騒音規制の歴史と今後

騒音測定

年を追うごとに強まってくる規制。そこで少し規制について勉強をしてみましょう。

規制というのは凄く大まかに分けて

・排出ガス規制

・騒音規制

この二つがありますが、今回は騒音規制のお話。

これから説明する事の補足として最初に説明しておきたいのですが、規制というのは導入されて1~3年程度の猶予があります。

ざっくり説明すると

規制の流れ

・新型車はその年から

・現行車は1年後から

・輸入車は2年後から

といった感じになってます。さすがに国もメーカーの事を考え規制と同時に販売禁止なんて事はしません。我ながら分かりにくいイラストですねスイマセン(二度目)

そして騒音規制の本題なんですが・・・実は騒音規制と一言で言っても非常にややこしいのが現実です。

騒音規制においてチェックされる項目は3項目あります。

【定常走行騒音】

最高出力の60%の回転数で走行した速度(この速度が50km/hを超える場合は二速または三速50km/h)で発生する騒音を7.5m離れた場所で測定。

【加速走行騒音】

定常走行状態からフル加速して10m走行した時点で発生する騒音を7.5m離れた場所から測定。

【近接排気騒音】

停車状態で、最高出力回転数の75%(最高出力回転数が5000回転以上の場合は50%)の回転数で発生する騒音を排気方向から45度、排気管から0.5m離れた場所で測定。

以上の三種類なんですが何がややこしいってこれら3つの規制が綺麗に揃っておらずズレてたりするんです。

ですので纏めて(三段階に分けて)説明する際に年号が少しズレる場合がありますがご了承下さい。

さて本題。

騒音規制の第一段階、一番最初に騒音規制が入ったのは排出ガス規制とは対照的に意外にも古く1952年からですが、データが無いので1971年から紹介。

1971年騒音規制値

 定常騒音|加速騒音
軽二輪(126~250cc)  74db|84db
小型二輪(251cc~)  74db|86db

この頃はまだ近接騒音という規制は無く、規定値も緩かったのでメーカーもそれほど問題にしていませんでした。

メーカーが騒音規制に頭を悩ませるようになったのは二段階目にあたる1986年の規制から。

1986年騒音規制(1971年規制値)

 定常騒音|加速騒音|近接騒音
軽二輪(126~250cc)74(74)db|75(84)db|99db
小型二輪(251cc~)74(74)db|75(86)db|99db

定常、加速に加え”近接騒音規制”が初めて導入される事となりました。問題となったのが加速騒音が一段と強化され75dbになった事です。業界では75db規制と呼ばれて恐れられました。

ここからメーカーの消音と戦いが始まります。

そして一層厳しくなった第三段階の2002年。

2001年騒音規制(1986年規制値)

 定常騒音|加速騒音|近接騒音
軽二輪(126~250cc)71(74)db|73(75)db|94(99)db
小型二輪(251cc~)72(74)db|73(75)db|94(99)db

近接騒音に非常に厳しい規制となりました。もうメーカーは阿鼻叫喚です。

今さらですがツラツラ書いててもしかしたら

「あんまり変わんないじゃん」

って思ってる人が居るかもしれません。デシベルという単位は非常に分かりにくいですもんね。

分かりやすく言うと3デシベル違えば明らかに音の大きさの違いが分かり、6デシベル違うと倍違います。20デシベル違うと10倍の音の差があります。

そして2001年の騒音規制の時点で1971年に生まれた最初の加速騒音規制値の1/20にまでになりました。

騒音規制

73dbといえば電話の呼び鈴レベルです。

分かりやすく新旧バイクで簡単に比較すると

騒音規制比較

こういうレベルです。

更にこの規制値の厳しさで非常にアンフェアだと思うのが

加速騒音規制値

二輪:73db以下

四輪:76db以下

だということ。なんでバイクの方が厳しいんだよって話ですよね。

「日本は世界一バイク規制が厳しい」

と言われる所以はここにあります。環境省はその事を自慢気に書いてたりしましたがメーカーは死に物狂いです。

例えばSR400っていうずっと昔から空冷で大して形も変わらない長寿バイクがありますよね。

初代SR400

これが1978年に発売された初代のSR400です。

そしてこれが

現行のSR400です。ほとんど変わってない様に見えますよね?

でも実は変わってるんです。

エンジンの方にズズッと近づいてみると・・・

エンジン消音材

黒いゴムみたいな物がフィンの間に挟まってるのが見えますか?

これはアブソーバーゴムといって、空冷の場合どうしてもフィンが振動して余計な騒音を起こしてしまうという問題があるんですが、それを防ぐ為に挟んでるわけですね。

他にもチェーンカバーの裏やスプロケカバーの裏などにも消音材を詰め込んだりしています。これらの事をしても減らせる音はせいぜい1db前後なのですが、こうでもしないと日本の騒音規制に引っかかるんです。

ちなみに日本と同じバイク先進国である欧米と比較すると

 定常騒音加速騒音近接騒音
日本
(251cc~)
  72db73db94db

アメリカ
(全排気量)

  なし80dbなし
欧州
(176cc以上)
  なし80dbなし

となってます。日本の厳しさが際立ちますね・・・国は鬼なのか。

ここで唐突ですがバイクの場合、逆輸入車ってありますよね?

ハイパワーな大型バイクの多くは逆輸入車だったりするわけですが、そもそも何で逆輸入車なんてものが存在したかというと。

日本でバイクを売ろうとなった場合、国から認可をもらわないと売れないわけですが、認可をもらう方法が「型式指定制度」と「並行輸入自動車審査制度」と二種類あるわけです。

【型式指定制度】

いわゆる国内モデルがやっている方で、一台テストして合格したら同じ車両は検査なしで売っていいよって制度。

【並行輸入自動車審査制度】

外車を始めとした数が出ない車両向けの認可方式。

上の型式指定制度と違い”近接騒音規制が規定値ならOK”という検査の甘さ。縦割り行政ゆえの隙間なのか昔みたいに外国からの圧力なのかは分かりません。

だからメーカーは「外車として扱って輸入してるから並行輸入車審査で」という手を使ってるわけです。

それでも例えば

パニガーレ本国仕様

パニガーレといったハイセンスな外国のバイクが

パニガーレ日本仕様

こういう悲惨な状態で入ってくるのは、その近接騒音試験をクリアする為にマフラーエンドを遠くして測定時にエンジンノイズを拾わない様にするため。規制が甘いと言っても近接騒音は厳しいんです。

上でも言いましたが近接騒音というのは排気方向から45度、排気管から0.5m離れた場所で測定。さらに測定方法は最大出力回転数の半分の回転数なので、マフラー伸ばしただけではクリアできない場合は最大出力回転数も下げる事で規制をクリアしているんです。パワーダウンしてる理由はこれ。

ちなみに外国メーカーのバイクと違い国内4メーカーの逆輸入車はだいたい日本で作ってます。

が、輸出車として日本で作ったにも関わらず海を渡っていない車両は当然ながら逆輸入車とは認められずこの制度は利用できません。

だからメーカーも一度海外へちゃんと輸出してるんです。だから国内モデルより割高なんですね。(一説では書類だけ送・・・いやなんでもないです。)

更に違う話をすると社外マフラーも既に規制が入っています。最初に入ったのは1998年。それから2001年、2010年と三回入っています。

1998年10月規制

1998年10月1日以降に生産されたバイク(継続車99/9~、輸入車00/9~)向けのマフラーは近接99db(~250ccは94db)まで。

2001年10月規制

2001年10月1日以降に生産されたバイク(継・輸ともに03/9以降)向けのマフラーは近接94dbまで。

2010年4月規制

2010年4月1日以降に生産されたバイク(新・継・輸全て)近接94db・加速82dbまで。

上記に加え後付消音器(着脱式バッフル)の禁止。

となってます。排ガスや騒音の規制と同じく遡って適用されることはありません。

1998年の規制以降、これらの規制値をクリアした社外マフラーには公認の証であるJMCAプレートが付きます。

JMCA

もし付いてないマフラーを付けてた場合は普及してきた今となっては有無をいわさず切符を切られる可能性があります。年式が新しいバイクは特に。

さらに罰則も強化され、本人はもちろん装着したバイク屋までもが罰を受けることになりました。

さて話を戻して・・・規制強化で絶望しかなかった日本の騒音規制ですが

ここで朗報があります

「排出ガス規制の歴史と今後」でもお話した通り、日本は規制に対する国際協調(WP29)する事となりました。つまり騒音規制も国際基準化「騒音防止装置協定規則(ECE R41-04)」に準拠する形になります。

この事で今まで軽二輪・小型二輪という排気量によるクラス分けから”PMR(Power to Mass Ratio)”でのクラス分けに変わりました。

PMR=最大出力(kW)/(車両重量<kg>+75kg)×1000

とまあ仰々しい計算式ですが実際のところは

Class1:PMR≦25(実質50cc)

Class2:25<PMR≦50(実質125cc)

Class3:50<PMR(実質126cc以上)

という感じで非常にシンプル。

そして肝心の規制値がどうなったのかというと

2014年騒音規制(2001年規制値)

