレーシングメーターKIT
各部ボルト類変更
Magicalスペシャルカーボンミラー
ナンバープレートホルダー
ハイグリップタイヤ
フレーム補強
フレーム加工&塗装
FFVSサスペンションスペシャルセッティング(足廻り全体)
フロントフォークボトムケース(サンドブラスト・塗装)
各部軽量化
メーターステー製作取付
バッテリーBOX小型加工
スペシャルワイヤーハーネス加工取付
スピードセンサーステー製作取付
電装プレート製作・電装パーツ移設
サイドスタンド加工
シリアルNo、刻印
旧世代、ともすれば旧旧世代と言えるバイクで参戦する。
この心意気にバイク乗りはイチコロなんですよ。
戦闘機で例えるなら、F-15やF-16などにF-4で、または三菱F-1で挑む様な感じでしょうか(ワケ分からんですね 失礼しました)。
でも、機器類を近代化改修した航空自衛隊のF-4は、訓練でF-15Jを模擬撃墜した事があるそうなので侮れません。
旧型でもチューナーや乗り手次第というのはバイクも戦闘機も共通なんじゃないかと思っています。