MT-07(1WS/1XB/BU2) -since 2014-

MT-07

「COOL URBAN SPORT」

兄貴分であるMT-09から少し遅れて登場したMT-07。

ABS無しが1WSで、ABS有りが1XBとカラーコード枯渇から2017年のみBU2。

ちなみに09と07は統括する人こそ同じだったものの、開発チームは別々だったから

「”今までにない面白い物(※MTのテーマ)”を具現化させるのはウチだ」

と互いに火花を散らしながら開発していたんだとか。

MT-07

MT-09の方が先に出た上に珍しい三気筒だった事から話題を持っていかれた感がありますが、このMT-07も負けず劣らずな物を持っている。

何よりまず挙げられるのが新開発のクランク角270度並列二気筒エンジンですね。

CP2エンジン

ヤマハ自身もCP2(クロスプレーン二気筒)と言っている通り、YZF-R1のCP4(クロスプレーン四気筒)を真っ二つにしたようなエンジンで点火タイミングはVツインと同じ。

まあクランクとか点火タイミングについては「二気筒エンジンが七変化した理由|バイク豆知識」で書いたので割愛しますが

270度クランクのトルク

”二気筒=ガサツに回る”という先入観を持って乗ると、点火タイミングはもちろんクロスプレーンによる慣性トルク(回転ムラ)の無いスムーズなトルクに肩透かしを喰らいます。

昔を知っている人は市販車初の270度クランクパラレルツインのTRX850やTDMを思い出す人も多いかと。

TRX850

「現代パラツインスポーツのパイオニアTRX850|系譜の外側」

ただこれらのバイクとMT-07は点火タイミングが同じだけで全く違うエンジンです。

シリンダーのB/S比や前傾や材質も勿論そうなんだけど一番分かりやすいのが振動を打ち消すバランサーで、TRXやTDMが二本だったのに対しMT-07は一本になっています。

MT-07エンジン

簡単に言うと二本だと振動を完全に消せるけど、一本にすると少し残る。

なんでわざわざ一本減らしたのかというと、MT-07の開発においての最重要項目が

”徹底的に軽く作ること”

だったから。

MT-07サイド

つまり軽さを取るためにバランサーを一本抜いたわけ。

当たり前ですが抜いた事によって消せなかった振動もそのままではなく、クランクとのバランスを計算し心地よく残すよう調整。

こうするためにヤマハが定めたクランクの最低重量より軽くすることになり猛反対にあったそう。結局は押し通したみたいですけどね。

2014YAMAHAMT-07

だからMT-07は予想を遥かに超えるほどタコメーターがビュンビュン動きます。

バランサーを抜いた理由は軽量化のためと開発者(小林さん)も言っているんですが、当然これはコスト面もあると思います。

実際MT-07は装備重量で179kgという圧倒的な軽さだけでなく

「税込69万9840円(※初年度)」

という破格のような安さも持っていた。このおかげで2015年の大型部門で販売台数一位を記録しています。

1WS

なんでMT-07がコレほど安いのかというと、トラクションコントロールや電子スロットルや走行モード切り替え等の最先端デバイスを付けなかった事。

そしてもう一つはアルミやチタンなどの高価な素材を極力使っていない事です。

2016年カラー

・・・しかしここで疑問に思う人も多いと思います。

何故アルミやチタンを使うかというと

「軽くする事が出来るから」

ですよね。

にも関わらずMT-07は装備重量で179kgとかなり軽い。これには”今までに無いもの”というテーマとは別の裏テーマが関係しています。

ヘッドライトとテールライト

それは車体価格を抑えないといけない事から生まれた

「金が使えないぶん知恵を使おう」

という要するに創意工夫でコストを抑えようというテーマ。

マウントプレート

それが見て取れるのが例えば公式でも説明されているサス、マフラー、ピボット部のマウントプレートの一体化。

MT-07ハンドル周り

他にもスイッチボックスなど流用できるものはMT-09から拝借し、デコンプ(圧縮を少し逃がすことで始動性を上げる)機能を設けることでバッテリーとセルモーターをダウンサイジングなどなど。

単に安物にグレードダウンするのではなく知恵と工夫を用いることで、軽く且つ安く造ることが出来たわけ。もちろんグローバル展開によるスケールメリットも大きいですけどね。

2015年カラー

車体価格の割に安っぽく見えないのが何よりの証拠なんですが、実はこれにもちゃんと配慮があるです。

その配慮が特に現れている部分が、アルミ素材の凝った形をしたピボットカバーやクランクケースカバー。

MT-07リアビュー

そして明らかに不相応なスイングアームと180/55というワイドタイヤ。

これらはハッキリ言ってデザイン有りきの物。

これらを採用しなければ車体価格はもっと抑えられたし知恵を絞り出す苦労も緩和されるのに譲らなかった。

MT07

「眺める楽しさも絶対に必要だ」

とプロジェクトリーダーの白石さんが考えていたからです・・・が、少し別の効果も持ったと思うんですよ。

MT-07がなんで売れたかって言うとやっぱり乗って楽しかったから。

長くなったので2018年型で話しますがMT-07が誰のために作られたバイクかというと

「何処にでも居る普通のライダー」

です。

MT07のターゲット

でもだからといって見るからに安っぽいと”普通のライダー”は乗る前から安物バイクという結論を出し選択肢から外してしまう。

MT-07は価格を少し上げてでもデザインを取ったから門前払いされることなく、実際に乗ってくれて感動する普通のライダーが多かった。

だからこれだけ売れたんではないかと。

主要諸元
全長/幅/高 2085/745/1090mm
シート高 805mm
車軸距離 1400mm
車体重量 179kg(装)
[182kg(装)]
燃料消費率 24.1m/L
※WMTCモード値
燃料容量 13.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 689cc
最高出力 73.4ps/9000rpm
最高トルク 6.9kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR8A-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.0L
交換時2.3L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前16|リア43
チェーン サイズ525|リンク108
車体価格 648,000円(税別)
[694,000円(税別)]
※[]内はABSモデル(1XB/BU2)
系譜図
2014年
MT-07/A
(1WS/1XB/BU2)
XSR7002016年
XSR700
(B34)
20182018年

MT-07(B4C)

「MT-07(1WS/1XB/BU2) -since 2014-」への4件のフィードバック

  1. ミドルクラスのパラツインなので、せっかくならTX750から始めてください

  2. ↑ミドルクラスのパラツインという括りではなく、270°クランク直列2気筒のネイキッドという括りなのでTX750を入れるべきではない。
    それはまた別の系譜。

  3. ↑ミドルクラスのパラツインという括りではなく、270°クランク直列2気筒のネイキッドという括りなのでTX750をここに掲載するべきではない。
    それはまた別の系譜。

    1. MT-07が低価格かつデザインにこだわっていたのは、2012年に大型バイク販売台数一位になっていた、ホンダのNCシリーズに対するヤマハなりの答えなのかも?
      エンジンも同じ270度クランクパラツイン1軸バランサーでしたし、NCの回らないエンジンに思うところがあったんでしょう

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