 定常騒音加速騒音近接騒音
Class1  廃止73db廃止
Class2  廃止74db廃止
Class3  廃止77(73)db廃止

といった感じです。

定常と近接が廃止(厳密に言うと試算方法が変更)され、加速騒音のみになります。ユーロよりはまだ厳しい規制値ですが緩和されました。

いつからこの規制になるのかって話ですが、既に始まってます。

新型車:2014年1月~

継続車:2015年1月~

輸入車:2016年1月~

となってます。

HAYABUSA1300国内仕様

HAYABUSAの国内仕様が登場したのはこの規制緩和があったからなんですね。一応国内販売はしていなかったので新型車という扱いです。YZF-R25が意外に良い音出してるのも関係あるのかな。

とにかくこの緩和規制に完全移行する2016年になればもう日本だけ変なスペシャル仕様といった悲劇を味わう可能性が限りなくゼロに近づくと思われます。

「これで遂に逆輸入車が無くなるのか!」

といえば逆輸入車は無くならないでしょうね。

何故なら日本には排ガス規制と騒音規制に加え180km/h規制が残っていますから。ここも欧州に準拠して欲しいところですが・・・・残念ながら今の所そういった動きは。。。

説教臭い余談

緩和の方向へと向かうこととなった騒音規制ですが

「どうして日本は二輪だけこんなに騒音規制が厳しいんだ!」

と思っていたライダーは多いことと思います。

その理由には環境省の役割が関係しています。

環境省

排出ガス規制が国土交通省主導なのに対し、騒音規制は環境省主導です。

そして環境省の役割は「国民の生活環境の保全」

国民の声を聞き、より良い生活を送るために全力を尽くす省庁です。

そんな環境省が何故これほどまでに騒音規制を厳しくしていったのかというと

“国民からバイクの騒音に対する苦情”

が数多く寄せられたからに他なりません。環境省の資料でもアフターパーツメーカーのSP武川の方の話でもそう書かれていました。

近隣騒音防止ポスター

もちろんだからといって新車の騒音規制を厳しくすることが正しかったのかと言えば疑問が残るのは事実ですが、排出ガス規制が国の都合によるものが大きかったのに対し、騒音規制が厳しくなっていったのは一種のペナルティみたいなもので自業自得でもあるわけです。

JMCAを設立し公認社外マフラーという新たな制度が生まれたのも、メーカーが違法改造の締め出しに厳しくなったのもこういった背景があったから。

しかしこれらJMCAやメーカーの積極的な社会貢献や責任を果たしてきた功績が認められ、また、それに習うグッドライダーが増えた事で騒音規制の国際基準化(実質緩和)というメーカーの要望が通ったわけです。

規制の実質緩和はメーカーにとってもライダーにとっても喜ばしいことですが、緩和されるからこそ今以上にバイク乗り一人一人がルールとモラルを守っていくことが大事になってくると思います。

つまり今後の日本の騒音規制がどうなるかは皆さん次第というわけです。

排ガス規制についてはコチラ

バイクはアンチエイジング

アンチエンジング

バイクに乗ってる人って乗ってない人に比べて妙に若々しいと思いませんか。

それを疑問に思ったヤマハ発動機が科学的に証明するため脳トレで有名な川島教授とタッグを組み

『二輪車乗車と脳の活性化の関係”についての研究結果発表について

という研究を行っていました。

結論から言うと二輪に乗車すると脳が活性化することが科学的に証明されました。

それだけ聞くと

「ふーん、そうなんだ」

で終わってしまいそうですが研究結果をよーく見ると色々面白い結果が出てたりします。

【1.誰でも何のバイクでも脳が活性化するわけじゃない】

実験はベテランライダーとブランクのあるライダーの二組で行われたんですが驚くべきことに両者の運転時の脳の働きは全く対照的だった。

というのもブランクのあるライダーはESP(超感覚的知覚)と呼ばれる

『直感(処理能力が追いつかない脳の勘違い)』

で運転しているのに対し、ベテランライダーは

『論理的に』

情報を処理し集中して運転している事が分かったんです。

要するに普段から乗ってる人ほど集中力が増し、脳が活性化する事が分かった。最近リターンライダーの事故が増えているのはこういった事も一因なのかもしれませんね。

考える人

更に注目すべきは一番活性化するのがマニュアルのバイクという事。

・自動車

・MTバイク

・ATバイク

・電動自転車

などで実験した結果MTバイクで特に脳の働きが活性化するとの事。

「じゃあ通勤でスクーターに乗ってる人や週末しか乗らない人はベテランライダーじゃないかのか」

といわれればそうでは無く、週1回MTのバイク乗るか乗らないかがおおよその境目みたいです。

【2.活性化により鍛えられるモノ】

では活性化するといっても何処がどうなるのかという話なわけです。

バイクの運転で活性化し鍛えられる脳の部分は

『前頭前野』

と呼ばれる場所。おでこの後ろにある部分です。

生物の中でも人類が特に発達している部分で”脳の司令塔”とも呼ばれているとっても重要な部分。

「記憶力」

「思考力」

「集中力」

「感情制御」

「意欲向上」

といった働きを担っています。

その中でも特に向上したのが認知機能「記憶力・思考力・判断力」の部分。

空間認知能力

つまり

「ウィンカー付けてないけど車線変更して来そうだな」

とか

「路面の状況が良くないな」

とか

「あの右折待ち強引に来そうだな」

といったバイク乗りが比較的当たり前にしている思考というか判断はバイクで鍛えられているから出来ている事というわけ。

更にプラスαの影響として

・ストレス発散

・体調の改善

・ミスの減少

といった嬉しい効果も実証済み。

言われてみれば車ではよく見るイライラ運転もバイクでは余り見ませんよね。これも前頭前野が働いてる証拠なのかも。

【3.まとめ】

見た目年齢がその人の寿命であり、見た目年齢と脳年齢は密接に関係していると言われますが、バイク乗りで比較的若々しい人が多いのはこういった科学的根拠に基づく所から来ていることが今回わかったわけですね。

将来待ち構えている認知症の予防のためにもバイクには乗り続ける、若しくは今からでも遅くないので乗り始めるのが吉かと。

ツーリング

ちなみに20~40代などの比較的若い人も他人事ではないですよ。

新しい物事に対して

「覚えられない」

「受け付けない」

「興味が湧かない」

といった拒絶反応を示していませんか。

それは前頭前野の機能が低下している証拠であり鬱病にも直結する。そして恐ろしいことにその前頭前野の機能低下は20代から既に始まっているとの事。

自身が大丈夫な方でももし周りに

・元気のない人

・衰えに悩んでいる人

などが居たらこれらの根拠を元にバイクを薦めてみるのも良いかもしれませんね。乗るだけで認知症や鬱病を予防するオートバイ。なんと素晴らしい乗り物でしょう。

あと、もしバイクに理解の無い人から

「バイクの何が楽しいの?」

と聞かれたら

「どの乗り物よりも脳が活性化するからだ!」

と答えてあげましょう。少しは興味を持ってくれるかもしれないので

ロゴの変遷と由来

ホンダの場合(ウイングマーク)

ホンダウィングマークの変遷

ホンダは四輪がシンプルなHマークなのに対し、二輪は羽のマークなのが有名ですね。

先ず最初にどうして羽なのかというと宗一郎が

「これから世界に羽ばたくんだ!」

との意気込みを示すために入れたのが始まりだそうです。

ホンダウイングマーク

こうやって見るとだんだんシンプルになっていってるのが分かりますね。

そしてその羽にはちゃんとモデルがいます。

それはギリシャ神話に登場する「勝利の女神 ニケ」

ニーケー

ジュノオ(神々の女王)といい、宗一郎はギリシャ神話が好きだったんですかね。

でも実はウイングマークになる前のロゴもあるって知ってました?

それはこれ。

ホンダウイングマーク

この頃はニケ本人までしっかり描かれてたりします。

ちなみにスポーツアパレルブランドで有名なNIKE(ナイキ)もニケからです。

ヤマハの場合(音叉マーク)

音叉マーク

ヤマハ発動機のロゴは最初から一貫して音叉マークです。

音楽の方のヤマハと形が少し違うのは有名ですね。

ヤマハ

赤いのがヤマハ発動機、紫なのがヤマハ

音叉が枠を飛びてているのがヤマハ発動機、枠に収まっているのがヤマハ

Mの真ん中が下まで伸びてるのがヤマハ発動機、少し浮いてるのがヤマハ

Aの文字が左右対称なのがヤマハ発動機、非対称なのがヤマハ

となってます。

意味はどちらも一緒で、 3本の音叉で「技術」「製造」「販売」の3部門の強い協力体制を表現しています。

ヤマハ 社標 音楽の方のヤマハがコロコロ変わったのも有名ですね。

ちなみにヤマハがオートバイへ進出したキッカケは、創業者が大のバイク好きで自分で作りたかったからという至極単純な話なんです。

スズキの場合(Sマーク)

Sマーク

スズキはずっとSマーク・・・かと思いきや実はそうでもなかったりします。

このマークが出来たのは1958年。
でもスズキが二輪デビューを果たしたのは1953年のパワーフリー号。

じゃあその時のロゴはどうなっていたのかと言うと

パワーフリー号

ただの横文字だった・・・しかしスズキは更に遡り元を辿るとトヨタと同じ1909年の織機メーカー 鈴木式織機製作所が始まり。

その当時の社章がこれ。

鈴木式

「鈴木式」ってコッチのほうがカッコイイ気が・・・

カワサキの場合(Kマーク)

フライングK

カワサキと言えばフライングKですね。

最初の頃はコテコテの川崎重工社章(リバーマーク)でした。

リバーマーク

そして目黒製作所という大型バイクメーカーの買収でメグロ系など特定車種のみ変更されたのがこれ。

写真左が目黒製作所で右がカワサキ。

メグロカワサキemblem

俗言うメグロカワサキエンブレムというやつです。社章に羽が生えてる・・・

でもそっから目黒製作所を完全に吸収した事で再びリバーマークへ変更。

リバー

そして今のフライングKに1960年代後半頃になったと言われています。

Kマーク

カワサキの場合タンクエンブレムはずっとKAWASAKIなんですけど、昔は「KAWASAKI」で今は「Kawasaki」とタンクエンブレムとロゴが必ずしも一致しないので分かりにくいんですが、フライングKの歴史が長いことは確実です。

KHI

ちなみにこのフライングKですが

・オートバイにより知名度が上がった事

・オートバイを連想させてカッコイイ

という理由から二輪部門のみならず重工全体のロゴに2007年頃から採用されるという大出世を果たしてたりします。

しかしこうやってみると全社とも赤ですね。
まあオートバイという事を考えれば真っ当なんでしょうね。

一生バイクに乗る人生か、一生乗らない人生かは30歳で決まる

バイク乗り

ここを読む人はバイク免許(二輪免許)を持っている人が多いと思いますが何歳の時に二輪免許を取得されたでしょうか。

おそらく10~20代のうちに取得された方が大半と思います。もし免許がまだで検討中の方も10~20代が大半かと。

というのもヤマハ発動機LMW部(現在リンク切れ)が二輪免許所持者624名に対し

「自動二輪免許もしくは大型自動二輪免許を何歳の時に取得したか」

というアンケートを行った結果、下の様な結果になりました。

二輪免許取得年齢

50%が10代の内に、約30%が20代の内に取得。つまり約80%のバイク乗りが20代のうちに免許を取得しているわけです。

一方で30代以降に免許を取った人は少数。これは年齢を重ねると公私共に忙しくなり教習所へ通う時間が無くなる事や、新しい物事への挑戦が億劫になってしまうからかと思われます。

この年齢と共に腰が重くなるのは脳の前頭前野の劣化が大きく関係しているらしいのですが、奇遇にも前頭前野はMTのバイクに乗ると鍛えられるようです。

>>詳しくはバイク豆知識「バイクはアンチエイジング」をどうぞ。

つまり30歳までに二輪免許を取らない人というのは一生バイクに乗らない可能性が非常に高い。これはバイクに対する憧れがあろうとなかろうとです。だからバイクに乗りたいと思っている若者が居るなら若く元気な内にさっさと取りに行くのが吉。

免許取得キャンペーン

こういうメーカーやショップのサポートがあったりするので積極的に利用しましょう。

ちなみに

『30を過ぎて取ったor取ろうとしている』

という人が居るならそれは脳が若い証拠。

もし悩んでいる人が居るなら背中を押すような事を言うと、JAMAが約5000人のバイク乗り(10代~60代)へ行った【2015年度二輪車市場動向調査】によると

バイクを購入し実際に乗るようになった時の満足度は

『バイクに乗る前の期待値を10%以上も上回る』

との事。

そして

「買ってよかった」

と答えた人は88.5%とかなり高い。

バイクに乗る友人が暑苦しいほどバイクを勧めてくるのは

「バイクを買って良かった」

と強く思っているからなんですよ。

次は既に二輪免許を取得しバイク人生を謳歌されている人を対象にした話。

近年バイク乗りの平均年齢が50歳を越えた事が話題になりました。

二輪ユーザーの平均年齢

今はもう53歳に手が届きそうな状況らしいのですが、これはバイク離れを起こしている若者世代とバイクブーム世代の数の違いが大きく影響しているわけで、少子高齢化と同じような逆ピラミッド状態になってるから。

ただこれが一概に悪いかといえばそうでもなく、良い方に捉えてみましょう。

同じく【2015年度二輪車市場動向調査】のアンケート調査の中で

「これからもバイクに乗り続けたいか」

というアンケートを取ったところ126cc以上のバイクに乗っている人の約93%が

「乗り続けたいorまだ乗る」

と答えました。

バイクに乗り続けるか

今のバイクが最後と答えた人は僅か4%という圧倒的なリピート率。

平均年齢が上がっている理由は単に若者が減っているだけでなく、こういったバイクの魅力に取り憑かれ何歳になろうと乗り続けたいと思う人が圧倒的に多いからでもあるんですね。

つまり今バイク人生を謳歌している10代から40代の人もヨボヨボになるまで、もしかしたらヨボヨボになってもバイクに乗り続けるでしょう。

XSR

もう貴方の人生にとってバイクは切っても切り離せない存在になってるんです・・・と言うとちょっと臭いですが本当です。

いつの間にか平均年齢を押し上げている一員になってる可能性は非常に高いですよ。

エンジンオイルが黒く汚れる本当の理由

エンジンオイル

エンジンに欠かせないエンジンオイル。

よく「オイルはこまめに変えろ」と彼方此方で言われてますよね。

唐突ですが

「どうしてエンジンオイルって黒く汚れるんですか?」

と聞かれたら貴方はちゃんと答えられますか?

恐らく”洗浄しているから”と曖昧な答えをする人が大多数ではないでしょうか。

【エンジンオイルの役割】

ご存じの方も多いと思いますが、エンジンオイルの役割は大きく分けて

金属同士のカジリを防止する「潤滑」

エンジン内の熱を吸収する「冷却」

油膜で覆うことで酸化を防ぐ「防腐」

そしてエンジンを綺麗に保つ「清浄」

多くの人がエンジンオイルが黒くなる原因は「清浄」だと思っているかと。

まず言っておきたいのは”洗浄”ではなく”清浄”です

洗浄【せんじょう】

意味:汚れを取り除く行為

清浄【しょうじょう】

意味:清らか、せいじょう

似てますが意味は違います。

真っ黒になったオイルを見て

「オイルがエンジンを洗浄している証拠」

と思うのは勝手ですが、それは半分正解で半分間違いです。

オイルがエンジンを洗浄して真っ黒・・・それは何処を洗浄しているのでしょう?

(写真は車のオイルフロー)

オイルの流れ

シリンダーと答える人が多いかもしれません。

確かにシリンダーにはオイルの膜を張ります。

シリンダーにカーボン(煤)やデポジット(汚れの堆積物)を付かせない&エアフィルターを通り抜けた細かい粉塵を吸収するためでもあるので清浄効果と言えます。

シリンダー

が、しかしシリンダーにオイルを張る一番の理由は潤滑によるカジリ防止と圧縮の為。

すなわち「緩衝と密封の為」が主です。

圧縮爆発させるために密封をしないといけないので膜もピストンリング(オイルリング)で張られた極々狭い面積で極々薄い膜。

更に言うなら燃焼室の煤はピストン運動により排気されますし、オイル膜のキワ部分は一緒に燃やされ排出されます。(ごく少量のため気付かない)

半分正解と言ったのはこの為。

エンジンオイルが黒くなる原因はそれだけじゃないんです。

エンジンオイルが黒くなる理由「ブローバイガス」

「フューエルインジェクションはアイドリングが苦手」を読んでくださった方なら「またか・・・」と思うかもしれません。

読んで居られない方は先に読んでもらえると助かります。

ブローバイガス(生ガス)というのは簡単に言うと有毒ガス。

これがクランクに漏れることでオイルパンに溜まったオイルや一面に張っているオイル膜がブローバイガスに晒されることになるわけです。

そうすると当然ながらオイルはそのブローバイガスに含まれるカーボンを始めとした汚れを吸収するわけです。

腰下

腰下はシリンダーの油膜とは比べ物にならないほどの量と面積なのでどんどん吸収します。

洗浄というよりは空気清浄ですね・・・だから”清浄”なんですが。

でもこれをしないとエンジン内がカーボンで詰まってトラブルを招いてしまう。

だからオイルにカーボンを吸わせて正常な状態を保つんです。

その代償としてオイルは真っ黒になるってわけ。

さらにブローバイガスは1000度近い高温なうえ、強い酸性なので酸化もします。

熱と酸に弱いオイルにとっては正に天敵ですね。

スロットルバルブの件といい何と憎たらしいんでしょう。

これがエンジンオイルが黒くなる本当の理由・・その1。

”その1”としたのは実はもう一つ理由があるから。

エンジンオイルが黒くなる理由その2「原料」

みなさんオイルは何から出来てるか知ってますか?

原油ですね。

石油精製所

一部の化学合成油を除き、基本的に鉱物油由来の物をブレンドした物です。

原油を加熱蒸留し揮発させることで重油やガソリン、ガス等に分けるのは有名だと思います。

エンジンオイルではどうかというと

化学合成油は早い段階で抽出出来るガソリンの原料にもなるナフサから作られ

鉱物油は最後まで残ったアスファルトなどにも使われるタール(重油)から作られます。

常圧蒸留装置

それらに添加剤を加え加工したものがエンジンオイル。じゃあ更に掘り下げて、オイルの原料である原油は何から出来てるでしょう。

それは石油、太古の生物の死骸ですよね。(違うという説もありますが)

それら化石がデロデロに溶けたのが石油です。

いくら濾過しても分子レベルの化石を完全に取り除く事は出来ません。

つまり多かれ少なかれ混じっているのです。

そんな化石たちが1000度近い高温のブローバイガスに晒された・・・当然ながら燃えますよね。正しく言うなら焦げる。

もうお分かりだと思います。

エンジンオイルが黒くなる本当の理由その2は

「濾過しきれなかった化石が焦げるから」

です。

巨大設備でも取り除けないレベルの小ささですので当然ながらオイルフィルターなんて素通りです。

オイルエレメント

以上がエンジンオイルが黒くなる理由でした。

余談

経緯や原因はどうあれオイルは定期的(1年または10000km以内)に変えないといけない事に変わりはありません。

その理由は上記の通り、カーボンを吸収し熱や酸によりオイル本来の働きである潤滑性能が落ちるから。

さらに言うとバイクの場合、ミッションやクラッチがグリグリとミンチのように潰すというオイルがとっても嫌がる事をして追い打ちをかけます。

バイクのオイル交換スパンが短い理由の一つでもあります。

これだけは間違えないで欲しいのですが

オイルを交換しなければならない理由は

「黒く汚れて洗浄能力が落ちるから」

ではないです。

クランクシャフトオイル 「汚れを吸収していくうちに潤滑や防腐といったオイル本来の働きが落ちるから」

ですよ。

当たり前と言われるかもしれませんが、エンジンオイルは洗浄剤ではなく潤滑剤です。

オイルビジネス、添加剤ビジネスのドツボに嵌らないようちゃんと理解しましょう。まあそれも一興ですが。

ハイパワー車はバルブが違う

チタンバルブ

2010年前後からSSやメガスポーツといったハイスペック車のスペックインフレが起こりました。

今では200馬力も当たり前な恐ろしい時代に。

少し前までは200馬力なんてレーサーくらいなものだったのに。

さてその200馬力を可能なものにしたのはバルブが変わったからなんです。

※バルブが何かわからない人への簡単な説明

エンジンバルブ

バルブというのはエンジンの燃焼室の出入口のドアみたいなものと思ってください。

これが(涙滴型の回るカムシャフトに叩かれて)開いたり閉じたりすることで上下するピストン運動し、圧縮や排気が出来る様になってるわけですね。

ところでどうしてレブリミット(回転数リミット)があるのか考えたことがありますか?

それはエンジンオイルの油膜切れやピストンピンやコンロッド保護の意味合いもありますが、最もたる原因はクランクの回転にバルブの開閉が追いつかなくなって共振し正しく働かなくなってしまうからです。これをバルブサージングといいます。

バルブとピストンがゴッツンコして折れたり曲がったり、ヘッドから突き出て来ます。

よく漫画とかアニメでブンブン走ってたらドカーンってエンジンいくパターンのやつですね。

回転運動だけでいいクランクと違ってバルブは上下運動。回転運動より上下運動の方が大変なのは何となくわかると思います。

エンジンの性能を決めるのはバルブと言われるほどバルブはとても重要なファクターなんですね。

カムギアトレーン

だからドゥカティは共振の原因となるバルブスプリングの要らないデスモドロミックを使ってるわけです。こうすることで一般的なチェーンタイプよりも更に正確でロスのない開閉が可能だから。

しかしそれでも限界はある。そこで生まれたのがチタン製のバルブ(インレットバルブ)です。

ステンレスバルブ

通常のバイクのバルブはステンレスです。

それに対しハイパワー車はチタン。

チタンバルブ

って写真で見比べても分からないですよね。チタンといえばマフラーの方で馴染みの多い人も多いと思います。

「チタン=軽い」というイメージが先行してますが、正しく言うなら「軽くて強い」です。

チタン

確かにステンの約半分という脅威の軽さですが、ただ軽いだけでなく強度もとても高いため薄肉化でき、更に軽く出来るというわけですね。

バルブをチタン化で軽量化することで

・より正確な運動が可能に(コレが一番大きい)

・軽いため傘の径を大きくしても重くならず吸排気効率のアップ

・正確さが増すのでリフト量(バルブが開く深さ)を上げられ、これまた吸排気効率のアップ

・バルブが軽いためバルブスプリングのバネレートを弱く出来るのでフリクションロスの軽減

等など

S1000RRエンジン

これらのメリットからもはやSSやメガスポーツといったバイクにチタンバルブは欠かせない物となっています。

近年ではハイスペック250として話題に上がるWR250なんかもチタンバルブです。

あれもチタンバルブを採用したことで250とは思えないスペックが可能になったわけですね。

メリットだらけのチタンバルブ

もう採用しない手はない・・・かといえば実はそうでもなかったりするんです。メリットがあるからにはデメリットもある。世の中そんなに甘くない。

メーカーやそれにベッタリな業界は絶対に書かないと思うので敢えて書きます。

※該当車に乗ってる人は要らぬ心配が増えるので見ない事を推奨します・・・

デメリット1「ステンレスの比じゃない製造コスト」

ステンレスと比較した時、40~50倍の生産コスト差があると言われています。

さらにチタンは性質上成形が非常に難しく、簡単に狙った通りの物が出来ません。

ましてコンマ単位での正確さが求められるバルブですので尋常ではない生産コストがかかってしまうわけです。

メーカーも止むに止まれず使っているというのが現状かと。

これはまあ大した問題じゃありませんね。そのぶん車体価格に反映されてるでしょうし。

デメリット2「強すぎる故に脆い」

矛盾しているように聞こえますが、こっちが結構問題だったりします。

チタンは摩耗性と展延性が悪いという性質を持っています。

まず摩耗性ですが、チタンは簡単に言うと滑りにくいため摩耗し易い性質です。

じゃあバルブ開閉の度にバシバシ叩いて大丈夫なのかって話ですが実は大丈夫じゃなかったり・・・そのためチタンバルブはかじりや焼き付きを起こす可能性が高くなります。

次に展延性ですが、これまた簡単に言うと折れるという事です。

チタンバルブ破損

チタンは頑丈で曲がったり伸びたりしない反面、限界を迎えると何の前触れもなくポキっと逝きます。

そうなったらエンジンお釈迦です・・・チタンバルブにはこういったデメリットというかリスクが伴うわけですね。

読んでしまって後悔してる人へ

恐らくデメリットを読んで、信じられなかったり、落胆している人もいるかと思います。

でも安心してください。メーカーが採用しているチタンバルブはそんな弱点を解決するためバルブに特殊なコーティングをすることで解決しています。

実際、普通に走れているなら何の問題は無いわけで・・・驚かせてごめんなさい。

(ちゃんとメンテしている前提の話ですが)

ただし、ステンレスバルブより寿命が縮む”恐れ”が増すのは事実です。

だからSSやメガスポーツといった、よりスペックを求められる車種にしか採用されていないわけなんですね。

というか元々はレーサーのための部品なんだからレースからフィードバックされた凄い技術とも言える。

まあつまりはハイパワー車にチタンバルブはもう必要不可欠ってことです。これからはコンロッドやクランクシャフトなんかもチタン化していくんでしょうね。

最後に余談

最近サードパーティ製で見た目も鮮やかなチタンボルト等が流行っていますね。

チタンボルト

この記事を読んでもらったら言いたいことは既に分かると思います。

チタンは何の前触れもなく突然ポキっと逝きます。だからチタンボルトを使うなとは言いませんが、使う場所には気をつけましょう。

純正の重くてダサいスチールボルトもただ単にコストカットと言うわけではなく

耐久性や腐食などを考慮した上で、適材適所で使ってたりするわけです。

排出ガス規制の歴史と今後

排出ガス測定

年を追うごとに強まってくる規制。そこで少し規制について勉強をしてみましょう。

規制というのは凄く大まかに分けて

・排出ガス規制

・騒音規制

この二つがありますが、今回は排出ガス規制のお話。

これから説明する事の補足として最初に説明しておきたいのですが、規制というのは導入されて1~3年程度の猶予があります。

ざっくり説明すると

規制の流れ

・新型車はその年から

・現行車は1年後から

・輸入車は2年後から

といった感じになってます。さすがに国もメーカーの事を考え規制と同時に販売禁止なんて事はしません。我ながら分かりにくいイラストですねスイマセン。

もう一つ念のため排出ガス規制で測定されるものを。

CO(一酸化炭素):危険性は言わずもがな。

HC(炭化水素):太陽光(紫外線)に当たると有毒な光化学スモッグに変化する。

Nox(窒素酸化物):オゾンを破壊すると言われていて発がん性も非常に高い。

そしてこれらCO&HCとNoxはトレードオフという厄介さ。

空燃比と排出ガス規制

燃料を濃くすればNoxは抑えられるけどCOとHCが大量に出る。

燃料を薄くすればCOとHCは抑えられるけどNoxが大量に出る。

それら三つとも抑えないといけないなんて大変ですね。

さて本題。

二輪車で排出ガス規制が最初に設けられたのは1998年と意外にも浅かったりします。

【1998年排出ガス規制値】

4サイクル|2サイクル

CO値 13.0|8.0

HC値 2.00|3.00

NOx値 0.30|0.10

という特に2stに厳しい規制が生まれました。

NSR250R

これによって無くなってしまったのが、今もなお語られることが多いNSR250を始めとした2stですね。

98年に126~250cc(軽二輪)に導入され、251cc~(小型二輪)のバイクにも翌年から導入されました。

次に排出ガス規制強化が入ったのはそこから少し離れた2006年の事。これが大問題でした。

【2006年排出ガス規制値(98年規制値)】

CO値 2.0(13.0)

HC値 0.30(2.00)

NOx値 0.15(0.30)

98年の排ガス規制と較べてもらえると分かるのですが、98年の規制値から更に7~8割減という何かの間違いじゃないのかと思うほどの厳しい数値。

しかも更に追い打ちを掛けたのが

『暖気モード(暖機後測定)から冷機モード(いきなり測定)』

に測定方法が変わったことです。簡単に言うと冷機時は綺麗に燃焼できない。

ゼファーΧ

これにより細かい設定が難しいキャブ車、燃料を濃くする必要がある空冷が全滅しました。

代表的なのはゼファーやXJR400でしょうか。

実は急にこれほどまで厳くなったのには国の都合が背景にあります。

それは1997年に日本が議長国となり

「みんなで温暖化の原因を減らそう」

という取り決めをした京都議定書。その始まりの年が2005年だったんですが。

チームマイナス6パーセント

議長国である日本は2012年までに温室効果ガス-6%という非常に厳しい数値を己に課しました。

そして目をつけられたのが今まで排出ガス規制が緩かった二輪だったんです。二輪は温室効果ガス排出の割合で言うならホントに微々たる物なんですけどね。

問題だったのは段階的に規制値を強めていった車と違い、今までの規制値は何だったのかと思えるほどいきなり厳しい規制値を敷いたこと。

これに対しバイクメーカーは当然ながら反発し

「せめてもう少し規制値を年単位で刻んでくれ」

と抗議しましたが、国際的なメンツが掛かってる以上なんとしても成功させたい政府は聞く耳を持たず問答無用の規制強化。

結果は皆さんご存知の通り、各メーカーともラインナップが壊滅状態に陥るという惨事になってしまいました。

そんな悲惨な状況から立ち直りつつあった2012年に二度目の規制強化が入りました。

規制なんてあったっけ?って思ってる人も多いと思います。それもそのはず。

【2012年排出ガス規制値(06年規制値)】

CO値 2.62(2.0)

HC値 0.27(0.30)

NOx値 0.21(0.15)

2006年の無慈悲な規制よりも少し緩くなったんです。まあ誤差ですが。

これは国がWMTC(Worldwide-harmonized Motorcycle Test Cycle)という国際基準に準拠する形になったから・・・そして京都議定書の削減期間が終わったから。

WP29

この規制値は国連の自動車基準調和世界フォーラム(UNECE/WP29)で協議し策定された基準で、国連のATMである日本も当然ながら加盟しています。

ちなみに測定方法やクラス分けも変更されました。

【クラス1(アーバンクラス)】
50cc~150ccかつ最高速度100km/h未満

【クラス2(ルーラルクラス)】
150cc未満かつ最高速度130km/h未満
もしくは
150cc以上かつ最高速度130km/h未満

【クラス3(モーターウェイクラス)】
最高速度130km/h以上

何故規制で国際協調する必要があるのか?

少し話がズレますが、何故規制を国ごとではなく世界で協調しないといけないのかというと

「環境問題や安全性の問題は地球規模なので皆で足並みを揃えよう」

っていうことなんです。

ですがこれは自動車メーカー(二輪含む)の圧力ならぬ後押しもあったと思われます。

規制が統一化されれば国によってセッティングや部品の作り変えを行なう必要がなくなり大幅なコスト削減になるからです。

ただ日本を含む加盟国も全てを協調しているわけではありません。例えば自動車のデイライトも国際基準として明記されているのですが日本は拒否してたり。

さて話を戻して・・・次に規制が入ったのは2016年。

欧州とほぼ完全に足並みを揃えた規制値になりました。

【2016年排出ガス規制値(12年規制値)】

クラス1|クラス2|クラス3

CO値 1.14|1.14|1.14(2.62)

HC値 0.30|0.20|0.17(0.27)

NOx値 0.21|0.17|0.09(0.21)

2012年の排出ガス規制値のおおよそ半分です。いわゆるEURO4と呼ばれる規制です。

この規制でも数多くの名車が消えていきました。

ただこれについては排ガスではなくOBD(車載式故障診断装置)の義務化という規制が大きな理由。

OBD

これは簡単にいうと自己診断機能で、専用機器を繋ぐことで断線や異常などを検知する機能。

これが義務付けられたことでセンサーなどを完備していない既存車の多くがカタログ落ちしてしまったんです。

バイクメーカーが販売網再編(実質ディーラー化)に動いた理由の一つはここにあります。

が、しかし・・・実はこれ”STAGE1″なんです。

STAGE1があるという事は・・・STAGE2があるんですね。

2018年6月にSTAGE2となるEURO5への移行が正式決定されました。

【2020年排出ガス規制目標値(2016年規制値※クラス3)】

CO値 1.00(1.14)

HC値 0.10(0.30)

NOx値 0.06(0.21)

排気量や性能などクラス分けなく一律。

もうここまで来たら外の空気吸うより排気ガス吸ったほうが綺麗なのではないかと思う規制値の高さ。

OBDもSTAGE2となり

・回路故障+排ガス閾値診断

だけだったものに加え

・性能劣化を検知

・市場における故障頻度の検知

・トルク低下検知

などが加わります。

※適応時期

新型車:2020年末より

継続車:2022年末より

原付一種:2025年末より

原付はメーカーが悲鳴を上げたこともあってか猶予をもたせたようです。

長い余談・・・

もしかしたらこれを読んでバイク界の未来に絶望してる人が居るかもしれませんが、実は近年になって排気ガスを浄化する触媒(キャタライザー)の技術が飛躍的に向上しました。

つまり誤解を恐れずに言うと、キャタライザー技術の向上によって実は排出ガスはそこまで深刻な問題では無かったりします。

2006年の規制以降のバイクにはその問題を解決するために三元触媒というものが使われています。

三元というのは上で言ってる通りCOとHCとNoxを3つとも同時に浄化する触媒の事です。

細かく言うと、プラチナがHCやCOを酸化させCO2と水に、ロジウムがNoxを窒素と酸素に分解します。

キャタライザー

最近では当たり前になった通称お弁当箱がそうですね。この中で無害化してるわけです。

ただし、当然ながらこれらにもデメリットもあります。

プラチナやロジウムといったレアアースは当然ながらお高い。だから車体価格に跳ね返ってきます。

最近バイク高くなりましたよね。CB400SFなんて今や100万円ですよ・・・ちょっと前まで60万円くらいだったのに。

ここでちょっと思い出して欲しいのは無慈悲な規制が行われた2008年のFI化の流れ。FI化でどのバイクも車体価格が軒並み上がりましたのを覚えていると思います。

これには理由があって、メーカーの開発者は白紙の状態からバイクを作るとき

”販売価格XXX万円で利益率○○%”

という風にはじめに予算というか枠が決められていてます。

その枠の中でコストと性能を睨み合いながら設計するわけですが、こうして作られたバイクが後々の規制で

「このままでは規制に通らない、通すためにはFI化や三元触媒装着するしかない」

となった時、既存の設計のまま付ける”いわゆる後付”だと当然ながら当初の設計予算からオーバーする。

DENSO FI

その分は車体価格に丸々反映させるしかないわけです。

昔からある既存車の値段が高くなっていってる気がするのはこういう事からなんです。

しかしメーカーだって好きで値上げしているわけではありません。むしろメーカーとしても値上げは苦渋の決断なんです。

だからメーカーはFI化や触媒というコスト増をニューモデルや大幅なモデルチェンジなどでは設計の時点で他の部分をコストカットし帳尻を合わせ、値上げを極力抑えたりしている。

コストカットというと聞こえが悪いですが、単純に質を落としているわけでないですよ。

最近でいうならNC700というバイクが出ましたよね。コストパフォーマンスに重きを置いたバイクですが、単純に安物部品で作ったわけではありません。

エキゾースト直下型キャタライザー

要素の一つに触媒技術の革新があります。

排気ガスが出てくるエキゾーストを直ぐに一本に纏め直下に触媒(キャタライザー)を置くことで効率と触媒数の削減に成功しコストを抑えてある。

新型車が意外とリーズナブルだったりする背景には、こういった規制に対する設計時期によるジェネレーションギャップも要因の一つなわけです。

まあグローバル戦略車が増えたというのが大きいですが。

ただ排出ガス規制によるデメリットはもう一つあります。コッチの方が問題かな。

DN-01キャタライザー

上で言った触媒というのは理論空燃比1:14.7に近い空燃比じゃないと仕事をしません。

しかし最もパワーが出る空燃比である出力空燃比は12.5(濃いめ)です・・・つまり排出ガス規制によってパワーを出すのが難しくなってるんですね。

これまた上で言った通り既存のエンジンで通すとなると尚の事です。

メーカーが

「規制が厳しすぎて売ることが出来ない」

という問題に陥ってるのは排ガス規制よりも圧倒的に騒音規制の方です。

>>騒音規制についてはコチラ

レーサーレプリカとそのブームについて ~定義と歴史と背景~

レーサーレプリカとは

今もバイクの話題になると取り上げられる80年代から始まったレーサーレプリカとそのブーム。

懐古ブームの影響か前にも増して雑誌やニュースでレプリカホイホイ記事をよく見かけるようになったんですが、内容がスペックか思い出話ばかりで曖昧な記憶や認識の人が(自身も含め)多い印象があります。

レーサーレプリカの定義

あやふやなまま後世に残すのも良くないと考えたので当時を知る人はおさらいとして、当時を知らない人は歴史の勉強がてらレーサーレプリカとそのブームについて振り返ってみたいと思います。

※当時レース等に参加していた方は後世に残すためにもコチラからご教授下さると補完となるので非常に助かります。

さてさて・・・まずもってレーサーレプリカとそのブームを巻き起こすキッカケとなったのは1980年になります。

鈴鹿八耐の国際レース化

当時国内最高峰レースだった鈴鹿八耐がこの年から国際レースに昇格となったのですが、その際に国際規格に準拠するため厳しいレギュレーションを設ける必要が生まれました。

それによりノービス(アマチュア)が追い出される形になったので、そういう人たちに向けた要するに誰でも簡単に参加できるレースを国際レースとは別に、つまりノービス用の最高峰レースを設けました。

それが

鈴鹿四耐

『鈴鹿四時間耐久ロードレース』

です。

今でもST600としてやってますが当時のレギュレーションは

『2st/250ccまたは4st/400ccの市販車※82年までは市販レーサーもOK』

でCBX400FやZ400GPなどの直四ネイキッドでデッドヒートが繰り広げられました。

四耐

「ポピュラーな市販車でのレース」

という事から年を追うごとに人気が出たため、年一の四耐とは別に新たにほぼ同じレギュレーションで四耐までの空白期間を争う前哨戦的な立ち位置のレース

『TT-F3(通称フォーミュラー3)』

を1981年に設立(1984年から全日本化)。

TT-F3クラス

要するにいまSSで行っているレースの4st/400ccと2st/250ccの混走版が始まったわけです。

そしてもう一つ大事なのが並列して活気づいていた改造範囲が狭い

『SP250(スポーツプロダクション250)』

という同じくノービスがメインのレースで、このレースも四耐が生まれる1980年に大きな変化がありました。

ヤマハがGP250(※GPとはMotoGPなど完全なレーサー)用の市販車TZ250の公道版として、反則級の速さを持った2st/250ccのRZ250というバイクを出したからです。

RZ250とTZ250

現代的に例えるならみんながCB1000SFやZ1000など決してレーサーじゃない1000ccバイクで闘っていた中でポンっとYZF-R1が出た感じ。

改造範囲が狭く地力が物を言うレースで勝ちたいなら

「これに乗るしかねえ」

ってなりますよね。実際そうなってレースはRZ250一色に。

と思ったら今度はカウルなど保安部品の規制緩和を武器に反則級の更に上をいくGP500マシンレプリカのRG250Γが1983年に登場。

RG500とRG250ガンマ

「アルミフレームとかこれもうGPレーサーだろ」

と騒がれてクラスが非常に加熱。

この様にストリートで爆発的な人気を誇った二台は市場だけではなくレース界でも人気だった。

そしてそんな『SP250』の人気の上に『鈴鹿四耐』と『TT-F3』が出来た事でノービス(アマチュア)にとってのサクセスロードが明確になったんです。

ノービスのピラミッド

これがレーサーレプリカとそのブームの根源であり火種になります。

ちなみに今もメディアに引っ張りだこな宮城光さんはご存知の方も多いと思いますが、この方はそんなサクセスロードを歩まれた代表的な人物。

宮城光さん

元々はバンドマンでドラム叩いていた若者だったんですがノービスレースで無類の速さを見せたことでモリワキから声が掛かりTT-F3へ参戦。最終的には全日本GP500のホンダワークスライダーまで上り詰めた方です。

当時スーパーノービスと呼ばれ女性誌にも取り上げられたりしていたので、サーキット上では宮城さんの追っかけや黄色い声援が止むことは無かった。

そんな宮城さんのようなシンデレラボーイになりたいと思った人たちが、それこそ何千人規模でレースで勝つために速い2st/250ccを求めたというわけ。

そこに油を注いだのがWGP(現代的に言うとMotoGPなど完全ワンオフレーサーのレース)で1980年頃に
・125
・350(250はおまけ的な混走)
・750
の3クラスだったのが
・125
・250
・500

に再編することになり2st250クラスが誕生。国内もこれにならって全日本GPを開催。

こうなるとメーカーからすれば

WGP250

「GP250みたいな市販車造ったらレースもセールスも取れて一石二鳥」

となりますよね。

そうして誕生したのがGP250マシンとそれに保安部品を付けただけのような公道モデルたち。

2st250レーサーレプリカ

『2st/250ccレーサーレプリカ』

です。

ホンダでいえばNSR250(RS250RW)というGP250マシンがあって、それを元に造ったのが市販レーサーのRS250Rと半身レーサーのNSR250R。

レーサーレプリカの流れ

この2st/250ccレーサーレプリカにノービスの多くは飛びつき、またその熱がストリートにも伝熱しました。

公道で乗れるGPレーサーなんて聞いたらそりゃレースに興味が無くても飛びつきますよね。

ただそんな花形レースだった四耐やTT-F3のレギュレーションですが

『2st/250ccか4st/400ccの公道走行可能な市販車』

となっている通りレーサーレプリカにはもう一つ代表的なクラスがありました。

400レーサーレプリカ

『4st/400ccレーサーレプリカ』

というクラスです。

2st/250ccレーサーレプリカがノービスに人気だった一方で、F3の最高峰であるA級(AF-3)で戦う大手チームやメーカー(ワークス)がレースで走らせていたのはこの4st/400cc。

400ccが選ばれた

理由としては

『限定解除が難しい時代で実質トップエンド』

『突き詰めれば4st/400ccの方が速い』

というセールスと性能の両面から。

ただし250と違って400はGPクラスがないのでGPレプリカではなく公道向け市販車を開発して発売し、それを(AF-3は実質何でもOKなため)ワークスチューニングという名の原型を留めない改造を施してレースに挑んでいた。

フォーミュラー400

どうしてそうまでしてしたのかといえばレースが市場での人気や売上に直結していたから。

当時はモトブロガーは愚かネットすら無い時代だからレース結果を判断基準にしている人が多かったわけです。

VF400の変異

だからメーカーもF3レーサーをフィードバックする形で市販車にも採用して人気を獲得し、またそれをワークスチューニングしてレースに勝利し人気を得る・・・の繰り返しに必死だった。

しかしここで鋭い人は気付くでしょう。

TT-Fの循環

「これレーサーレプリカじゃないのでは」

と。

そうなんです。実はこの4st/400ccというクラスはF3レーサーが出発点のレーサーレプリカとも言えるし、市販車が出発点の今でいうスーパースポーツとも言える。

これはTT-F3の上のクラスに向けて作られたTT-F1用マシン

750レーサーレプリカ

『4st/750ccレーサーレプリカ』

にも同様の事が言えます。

市販車ありきなんだけど、その市販車はレース規格ありきでレーサー技術が詰まってる。

VFR750レーサー

「ニワトリが先か、タマゴが先か」

まさにそんな矛盾する因果関係を持っていたのが4stレーサーレプリカだったんです。

ちなみに

400と250のレーサーレプリカ

「4st/400ccが速いなら何故ノービスの人たちは2st/250ccを好んだのか」

という話をすると4st/400ccは確かに速かったんですが、F3レーサーに仕立て上げるのにはウン百万も必要。にも関わらず競争や進化が早いから実質的にワンシーズンしか使えず、また最新技術の塊でパンドラに近い状態な事から高い整備スキルとチューニングスキルが求められ個人や零細ショップには厳しかった。

4stエンジン

当のホンダですら世界GP(NR500)では4stだった事による整備とセッティングの大変さが足かせになったわけですから個人なんて絶対に無理と言ってもいいほど。

だからシンプルな構造でキット込み100万円ちょっとながら

『4st/400ccに一矢を報いる性能を持った2st/250cc』

という存在はノービスにとって希望の光のようなレーサーだったんです。

2st250SP

ノービスF3が2st/250cc中心だった一方で、AF-3級では資本力に物を言わせて4st/400ccが中心だった背景にはこういう事があったんですね。

400の方でもそこら辺を鑑みて

『SS400(スーパーストリート)』

から始まり

『SP400(スーパープロダクション)』

という改造範囲が厳しいノービス向けレースも行ってはいました。

「じゃあ2st/250ccは大した事なかったのか」

というそうじゃないのが非常にややこしい所で、ここらへんが混合している人が多い印象。

当時F3のトップだったAF-3は先に説明した通りメーカーがバチバチで実質的にワークスによる原型を留めていない4st/400cc対決状態となっていました。

F3の参加層

その一方でノービスクラスでは先に言ったように無名のルーキー達が2st/250ccで闘っていた。

その結果もともとポピュラーだったから人気が出たレースという事もあり、ワークスがいるA級よりもノービスクラスの方が人気になったんです。

F3の人気

TT-F3で2st/250ccの印象が強く残っている人が多いのは恐らくこれが理由。

そしてもう一つは90年代レーサーレプリカ末期になると2st/250ccと4st/400ccの性能差が無くなった(もしくは逆転)した事。

2st250cc末期

「じゃあやっぱり2st/250ccの方が凄い」

となるんだけど実はもうこの頃になるとTT-F3はワークス禁止(1989年)に加えても2stも禁止(1990年)だった。つまりTT-F3で輝く機会が無かったわけです。

その代わり四耐の方はまだ出走出来たのでそちらで2st/250ccが何年にも渡り4stを抑えて優勝する活躍をしました。

まとめると

2st/250cc=ノービスと90年代の四耐で活躍

4st/400cc=TT-F3(市販車レース)で活躍

というのが250/400レーサーレプリカの大まかな歴史。

250と400レーサーレプリカ

「なるほどレーサーレプリカってそういう事だったのか」

と思ってもらえると嬉しいんですがレーサーレプリカには他のクラスもありますよね。

次に紹介するのがレーサーレプリカの中でも2st/250ccと双璧を成すほどの人気だったクラス。

4st250レーサーレプリカ

『4st/250ccレーサーレプリカ』

このクラスは上記で紹介したクラスとはちょっと立ち位置が違います。

というのも2st/250ccや4st/400ccはF3や四耐に直結しているレーサーという要素が合ったんですが、それに対して

『4st/250cc』

というのは直結していないわけです。

250/400/750レーサーレプリカ

つまりレースベースとしての役割を大きく担っているわけではなかった。

『NP・F~SP250F』

という4st/250ccのレースが一部のサーキットで開催され人気も競争も凄かったんですが、何度も言うようにクラスが違うのでSP250/400の様な四耐やF3への登竜門レースという立ち位置ではなかった。

「じゃあ何故造ったのか」

という話ですが理由は大きく分けて二つあります。

一つはFZ250PHAZERという250ccながら四気筒エンジンを積んだバイクが出て人気が出た事。※初はGSX250FW

FZ250PHAZER

要するに250ccクラスでも四気筒じゃないと売れない時代に突入したんですね。ちなみにこのバイクも市場だけではなくプロダクションレースでも人気でした。

そしてもう一つはレーサーレプリカブームが到来した事。

CBR400RR

これまで話してきた通りレーサーレプリカブームによって

「4stなら400、2stなら250」

という風潮が生まれた事で一般バイク乗りは

2st/250cc乗り=峠やサーキット

4st/400cc乗り=街乗りからツーリングまで

という棲み分けの様な状態が起こっていた。何にでも使いたい人は今も昔も4st支持だったわけですね。

そして同時にメーカーはFZ250PHAERのヒットによって

『250需要の大きさ』

それにRZ250とVT250Fの真っ向対決から

『2stと4stの客層は被らない』

という2つの事を学んでいた。

VT250FとRZ250

アンチ2stのホンダが2stを出してきたのもこれがあったからなんですが、つまり

「街乗りからツーリングまで使える4stが欲しい」

と考える層にとってレーサーレプリカブームというのは

「過激な高額400しかない」

という状態になってしまい、手を出すのを躊躇する人が出てくる事が分かっていたわけです。

400レーレプ

加えて重要なのがレースと密接に関係しているレーサーレプリカといえど4st/250ccになると

「レースを意識していない層が多い」

という事。

ここに向けて出したのが半身レーサーというよりもレース界を騒がせていたレーサーレプリカの流れを受け継いだ4st/250ccレーサーレプリカ。

直4の250レーサーレプリカ

『レーサーレプリカのレプリカ』

といえる存在なんです。

その狙い通り敷居の低さを武器に老若男女問わず大人気となり、レースというよりもストリート側で加熱していきました。

GSX-Rシリーズ

そのためメーカーも足つきへの配慮などユーザー層の事を考えて造っており、レースとはちょっと距離を置く立ち位置にしていた。400同様にレーサー志向だったのは唯一Rモデル(プロダクションモデル)を出したカワサキくらい。

つまり4st/250ccレーサーレプリカというのは

『レースと無縁な層にレプリカブームを起こしたクラス』

とも言え、レース界を中心に燃えていたレプリカブームをレースとは無縁な層まで巻き込んで燃え上がらせたのは間違いなくこのクラス。

まあ無理もない話というか当たり前な話で4st/400ccにも言えるんですが、例えレースやスポーツに興味がなくても

レーサーレプリカの選択

「貴方が落としたのは直四アルミフレームで60万のバイクですか、それとも単気筒鉄フレームで50万円のバイクですか。」

って女神様に聞かれたら誰だって

「直四アルミフレームで60万の方です」

って即答しますよね。

レーサーレプリカ需要

レーレプの話はよく聞くのにレースの話はそれほど聞かない事からも分かる通り、レーサーレプリカブームってそういう事なんですよ。

だいぶ長くなって来たので残りはちょっとサクサク行きます。

次に紹介するのは少し遡って80年代半ばに出たモデル。

WGP500レプリカ

『2st/400~500ccレーサーレプリカ』

実質的に

・NS400R

・RZV500

・RG400/500

の事なんですが、これらのバイクも2st/250ccや4st/400ccのレーサーレプリカとはニュアンスがちょっと違います。

これらはWGP500(MotoGPの前身)のファクトリーマシンを模した

『公道を走れるファクトリーマシン』

という意味合いが強いバイク。今でいえばRC213V-Sと同じ様な感じです。

YZR500レプリカ

だから間違いなく正真正銘のレーサーレプリカと言えるんだけど、レーサーというよりはメモリアル的なモデルというわけ。

※市販車レースと完全に無縁だったわけではない

そして最後に紹介するのは

ミニレプリカ

『ミニレーサーレプリカ』

これらも結局ノービスの間で流行っていたミニバイクレースに向けて出されたバイク。

スズキがネタに走ってGAGを出したかと思ったらヤマハがネタになってないYSR50をぶつけてきた事でレースが本格始動し、ヤマハが気になって仕方ないホンダがNSR50を全力でぶつけてきて占領したからヤマハが怒ってTZM50Rでやり返したという話。

だいぶザックリですがそんな感じです。

この様にひとえにレーサーレプリカと言っても色々あって

「レーレプはGP250直系の2st/250ccだけだ」

という狭い定義も出来るし

「80年代から90年代に掛けて出たフルカウルスポーツはレーレプ」

という広い定義も出来る。

レーサーレプリカのクラス

それくらいレーサーレプリカの定義は実は曖昧だったりするんです。

さて・・・そんな全クラスを巻き込むブームとなったレーサーレプリカですが、その終わりは呆気ないもので90年代に入るとインフレへの疲弊や馬力規制により需要が減少。

1991年には花形だったTT-F3が廃止となった事でノービスのサクセスロードが崩壊し、そのレースのためにあったと言っても過言ではない250/400レーサーレプリカも存在意義を失いました。

レーサーレプリカレース

そしてTT-F3の代わりに新たに始まったのが

『NK-1/NK-4』

という市場でブームとなっていたネイキッドのレース。

あんな盛り上がっていたTT-F3がアッサリ畳み掛けるように廃止されたことに違和感を覚える人も多いかと思いますがこれは

「ホンダを筆頭にメーカーが終わらせたかった」

という話というか噂。

・排ガスや騒音の問題

・峠で練習するノービスによる社会的イメージの悪化

・先がなく世界とも繋がっていないクラスのリソース負担

などの理由からかなと思われます。

これらによりレーサーレプリカはフェードアウトする様に、本当にそれまでの熱狂っぷりが嘘のように90年代半ばにひっそりと終焉を迎えました。1995年に今のように教習所で大型二輪が取れる規制緩和が行われ、リッター時代の到来が完全なトドメになったかと思われます。

レーサーレプリカのカタログ

これがレーサーレプリカそしてレーサーレプリカブームの全貌。

「レーサーが身近になった事で始まり、レーサーが身近になりすぎたから終わった」

そう言える時代でした。

ポルシェデザインのSRがある

マンホール

ドイツの有名なスポーツカーメーカーであるポルシェ。同じドイツのVWの子会社だったり親会社だったりします。今はどちらが親か知りませんが。

そうなっている理由はVWの筆頭株主がポルシェ一族だから。複雑ですね。

まあそんな話はさておき・・・ポルシェのデザインはポルシェデザインという子会社がやっているのですが、そのポルシェデザインが手がけたSRがあります。

これはドイツのバイク誌が1979年に開いた

「Alternatives Motorrad Konzept(これからの二輪)」

というデザインコンペ大会が発端。だからコンペティションモデルであって市販はされていません。騙すような事を言ってスイマセン。

SR500

そしてヤマハのSR500をポルシェデザインがデザインしたというわけで、そのSRがこれ。

ポルシェデザインSR500

ポルシェっぽい・・・のでしょうか。アート過ぎてよく分かりませんがベースは紛れもなくSR500。

ただSRっぽさは微塵もないですねハイ。

ポルシェSR500

となりのチェアが何か関係しているらしいのですがよく分からず・・・くつろげるバイクという事なのかな。

ちなみにポルシェのお膝元のドイツ・シュツットガルトにあるポルシェ博物館に展示されいるそうなので行けば見れます。

※もしかしたらもう無いかも

ポルシェ博物館

まあ館内は高級なポルシェだらけなのでそれどころじゃないと思います。

ちなみに自動車デザイナーによるコラボ企画はSRだけではなくもう二台ありました。

GS850G

一つはスズキのGS850Gをバックトゥザフューチャーでおなじみデロリアンを始め、初代GOLFなど数々の名車を手がけてきた巨匠ジウジアーロ(イタルデザイン)がデザインしたバイク。

ロータリーエンジンバイクで有名なRE-5をデザインされていた事からの繋がりですね。

ジウジアーロGS850G

大型のフェアリングを纏い、正にコックピットでタイムトラベル出来そうなハンドルやメーター周り。映画はまだ先で6年後の1985年ですが。

そしてもう一つはアグスタのMV750SPORT。

MV750S

このバイクをベースにデザインしたのはBMWのデザインを手がけていたターゲットデザインで、それがこれ。

ターゲットデザインMV750S

このバイク何かに似てると思いませんか。

実はこのコンペ大会でこれを見たスズキ(谷さん)が、あまりにも卓越したデザインに衝撃を受け

「こんなバイクをウチにデザインしてくれ」

とデザイナーのハンス・ムートさんに熱烈オファー、そしてハンス・ムートさんも快く了承。

KATANAプロトタイプ

そうして生まれたのがKATANAだったりします。

姫ライダーと囲いが生まれる理由 ~動機と淘汰と未熟さ~

バイクアイドル

定期的に話題になったりする俗に言う姫ライダーという要素。

早い話が一人または数人の女性バイク乗りを中心としたコミュニティが出来上がることですね。

こういう環境が生まれるのはバイクに限った話ではないのですが、バイク界隈はこれが結構強い傾向にあるかと思います。

どうしてそうなるのか豆知識というより個人的な分析を(男性目線で)書いていきます。

【1.バイクに乗る動機が違う】

モチベーション

2017年度二輪車市場動向調査(PDF)によると、バイクに乗るようになった動機について男性の場合は

「移動欲求を満たすため」

「非日常体験や成長のため」

など自己満足的な理由が多い。

しかし一方で女性(10~20代)の動機はというと

「特別視されたい」

という自己顕示的な理由が出てくる。

バイクを撮ってるのか自分を撮ってるのか分からない写真と共に『#バイク女子』とか『#女性ライダー』とかハッシュタグ付けてツイートしてたりする女性が見受けられる要因はここにある。

バイク女子

姫ライダーを嫌う男性ライダーが多いのはこの動機の違いを感じ取って無粋だと思っているからかと。

ただ補足しておくと女性全員の動機がこうではないという事も覚えておく必要がある。男性と同じように移動欲求だったり非日常だったりを楽しみたいからバイクに乗ってる女性も少なからずおり、特に30代以降にデビューした女性はその傾向が強いという調査結果が出ています。

そういう女性たちはそう思われるのを嫌って同性のみでコミュニティを作りエンジョイする傾向があるんだそう。

【2.性比不均衡をもたらす】

バイク界の性比不均衡

ここまで言っておいてアレですが交友関係を広げたい、特別視されたいという自己顕示的な思いからバイクに乗ることは別に咎められる様な事ではないかと。女性にモテると思ってバイク乗りになる男性だって少なからず居るわけですから。

そういう下心を一切持たずバイク乗りになった人はそうそう居ないと思うのですが、男性の場合は十中八九は上手く行かないですよね。

しかし一方で女性の方は上手く行ってるケースが多い気がする。この理由は何となく分かる人が多いかと思いますが性比(男女比)が極端だからです。

バイクの男女比

バイク人口の男女比は8:2と言われており圧倒的に男性が多い。250cc以上などの趣味バイクに限るともっと少ない。

この環境が何をもたらすのかというと

『性淘汰(同性間競争)』

という雄同士が雌を巡って戦うダーウィンでおなじみのアレが起こってしまうんですね。女性ライダーに対してアピール合戦やらプレゼント合戦やらになってしまい気が付けばハーレム化という話。

これを生物学では

「雌が雄を選別する性淘汰」

と言われています。

ちなみに性淘汰にはもう一つある。

「雄同士の競争」

という性淘汰。雄が目先の事で頭がイッパイになり後先を考えない攻撃的な性格になってしまう。

『姫が入った事でサークル崩壊』

っていうあるあるネタの理由はここにある。でもこうして生物学を当てはめると仕方ないといえなくもない。

選別

余談ですがもしも逆、つまり男女比が逆の環境になっても殿ライダーとか王子ライダーは誕生しにくい。雄同士ほどの性淘汰競争が起こらないからです。

これは遺伝子を残す上での雄の役割と雌の役割を考えれば理由は自ずと分かるかと。雌同士が性淘汰競争をする生物はダチョウなど本当に極一部だけなんだそう。

「人間は男女関係なく早いもの勝ちの取り合いだろ」

と思って納得できない人は恐らく一夫一妻制という理性が頭にあるから。それは生物学ではなく社会学の視点。

【3.未熟な存在だから良い】

身近

いわゆる姫ライダーコミュニティの中ではモトブログや物販などビジネス規模にまでなってるところもありますよね。

もうそこまで行くと姫ライダーというよりバイクアイドルと言ったほうが正しいと思うんですが、そっち界隈が賑わっているのを見るたびに

「どうせならレースで頑張ってる女性レーサーのファンになってくれればいいのに」

と個人的に思ってしまう。レースって開催するのも参戦するのも凄くお金が掛かるからです。

モトレディース

レースで頑張っている可愛い女性って結構いるんですよ。

参照:MOTO LADIES公式ツイッター

どうしてこんな話をしたのかというと男性レーサーの方にも言える事なんですがSNS等を見ると(失礼ながら)バイクアイドルに比べて人気が無いからです。

凄い人達なのに一体この差の原因が何処にあるのか色々と読み漁ってみたところ

『日本社会における「未熟さ」の商品化|御茶の水女子大学』

というこの原因に合致するであろう論文が見つかりました。

その内容を噛み砕いてバイク界に当てはめると、女性レーサーよりもバイクアイドルが人気なのは

「神ではなく人だから」

というのが理由。

これがどういう事かというと日本のアイドルのパフォーマンスというのは世界的に見ると未熟で海外の人たちが見ると驚くレベルなんだそう。

しかし日本ではそれでいい。

パフォーマンス

「日本のアイドルに求められるものはパフォーマンスじゃないから」

です。

日本では

・歌やダンスが上手い

・かっこいい

・夢を与えてくれる

などの一見するとアイドルにとって重要な要素は求められず

・トークが下手

・かわいい

・欠けている

など人間味溢れる未熟なアイドルが求められる。何故ならその未熟さが磨き上げられていく過程

「自分が支え育てる喜び、成長を観察できる喜び」

をアイドルが好きな人は得たいと思ってるから。

選抜制度があるAKBやジュニア制度があるジャニーズなどがその典型で、これは芸者/舞妓など日本の伝統である”下積み”から来ているとの事。

これがバイク界で活躍しているレーサーたちにも当て嵌まる。

レーサーはサーキットというステージ上でバイクを巧みに操り輝く存在。

モトブロガー

こういう人たちはかっこいい人とは言えるけど、かわいい未熟な人とは言えないですよね。そういう人の成長を見届けたい、アドバイスして育てたいと思える人なんてそうそう居ない。

一方でバイクアイドルと呼ばれる人は公道をステージに、コケたり、覚束ない運転を始めとした言動などバイク乗りなら誰もが知る部分に未熟さが見て取れる存在。

モトブロガー

比較的容易にアドバイスが出来るし、実際そういうアドバイスをしている人も多々いる。

そうやって成長させたり、それを観察したり出来る喜びを容易に得られるから人気が出るという話。

以上が女性ライダーに関する豆知識というか考察でした。